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SAPジャパン、生成AIアプリ開発を支援する「SAP Build Code」など複数のAI関連機能を発表

 SAPジャパン株式会社は28日、生成AIに関する複数の新機能を発表した。新機能の発表にあたり、SAPジャパン ビジネステクノロジープラットフォーム事業部 事業部長の岩渕聖氏は、「SAPは生成AIのベンダーではないが、生成AIを活用したアプリケーションの発展を目指してAIベンダーとパートナーシップを組み、当社のコアビジネスとなるERPアプリケーションを含めたさまざまな業務プロセスを自動化することがミッションだ」と述べ、今回の新機能はそのミッションに沿ったものだとした。

SAPジャパン ビジネステクノロジープラットフォーム事業部 事業部長 岩渕聖氏

 今回同社が発表したのは、生成AIアプリケーションの開発を支援する「SAP Build Code」と、「SAP Business Technology Platform(BTP)」のデータベース管理基盤「SAP HANA Cloud」に追加されるベクトルデータベース機能、そして開発者がAIを活用した拡張機能やアプリケーションを作成する際に役立つ「AI Foundation on SAP BTP」だ。

さまざまな新機能が登場

 SAP Build Codeは、開発者に向けたAIベースの生産性向上ツールで、昨年発表したSAP BTPのローコードソリューション「SAP Build」の進化版となる。この2つの違いについて、SAPジャパン カスタマーアドバイザリ統括本部 BTPアプリ開発・インテグレーション 部長の本名進氏は、「SAP Buildは市民開発者向けで、SAP Build Codeはプロの開発者向けだ」と説明する。

 SAP Build Codeは、JavaおよびJavaScriptでの開発用に最適化されており、SAPの生成AIアシスタント「Joule」を活用してコードを生成し、データモデルを作成、アプリケーション用のデータをテストする。さまざまなテンプレートやコネクタが用意されており、SAPソリューション向けの新しいアプリケーションや拡張機能が効率的に開発できるという。また、プロ開発者と市民開発者がコラボレーションして開発できるよう、SAP Buildを含めたさまざまなアプリをコンポーネント化している。

SAPジャパン カスタマーアドバイザリ統括本部 BTPアプリ開発・インテグレーション 部長 本名進氏
SAP Build Code

 もうひとつの新機能となるベクトルデータベースは、SAP HANA Cloudに追加される機能だ。これにより、「一般的な生成AI言語モデルの弱点を補うことができる」と本名氏は言う。

 汎用的な大規模言語モデルに使われる学習データは、一般に公開されている情報で、しかも最新情報ではない。一方、企業ユーザーは自社の基幹システムに保存されているさまざまな社内情報を活用し、独自のAIアプリケーションとして利用したいと考えている。本名氏は、「今回HANA Cloudがベクトルエンジンに対応したことで、それができるようになる」としている。

 ベクトルデータストアでは、テキストや画像、音声などの非構造化データを管理し、AIモデルに長期記憶とより適切なコンテキストを提供する。これにより、類似のオブジェクトが見つけやすくなるほか、大規模言語モデルと企業データの連携が強化され、既存の大規模言語モデルが事実と異なる回答を生成するハルシネーションが防げるという。

ベクトルデータベースの役割

 そしてAI Foundationは、SAP BTP上でビジネス向けAIツールの構築に取り組む開発者を支援する。「従来はBTPにて機械学習サービスに特化した機能を提供していたが、生成AIの機能を追加してリブランディングした」と本名氏は説明する。

 AI Foundationには、すぐに利用可能なAIサービスや、さまざまな大規模言語モデルにアクセスできる「Generative AI Hub」、AIのランタイムやライフサイクル管理などさまざまな機能がそろっており、HANA Cloudのベクトルデータベース機能にもアクセスできる構造だ。

AI Foundation

 このように次々と新たな技術が登場することで、開発者の育成に頭を悩ます企業も多い。そこでSAPでは、すでに提供されている無料のAI学習コンテンツを補完し、ABAP Cloud開発モデルを使用するバックエンド開発者を対象として新たにロールベースの認定と無料の学習リソースを提供する。新たなリソースは、SAP Learningのサイトにて利用可能だ。

 岩渕氏は、「これからもSAPは、ビジネスプロセスに特化したAIを順次リリースするほか、業種や業界の知見をベースにトレーニングされたAIを自社データでさらにカスタムし、業務に組み込んでいく。また、倫理基準とデータプライバシー基準に基づいたAIを構築し、ビジネスに貢献していきたい」と述べた。