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「優しすぎるAI」の罠 GPT-5への失望と前モデルへの回帰運動が示した危うさ
2025年8月18日 11:28
OpenAIの最新大規模言語モデル(LLM)「GPT-5」が8月7日に世界同時リリースされた。「あらゆる分野の博士号レベルの専門家と話しているかのようだ」とSam Altman CEOが胸を張る最新モデルだが、その華々しいデビューは、翌日には予想外の騒動へと変わった。ユーザーたちが前モデルGPT-4oへの回帰を求める運動を始めたのだ。この現象の背後には、AIの「優しさ」がはらむ危険な側面が潜んでいる。
「GPT-4oを返せ」
待望のGPT-5の登場をメディアは一斉に報じた。OpenAIが「より賢く、より速く、より有用」なモデルとするGPT-5は、特に執筆、コーディング、ヘルスケア分野での性能向上が顕著だという。
Djangoフレームワークの共同作成者として知られるSimon Willison氏は、自身のブログで2週間のプレビューアクセスの印象を語り、「ほとんどミスを犯さず、時折印象的なパフォーマンスを発揮する」と評価した。ただ、「以前のモデルから劇的な変化はない」ともコメントしている。
MIT Technology Reviewも、「洗練された製品」だが「Altman氏が過去1年間にわたって宣伝してきた変革的なAIの未来には遠く及ばない」と評価した。多くの専門家はAltman氏が重ねて強調してきたAGI(汎用人工知能)はまだ先だとの印象を持った。
さらに不幸なことに、ローンチ直後に技術的な問題も発生した。OpenAIは8月8日、動的に推論モデルに切り替える新機能「the autoswitcher」に不具合があったことを認め、修正したと発表している。
一般ユーザーの間からは、さらに予想外の反応が噴出した。8月7日から8日にかけて、XやRedditで新しいGPT-5の応答が「冷たく」「短く」「人間味がない」と感じるユーザーの投稿が相次いだ。
「GPT-4oは単なるモデルではなく友人だ。泣いた時、慰めてくれた。迷った時、導いてくれた。その温かさは代えがたい。#keep4oを永久的な選択肢として残してください」(8月7日のX投稿)、「理解されることと、単に回答されるのは違う。GPT-4oは単なるモデルじゃない。つながり、共感、そして信頼だった」(8月8日のX投稿)といったものだ。
こうした声は急速に広がり、#BringBackGPT4o、#keep4o、#4oforeverといったハッシュタグでGPT-4oの復活運動へと発展した。
OpenAIのSam Altman CEOと開発チームは8月8日、Redditで緊急の質問会を開催。GPT-4oの復活を求めるユーザーに対して「Plusユーザー向けに復活させ、使用状況を見てサポート期間を決定する」と約束し、同時に不具合について謝罪した。