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両備システムズが「中期経営計画2024~2026」を発表、2026年に売上高446億円を目指す

“成長分野”クラウド関連事業で133億円を見込む

 株式会社両備システムズは25日、「中期経営計画2024~2026」を発表。2026年に売上高446億円を目指し、そのうち、成長分野に位置づけるクラウド関連事業で133億円を見込む。同社では、2030年度に売上高500億円を目指す長期計画を打ち出しており、この3カ年を「浸透・推進期」と位置づけ、公共ビジネスでは自治体システム標準化への対応を進めるほか、民需ビジネスではパッケージ事業やクラウドSIを拡大し、2027年以降の事業成長に向けた地盤を整備する。さらに、新規事業やM&Aによる戦略的成長も目指す。

 両備システムズ 代表取締役COOの小野田吉孝氏は、「この3カ年においては、自治体システム標準化のビジネスインパクトが大きくなる。特に、2025年からの2年間で全国1700自治体が一斉に移行するため、これを中心に事業を展開していくことになる」としたほか、「自治体システム標準化が終わった後のビジネス構築や、企業のIT投資の活性化にあわせて、民需ビジネスを強力に推進できる組織の構築を進める。また、各種クラウドプラットフォームや自社データセンターを活用したクラウドビジネスの強化も行う。足固めとステップアップの3年になる」とも述べた。

 M&Aについては、「日々、調査や検討を進めている。セキュリティ、インフラ分野は、M&Aによって伸ばしたい領域である」と位置づけた。

両備システムズ 代表取締役COOの小野田吉孝氏
2024年~2026年の事業方針

 個別のビジネス分野を見ると、まず公共ビジネスでは、ベースレジストリなどの省庁系ビジネスの拡大、ガバメントクラウドとRSIDC(データセンター)のデータ連携サービスの強化、マイナンバー活用やスーパーシティおよびスマートシティ、デジタル田園都市国家構想への対応、こどもの杜プロジェクトによる文教ビジネスの拡大、医療系ビジネスの拡大などに取り組む。

 2026年には、公共ビジネスの売上高は333億円を計画。そのうち、通常売上が216億円、自治体システム標準化関連売上で117億円を見込む。

 「2027年以降は自治体システム標準化関連売上が減少する。それに向けて、自治体システム標準化の対象となる20業務以外のガバメントクラウド周辺ビジネスを確立していく」とし、事業成長とともに、将来の足固めも進める。

自治体システム標準化の影響

 民需ビジネスでは、現在投資を行っているアパレル向けパッケージの拡大および競争力の強化、ECサイトや決済サービスへの展開、貸切バスプラットフォームや物流倉庫ビジネス、カーボンニュートラルといった新たなビジネスの展開、戦略なき受託開発の縮小、スクラッチ開発からクラウドSIへの移行、成長分野への投資やBPOビジネスの利益の最大化などを進める。

 「アパレル向けパッケージを製造から流通へと拡大するほか、両備グループの事業と連携した貸切バスプラットフォームの提供などにも取り組む。民需ビジネスで主力となっていたスクラッチ開発を縮小し、クラウドSIによる短期間、低コストでの提案を強化する」としている。

 また2024年1月に、民需ビジネス部門と、受託開発に特化した技術サービス部門を統合した共創ビジネスカンパニーを新設。「民需ビジネスを加速させるための再編であり、SaaS型SIビジネスに特化する組織になる。両備システムズの将来の主力となる事業を確立させていきたい」とし、「まずは400人体制でスタートし、人材シフト、技術シフトを進め、事業拡大にあわせて陣容を25%程度拡大したい」とした。

 なお民需ビジネスは、2023年は99億円の売上見通しであるが、これを2026年には113億円に拡大する。「3カ年の年平均売上成長率は4.3%と低いが、開発投資をしながら準備を進める期間であることが影響している。その後は6.0%以上の成長を見込んでいる」と述べた。

共創ビジネスカンパニーを新設
事業ポートフォリオの見直しとビジネスモデルの変革を行い、成長戦略を実現

 クラウドビジネスでは、事業横断でのクラウド活用を推進。2030年には売上高の半分をクラウドで占める事業体制を目指し、その基盤づくりに取り組む。技術者の統合を含めたCoEの活性化、セキュリティサービスの充実、R-Cloudサービスの部品開発、クラウドマーケットプレイスの実現、データセンター第3棟の建設、2024年中のISMAP取得およびインフラサービスの強化、組織内外のマネジメント強化やリスク管理の底上げを進める。

 「クラウドは、事業の柱となるビジネスとして強化していく。従来のプラットフォームサービスであるR-Cloudに加えて、ガバメントクラウドに対応した新規サービスを提供。B2GおよびB2Bに加えて、B2Cにサービスを拡張し、データビジネスやAI、IoT ビジネスへとリソースをシフトしていく」と語った。

 2023年には93億円のクラウドビジネスの売り上げを、2026年には133億円に、2030年には250億円に拡大する計画だ。

クラウドビジネス ビジネスモデルの変革

 また、カーボンニュートラル事業準備室を設置し、社内において脱炭素算定に向けて必要なデータを収集して可視化するとともに、LGWANと連携したシステム構築やツールの整備などにも取り組み、将来的には事業化を目指す。さらにガバナンス統括室も新設し、セキュリティや品質などの管理強化に取り組む。

カーボンニュートラルに向けた取り組み

 人材育成計画については、2026年までに100人のセキュリティエンジニア(脆弱性診断士)の育成を計画。現時点で約40人の育成を完了しているほか、これまで200人の育成を目標にしていたクラウドエンジニアは、現時点で目標を達成。2026年までに現在の倍増となる400人の育成を目指す。

 「AWSの認定資格取得を中心に育成を進める。また、政令市や県庁所在市、大企業や中規模にはSalesforce、中小企業ではKintoneでの提案も進め、それらの認定資格者も増やしていく。マルチクラウドに対応できるクラウドエンジニアの育成にも力を注ぐ」としたほか、「現在はオンプレミスのパッケージをクラウドに乗せて提供しているものが多いが、今後は複数のクラウドサービスを組み合わせた提案が増えていくことになる。自社パッケージのクラウドへの転換を図るとともに、クラウド中心の技術集団への変革を目指す」と述べた。

 また、次世代育成プロジェクトである幹部候補生育成研修の対象を現在の50人から100人に拡大。1600人の全社員を対象に、DXリテラシーの向上やDXマインドの醸成に向けたオンライン学習を進める。すでに40%の社員が月10時間をオンライン学習に充てているという。

 「IT技術者が不足している。人材確保のために教育体制を整えるほか、2024年3月には東京本社の移転、2025年には岡山市の本店やよび豊成オフィスの建て替えを行い、心理的に安全な環境下で、付加価値のある仕事に向けた取り組みが行えるようにする。賃金は2026年までに20%以上の上昇を計画している」と述べた。

 この3カ年は、自治体システム標準化のビジネスが拡大することで、デリバリーが増加したり、パッケージビジネスに比べるとコスト増が発生したりといったことが想定されるほか、賃金の上昇で10数億円の費用を想定。3カ年の利益率は10%を切ると想定しているが、人材への投資計画は緩めることなく、継続的に進めるという。

人財育成計画
人財の獲得

 生成AIの社内活用についても言及した。Azure Open AI Serviceなどを活用し、セキュアな社内専用生成AIシステムを構築。プログラムの自動生成や製品品質のチェック、文書作成などに活用しており、1年後には、1600人の全社員が生成AIを活用できる環境づくりを目指すという。2023年12月には、自治体向けグループウェア「公開羅針盤」に生成AIを採用。今後はさまざまなプロダクトにも展開していくという。また、両備グループ全体でもバックオフィス業務において生成AIを活用する考えであり、その支援を両備システムズが行うことになる。

2023年までの両備システムズの実績

 両備システムズは、岡山に本社を置き、バスや鉄道、タクシー、ガソリンスタンド、不動産事業などを行う両備グループのICT部門の中核企業だ。両備グループ全体では売上高1606億円、グループ企業45社、8043人の社員数を誇る。

 ICT部門は、両備システムズのほか、シンク、ドリームゲート、マックスシステム、Ryobi Lao、Ryobi AlgoTech Capitalで構成。自治体などの公共分野、アパレルや物流、交通などの民需分野、データセンター事業などを手掛け、2026年には、岡山市内にデータセンター第3棟の構築を計画している。なお、Ryobi AlgoTech Capitalでは両備システムズイノベーションファンドを設立。2028年までを予定していた20億円の投資を2026年3月末までに完了する予定とし、2025年までには第2号ファンドも設立する予定だ。またRyobi Laoでは、ラオスにおけるデジタルIDの事業化に向けて、2024年には実証事業の受注を目指すという。

 両備システムズでは、2030年に向けた長期ビジョンを策定しており、「お客様、パートナーと共に『スマートシティ(スマートライフ構想)』の実現に向けたビジネスエコシステムを創造」、「クラウドセンターを基盤とした各カンパニーの技術、サービスの融合」、「お客様の業務プロセスを支援、既存ビジネス拡大と新規ビジネスの展開を図る」の3点に取り組んでいる。「総合力を生かした両備システムズならではのサービスにより、自治体、政府、医療機関、地域企業に対して、ICTによる課題解決を進める」としている。

2030年のありたい姿

 ミッションには、「顧客を知り、顧客に学び、変化に挑戦し続けることで、顧客に最高の歓びを提供する~For the Best Value with You」を掲げている。2025年には創立60周年を迎えることになる。

 2023年までの3カ年は、6社統合による組織再編や民需ビジネスの拡大を推進。2023年の売上高370億円の目標に対して、384億円の見込みとなり、経常利益は48億円、経常利益率は12.5%となった。

 「2021年にGIGAスクール構想による端末整備、コロナに関連する給付金システムやワクチン予約システムといった特需があったほか、Fintechやメディカルなどの新規事業の開始、クラウドビジネスの推進などでは成果があがった。特殊要因を除いた実績でも、高い成長率を維持できた。だが、コロナ禍の影響が長期化したことで顧客接点が薄れたこと、グローバル推進が停滞したことが反省点である」と総括した。

 2023年は、岡山県での給付金関連やマイナンバー関連、出産子育て交付金、岡山市GIGA スクール包括支援センターといった案件の獲得のほか、自治体システム標準化に向けたガバメントクラウド戦略室の発足や、CVCであるRyobi AlgoTech Capitalの設立、こども家庭庁向け「こどもの杜」の実証事業の受注、アパレル業向けのSunny side for salesの本格稼働などの成果を上げたと振り返った。

2023年度事業実績