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ネットアップ、Kubernetes環境のアプリやデータをバックアップできる新サービス「Astra」
2021年3月31日 07:00
企業向けストレージ製品のネットアップ合同会社(NetApp)は30日、Kubernetes環境におけるデータ管理のための新サービスを4月1日より日本で提供開始することを発表した。
まず、Kubernetes環境のアプリケーションやデータのスナップショット/バックアップの「NetApp Astra」をSaaS形式で提供する。Google Cloud(GCP)のGoogle Kubernetes Engine(GKE)に対応。今後、AWSやAzure、オンプレミスなどに対応を広げていく予定だ。
また、クラウドでのリソースとコストを最適化する「Spot」サービス群の中で、Kubernetes基盤を対象とする「Ocean」において、これまでのAWSおよびGCPに続き、Azureに対応した「Spot Ocean for Azure Kubernetes Services(AKS)」を提供開始する。
さらに、Spotサービス群の中で、Kubernetes上のビッグデータ基盤Apache Sparkの利用を最適化する「Spot Wave」も提供開始するとした。
Kubernetesにエンタープライズのデータ管理等を提供
30日に開催された記者説明会では、これら新サービスを含むNetAppのKubernetes戦略について、ネットアップ合同会社 常務執行役員 CTOの近藤正孝氏が解説した。
近藤氏はKubernetes管理の課題として、ステートフルなアプリケーション開発運用の実績はまだ比較的少ないこと、アプリケーションデータの保護が複雑なこと、データ保護とDRのための標準的な仕組みがないこと、データの可搬性が乏しいことを挙げた。そして、調査会社のESGのリサーチャーによる「コンテナのアプリケーションのバックアップは従来のアプリケーションのバックアップと同じ、というのは間違い」という言葉を引用した。
また、運用面で監視が複雑となってしまうことや、負荷の変化が激しいアプリケーションに対してコスト最適なクラウドインフラの設定が困難なことも挙げ、クラスタが再現なく増殖してしまう「cluster sprawl」につながると語った。
それに対するNetAppのKubernetes戦略は「Kubernetesアプリケーション開発、運用に、エンタープライズレベルのデータ管理方法、監視方法、最適インフラ選択方法を提供」というものだ。
中核となるのが、データ管理の製品やサービスだ。今回日本で発表されたAstraはここに含まれる。そのほか、KubernetesのAPIでNetAppのストレージを扱う「Trident」や、ストレージOSのONTAPおよびクラウド版のCloud Volumes Service(CVS)が該当する。
そのほかに、コンピュート自動化&最適化のSpotサービス群や、モニタリング&分析の「Cloud Insights」などから構成される。
Astra:Kubernetes環境のスナップショットやバックアップ
さて、今回日本でも開始されるAstraは、Kubernetesアプリケーションと関連データの統合管理サービスだ。
同様のソフトウェア等と比較した特徴として、近藤氏は、フルマネージドサービスのSaaSとして提供すること、アプリケーションと関連データの丸ごとバックアップ/リストア/移動が可能なこと、Kubernetesの実行場所にかかわらず一貫したUXを持つことを挙げた。
Astraは、GKEクラスタ上でKubernetesアプリケーションをサポートする。その配下で、ネットアップのCVSが永続的ストレージプロバイダとして機能するようになっている。
ユーザーが管理対象としたいKubernetesクラスタを登録すると、Astraがクラスタ内のすべてのアプリケーションを自動認識する。そして、Tridentによりストレージとストレージクラスをプロビジョニングする。
Astraがユーザーに提供するデータ管理機能は、大きく分けて3つ。スナップショットによるアプリケーションと関連データ保護、アプリケーション・アウェア・バックアップによるDR、クローンによるアプリケーションの移行だ。
このうちスナップショットとバックアップの違いについて近藤氏は、スナップショットはアプリケーションのストレージと同じように取るのに対して、バックアップはクラウドのオブジェクトストレージに取るのだと説明した。そのため、スナップショットは比較的速いが別の場所で展開できないのに対し、バックアップは比較的遅いが別のリージョンにも展開可能だという。
Astraのユースケースとしては、DevOpsにおけるCI/CDワークフローの単純・高速化が紹介された。開発環境からステージング環境、本番環境にアプリケーションを移していくときに、スナップショットなどを使って効率化できるという。さらに、DRや、障害の再現、複数のテスト環境を簡単に作成して並行してテストする用途なども近藤氏は挙げた。
さらに今後、対応プラットフォームをGCP以外に増やしていくことで、異なったクラウドやオンプレミスとのマイグレーションもできるようになると近藤氏は語った。
Spot Ocean for AKSとSpot Waveも提供開始
そのほかのKubernetes関連プロダクトについても解説された。
Tridentは、KubernetesのCSI(Container Storage Interface)に対応した、Kubernetes環境でのデータ永続化のためのソフトウェア。オープンソースソフトウェアとしてGitHubなどで公開されている。「TridentをKubernetesにプラグインのように入れることで、NetAppのストレージできちんとデータを永続化させることができる」と近藤氏。また、3か月ごとのリリースサイクルにより、Kubernetesの最新版に定期的に対応しているという。
Cloud Insightsは、クラウドとオンプレミスの可視化サービスだ。対象はフルスタックで、マルチクラウドに対応し、一元的に可視化やモニタリングができる。Kubernetesでのストレージ管理については、どこに問題がありどこに影響があるかが把握しづらいという課題を近藤氏は挙げ、そこにモニターや分析、最適化、利用状況可視化を提供すると語った。
Spot(Spot by NetApp)は、クラウド利用のリソースとコストを最適化するサービス群だ。このうち「Ocean(Spot Ocean)」はKubernetesを対象とするものだ。このOceanにおいて、AWSとGCPに続いて、Azureに対応した「Spot Ocean for Azure Kubernetes Services(AKS)」を提供開始する。
またSpot Waveは、Kubernetes上のビッグデータ基盤Apache Sparkの利用を最適化するサービスだ。Oceanがベースになっており、Sparkのワークロードに特化している。Spot Waveにより、Sparkの構成を自動的にチューニングでき、性能の担保とコスト最適化を図れるという。