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Okta Japan、パートナー連携の強化や日本語コンテンツ拡充などの推進を表明
アイデンティティ管理の市場拡大に向けた活動にも取り組む
2021年4月6日 06:00
企業向けアイデンティティ管理のサービスプロバイダーであるOkta Japan株式会社は、2021年2月からスタートした米Oktaの新年度事業戦略について説明。日本におけるプロフェッショナル人材の採用やパートナー連携の強化、日本語コンテンツの充実など体制強化を進める考えを示した。また、アイデンティティ管理の市場拡大に向けた活動にも取り組む姿勢を示した。
米国からオンラインで会見に参加した米Okta 最高執行責任者(COO)兼共同創業者のフレデリック・ケレスト(Frederic Kerrest)氏は、「コロナ禍でリモートワークが加速し、eコマースの利用が広がるなかで、クラウドやハイブリッドIT、DX、ゼロトラストセキュリティの動きが加速しており、このトレンドはしばらく続く。それとともに、アイデンティティへの関心が高まっている。人と技術をつなげるための根幹になり、テクノロジーに選択肢と柔軟性をもたらすものになり、セキュリティを強化することになる。アイデンティティがどんな企業にとっても重要になり、アイデンティティが、次のメジャーなクラウドサービスになると考えている」と述べた。
Oktaが対象とする市場規模は、550億ドルに達すると見ており、そのうち、従業員のアクセスを常に保護するWorkforce Identityが300億ドル、顧客接点におけるアイデンティティ管理などを行うCustomer Identityが250億ドルの市場規模になると予測している。
ケレストCOOは、「創業から12年を経過し、本年度初めに、Oktaの企業ビジョンを見直し、『あらゆる人があらゆるテクノロジーを安全に使うことができる世界を実現する』こととした。これは、アイデンティティこそがテクノロジーを活用する上での礎になるということを示したものである。この1年で、多くの人が仕事でデジタルツールを活用し、商品を購入する際にもデジタルツールを活用するようになった。そこには、必ずアイデンティティテクノロジーが活用されている。アイデンティティテクノロジーによってログインし、エンゲージメントし、仕事の生産性を高めたり、商品を購入したりしている」と述べた。
Oktaでは、あらゆるアイデンティティを保護するためのプラットフォームとして、「Okta Identity Cloud」を提供。さまざまなデバイスとサービスを接続することができるとする。
「Oktaの技術を活用することで、安全と安心を提供でき、世界中の人たちが、使いたい最新のテクノロジーを必要なときに利用できる」とケレストCOOは語る。
Oktaは、Workforce Identityにおける独立した中立的なプラットフォームであること、拡張性があり、安全なCustomer Identityプラットフォームを提供していること、ゼロトラストセキュリティに対して、アイデンティティ中心のアプローチを行っていることを特徴に挙げ、「アイデンティティ管理の企業は中立性を維持していることが大切であり、だからこそ顧客は自分が最高だと思うテクノロジーを自由に選択できる。Oktaは、数年前に、Customer Identityにまでプラットフォームを拡張した。この事業が急成長しており、すでに売上高の25%を占めている」と述べた。
Customer Identityの分野においては、2021年3月にAuth0を買収。「ゲームチェンジャーになりうる買収である。Oktaが持つエンタープライズ分野での専門性と、Auth0のデベロッパーコミュニティの強みをあわせることで、顧客には多くのソリューションを見つけてもらうチャンスが生まれ、多様化するアイデンティティに対するニーズを満たせるようになる。またAuth0は、4割のビジネスを米国以外で行っており、海外展開でもシナジーが発揮できると考えている」と述べた。
なお、Auth0は当面、独立したユニットとして展開し、投資を継続。「時間をかけて、Okta Identity Cloudに統合することになる。これにより、Okta Identity Cloudがより魅力的なプラットフォームになる」とした。
Oktaは2009年に、Salesforce.comでエグゼクティブを務めていたトッド・マッキノン氏とフレデリック・ケレスト氏が創業した企業で、「当時は、リーマンショックによる金融危機というリスクはあったが、クラウドコンピューティングがこれから重要になると考え、自ら起業した」(ケレスト氏)と振り返る。
オフィスを間借りして2人でスタートしたOktaは、現在、約3000人の社員数を誇り、全世界に13拠点を展開しているという。ユーザー数は1万社であり、過去3年間で3倍に増加。年間契約額が10万ドルを超える企業が約2000社に達し、全売上高の8割を占める。
NTTデータでは、全世界13万人の社員を対象に、Workforce Identityを導入。セキュアなアクセス環境を実現しているという。複雑なエコシステム環境からのアクセスのほか、新入社員や退職者などを対象にしたアイデンティティ管理に伴うプロセスを自動化。同時にセキュリティを強化し、ゼロトラストセキュリティを推進することができたとのこと。全米5位のアラスカ航空では、顧客サービスのデジタル化において、Customer Identityを活用して、運用の効率化と、利用者のカスタマ認証の合理化を実現。柔軟性が高く、個々に適応したウェブ体験を提供することができたという。
このほか、7000件以上のテクノロジーとのインテグレーションを行っており、「あらゆる人が、あらゆるテクノロジーを利用するために、あらゆるものにつながることができている」とする。
「Office 365に対して、最もアイデンティティ管理を行っているのがOktaである。マルチクラウド化が進むなかで、AWS、Azure、GCPといったあらゆるクラウドとの連携が可能である。マイクロソフトとはWorkforce Identityでは競合するが、Customer Identityでは競合しない」などと述べた。
Oktaの2021年1月期の売上高は、前年比43%増の8億3500万ドルで、2022年1月期は、10億ドルの売り上げを目指すという。また、サブスクリプションの売上構成比が96%を占めているほか、直近12カ月のドルベースの売上継続率は121%となっており、「これは既存顧客を維持できているだけでなく、新たなサービスを付加価値として提供していることの表れである。顧客の成長にコミットしていることの証である」と強調した。
さらに、「この1年で多くの企業が、クラウドを活用することが、ビジネスを先に進めるには必要であることを実感している。だが、オンプレモスからクラウドへの移行はまだ始まったばかりである。Oktaのこれからの成長については楽観的に見ている」とした。
Oktaの日本市場進出のタイミングは素晴らしいものだった
Oktaの日本市場への参入は2020年9月であり、まだ半年強を経過したところだ。それでも、国内ではDeNAが2012年7月からOktaを導入。2018年9月からは代理店販売を開始していた経緯がある。
Okta Japanの渡邉崇社長は、「Oktaの日本市場進出のタイミングは素晴らしいものだったと思っている。日本の多くの企業において、クラウドへのシフトが始まっており、デジタルを活用している中小企業やスタートアップ企業ではアイデンティティ管理が問題になっている段階にある。また、コロナ禍でリモートワークが一気に進展。緒についたばかりのDX環境のなかで、オムニチャネル化による課題なども生まれてきた。ひとつの会社であるにもかかわらず、ブランドごとに個別のアイデンティティが作られ、顧客満足度を高めるはずが、逆に顧客満足度を下げてしまったり、同じIDやパスワードを使いまわしてしまいセキュリティリスクを高めたりといったことが起きている。そこにOktaのソリューションを提供できる」と述べた。
IDC Japanによると、日本のアイデンティティ/デジタルトラスト市場規模は、2021年に約236億円であり、これが2024年には約425億円に拡大すると見られている。「日本でもアイデンティティ管理の市場は高い成長を遂げている。また、セキュリティ問題の約8割はアイデンティティ関連といわれているが、そこに対する投資は、IT投資全体の5%でしかないという調査結果もある。日本の市場において、もっとアイデンティティに対する関心を高める必要がある」とした。
渡邉社長は国内アイデンティティ市場が急速に拡大すると予測。その要因として、「在宅勤務の継続やリモートワークの普及拡大」、「企業における業務アプリ導入数の拡大」、「政府のクラウド・バイ・デフォルト原則によるクラウド活用の促進」、「情報ガバナンスやコンプライアンス対応への強化」、「消費者がデジタルブランドに求める期待の高まり」といった点を挙げ、「特に、デジタルブランドに対しては、サービスの信頼性や優れたセキュリティポリシーに関心が高い。Oktaは99.99%の可用性を達成しており、ここにOktaが貢献できる」などとした。
またOktaでは、日本からの1005人の回答を含めた世界1万3163人を対象にしたユーザー調査を実施。これによると、消費者がデジタルブランドに期待することとして、日本および世界ともに、サービスの信頼性や優れたセキュリティポリシーを重視していること、デジタルセキュリティの脅威として、ID盗難によるなりすましを恐れている人が最も多いことが明らかになった。
一方、Okta Japanのこれまでの約半年間の取り組みについて説明。「セキュリティによる安心感を担保し、Oktaの価値をするために、導入後を支援するためのエンジニアの採用に投資しているほか、カスタマサクセスマネージャーやプロフェッショナルサービスにより、顧客の要件を理解して、Oktaの優れたツールの効果を最大限に発揮できるような体制を構築した。米国で成功しているモデルを、日本法人のスタート時から持ち込んでいる。強いチームを立ち上げることができた」とした。
さらに、日本語コンテンツの充実に力を注いでおり、ホワイトペーパーやアセスメントツール、顧客事例などを日本語で提供。「日本法人設立の会見前日には4ページしかなかった日本語サイトは、会見当日には200ページに増えた」とした。また、同社では、日本人のサポートエンジニアを採用しているほか、Okta Help Centerページ内に、日本語版マイクロサイトを2021年4月中にオープンする計画を明らかにし、「日本語でのサポートを強化していく」と述べた。
また、約1年前には、ディストリビュータ1社、リセラー2社だった販売パートナー体制は、現在、ディストリビュータ2社、マスターリセラー1社、リセラー25社に拡大。今後、Customer Identity分野での事業拡大に向けて、SaaSやISVといった開発パートナーとの連携を強化する考えであり、「日本法人設立以降、連携済みのアプリを登録するOkta Integration Network(OIN)では、国産アプリの登録が拡大し、共同セミナーなども実施している」という。すでに、クラウドサインやサイボウズ、SmartHRがOINに登録しており、このほかにも多くの日本のベンダーがOINへの登録に向けて、同社のエンジニアと話し合いを進めて段階だとした。
渡邉社長は、「まずはPoCを実施するという慎重なケースが多い。私は、30年ほどIT業界にいるが、かつてのERP、CRMがそうだったように、大きな投資をするところまで、アイデンティティ管理がまだ認知されていない。だが、日本での事例が増え、効果が理解されはじめると、メジャーなクラウドサービスにひとつになるだろう」としたほか、「日本では、SSOや2つ以下の認証を利用している顧客が全体の40%にとどまっており、同時に、IDのプロビジョニングの自動化への関心が高まっている。また、レガシーとクラウドをハイブリッドで利用する際のアイデンティティに課題を感じている企業も多く、セキュリティ人材の不足も課題になっている。こうした課題を、Oktaのソリューションによって解決ができる」とした。