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AWSジャパン長崎社長が示した、クラウド移行を成功させる5つのガイド
AWS Summit Tokyo 2018 基調講演レポート
2018年6月11日 06:00
AWS Cloud Economics
2.AWS Cloud Economics
クラウドにおけるTCOの考え方を理解する
オンプレミスとクラウドの違いは数多くあるが、企業にとって特に重要なのはコストにおける考え方の違いだ。IT担当者はAWSを活用することでいかにコスト削減効果を得られるのかを経営陣に説明する必要があるが、長崎社長は「オンプレミスとは異なり、毎日進化するクラウドの世界において、投資効果を算定するのは容易ではない」と語る。
AWS Cloud EconomicsはAWSクラウドによる投資効果を「財務効果」と「非財務効果」に分けて算定することで、AWSによる“継続的なプライスダウン”を明示するための支援プログラムだ。財務効果ではハードウェアやソフトウェア、ファシリティなどインフラコストの削減、非財務効果ではITメンバーの生産性向上やダウンタイム低減など生産性や効率性の向上をそれぞれ数値として具体的に算定する。特に、一般的なユーザー企業からは見えにくい非財務効果を数値として示すことで「新しいテクノロジーを使うことが企業の命運を握る」(長崎社長)という考えを受け入れやすくなる。
国内ユーザーの例としてはツムラが挙げられており、AWS Cloud Economicsでインフラコストを試算した結果、40%強の削減効果が確認されたとしている。このように財務効果と非財務効果が数値として可視化されることで、クラウドで得られるメリットを具体的に描けるようになった企業は少なくない。
AWS Training and Certification
3.AWS Training and Certification
クラウド人材のトレーニングと認定を継続し、組織にクラウドの知見を蓄積する
たとえ日本を代表するような大企業であっても、ある特定の分野に精通した専門家を満遍なくそろえることは不可能に近い。また、特定の分野に特化した専門スキルに加え、業務知識もあわせもつ人材となると、さらに獲得は難しくなる。
しかし、クラウドの世界は日々進化しており、毎日のように新しいイノベーションが生まれている。一般的なユーザー企業が、最新テクノロジーのエキスパートを社内のチームに配置することは相当に難易度が高い。
クラウド移行を成功に導くための人材を社内で育成し、必要であれば専門のスキルに精通した社外のパートナーとともに移行を進めていく、それがAWSが用意する「AWS Training and Certification」という育成プログラムだ。受講者はAWSエキスパートであるインストラクターによるトレーニングを受け、レベルに応じたスキルと知識を証明する「AWS認定(AWS Certified)」を取得することでクラウドエキスパートとして成長する緒(いとぐち)をつかむことができる。
また、SAP on AWSなど特に高度なスキルが要求される分野では、「Center of Excellence(CoE)」と呼ばれる、パートナー企業のメンバーを中心としたエキスパート集団がエコシステムを構築している。
AWSのパートナープログラムには、IoTやビッグデータ、SAPなど特殊な技術/ワークロードに特化した認定制度も数多く用意されており、クラウド人材の育成に関しても豊富なノウハウとネットワークが存在することがうかがえる。また、社内にIT人材を置けない企業には、「例えば教育機関やデジタルメディアといった特定の業種業界のクラウド移行を得意とするパートナーをAWSが紹介するプログラム」(長崎社長)も用意されている。
クラウド人材育成に関する国内ユーザーの事例としては、三菱UFJフィナンシャル・グループの例が紹介されている。同社ではこれまで600人もの人材をAWS研修に派遣してきたが、それは「新規システムはクラウドファーストで構築することを義務付けている」ため、必然的にAWSスキルをもった人材が欠かせないからだ。クラウドファーストの流れが進むほどに、クラウドスキルのトレーニングと認定は移行に欠かせないプロセスとして折り込まれていくのは間違いない。