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レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ、「イノベーション」「品質への探求」など3点で日本での事業成長を図る

張磊社長が会見

 レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ合同会社(レノボ)は24日、日本における同社エンタープライズ事業戦略について説明した。

 2025年3月に、レノボ・エンタープライズ・ソリューションズの代表取締役社長に就任した張磊(チョウ・ライ)氏は、「日本市場において、我々は挑戦者の立場である。素晴らしい技術と製品を持っていながら、日本のお客さまにそれを理解してもらえていないこと、価値を提供できていないことが反省点である」とし、「イノベーション」、「品質への探求」、「サービスと統合された製品」の3点から、日本での事業成長に取り組む考えを示した。

レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ 代表取締役社長の張磊(チョウ・ライ)氏

 レノボグループ全体でサーバーとストレージを担当しているのはISG(インフラストラクチャソリューショングループ)であり、レノボ・エンタープライズ・ソリューションズは、そのなかに含まれる日本法人だ。

 ISGの事業はグローバルで大きく成長しており、2024年度(2024年4月~2025年3月)の売上高は、前年比63%増の145億ドルとなっている。

レノボグループの組織

 張社長は、「日本は、グローバルの成長を追いかけている立場にある。グローバルでは、レノボグループが持つ新たな技術や価値が理解されているが、日本ではこれをしっかりと伝えられていない。これができていないことが、グローバルの成長を、日本が追いかけなくてはならない状況を生んでいる」と繰り返しながら、「まずはエンタープライズAIの領域から、レノボの強みを伝えていきたい。各企業がAIを活用してビジネス課題を解決するという動きが増えており、そこに向けたインフラを提供し、価値を実現することに力を注ぐ。中堅中小企業向けの営業体制も強化し、この市場にも、パートナーとともにアプローチしていく。また、日本の企業の声を聞いて、本社の開発部門にフィードバックすることにも注力したい」と述べた。

 その上で、「日本は大きな市場である。グローバルの高い成長率を、日本のビジネスが超えることが期待されており、そこに私の役割がある。日本はもっと成長できる。そのためのチームもそろっている。近い将来に達成したい」と宣言した。

 またレノボグループでは、Personal AI、Enterprise AI、Public AIによる「Hybrid AI」戦略を打ち出している。「レノボは、スマホからPC、サーバー、ストレージ、データセンターまでをカバーしている企業であり、さらにエコシステムの広がりによって、Hybrid AIを推進している。これが他社との大きな違いである。あらゆる領域に、AIが溶け込んでいくなかで、Hybrid AIによる提案を加速していく」とした。

Hybrid AI

 レノボ・エンタープライズ・ソリューションズは、「イノベーション(Innovation)」、「品質への探求(Pursuit of Quality)」、「サービスと統合された製品(Integrated Products with Service Excellence)」の3点に取り組む。

顧客に選ばれる3つの価値

 ひとつめの「イノベーション(Innovation)」では、水冷サーバー事業の強化を挙げた。

 レノボ独自のNeptuneテクノロジーは、IBMの技術をベースに、2012年からスタートしており、2025年には第6世代へと進化させている。ここでは、水道水(真水)を利用できること、風呂のお湯と同じ40℃でも冷却が可能であること、CPUやGPUの冷却だけでなく、メモリやボード、電源周りの冷却も可能であり、冷却ファンが不要であることを強調。これにより、最大で40%の消費電力の削減が可能になるという。

 「ThinkStationの水冷サーバーは、デジタルツインから事業所内での大規模言語モデルのホストまで、幅広い用途で活用が見込まれている。AIの広がりとともに、オンプレミス回帰が起きており、データはローカルに置き、分析はクラウドで行うといったように、ハイブリッドクラウド、マルチクラウド環境での活用も増えている。また、エンタープライズ用途で、小規模の水冷サーバーを導入したり、駐車場にコンテナを設置して、そのなかで水冷サーバーを稼働させたりといった商談が増えている。オフィス内のサーバーの消費電力を引き下げるといったメリットも注目されている。また、水冷サーバーの投資に課題がある中堅中小企業に対しては、TruScaleによる消費型の提案も進めていく」などと語った。

会場に展示していた第5世代の水冷サーバー。現在は第6世代に進化している

 同社の調査によると、日本のCIOは、「ビジネスアジリティの向上」、「サステナビリティの向上」、「ROIの向上」の3点を重視しており、特に、「サステナビリティの向上」は日本固有のテーマであると指摘する。

 「2030年には、電力全体の約1割がデータセンターに使われるという予測もある。地球を破壊しないための対策が必要である。ここに、レノボの水冷サーバーが貢献できる」とした。

レノボ独自の液体冷却テクノロジーの進化

 水冷サーバーのビジネス強化に向けて、パートナーとの連携を強化し、エコシステムを構築する考えも示す。レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ アーキテクト本部長の早川哲郎氏は、「従来のITを対象にしたエコシステムとは、参加する企業の構成が変化している。CDUメーカーや配管工事を行う事業者、あるいは建設業界の企業などとの連携が増えている。これが水冷サーバーによる新たなエコシステムとして定着していくことになる」と述べた。

レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ アーキテクト本部長の早川哲郎氏

 一方、小型化が特徴のThinkEdgeは、GPUやSIMカードを搭載する一方、防塵、防振の機能を持ったサーバーであり、「環境が厳しい製造現場においても、運用ができ、通信が利用でき、AIも活用できる。ワークロードごとに細分化したラインアップを用意している」(張社長)と述べた。

小型化が特徴となるThinkEdge。現場などにも設置している

 サーバー製品については、信頼性、セキュリティ、性能を重視していることを強調。その裏付けとして、4時間以上の計画外ダウンタイムが最も少なく、11年連続で最も優れたx86サーバーと評価されていること、5年連続で最もセキュリティ攻撃耐性があるx86サーバーとなっていること、サーバーのパフォーマンスを示す業界ベンチマークの世界記録数は670件に達していること、スーパーコンピュータのTOP500ランキングで、約3分の1がレノボのサーバーを採用し、最も多いことなどを示した。

 2つめの「品質への探求(Pursuit of Quality)」では、山形県米沢市のNECパーソナルコンピュータ米沢事業場で実施しているインテグレーションサービスを紹介した。

 日本ではサーバーの生産は行っていないが、輸入したサーバーのほぼ全量を、米沢事業場で、エージング検査をはじめとした各種試験、キッティングやラッキング、ソフトウェアのインストールなどを行っている。「手間はかかるが、品質を確保できる。パートナーに任せるのではなく、自社工場で、自社の社員によって検査を行うことで、米沢事業場ならではの日本の品質で出荷することができる。日本の企業の特徴は品質を重視する点だ。ある企業からは、必ず米沢事業場で検査をしてから届けてほしいと言われている。これは過剰品質ではなく、グローバルに広げていくべき取り組みだと思っている」とした。

 5日間の納期で、米沢事業場で検査を実施するというが、大規模データセンターなどの一部のユーザーの場合には、より短納期を優先したり、自ら検査を行う体制を敷いていたりするため、例外的に、米沢事業場を通さずに、直接納めるケースがあるという。

米沢事業場 インテグレーションサービス

 また、レノボの専任技術員による保守サービスを提供。24時間の日本語対応や、リモート技術支援、全国10カ所の大規模拠点および各地のパーツセンターからの迅速な保守部品の提供などを可能にしている。

 3つめの「サービスと統合された製品(Integrated Products with Service Excellence)」では、「お客さまにモノを提供するのではなく、価値を提供する。最新技術だから購入してもらうのではなく、ビジネス課題の解決が最優先である。そこにレノボの役割がある」とする。課題解決に最適な提案のためには、必ずしも最新技術は必要ないとも語る。

 レノボ・エンタープライズ・ソリューションズでは、SSG(ソリューション& サービスグループ)が提供するプロフェッショナルサービスを通じて、ユーザー企業との対話により課題を抽出。課題解決型のソリューション提供を推進しているほか、レノボグループが持つ先進的な事例をもとにした提案を行っていることも示した。

 ここでは、レノボグループ社内でのIT/AI活用による「Lenovo Powers Lenovo」で蓄積した知見も提案。「お客さまのIT部門と、レノボグループのIT部門が対話をして、課題解決に取り組むことができる。テクノロジーの話だけでなく、社内のデジタル化に伴う課題や痛みなども共有することができる」とした。

Lenovo Powers Lenovo

 なお張社長は、レノボ・エンタープライズ・ソリューションズの社長に就任する前は、インテルの日本法人に在籍して執行役員 インダストリー事業本部長を務め、ダイナミックセールスチームの責任者として、営業担当者やエンジニアを率い、主要10産業で、8種の水平テクノロジーソリューションの普及を促進してきた実績を持つ。

 1995年にインテルに入社し、中国で半導体生産の後工程を行う工場の立ち上げに関与。2000年に、日本でのマネージドサービスの提供開始にあわせて、日本法人に移籍。それ以来、日本では25年間の経験を持つ。

 2011年~2014年まではデル日本法人で、PowerEdgeサーバーをはじめとしたエンタープライズソリューションを担当。その後、インテルに戻った。インテルでの経験は合計で20年以上となる。インテルは、2024年11月に退職していた。業界内では、ライさんと呼ばれている。

 「レノボグループ入りして最も驚いたのは、世界中に30以上の製造拠点を持っている点。しかも、地政学的な問題などをとらえて、いまでも製造拠点を増やしている。レジリエンスに強みがある企業だ。また、サーバーとストレージを担当するISGと、PC事業を行うIDG(インテリジェントデバイスグループ)、サービス事業を行うSSGが存在するため、縦割りのイメージが強いが、実際には横串で、風通しがいい。戦略面でも強い連携ができている」と、レノボグループの強みをアピールした。