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エトリア、「複合機合弁企業として誕生初年度は合格」と中田克典社長

新規領域としてAuto-ID市場にも参入し、さらなる成長を目指す

 エトリア株式会社(ETRIA)は15日、発足から現在までを振り返る説明会を開催した。同社は2024年7月に、株式会社リコーと東芝テック株式会社の複合機事業の開発・生産を担う企業として誕生。その後、2025年10月に沖電気工業株式会社(以下、OKI)が参画することが発表されている。

 今回、代表取締役 社長執行役員の中田克典氏が、2社の合弁企業(OKI参画の前)としての1年間を振り返り、「2024年度を振り返ると、合格といえる成果を出すことができた。企業活動を行ったのは9カ月だったが、事業計画を達成することができた」と自らを評価した。

代表取締役 社長執行役員の中田克典氏

 その上で新たに、流通や製造業などの現場で利用されている、バーコードなどを活用するAuto-ID市場に新規参入。Auto-ID市場に新規参入。OKIを加えて、2028年度に売上5000億円、営業利益率5%という新たな目標を掲げた。

 中田社長は、「オフィスプリンティングだけではなく成熟した業界はほかにもあるが、安くした1社だけが残り、新たな開発をせず、ほかの国のメーカーに(市場を)持っていかれるということではなく、今まで培ってきた技術と蓄積したノウハウで、協力して新たな事業を作っていくモデルもあるのではないか」と述べ、現状にとどまらず成長していく姿勢を強調した。

2社の合弁事業としての実績と、OKIの参入による新たなシナジー

 エトリアは、リコーが85%、東芝テックが15%出資し、各社が持つ、国内・海外の複合機の開発・生産に関する事業を会社分割(吸収分割)して、2024年7月1日に誕生した。その後、2025年2月にOKIが3社目として参画することを発表。同年10月からは、リコーが80.74%、東芝テックが14.25%、OKIが5.01%の出資比率となる予定だ。

 2社による合弁企業は、2024年7月の設立から9カ月が経過したが、開発においては、従来の戦略継続による製品ラインアップ強化を行い、リコーでは計画通り2製品を市場に投入した。具体的には、中堅・中小企業のデジタル化に対応するために、PFUのスキャナーを取り込んだA3カラー複合機「RICOH IM C6010SD/C4510SD/C3010SD」、循環型社会の実現に貢献することを目指しモノ作りの転換などを行ったA3カラー再生複合機「RICOH IM C6000F CE/C4500F CE/C3000F CE/C2500F CE」の2製品だ。

開発・市場投入実績

 生産については、当初から工場の相互活用を行うことを標榜していたが、俗に言うトランプ関税の影響で、米国市場向けは米国外の工場での生産に関税リスクがあることを見越して、前倒しで工場の相互生産を実施している。

 購買については、両社の購買共通化によってスケールメリットを出し、同一部品の価格差の是正など、コストダウンにつながる取り組みを進めている。

 さらに、シナジーを最大限に活用した新たな共通エンジン開発を進めている。第一段階としては、既存資産を有効活用する、東芝テックのエンジンを活用したリコーブランド向けMFPの開発と提供を実現。第二段階として、両社の強みであるモジュールを組み合わせた製品開発を行っていると説明した。さらに第三段階として、ゼロベースの新規エンジンを開発しているが、これを加速し、新規エンジンを搭載した製品をいち早く投入するために、第二段階の取り組みの見直しも実施していく。

 10月からはOKIが加わるが、以前から同社とリコーは提携しており、A3カラープリンターのOEM供給を行っていた。2019年からはA3モノクロプリンターにおいて、従来よりも一歩踏み込んだ共同開発を実施してきた。

 今回、エトリアにOKIが加わることで、特徴のあるLED技術を最大限活用する計画だ。また、OKIはカラーラベルプリンターを保有しており、新規事業とすることを目指すAuto-ID領域でもシナジー創出を目指す。これまでの共同開発の経験とOKIとの連携経験を背景に、統合後は垂直立ち上げができるよう準備を進めている。統合後は、より踏み込んだ開発を行うことも計画している。

OKIとの統合、シナジー創出に向けて

新規領域としてAuto-ID市場に取り組む

 こうした複合機の取り組みと共に、新たにAuto-ID市場に取り組む。Auto-IDとは、バーコードやICタグなどに情報を埋め込み、自動的に識別・管理する技術やシステムの総称である。電子商取引・物流・製造業におけるデジタル化と自動化の進展により、2兆円の市場規模がさらに拡大することが見込まれている。エトリアが持つプリンティング技術と親和性の高い、バーコードプリンターを起点にAuto-ID事業の拡大を目指していく。

新規領域:Auto-ID市場

 「現状ではラベルプリンターがメインになるが、実は、関わるものはほかにも多数ある。どこまでカバーしていくか、検討していかなければならない部分もある。まずは東芝テックが提供しているバーコードプリンターの商品強化などからスタートすることになると思うが、サーマルペーパー、熱転写リボン、RFIDリーダー、さらにOKIが入ることでカラーラベルプリンターなど、いろいろできるところがある。RFIDについても、現状は値段が高いという声もあり、これをプリンティングで作成することができないかといった、新しい取り組みも行っていきたい」(中田社長)。

Auto-ID事業の成長戦略

 なお、今後のエトリアの目指す姿として、「ペーパーレスなど市場環境が厳しいプリンティング業界において、変化する顧客ニーズに応えた優れた製品を開発するメーカーとなる」を掲げている。複数の企業が持っていた技術を掛け合わせることで、新しい事業領域への挑戦も積極的に行っていく。

ETRIAが目指す姿とこれまでの成果

 その上で2028年度に売上5000億円、営業利益率5%という目標を掲げている。「営業利益率5%という目標は、昨年度掲げたものと同じ数値で大きく変わっていない。その一方で、会社を成功させるためにやらなければいけないこと、例えば工場の再編、人事の入れ替え、さらに次の製品開発スタートといった課題があるが、営業利益率5%実現のためにこれらの課題を入れ替えることはしない。こう手を打ったら本来伸びていくねというところからスタートしているので、今後もきちんと伸びていくようにしていかなければならない。コストダウンが厳しいところはあるが、それでマイナス投資を増やすことは考えていない。開発投資は単独よりも効率化が可能であり、金額も大きく増えている」と、中田社長は引き続き成長を続けながら利益を確保していくことを強調した。