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ネットアップ・中島社長が2022年度の戦略を説明、「4つの要素で顧客のデータファブリックの構築を支援する」
2021年7月21日 06:01
ネットアップ合同会社は20日、同社2022年度の事業戦略について説明した。
ネットアップの中島シハブ社長は、「ネットアップの戦略は明確である。顧客に対して、シンプルで、経済的で、提供しやすいモデルによって、データファブリックを活用してもらうことだ。4つの要素で顧客のデータファブリックの構築を支援することになる」と語った。
データファブリックは、アーキテクチャと一連のデータサービスを組み合わせて、オンプレミスから複数のクラウド環境まで幅広いエンドポイントにわたり、一貫した機能を提供する同社の基本戦略だ。
AFFやFAS、FlexPod、StorageGRID、SolidFire、E-Series- Cloud Volumesなど、データファブリックの基盤になる「オンプレミス&クラウドストレージ」、Cloud ManagerやCloud Insight、Astraにより、オンプレミスからクラウドまでのデータファブリックを一元的に管理する「ユニファイドデータマネジメント」、Keystoneや Spotによって構成され、将来的には“データファブリック as s Service”を目指す「柔軟な提供モデル」、コンサルティングやサポート、パートナーとのエコシステムによるプロフェッショナルを通じた「DXジャーニー支援」の4つの要素から、製品やサービスを提供していることを示した。
「データファブリックを実現するには、インフラ、アプリケーション、データを可視化するとともに、システム全体の可用性やパフォーマンス、使用状況をモニターして、課題を早期に発見。最優先すべきところにリソースを活用することが大切である。ネットアップは、ネクストノーマル時代における顧客のDXジャーニーを支援したい」と述べた。
また同社の調査によると、DXの成熟度が高い企業は、国内企業全体では約1割だが、ネットアップを利用しているユーザーに限定すると35%を占めており、「ネットアップが、日本の企業のDX推進に貢献している」と語ったほか、AIを活用してビジネスで成果を上げているネットアップユーザーが増加しており、ネットアップが企業のAI、データ活用を支援する主力ベンダーとなっていることを強調した。
さらに、クラウドストレージに対する関心が高まっていることを、同社の調査結果から指摘。「現在は、ストレージの20%がクラウド環境で利用されているが、将来はクラウド環境が80%になり、オンプレミスとの比率が逆転すると予測されている。投資がクラウドに向かうことを前提に、いまの投資を考えなくてはならない。また、DXにおいて直面している課題は、データの種類の多様化、データ連携の欠如、データのサイロ化である。これらを解決しないと、ビジネスに大きな損害を与える。将来のリスクにいまから備えるべきである」と提言した。
一方、ネットアップ 常務執行役員 CTOの近藤正孝氏は、最近の顧客が持つ課題として、クラウドコストの最適化、オンプレミス回帰やハイブリッド利用、ランサムウェア対策、DataOps環境の構築、DX人材不足、クラウドネイティブな開発/運用環境の構築といった点を挙げ、それらに対する同社の取り組みや、提供する製品やサービスについて説明した。
クラウドコストの最適化に関しては、継続的なインテグレーションとデプロイメントに加えて、オプティマイゼーションが鍵になるとし、CI(Continuous Integration)、CD(Continuous Deployment)、CO(Continuous Optimization)の実現に、Spot by NetApp が最適であることを示した。
Spot by NetAppを構成しているのは、無償で提供しているCloud Analyzerのほか、Eco、Elastigroup、Oceanの各サービス。「アプリケーションのワークロードの状況を見ながら、支払いモデルを動的に変更することができる。多くの場合、7~9割のコスト削減が可能になる。リフト&シフトの場合にはEcoが最適であり、ステートレスやコンテナにはElastigroup、Oceanが最適である。すでに1500以上の企業において、50万ノード以上の導入実績がある。平均して73%ものコスト削減を達成している」とした。
また新しいSpotサービスとして、Kubernetes環境でのサーバーレスSparkであるWave、Kubernetes環境での継続的デリバリを行うOcean CD、クラウドデスクトップas a serviceであるSpot PCについて説明。「これらは、特定のワークロード向けのクラウドオプティマイゼーションになる。特にSpot PCについては、マイクロソフトが新たに発表したWindows 365などと一緒に動くことになる。バーチャルデスクトップでも、さらなるコスト削減が可能になる」と語った。
オンプレミス回帰やハイブリッド利用では、「データファブリックの提案が最も生きる分野である」と前置き。オンプレミス向けストレージのほか、メガクラウド上で動作するSpotによるコンピュート運用、クラウドストレージ、クラウドサービス、クラウドコントロール、クラウドアナリティクスの各領域において製品、サービスを提供していることを示し、「オンプレミスでも、クラウドでも、同じ管理環境を実現できる。ネットアップが提供するクラウドサービス群を活用して、データを同期させたり、バックアップを取ったり、自動で階層化したりといったことが可能になる」と述べた。
ここでは、サイバーエージェントが、KubernetesベースのAI基盤に最適なストレージとして、ネットアップのNetApp AFF A800およびTridentを採用し、クラウドベースで運用していたAdTech(広告技術)の分析基盤を移行した事例を紹介した。クラウド利用によってコストが増大する環境を、オンプレミスに移行するとともに、ハイブリッドクラウド環境で運用することで、コストの最適化を図ったという。
ランサムウェア対策では、snapshotについて説明。「変更不可のデータを、1時間や30分ごとに新たに保存しておけるため、感染後の復旧をシンプルに行うことができる。市販のバックアップソフトがなくても、ランサムウェア対策が可能になる」としたほか、DataOps環境の構築では、ネットアップAIコントロールプレーンやネットアップDataOpsツールキットを提供することで、AI従事者がストレージに関する知識がなくても、データのサイロ化を防ぎ、効率的なDataOpsを実現できることを示した。この分野においては、NVIDIAとの緊密な連携を行っていることにも触れた。
さらに、DX人材不足の課題に対しては、過去7年間に渡ってネットアップのIT部門が取り組んできたIT as a Service化に向けた取り組みをベースにした経験を活用。人材育成に関するラボやワークショップ、コンサルティングサービスを提供するという。
クラウドネイティブな開発/運用環境の構築においては、2021年4月に、Kubernetes向けに発売したエンドトゥエンドアプリケーション&データライルサイクル管理ソリューションである「NetApp Astra」について説明。「アプリケーションのコードと、取り扱うデータをまるごとバックアップし、別のクラウドやオンプレミス環境に移行したりといったことができる。現在はAzureおよびGoogle Cloudに対応しているが、近いうちにAWSおよびオンプレミスにも対応する」とのこと。
ネットアップの近藤CTOは、「これらの製品、サービスを提供していることからもわかるように、ネットアップが提案するデータファブリックは、ビジョンではなく、現実的に提供できるものになっている」とした。
さらに同社では、6月に買収した仏Data Mechanicsが持つビッグデータの処理、クラウドサービスの分析、機械学習を行うプラットフォームを、今後、「Spot Wave」に統合するほか、オンプレミスとクラウドにまたがるデータストレージを管理する「Cloud Manager」の機能を強化し、単一の画面から設定、運用、管理を可能にすることを発表。
さらに、ハイブリッド/マルチクラウド環境でPoCを行える検証センター「ハイブリッドマルチクラウドラボ」の無償提供、DXジャーニーの構築、運用を体験する半日ワークショップ「NetAppデジタルトランスフォーメーションラボ」の提供、企業がDXジャーニーを導入するための計画から運用、DX人材育成までを包括的に支援するコンサルティングサービス「NetApp Professional Service」の提供メニューの強化、ネットアップとシスコのコンバージドインフラである「FlexPod」の次世代版の投入を予定していることにも触れた。
加えて、データレイクを実現するオブジェクトストア製品「StorageGRID」の最新バージョン 11.5では、セキュリティ機能を強化したこと、ネットアップのサブスクリプションサービスを、エクイニクスのIBXでも利用できる「NetApp Keystone Flex Subscription at Equinix」を北米で提供を開始し、日本でも実施に向けた協議を開始したことにも明らかにした。