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NEC、2024年度連結業績は減収増益 中計のNon-GAAP営業利益は目標を1年前倒しで達成

 日本電気株式会社(以下、NEC)は28日、2024年度(2024年4月~2025年3月)の連結業績を発表した。

 売上収益は前年比1.5%減の3兆4234億円、営業利益は同36.4%増の2564億円、調整後営業利益は同28.4%増の2871億円、税引前利益は同29.6%増の2397億円、Non-GAAP営業利益は同36.8%増の3113億円、当期純利益は同17.2%増の1751億円。Non-GAAP当期利益は同26.9%増の2256億円となった。

2024年度 通期決算実績 主要指標

 NECの森田隆之社長兼CEOは、「2025中期経営計画で掲げていたNon-GAAP営業利益、Non-GAAP当期利益、EBITDAは、目標を1年前倒しで達成した。日本航空電子工業の非連結化の影響を除くと、売上収益は前年同期比5.3%増の増収、Non-GAAP営業利益は989億円の増益となり、想定以上の伸びとなっている。セグメント別では、ITサービスと社会インフラが利益を大幅に改善している」と、力強い成長に自信をみせた。

NEC 取締役 代表執行役社長兼CEOの森田隆之氏

セグメント別の業績

2024年度 通期決算実績 セグメント別

 セグメント別業績は、ITサービスの売上収益が前年比6.2%増の2兆332億円、調整後営業利益は530億円増の2371億円。そのうち、国内ITサービスの売上収益が前年比6.2%増の1兆7125億円、調整後営業利益が503億円増の2154億円。海外(DGDF=デジタル・ガバメント/デジタル・ファイナンス)の売上収益が前年比6.4%増の3207億円、調整後営業利益が27億円増の216億円となった。

 「国内ITサービスは、売り上げの増加に加えて、収益性が2.3ポイント改善し、大幅な増益になった。NECファシリティーズを除くと、売上収益は9%増となる。海外は、一過性費用として年間で約100億円を計上したが、Avaloqを中心とした収益性改善により増益となった」と総括した。

 国内ITサービスの受注状況は、全体(NECファシリティーズを除く)では前年比12%増。業種別受注状況は、パブリックが前年比31%増、エンタープライズが前年並、その他が前年比12%増となった。エンタープライズのうち、金融は同9%減、製造が同9%増、流通・サービスが同5%増。また、その他のなかに含まれるアビームコンサルティングの受注額は同13%増となっている。

 「国内ITサービスは堅調な需要が続いている。パブリックは自治体標準化で、想定以上の要請がある。加えて、中央省庁向け案件が寄与して堅調に推移した。エンタープライズは前年度の高い水準が継続している。そのうち、金融は前年度の反動減により減少したが、案件のパイプラインは旺盛である。製造は選別受注の一巡と、DX関連の案件が増加。流通・サービスも堅調に推移した」という。消防防災案件や交通、メディア系も好調だったという。

ITサービスの概況

 BluStellarの進捗状況についても説明した。

 BluStellarの2024年度の売上収益は前年比44.3%増の5424億円となり、調整後営業利益は162億円増の825億円。調整後営業利益率は12.2%となった。国内ITサービスに占める構成比は32%に達している。

 2025中期経営計画で掲げた2025年度の売上収益目標の4935億円を1年前倒しで達成。利益率は2024年度計画の7.9%を大幅に上回り、2025年度の11.4%の計画も上回った。

 「BluStellarによって、売り物をはっきりさせることができ、これが現場に徐々に浸透してきている。この効果は継続的に出てくる」と自信をみせた。

BluStellarの状況

 社会インフラの売上収益は前年比6.0%増の1兆1417億円、調整後営業利益は302億円増の854億円。そのうち、テレコムサービスの売上収益は前年比3.7%減の7717億円、調整後営業利益は166億円増の439億円。ANS(Aerospace and National Security)の売上収益は前年比34.0%増の3700億円、調整後営業利益は136億円増の415億円となった。

 「テレコムサービスは、通信事業者の投資抑制や一過性の損益があるものの、開発費を中心とした費用の効率化により増益。ANSは、獲得済みの案件を確実に遂行し、大幅な増収増益となった。受注は、政府予算の増加を背景に、前年度に続き、年間5000億円超の水準を継続している」という。

 なお、テレコムサービスでは、第4四半期に、海底ケーブルの引き渡し前に、ケーブルが切断されたという不可抗力によるトラブルに伴い、その修復に、140億円の一過性費用を計上している。新たなプロジェクトについて、こうした問題が発生した際には、フェアな形で負担する契約に変更する考えを示した。

社会インフラの概況

 その他では、売上収益が前年同期比48.9%減の2485億円、調整後営業利益が197億円減の147億円の赤字となった。ここでは日本航空電子工業の非連結化が影響した。

2025年度の通期業績見通しは減収増益を見込む

 一方、2025年度の通期業績見通しは、売上収益は前年比1.9%減の3兆3600億円、調整後営業利益は同8.0%増の3100億円、Non-GAAP営業利益は同2.8%増の3200億円、Non-GAAP当期利益は同1.9%増の2300億円を見込む。

 「Non-GAAP営業利益は、2025年度を最終年度とする中期経営計画の当初目標から200億円引き上げることになる」と強気の姿勢をみせたものの、「現下のマクロ経済環境の不透明性を考慮した計画である。現時点でプロジェクトを遅延させるという話はないが、今年度の事業計画の開示を控える企業もあり、企業の整備投資やIT投資の今後の動向は、第1四半期中に見極める必要がある」とした。

 だが、「今回示した数字は、いまの不透明な状況のなかでも、しっかりと達成しなくてはならない数字である。関税問題がクリアになり、市場が安心して投資できるようになれば、さらに上振れた数字を目指すことができる。着実に増益を継続していく」と述べた。

2025年度の通期業績見通しの主要指標

 2025年度通期のセグメント別業績見通しは、ITサービスの売上収益が前年比0.9%減の2兆150億円、調整後営業利益は同259億円増の2630億円とした。調整後営業利益率は13.1%となる。そのうち、国内ITサービスの売上収益が前年比0.7%減の1兆7000億円、調整後営業利益が96億円増の2250億円。海外(DGDF=デジタル・ガバメント/デジタル・ファイナンス)の売上収益が前年比1.8%減の3150億円、調整後営業利益は164億円増の380 240億円とした。

 「国内ITサービスが減収計画となっているのは、法人向けPC販売機能を、NECパーソナルコンピュータに移管したことによるもの。だが、収益性改善により増益を見込んでいる。また、DGDFは、継続的な収益性向上と、前年度の一過性費用の剥落により増益を見込んでいる。2025年度からは、DGDFの統括機能を欧州に移転し、成長戦略の一層の加速を図る」と述べた。国内法人向けPCの移管の影響を除くと、国内ITサービスは売上収益で前年比4%増の計画になるという。

2025年度 通期業績見通し セグメント別
2025年度 通期業績見通し(ITサービス)

 BluStellarの2025年度の売上収益は前年比15.0%増の6240億円、調整後営業利益は前年から162億円増の825億円と、引き続き高い成長を見込んでいる。調整後営業利益率は13.2%となる。国内ITサービス事業に占める構成比は37%にまで引き上げる。

 2025中期経営計画で掲げたBluStellarの2025年度の売上収益目標は4935億円だったが、これを1年前倒しで達成。利益率は2024年度の7.9%を大幅に上回り、2025年度の11.4%の計画も上回っており、より高い計画に挑むことになる。

 森田社長兼CEOは、「BluStellarは、2025年度も売上収益で前年比2桁成長を継続。商材やリソースを拡充するための投資を増加させつつも、継続的な売上増と、利益増加により、利益率をさらに改善する」との方針を示した。

 社会インフラの売上収益は前年比1.6%増の1兆1600億円、調整後営業利益は146億円増の1000億円とした。そのうち、テレコムサービスの売上収益は前年比5.4%減の7300億円、調整後営業利益は121億円増の560億円、ANSの売上収益は前年比16.2%増の4300億円、調整後営業利益は25億円増の440億円とした。

 「テレコムサービスは、前年度の一過性要因の反動もあり、利益改善を進める。ANSは、今後の事業機会を獲得するための投資の増加を図る。投資増を除くと2024年度並の利益計画になる」と述べた。

2025年度 通期業績見通し(社会インフラ)

 その他は、売上収益が前年比25.6%減の1850億円、調整後営業利益は107億円改善する見通しだが、40億円の赤字とした。「子会社事業の譲渡に伴う減収を織り込んでいる」という。

 このほか、低収益事業の進捗状況についても説明した。

 2020年度末時点では、16事業が低収益事業となっていたが、2024年度までに12事業が管理対象から卒業。一方で、2024年度までに4事業が悪化し、現時点で合計8事業が低収益事業となっている。合計した事業規模では4600億円になる。そのなかには海洋事業も含まれている。

 「収益改善に向けた活動を継続し、収益性改善が難しい領域については、売却やパートナーリングなどにより、事業価値を最大化することを含めて、2025年度末までに、すべての低収益事業の意思決定を完了する」とした。CFO主導による徹底した低収益モニタリングにより、方向性が未定の事業をゼロとする一方、予算進捗状況に応じたモニタリングによるフォローで、高中収益事業の悪化抑制を行うという。

2025年度末までにすべての低収益事業の意思決定完了を目指す

 森田社長兼CEOは、「2021年5月に、2021年度計画を増収減益と発表した翌日に株価が14%落ち、厳しい洗礼を浴びた。だが、くじけずに構造改革と先行投資を実施してきたことがいまにつながっている」とし、「2025中期経営計画は、その次のスタート台を、どこまでしっかりと作れるかがポイントになる。2026年度以降の方向性と姿をにらみながら、2025年度の事業を遂行していく」と語った。

 なお、キャピタルアロケーションについては、従来方針からの変更はないが、新たにM&A案件に対するキャッシュROIC評価を適用。買収検討や買収後の評価に適用し、買収後5年以内にROICがWACCを超過することを原則化し、規律を明確化したという。