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キヤノンMJが2025年度上期連結業績を発表、すべてのセグメントで増収を達成
営業利益も増加、ただし最終利益は前年同期の特別利益計上の影響で減益に
2025年7月28日 06:15
キヤノンマーケティングジャパン株式会社(以下、キヤノンMJ)は23日、2025年度上期(2025年1月~6月)連結業績を発表した。
売上高は前年同期比4.7%増の3338億円、営業利益は同5.0%増の273億円、経常利益は同3.9%増の280億円、当期純利益は同6.4%減の188億円となった。
キヤノンMJ 取締役 常務執行役員の蛭川初巳氏は、「第2四半期(2025年4月~6月)は営業利益、経常利益で過去最高を更新した。保守・運用サービス/アウトソーシングと、ITプロダクト・システム販売が順調に推移しており、ITソリューション全体の売上高も伸長している。すべてのセグメントで増収になっている。ほぼ計画通りに進んでいる」と総括した。
コンスーマやエンタープライズ、エリアの各セグメントにおいて、ITプロダクト・システム販売の売上構成比が高まったことで粗利率が悪化。販管費では、のれん等償却費の増加に加えて、商談活動の活発化に伴うSE費用や物流費などが増加したという。
最終減益については、前年同期に連結子会社だったエーアンドエーの株式譲渡に伴う特別利益を計上した反動による影響がある。
グループITソリューションの売上高は、前年同期比12%増の1734億円となった。そのうち、SIサービスの売上高が前年同期比1%増の526億円、保守・運用サービス/アウトソーシングの売上高が同17%増の428億円、ITプロダクト・システム販売の売上高が同18%増の780億円となった。
また、グループITソリューションのセグメント別の売上高は、エンタープライズは前年同期比14%増の1048億円、エリアが同9%増の411億円、コンスーマが同15%増の201億円、プロフェッショナルが同23%増の123億円となった。
通期のセグメント別業績では、「エンタープライズ」の売上高が前年同期比9.6%増の1335億円、セグメント利益が4.0%増の97億円。ITソリューションでは、製造業向けSI案件が順調に推移したほか、文教や金融業向けPCの大型案件を獲得。映像ソリューションやドキュメントソリューションでの実績があがっているという。
また、プリマジェストの連結子会社化もプラスに影響し、売上高は大幅に増加している。主要キヤノン製品については、オフィスにおけるペーパーレス化の影響が続き、市場は縮小しているものの、オフィスMFPでは複数の大型案件があり、台数は微増になったとした。
同セグメントに含まれるキヤノンITソリューションズは、売上高は前年同期比6%増の729億円、営業利益は同2%増の73億円となっている。アプリケーション保守やクラウドサービスの増加などにより粗利率が好転した。
第2四半期の受注高は前年同期比2%減、受注残高は同13%減。受注高は、流通業向けSI案件が順調に推移したものの、前年同期に金融業向けSI案件や文教向けPCの大型案件があった反動で減少。受注残高は、文教市場向けのGIGAスクール案件があったが、大型データセンター案件の売上への切り替えなどが影響して減少した。データセンター以外の受注残高は前年同期比8%増になっているという。
なお、2025年7月1日付で、キヤノンITソリューションズとTCSの合併が完了したことを報告。「TCSは、2023年10月にキヤノンMJグループの一員となって以降、キヤノンITソリューションズの技術者との相互活用によるシステム設計、構築支援を進めてきたほか、TCSの顧客に対して、キヤノンMJグループのソリューションを提案してきた。すでに、2025年度上期実績は、売上高は過去最高水準、営業利益は過去最高となった。キヤノンITソリューションズに加わることで、シナジーの発現に取り組み、事業成長を加速する」と述べた。
「エリア」の売上高は、前年同期比2.2%増の1194億円、セグメント利益が16.4%増の113億円。オフィスMFPの使用期間が長期化している顧客に対して、入れ替え促進策を展開。また、オフィスでのプリント内製化に最適なimageFORCEの販売が好調に推移したという。ITソリューションでは、Windows 10の延長サポート終了に伴うビジネスPCの入れ替えが進んだことに加えて、同時に提案しているウイルス対策ソフト「ESET」やIT支援クラウドサービス「HOME」などのほか、中小企業のIT環境をトータルで支援する「まかせてIT DXシリーズ」の契約件数の増加により、売上高が増加した。
なお、連結子会社のキヤノンシステムアンドサポート(キヤノンS&S)の売上高は前年同期比4%増の568億円、営業利益は38%増の48億円となった。「まかせてIT DXシリーズ」やセキュリティを中心としたストック型ビジネスが順調に推移していることに加えて、PC販売に合わせてIT機器の導入・設置サポートなどが増加していることで営業利益率が向上しているという。また、SFAの活用によって営業活動を効率化しており、高付加価値な提案活動を増加。顧客1社あたりの購入金額が増加しているという。
「大手企業や中堅企業向けのビジネスではPCに付加価値を付けることは難しいが、エリアセグメントでは中小企業向けに付加価値を提供できており、ストック型で契約件数が積み上がっている。契約比率は計画以上に高まっている。今後も、付加価値提案の活動を強化していく」と述べた。
「コンスーマ」は、売上高が前年同期比2.5%増の657億円、セグメント利益が同5.1%減の49億円。レンズ交換式デジタルカメラでは、前年に発売した「EOS R5 MarkⅡ」と、「EOS R1」などの高単価な製品が堅調に推移したが、前年同期には円安による旺盛なインバウンド需要があったことの反動や、販売終了機種の影響でエントリークラスの販売が減少したことがマイナス要因となっている。
ITプロダクトは、Windows 10のサポート終了に伴う高性能PCの販売増加や、ポータブルSSDやモバイルバッテリーなどのPC周辺機器の販売が好調に推移して、売上高が大幅に増加した。だが、インクジェットプリンターは、市場が縮小。インクジェットカートリッジもプリントボリュームの減少により、売上高は減少した。
「プロフェッショナル」の売上高は前年同期比4.7%増の260億円、セグメント利益は9.8%増の28億円となった。高速連帳プリンター案件の減少があったものの、半導体製造関連装置や計測装置の販売が増加。病院向けの大型案件の獲得などがあった。
通期の業績見通しを上方修正
一方、2025年度(2025年1月~12月)の業績見通しを上方修正し、営業利益が10億円増の前年比7.3%増の560億円、経常利益も10億円増とし、同6.6%増の580億円とした。売上高は据え置き、前年比4.0%増の6800億円、当期純利益も据え置き、同0.5%増の395億円を見込む。5年連続での増収増益の計画には変更がない。
「第3四半期以降も、企業の積極的なIT投資を中心とした設備投資が増加するなど、国内の景気は緩やかな回復が続くことが見込まれている。エリアセグメントで収益性の高いITソリューション事業が好調に推移しており、営業利益を上方修正し、5期連続の最高益の更新を目指す」と、業績拡大に手応えを示した。
セグメント別では、エリアにおいて、営業利益を10億円上方修正している。
また、PCの需要に関しては、「下期も需要が継続すると考えているが、2026年には、その反動がある。キヤノンS&Sでは、セキュリティやIT環境全体を提供する活動に注力しており、それが軌道に乗れば、下期にPCが売れなくなった場合にも、利益面での減少を抑えられる」と見ている。PC特需への反動に向けた準備を進めていることを強調した。
さらに、オフィスMFPについては、「国内シェアは3位であり、メーカーであるキヤノンと協力しながら1位になるための計画を着々と進めている」とも述べた。
ネットワークカメラの好調ぶりも強調。第2四半期に複数の大型案件を獲得し、販売金額は前年同期比53%増と大きく伸長。中小企業向けのクラウド録画サービス「VisualStage」シリーズのほか、ビデオ管理ソフトウェア「XProtect」や、クラウド遠隔管理サービス、超高感度カメラによる監視などが、製造業や流通業向けに好調だったという。
「ネットワークカメラ市場は、映像解析による省人化や異常行動の検知など、映像利活用のニーズが高まっている。今後も市場成長が見込まれており、年間では前年同期比28%増を見込んでいる」とした。
トランプ関税の影響は、「日本国内を主要マーケットとして事業活動を行っているため、商品などの輸出入による直接的な影響はそれほど大きくはないが、企業の設備投資に及ぼす影響などについては注視していく」と述べた。