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日本の市場で毎年50%以上の成長を期待――、Zohoがビジネス戦略を説明

インドとシリコンバレーだけでなく、日本の企業が持つ価値観も取り入れている

 ゾーホージャパン株式会社は7日、同社の事業戦略などについて説明するプレスセミナーを開催した。その中で同社は、日本でのビジネスを過去4年間で3倍に拡大させたほか、2019年度以降も前年比1.5倍の成長を計画していることを明らかにした。実際に、2019年度上期の売上高は、前年同期比1.5倍に拡大する見通しだという。

 本社であるZohoは、1996年に設立。米国カリフォルニア州プレザントンに本社を設置するともに、インド・チェンナイに国際本社を置き、全世界180カ国以上に展開。7000人以上の従業員を持つ。2020年には、1万人体制になる見込みだという。

 過去23年間、自己資金で成長を遂げており、今後も外部からの資本を入れる予定はない。また、上場の予定もないという。「上場しないのは企業としての自由度を維持していく狙いがあるためだ。短期的な業績を優先し、投資家のためのビジネスをするのではなく、顧客および従業員のためのビジネスを推進したい」(Zoho Corporation Pvt Ltd. チーフエバンジェリストのラジュ・ベゲスナ氏)とした。

Zoho Corporation Pvt Ltd. チーフエバンジェリストのラジュ・ベゲスナ氏

 ネットワーク管理開発ツールや、企業向けIT運用管理ツール、企業向けクラウドサービスなどを開発。企業向けクラウドサービスには、43種類の業務アプリケーションをひとつのセットとして利用できる「Zoho One」や顧客管理の「Zoho CRM」、グループウェアの「Zoho Connect」などがあり、全世界35万社以上、4500万人以上が利用している。

 また、独自開発の人工知能である「ZIA(ジア)」を活用することで、ワークフローの自動化を進めるといった取り組みにも力を注いでいるところだ。

 「インドで最も大きなソフトウェア企業であり、すべてのビジネスをカバーできるアプリケーションを提供している。ひとつずつ個別にアプリを導入することもでき、スイート製品として導入することも可能。しかも、1人あたり月30ドルという、考えられないような価格で利用できる。エンターブライズレベルの製品をコンシューマレベルの価格で提供しているともいえる。業務をカバーするためにさまざまなベンダーの製品を導入すると、その統合が複雑になる。Zoho Oneは、まさにひとつのプラットフォームやOSのような役割を果たすものになっており、この上でビジネス展開ができる」などとした。

日本は設立当初から重視している市場

 日本市場には、1998年から参入。2007年に日本法人を設立し、現在、30人がZoho事業に携わっている。

 「日本は、設立当初から重視している市場である。基本姿勢は長期的な成長を重視すること。そのために、日本の企業からも多くのインスピレーションをもらっている。インドの価値観とシリコンバレーの価値観に加えて、日本の企業が持つ価値観も取り入れている」(Zohoのベゲスナ チーフエバンジェリスト)などと述べた。

 日本における売上構成比は、Zoho CRMが50%、Zoho Oneが21%、また、営業やマーケティング、サーベイ機能などを搭載したZoho CRM Plusが12%、Zoho Creatorが10%、クラウド型の情報共有サービスZoho Connectが3%などとなっている。

 「Zoho Oneが急激に伸びており、近いうちに売上構成比でZoho CRMを追い越すことになる。また、ここにきて働き方改革の追い風もあり、Zoho Connectの販売が増加している」(ゾーホージャパン Zoho事業部の中沢仁事業部長)とした。

日本における製品別シェア
ゾーホージャパン Zoho事業部の中沢仁事業部長

 また中沢事業部長は、「パートナーを通じた販売に力を入れていく。現在は、5~6社が中心になって販売活動を行っているが、まずは30社のパートナーとの契約を目指す。日本語対応も強化していく」としたほか、Zohoのベゲスナ チーフエバンジェリストは、「日本の市場においては毎年50%以上の成長を期待している。いまの勢いであれば、この目標を達成することになる」とした。

クラウドビジネスを世界に広げていく方針を持っている

 一方、Zoho Corporation Pvt Ltd. チーフストラテジーオフィサー(CSO)のヴィジャイ・サンダラム氏は、「クラウドビジネスは、3つのステップで成長することになる。まずは登録をしてもらうこと、サービスを有償で利用してもらうこと、そして、クウラドサービスによって、利益面で貢献することだ」とする。

Zoho Corporation Pvt Ltd. CSOのヴィジャイ・サンダラム氏

 登録ユーザー数は、2018年末には全世界4100万ユーザーだったものが、現在は4500万人以上に増加。ここ数年の年平均成長率(CAGR)は37%という。有償利用しているユーザー数も、2018年末の33万人から、現在は35万人へと拡大した。

 売上高は、2012年を100とした場合、7倍増になっており、これは、Salesforce.comやMicrosoft、Adobe Systemsといった企業よりも速いペースの成長だという。

ユーザー登録数の推移
売上高の推移

 また、クラウドビジネス行っている他社が売上高の約6割を米国市場から上げているのに対して、Zohoの地域別売上高構成比は、南北米が53%(米国が42%)、EMEAが29%、アジア太平洋地域が17%となっていることを示した。

 「当社は米国だけにフォーカスしたビジネスをしていない。クラウドビジネスを世界に広げていく方針を持っている。ここ数年はパートナー向けビジネスが拡大しており、現在31%を占めている。今後もパートナービジネスを拡大することになる」という。

 ゾーホージャパンの中沢事業部長は、「日本では、2018年9月から登録ユーザーが急増しており、売上高は、2014年から比較しても3倍規模になっている。これをもっと伸ばしたい。また日本においては、2014年度には、パートナービジネスの構成比は16%であったものが、2018年度は30%に拡大している。日本は、平均単価が高い市場であり、その点から見てもパートナーのビジネスを高めやすい」とした。

売上高に占めるパートナーの割合

 また、ZohoのサンダラムCSOは、「日本では働き方改革関連法が施行され、仕事の仕方や、仕事以外の時間の使い方も改革しようと考えている。この中でZohoがどんな役割を果たせるのかというと、ひとつは、Zohoの企業文化が貢献できる。Zohoには、柔軟な仕事をできる体制があり、CEOと直接話をしたり、さまざまな製品の担当者がお互いに話ができたりする時間の使い方もフレックスで、これらを生かしたい。もうひとつはテクノロジー。AIや自動化によって単純作業をなくし、付加価値の高い作業に従事できるようにする。すべての製品に自動化機能を取り込んでいる。また、地域や世代、性別を超えたさまざまな人たちがコラボレーションができるようになる」とした。

 同社では2017年4月に、静岡県榛原郡川根本町に川根本町サテライトオフィスを開設。元駐在所を利用して、コールセンターの設置やテレワークの推進による働き方改革に取り組んでいる。

 なお、ゾーホージャパンでは、6月7日にベルサール汐留にて、ユーザー向けプライベートイベント「Zoholics(ゾーホリクス):JAPAN」を開催。25のセッションや基調講演などを通じて、同社の最新ソリューションなどについて紹介したという。会場には、パートナーおよびユーザーを含めて約350人が来場し、前年比倍増を記録したとのことだ。