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両備システムズ、2030年度に売上高500億円を目指す 民需分野での成長やAI活用提案などにも意欲

オンラインイベント「両備共創DX2021」を11月10日より開催

 株式会社両備システムズは9日、同社の事業戦略について説明。同社の小野田吉孝副社長兼COOは、「現在は約300億円の売上高だが、2030年度には500億円を目指す。売り上げの6割強を占めている公共分野に加えて、民需分野での成長や、AIを活用したシステム提案などに乗り出し、2026年度には公共と民需の比率を5:5にしていく」と述べた。

 またセキュリティエンジニア育成プロジェクトを開始し、2022年度中に100人規模のセキュリティ人材を育成。クラウドサービスの提供やサーバー設置、運用などにおけるセキュリティ強化を図る考えを示した。

両備システムズ 代表取締役副社長兼COOの小野田吉孝氏

両備システムズとは?

 両備システムズは、岡山県に本拠を構える両備グループの1社で、行政や医療機関などの公共領域、製造や物流、交通などの民間領域でICTサービスを提供している。

 両備グループは43社で構成。バスや鉄道、タクシー、フェリー事業を行うトランスポーテーション&トラベル部門、住宅や不動産事業などを行うまちづくり部門、食品販売やガソリンスタンド事業などのくらしづくり部門、美術館の運営などを行う文化・社会貢献CSR部門があり、その中で両備システムズは、自治体向けパッケージシステム開発の株式会社シンク、ラオス国営データセンターを利用したデータセンター関連ビジネスを行うRyobi Lao Co., Ltd.とともに、両備グループのICT部門を担う。

 「両備グループは、創業111年を迎えており、『運ぶ』ことに特化したビジネスを展開し、人を運び、モノを運び、情報を運ぶことに取り組んでいる。運輸・観光、情報、生活の3分野を有機的に組み合わせて地域社会の発展に貢献していくことを目指している」という。

 創立は1965年で、1514人の従業員を擁し、2020年度の単体売上高は290億円。公共ソリューション、ヘルスケアソリューション、ビジネスイノベーション、クラウドビジネス、デジタルビジネス、テクノロジーソリューション、インフラ・プラットフォームの7つのカンパニーで事業を展開している。

 また、2020年にはグループ5社を両備システムズに統合し、公共分野を中心とした事業構成から、民需分野にも広く展開していく企業に転換した。

 「売上構成比は公共分野向けが6割強、民需分野向けが約4割を占める。また、最新のデータセンターであるRyobi-IDCの運営を行っている点、両備BPOセンターによるサービスを提供している点が、地方のシステムインテグレーターとしては特徴といえる部分である」(小野田副社長兼COO)とした。

 健康管理システム「健康かるて」は、全国684団体に導入実績を持ち、自治体では約40%のシェアを誇る。自治体の保健師の要望を反映したシステムで、2008年の特定健診特定保健指導の制度開始を機に、パートナー企業との提携により全国展開しているという。

 検診予約システムである「AITEL」との連携などにより、自治体と健診機関をオンライン接続し、健診予約から受診勧奨まで、一気通貫でソリューション提案を行える点も特徴で、東京都大田区では、新型コロナウイルスのワクチン接種の予約で活用されたという。「約2500万人がAITELによる予約システムを利用している。日本の5分の1の人口カバー率になる」と述べた。

健康かるて
AITEL

 また、AWSやSalesforce、ServiceNow、kintoneなどのパブリッククラウドと、LGWANを連携したR-Cloudサービスは、機密データをインターネット側に公開しない仕組みと、外部クラウドを利用した拡張性に対応するサービスを両立。安心・安全な行政業務環境の実現や、これを活用した新たなサービスを提供できるのが特徴だ。さらに、エントリークレンジングやプリンティングといったBPOサービスとの連携も、他社にはない強みのひとつとして強調した。これまでに全国200団体以上の自治体での採用実績がある。

 「自治体DX推進計画で打ち出された自治体情報システムの標準化や共通化、自治体の行政手続きのオンライン化、テレワークの推進など、6つの重点事項に取り組む。自治体DXの実現を支援するために、R-Cloudの提案を加速させたい」という。

R-Cloudサービス

 そのほかに、自治体での導入実績でシェアナンバーワンとなっている滞納整理システム「THINKTAX」や、地図と課税台帳を一元管理した固定資産評価システム「マルコポーロ」、LG-WANを活用したポータルサイトである自治体向けコミュニケーション基盤「zichinowa」、スポーツ施設向け会員管理システム「ATOMS V」、トラックドライバーの安全管理を支援する運輸交通業向け点呼システム「点呼・ご安全に」などで実績を持つ。
 「現在、岡山大学とAIを活用したがん診察支援システムを開発しているほか、同様にAIを活用した為替予想サービスの開発にも取り組んでいる」などとした。

2030年度に500億円の売上高を目指す

 両備システムズでは、2030年度には500億円の売上高を目指す計画を示した。年平均成長率は5.7%という意欲的な計画だ。

 「2026年度あるいは2027年度には、公共と民需の売上比率を5:5にしたい。2030年度には、民需分野が6割を占めることになるだろう。現在の公共・民需だけの取り組みだけでは500億円の売上高は達成できない。AIを活用した医療分野や為替予想システム、独自開発のRPAなどにより新たなビジネスを創出するほか、M&Aを通じて、500億円の目標を達成したい」と意気込みをみせた。

 なお、公共分野では「アウトソーシングやクラウドサービスなどに力を入れたい」とする一方、民需分野では「プラットフォームの共通化に取り組んでおり、物流分野から着手している。AIやIoTなどの新たな技術を活用して、民需分野でのビジネスの成長に力を注ぐ」と述べている。

 また両備システムズでは、セキュリティ人材の育成に着手する計画も明らかにした。グローバルセキュリティエキスパート(GSX)との連携により、2022年度内に、100人の脆弱性診断士の資格取得者を育成する。

 具体的には、「SecuriST(セキュリスト)」の資格を取得するために、両備システムズの技術者が、GSXの認定Webアプリケーション脆弱性診断士公式トレーニングや、認定ネットワーク脆弱性診断士公式トレーニングを受講。クラウドサービスがサイバー攻撃を受けた際の影響を正確に判断できる知識を養い、脅威や脆弱性を踏まえた具体的な攻撃者の視点や攻撃手法を習得したプロフェッショナルなセキュリティ人材を育成するとともに、将来的には、Webアプリケーション開発者の技術的なセキュリティ知識、技術の底上げを図るという。

 小野田副社長兼COOは、「オンラインサービスの急増による不正アクセスやPC乗っ取りによる被害が増加。あわせてゼロトラストへの対応が急務になっているほか、2022年4月から施行される個人情報保護法改正などにより、セキュリティに対する要求が高まっている。安心、安全にICTを利用できるデジタル社会の構築のためには、セキュリティ人材の確保が必要である」とし、「セキュリティの知識や視点を持った技術者が、プログラム開発、導入、設置、構築を行えるようにしなくてはならない。まずは、全体の約10分の1の社員を対象に育成し、各カンパニーにセキュリティ人材を配置する。2023年度以降も継続的に育成していくことになる」と述べた。

 なお、認定脆弱性診断士は、情報システムのセキュリティテスト(脆弱性診断)に必要な技術やスキルをハンズオン含むトレーニングで身に着け、さらにそのスキルを認定試験で認定するもので、日本セキュリティオペレーション事業者協議会(ISOG-J)のセキュリティオペレーションガイドラインWG(WG1)、OWASP Japanの脆弱性診断士スキルマッププロジェクトで定義しているスキルマップの「Silver」レベル相当の知識、技術を身に着けていることを認定している。

セキュリティ人材の育成に注力

 一方、同社では、オンラインイベント「両備共創DX2021」を、2021年11月10日~24日まで開催する。「不確実性時代の共創DX」をテーマに、公共・文教、ウェルネス、ニューノーマル、AI・業務自動化、クラウド・セキュリティの5つの分野における同社の共創DXの取り組みに関するオンラインセミナーを実施。オンライン展示では、両備システムズのほか、日本マイクロソフトやServiceNow Japan、サイボウズ、セールスフォース・ドットコムなどの9社の協賛企業を含めて31種類の展示が行われる。

 「コロナ禍によって遅れていた、2020年にスタートした新生両備システムズとしての方針などを対外的にアピールしたいと考えている。従来は、公共や医療が強かったが、統合後には、民需分野への展開や、データセンターおよびBPOセンター、セキュリティなどの機能を強化している。1年半をかけて方向性を見直したものを対外的に訴求したい」としている。

 基調講演では、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授の岸博幸氏、国際政治学者の三浦瑠麗氏、元衆議院議員の金子恵美氏が登壇。地域活性化やニューノーマル時代などをテーマにそれぞれ講演を行う。

両備共創DX2021を開催