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導入から活用へ、普及期を迎えた日本のクラウドを支えるAWS 「AWS Summit Tokyo 2016」基調講演
2016年6月3日 11:50
「AWSがサービスインしてから今年でちょうど10年、そして東京リージョンを開設してから5年。そして日本のクラウドは5年前とはまったく異なる姿に変わった。これまでのITの常識では考えられないスピードでテクノロジシフトが進んでいる」――。
6月2日、東京・品川で開催されたAmazon Web Services(AWS)のカンファレンス「AWS Summit Tokyo 2016」の基調講演に登壇したアマゾン ウェブ サービス ジャパン 代表取締役社長の長崎忠雄氏はこう強調した。
今回のAWS Summit Tokyoは昨年を上回る1万6400人以上の参加登録者数を記録し、クラウドベンダとして変わらぬAWSの強さを内外に示したかたちとなった。「これほど多くの人がこのカンファレンスに来てくれたことはクラウドが日本に根付いた証」という長崎社長だが、その普及を支えた存在がAWSであることは疑いない。
この10年の間にAWSは日本のクラウドを、そして日本企業のビジネスをどう変えてきたのか、そして、今後はどこに向かおうとしているのか。長崎社長の基調講演をもとに、AWSと日本企業の関係をあらためて見直してみたい。
低価格が顧客満足度を高め、それにより顧客数が増えていく
AWSは昨年から単独の決算を発表しているが、2015年度の年間売上高は78億ドルを記録しており、2016年度は100億ドルを超えるのはほぼ確実と見られている。ローンチからわずか10年で"1兆円企業"までに成長した企業は、グローバルで見てもほとんど例がない。サービスの提供地域もユーザー数も年々拡大しており、現在は190カ国に100万を超えるアクティブカスタマーを抱える。データセンターを置くリージョンは現時点で世界に12拠点存在するが、「2016年中にさらに5拠点を追加する予定」(長崎社長)という。
この驚異的な成長スピードを支え続けている源泉は何なのか。長崎社長は有名な"ジェフ・ベゾスのペーパーナプキン"を引用し、AWSをはじめとするAmazonサービスのに共通するグロースモデルを説明している。
「成長のためにまず必要なのは組織を徹底した低コスト体質にすること。そうすれば低価格が実現する。低価格を嫌がる顧客はこの世にひとりもいない。そして低価格が顧客満足度を高め、それにより顧客数が増えていく。顧客が増えれば出店社やパートナーなど周囲のエコシステムが拡大し、あわせて品ぞろえも増えていく。それがふたたび顧客満足度の向上につながり、我々の成長を支えていく。そして成長した分は必ず顧客に還元する」(長崎社長)。
Amazonグループの"DNA"とも言うべきこのグロースモデルはAWSにおいても徹底されている。この10年間でAWSが行ってきた値下げの回数は51回にも上り、ほぼ毎日、何かしらのサービスのアップデートが行われている。提供するプラットフォームの数は70を超えており、ユーザのニーズに応じた幅広いラインナップが用意されている。
「顧客の声を聞き続け、そのフィードバックをサービスに反映していく」(長崎社長)ことをこの10年に渡りひたすら繰り返してきたAWSの軌跡は、ペーパーナプキンのグロースモデルが描くサイクルの繰り返しだ。
その愚直なまでの、しかしスピーディな繰り返しが、「ガートナーの調査によれば、他のIaaSベンダすべてを合わせた規模の約10倍」(長崎社長)という圧倒的な強さをもたらしているのだ。