ニュース

ネットアップ、サブスクリプションモデルの「Keystone」を国内で提供へ

破壊的創造の時代でもビジネスの成長が行えるように支援する――、中島シハブ社長

 ネットアップ合同会社の中島シハブ・ドゥグラ社長は29日、オンラインで会見を行い、同社の事業方針について説明。新たにサブスクリプションモデルの「Keystone」の提供を日本で開始することなどを発表した。

 中島社長は、「いまはデータ戦略の時代であり、データはビジネスの要となり、企業の重要な資産となっている。そうした時代において、企業がデータの力を活用し、イノベーションを行えるように支援するのがネットアップの役割である」と前置き。

 「具体的には、ネットアップは、顧客がデータファブリックを構築することを支援し、オンプレミスとクラウドの環境を最適化することで、データの価値を最大限に生かして、破壊的創造の時代のなかでも、さらなるビジネスの成長が行えるようにサポートする」と述べる。

 また、「ネットアップはハイブリッド/マルチクラウド時代のトッププレーヤーの1社として、顧客のデータ戦略を支援する。これが私のコミットメントである」とも話した。

 中島社長は、2019年12月にネットアップの社長に就任。記者会見を行うのは今回がはじめとなった。

ネットアップ 代表執行役員社長の中島シハブ・ドゥグラ氏

4つの取り組みを推進

 ネットアップの今後の取り組みとして、中島社長は、市場ニーズに対応した新たな顧客獲得に向けた「戦略的な組織構造」、既存パートナーに加えて、クラウドネイティブのパートナーとの連携を強化する「パートナーエコシステムの強化」、DXを加速するエンド・トゥ・エンドソリューションの「ポートフォリオの拡大」、多様な経験を持った「営業およびエンジニアチームの強化」の4点に取り組む姿勢を示した。

 「ネットアップは選択の自由を提供するとともに、シンプルな仕組みでハイブリッドクラウドに対応できること、そして、データの保護といった点に強みを持っている。また、AWS(Amazon Web Services)、Azure、Google Cloudと連携したクラウドデータサービスを提供していることが優位性につながっており、ハイブリッドクラウド時代の主要5企業のなかの1社といえる。さらにデータサービスにおいても、市場に先駆けてさまざまな機能を提供しており、企業内データファブリック、ストレージファブリックの構築に必要な機能を用意している。ここに、ネットアップならではの特徴がある」とした。

今後に向けた4つの取り組み
ハイブリッドクラウド時代の主要5企業のなかの1社といえる、とアピール

 2020年第1四半期には、国内NAS市場において売上高で28.5%、出荷容量で37.8%のシェアを獲得し、いずれも首位を維持していることを示しながら、「ストレージファブリックのソリューションは、今後も引き続き強化していくことになる」と述べた。

 さらに、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、企業の優先事項に大きな変化があることをとらえながら、いますぐに求められる対応を行う「Response」、今後に向けた最適化を行う「Optimize」、さらなる成長戦略を推進する「Thrive」の3つのステップで、日本におけるビジネスを推進する考えを示した。

3ステップで日本におけるビジネスを推進していく

 まずResponseでは、事業継続に向けてリモートワークやセキュリティが求められるなかで、デスクトップ関連ソリューションを提供してきたことや、ネットアップファイナンスソリューションによって、投資や支払いの見直しを支援する仕組みも用意したことを紹介した。

サブスクリプションモデルのKeystoneを提供

 そして、2つめのステップであるOptimizeは現在の状況であるとし、企業がコストやキャッシュフローの見直し、効率化やビジネス戦略の加速などを重視していることに対応。新たなサブスクリプションモデルの提供などを開始すると述べた。

 今回、国内での提供が発表されたサブスクリプションモデルのKeystoneは、スタンダード、プレミアム、エクストリームのなかから、必要なパフォーマンスレベルとストレージサービスを選択でき、シンプルな操作で容易に利用できるのが特徴。ダッシュボードとAIにより、簡単な運用を実現。クラウド感覚のオペレーションで、柔軟、容易、迅速な拡張が可能になる。

 「管理は顧客自身あるいはパートナーが行い、契約した容量を超えた場合にも、50%増までは対応可能となっている。利用期間の契約は1年間から行うことができ、1サイトあたり15TBから利用できる。必要な時に必要な分だけの支払いで、ハイブリッドクラウド環境が構築できる」とした。

 また、「Keystoneは複数のパートナーが取り扱う予定であり、話し合いにおいては強い反応がある。Keystoneの上でパートナーのソリューションを提供しながら、ハイブリッドクラウドへの移行を支援することができる。他社のようなリースプログラムではなく、消費時点で費用が発生する仕組みであり、利用するためのハードルを引き下げている点も特徴だ。今後は、クラウドネイティブなパートナーとの連携も強化していくことになる」とした。

Keystone

 また、ハイブリッドクラウド環境を一元的に見える化するNetApp Cloud Insightを提供。「使用されていないリソースを特定することで、クラウドインフラストラクチャーのコストを平均33%削減することができる。また、ゼロトラストの考え方に基づいており、機械学習の採用によるデータセキュリティの強化を実現。トラブルシューティングや最適化にも活用できる。14日間の無償トライアルも提供している」とした。

NetApp Cloud Insight

 さらに、3つめのステップとなるThriveでは、AIや自動化技術を活用したビジネス変革を支援することになるという。

 中島社長は、「デジタル化は、企業ごとにさまざまなステージにあるが、新型コロナウイルスの影響で、多くの企業がこれを加速させている状況にある。企業の生き残りや事業継続において、ITはますます重要になっている。IT部門も、ビジネス部門もクラウドを積極的に活用するといった動きが出ており、これにあわせて、オンプレミスとクラウドを組み合わせたハイブリッドクラウドを活用する動きが加速している。こうした動きをネットアップが支援できる」とした。

アプリ開発者やデータサイエンティストにも価値をアピール

 一方、ネットアップ 常務執行役員兼CTOの近藤正孝氏は、「これまでのネットアップはインフラ管理者に対する価値提供を行ってきたが、それに加えて、新たにアプリケーション開発者に対しても、アプリケーションのリリースサイクル迅速化のための価値を提供する。さらにデータサイエンティストには、データ分析高速化のための価値を提供することになる。そのためのクラウドサービスメニューの拡充に取り組んでいる」と語り、新たな顧客層に対するアプローチを開始する姿勢を示した。

 さらに2020年3月以降、コロナ禍においても買収戦略を加速しており、これが新たな顧客開拓につながることを示しながら、それぞれの顧客層に向けた取り組みを説明した。

ネットアップ 常務執行役員兼CTOの近藤正孝氏

 既存の主要ターゲットとなるインフラ管理者に向けては、7月に買収したSpotによるアプリケーション駆動型インフラストラクチャ(ADI)「Spot by NetApp」を提案する。

 「ネットアップは、ストレージとデータにかかわるコストや運用において最適化を進めてきた。これにSpotを組み合わせることで、コンピューティングの最適化も可能になり、アプリケーションのために最適化されたインフラへと対応範囲を拡充できる。ADIにより、アプリケーションが必要とする可用性、パフォーマンス、キャパシティを最も低コストで、自動的に提供し、デプロイを迅速化するとともに、アプリケーションの展開とイノベーションを加速できる。しかも、さまざまなワークロードに対応できる点が特徴になる」とした。

Spot by NetApp

 アプリケーション開発者向けには、TRIDENTとProject Astraについて説明した。「ネットアップは、Kubernetesをはじとめするコンテナがアプリケーション開発のデファクトスタンダードになると考えており、これらのコミュニティにも貢献してきた。特に、堅牢なデータ管理に力を注ぎ、そこにTRIDENTを提案し、コンテナアプリケーションのための、堅牢で永続的なデータ管理を提供している」とする。

TRIDENT

 また「Project Astraは、真のアプリケーション移植性の実現するものになり、私自身は、アプリケーションの『どこでもドア』化プロジェクトと呼んでいる。Kubernetesにより、アプリケーションの移植性が大幅に向上し、コンピューティングのみの移植性も高まったが、データやデータ管理の移植性がない点が課題となっている。これを解決するのがProject Astraになる」とした。Project Astraは、今年秋には製品化する予定だという。

Project Astra

 そして、データサイエンティスト向けには、ネットアップAIコントロールプレーンを紹介。「KubeflowやKubernetes、TRIDENTを活用して、フルスタックにより、AIデータやワークロードを管理。さらに、ワークフローの自動化が可能になる。場所を選ばずに分析できたり、モデルを稼働させたりできる。GitHubにも公開しており、これらの取り組みを通じて、今後はデータサイエンティストにも積極的に訴求をしていきたい」と述べた。

ネットアップAIコントロールプレーン

日本での取り組み

 一方、日本での取り組みとして、ネットアップハイブリッドマルチクラウドラボについても知れた。

 ネットアップハイブリッドマルチクラウドラボは、エクイニクスのTY4データセンターを利用して、ストレージやネットワーク回線を利用できる環境を用意。ハイブリッドマルチクラウドに関するPoCを行えるようにしている。

 「全体可視化やVDIのインプリメンテーション、データ移行、Anthos連携、AI検証などが行える。そのなかからニーズを明確化し、議論を進めることになる」とした。

ネットアップAIコントロールプレーン

 さらに、シナリオベースのハンズオンが行える拠点として、「ネットアップデジタルトランスフォーメーション(NDX)ラボ」を設置。仮想化基盤をプライベートクラウドへ移行するとともに、ハイブリッドクラウド化する「Optimize IT」、コンテナ化したアプリケーションに永続化したデータを盛り込み、ハイブリッドクラウドを活用することでITインフラの姿を変えていくことを体験できる「Thrive IT」を用意しているとした。