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ネットアップ、「NetApp Hybrid Multi-Cloud with VMware」などクラウド向けのさまざまな新製品・新機能を発表
2022年7月22日 11:29
ネットアップ合同会社は21日、VMwareがパブリッククラウド事業者各社と共同で提供している「VMware Cloud」に対し、データストアを提供する「NetApp Hybrid Multi-Cloud with VMware」を発表した。米国では6月に発表されたものの、日本での発表となる。
「VMware Cloud on AWS」(VMC)と「Amazon FSx for NetApp ONTAP」の組み合わせ(パブリックプレビュー段階)、「Azure VMware Solution」と「Azure NetApp Files」の組み合わせ(パブリックプレビュー段階)、「Google Cloud VMware Engine」と「Cloud Volume Services for Google Cloud」の組み合わせ(プライベートプレビュー段階)の、3種類の組み合わせによる外部データストアの提供を開始した。
また、同様にハイブリッド/マルチクラウド環境に向けた各種製品やサービスにおいて、運用の簡素化やセキュリティ強化のための新機能を拡充したと発表した。
こうした新製品や新機能を含むネットアップの2023年度(2022年5月~)クラウド事業について、7月21日に事業戦略発表会が開催された。
クラウド顧客が2.5倍に、大口顧客の68%がクラウド製品を導入
クラウド事業戦略については、ネットアップ合同会社 代表執行役員社長の中島シハブ・ドゥグラ氏が説明した。
中島は、企業のクラウド活用にともなう新しい課題として、データは統合されずにサイロ化して分散し、セキュリティにも問題が発生していると指摘。「データ管理ができなくなり、複雑な環境に逆戻りしている。新年度はこの新しい課題を解決する」と述べた。
そしてこうした課題を改善するためのキーワードとして「シンプル」「セキュア」「フレキシブル」の3つを挙げ、「これによりハイブリッドマルチクラウドに集中できるようにする」と語った。
「ネットアップのクラウドビジネスは、この数年、速いペースで成長している」として中島氏は、2021年5月から1年間の成長を示した。クラウド顧客数が2.5倍に伸びており、さらにクラウド製品で初めてNetAppを使う顧客が3.3倍と大きく増えているという。売上上位50社の大口顧客の68%がNetAppのクラウド製品を利用。ハイブリッドクラウドラボ利用件数が4倍に、クラウドコンサル技術支援数が2倍と、クラウド製品購入後の技術支援も増えている。「クラウド市場はまだ大きく成長していて、そのニーズに応える」と氏は語った。
日本でこうしたクラウドビジネスを強化する施策として、中島氏は3つのポイントを挙げた。
まず、「情報システム部門に加えて新しいバイヤーが増えている」(中島氏)とのことで、企業のCCoE(Cloud Center of Excellence)やDX推進組織、LoB(Line of Business)との連携を強化する。
またパートナーとの連携強化としては、新しいクラウドファーストパートナーの協業を増やすとともに、パートナー全体でクラウドビジネスを拡大できるよう支援を強化する。そして、主要クラウドベンダーやVMwareとの連携して新しいソリューションを提供していく。
さらに、コンサルティングを提供するクラウド向けプロフェッショナルサービスでは、ハイブリッドクラウドへの要望にフレキシブルに応えられるよう、サービスのメニューを追加する。
NetApp Hybrid Multi-Cloud with VMwareやランサムウェア対策など新製品や新機能
クラウド関連の新製品や新機能については、チーフテクノロジーエバンジェリストの神原豊彦氏が説明した。
神原氏は、顧客から寄せられる悩みとして、ベンダーやアーキテクチャが乱立する「複雑さ」、さらにそこから生まれる「セキュリティリスク」、そしてデータの「サイロ化」を挙げた。
「このようなお客さまの声を受けてNetApp製品を向上させることを決意した」と神原氏。以下、中島氏も語った「シンプル」「セキュア」「フレキシブル」の3つのキーワードを元に、今回の新製品や新機能から主なものを紹介した。
シンプル:Cloud Managerの一元管理強化、ライセンスの統一
「シンプル」ではまず、ハイブリッドマルチクラウドでのデータインフラ管理「Cloud Manager」で、一元管理を強化したことを神原氏は紹介した。ストレージやヘルスチェック、ライセンスに加え、保護、可視化、ガバナンス、階層化についてもUIを統合した。
その例として神原氏は、オンプレミスのデータをクラウドにバックアップするデモ動画で説明した。あらかじめポリシー設定しておけば、数画面でバックアップを実行できるという。
また、ライセンス体系もよりシンプルにした。NetAppストレージのサブスクリプションサービス「NetApp Keystone」をさらに拡張して、オンプレミスとクラウドのライセンスを一本化し、四半期ごとに利用状況に応じてライセンスを移動できるようにもした。
こうしたことはパートナーからも高く評価されていると神原氏は話し、パートナー企業からのビデオメッセージを紹介した。
クラスメソッド株式会社 AWS事業本部 本部長の菊池修治氏は、「Amazon FSx for NetApp ONTAPは、強力な機能と高いパフォーマンスをそなえたエンタープライズストレージを、シンプルな操作で導入できる魅力的なサービス」として、パートナーシップによって、より高い付加価値をともに展開していきたいと語った。
NHNテコラス株式会社 代表取締役社長の白倉章照氏は、自社事業について、データセンターを運営しつつメガクラウドとも連携してマルチプラットフォームのマネージドサービスを提供していると紹介。そのうえで、「ネットアップの豊富な製品やソリューションは、われわれのコンセプトと共通している」と語った。
セキュア:ランサムウェア対応機能などを強化
「セキュア」については、ランサムウェアなどに対抗するには脅威の検出と修復だけでなく、データ保護も融合した新しいセキュリティが必要だとして「サイバーレジリエンス」を掲げた。そして、これを実現するために、ONTAPや Cloud Managerなどの製品でいくつかのアップデートをしたと紹介した。
その新しい機能の代表が、Cloud Managerの「Ransomware Protection Dashboard」機能の搭載だ。システム全体を俯瞰(ふかん)的に把握でき、データのリスクを容易に把握できるという。
ランサムウェア対策機能については、ユーザー事例として、学校法人芝浦工業大学 情報システム部 情報システム課の佐藤剛氏のビデオメッセージが紹介された。
同大学では6年前にランサムウェア「Locky」感染でファイルサーバーが書き換えられ、ONTAPのスナップショットからリストアしたが、感染範囲が広範囲にわたって大変だったという。その経緯から、今回のランサムウェア対策機能を検証し、ファイルサーバーリプレースにあわせて導入したという。「ストレージベンダーが直接機能を実装している安心感が大きい」と佐藤氏は語った。
フレキシブル:NetApp Hybrid Multi-Cloud with VMware
3つ目の「フレキシブル」については、VMware Cloudに対してデータストアを提供する「NetApp Hybrid Multi-Cloud with VMware」を神原氏は紹介した。
VMware Cloudのデータストアとして、vSANに続く2番目の選択肢として、NetAppがクラウド事業者とともに提供しているクラウドデータストレージを利用可能にするものだ。VMware on Cloudのコストを25%~45%削減して、特にデータ容量の多い顧客が導入障壁を下げることができるという。また豊富な機能により、クラウド移行やDR、バックアップなどのメリットが得られると神原氏は説明した。
ここでヴイエムウェア株式会社 代表取締役社長の山中直氏のビデオメッセージも紹介された。山中氏は「NetAppとVMwareは長年協業してきた。これまでのオンプレミスでの連携から、両社のマルチクラウドソリューションでの連携に進化していく」と語った。
「クラウド主導のデータ中心ソフトウェアカンパニーになる」
NetAppは今年で創立30年となる。そのソリューションポートフォリオの道のりと今後について、常務執行役員 近藤正孝氏が語った。
「1992年に、WAFLというファイルシステムのアイデアからストレージOSのONTAPが誕生した」と近藤氏。ONTAPはそこから現在まで進化し、これまで約2500の特許を取得してきたという。
クラウド対応は2014年から。「クラウドへの進化を最初に理解したストレージベンダーといえるのではないか」と近藤氏は語る。ここで、ストレージをオンプレかクラウドかを問わない企業へと戦略を転換したという。
現在の製品やサービスのポートフォリオは、以前からのエンタープライズストレージ製品に加え、クラウドストレージや、クラウドオペレーションにまで広げている。
そのクラウドストレージとして、ONTAPは3大クラウド上で“as a Service”型で稼働している。これは、マーケットプレイスからサードパーティサービスとして導入するだけでなく、1st partyのサービスとして利用可能。AzureとAWSではネイティブサービスとしてマネジメントコンソールから直接利用でき、Google Cloudでもコンソールから簡単に操作できる。さらに、3社と密に共同開発しており、表彰も受けていると近藤氏は語った。
また近藤氏は「NetAppは単なるオンプレストレージ屋ではない」として、オンプレでもクラウドでも動くことが前提であると強調。そのうえでソリューションのポートフォリオを紹介した。
まず、統合管理としては、統合バックアップ、統合キャッシング、統合階層化、容量効率化に対応。ハイブリッドクラウドでのストレージ・アズ・ア・サービスも提供する。ITOpsとしては、IT運用での環境可視化と、API完備による運用自動化を提供。SecOpsとしては、マルチレイヤーでのゼロトラストデータセキュリティや、ランサムウェア対策に対応する。
CloudOps/FinOpsとしては、クラウド運用でのアプリインフラ最適化や、コスト最適化に対応。MLOps/DataOpsでは、AI分析運用でのDataOpsツールキットとして、データの容量を大幅に最適化でき、データを特化型のデータストレージでなくオブジェクトストレージに置いて解析するモダンデータレイクに対応する。そして、
最後にクラウドネイティブ向けとしては、Kubernetesのバックアップ/リストアに対応し、Kubernetesネイティブなソフトウェア・デファインド・ストレージも近々にリリース予定だという。
ここで近藤氏は、企業のクラウドシフトの段階として、オンプレミス、ハイブリッド、クラウドファースト、クラウドネイティブの4段階に分類した。このうち、オンプレミスとハイブリッドでは、開発やインフラ運用など組織がレイヤーごとに分かれているという。一方、クラウドファーストやクラウドネイティブでは、アプリケーションなどの単位で組織が分かれ、その中に各層が含まれる。
「このすべてのフェーズをNetAppは支援する」と近藤氏は語った。従来のステートフルアプリから、クラウドネイティブのステートレスアプリまで対応。仮想基盤やコンテナにも対応しているという。
今後については、まずNetAppはこの2年で10社近くの企業を買収して、CloudOpsプラットフォームをさらに進化させていると近藤氏は説明した。
この進化型のCloudOpsとしては、まず、クラウド上でのコスト最適化と、可視化・自動化・ストレージ管理最適化などのオペレーション最適化を提供する。さらに、その上のデータベースや、開発ワークフロー、データパイプラインなどの運用についても、効果的なマネージドサービスを提供しようとしていると近藤氏は語った。
最後に近藤氏は、あらためてこの30年の方向性について、「オンプレミスのストレージだけではなく、クラウド主導のデータ中心ソフトウェアカンパニーになる」ものだと説明した。