ニュース
日本IBM、メインフレーム最新版「IBM z15」と「IBM LinuxONE III」を発表
ハイブリッドクラウド全体にデータプライバシーポリシーを適用可能
2019年9月17日 06:00
日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)は13日、メインフレームのIBM Zシリーズ最新版となる「IBM z15」と、Linux OS版の「IBM LinuxONE III」を発表した。ハイブリッドクラウド全体にデータプライバシーポリシーを適用できる機能を備えていることが特徴。9月24日より出荷を開始する。
同製品は、4年間にわたって開発を進め誕生した。その間、100社以上の企業とディスカッションを重ね、「デザインシンキングによって顧客の課題をどのような技術でどう解決すればいいのかを考えた」と、日本IBM 常務執行役員 システムズ事業本部長の朝海孝氏は語る。その中で、4年間で3000件以上の特許を取得・出願し、チップの基礎技術には3000億円以上を投資したという。
クラウド全体に適用可能なデータプライバシー技術
顧客の声を反映し、新製品は「クラウドデータセンターの標準に合わせてシステムを設計した」と朝海氏。中でも特徴的なのが、データプライバシー機能だ。通常、基幹サーバー内にあるデータは保護できるが、データは1カ所にとどまっていることはなく、コピーされてさまざまな場所に広がっていく。朝海氏は、「今後ハイブリッドやマルチクラウド技術が進化するに従いコピーの数は増えていくが、こうして広がるデータも含めセキュリティを担保する必要があると考え、新たな技術を投入した」としている。
まず、IBM ZおよびLinuxONE内のすべてのデータを自動的に暗号化して処理する全方位暗号化技術を採用。これに加え、量子コンピュータでも破れないような暗号化アルゴリズムに変更した。
また、コピー先でも暗号化ポリシーを担保できるよう、「Data Privacy Passports」というソリューションを用意した。これは、「コピーされるデータにパスポートを付与し、例えばデータの原本に個人情報を参照できないセキュリティポリシーを適用すると、コピー先のデータも一斉に読めなくなるという新技術だ」と朝海氏は説明する。連携技術は業界標準技術を利用しているため、連携先が業界標準にのっとったデータベースマネジメントシステムであればどのシステムにも対応できるという。
停止時間の短縮も実現
新製品では、計画停止および計画外停止の双方で停止後の起動時間を短縮できる回復機能を採用した。「System Recovery Boost」というもので、システムに内蔵されているすべてのプロセッサを、シャットダウンと再起動の際に活性化させて時間を短縮するという。「このようにプロセッサを利用すると、プロセッサの数だけソフトウェアの料金が上がるためこれまではできなかった。そこで今回、ソフトウェア料金や保守料金を発生させず、性能だけ一時的にブーストして時間を短縮する技術を用意した」と朝海氏は説明する。
また両製品は、コンテナプラットフォームの「Red Hat OpenShift」に対応するほか、第4四半期には「IBM Cloud Paks」のサポートも予定している。これにより、「アプリケーションのベンダーロックインを防ぐ」(朝海氏)という。
このほか朝海氏は、今回より業界標準の19インチラックの筐体を採用したことや、シングルプロセッサの処理能力が14%向上したこともアピールした。
日本IBM 代表取締役社長の山口明夫氏は、「現在多くの企業がすでに20%の業務をデジタル化しており、今後80%のデジタル化を目指して変革を進めている」と話す。これを「デジタルトランスフォーメーションの第2章」と同氏は位置づけており、「クラウドやAIの実験を進め、基幹システムにも活用しようとする過渡期」だとする。その上で、今回発表した新製品が「デジタルトランスフォーメーションをさらに推進していくものだ」と述べた。