大河原克行のクローズアップ!エンタープライズ
なぜコンカーは、「フィードバック」を重視するのか?
「働きがいのある会社」で6年連続1位の理由を探る
2023年3月22日 06:15
クラウド経費精算システムなどを提供するコンカーが、日本における「働きがいのある会社」ランキングにおいて、史上初となる6年連続の1位を獲得した。ベストカンパニーへの選出では9年連続となる。コンカーの三村真宗社長は、「働きがいのある会社を実現する上での礎が、コンカー社内に定着しているフィードバック文化」とし、「社員の間で、フィードバックが活発に行われていることが、社員の働きがいに直結しているという手応えがある」と語る。
今回の単独インタビューにあわせて、コンカーでは、フィードバックに関する最新のデータを公開。あわせて、今後は日本の企業に対するフィードバック文化の定着を積極的に支援していく姿勢をみせた。三村社長に、フィードバックの重要性について聞いた。
正しいフィードバックが必要
「フィードバック」というと、人やモノ、事象などの問題点を指摘し、改善を促すといった行為を指すことが多い。だが、コンカーの三村社長は、人から人へとフィードバックする場合には、こうしたネガティブなギャップフィードバックだけでなく、相手を褒めるポジティブフィードバックが重要であること、さらに、フィードバックを受け取る側の姿勢や、それを受け止める力も大切だと指摘する。
「日本の社会には、空気を読んだり、文脈をとらえたりといった日本人ならではの国民性がベースにある。これは日本の社会のいい部分でもあるが、その一方で、相手にストレートに課題を伝えることをしなかったり、褒めることについての苦手意識があったりする。企業において、一人ひとりの成長を促し、組織全体を成長させるには、フィードバックは大切な要素である。コンカーは、このやり方で、働きがいのある会社として評価され、社員も組織も成長している」と語る。
フィードバックは、日本の社会や文化、日本人の国民性に適していないのではなく、日本の社会や企業において、正しく活用されていないことが課題だと指摘する。
フィードバックを正しく適用したコンカーが、「働きがいのある会社」ランキングで6年連続の1位を獲得したことからも、それは実証済みともいえる。
「もし、日本企業のフィードバックの手本になるのであれば、そのノウハウを公開し、日本の社会に広めたい。フィードバックが足りていない日本の企業の現状に一石を投じたい」と語る。
その行動はすでに開始している。
従来は、社員を対象に1日をかけて「フィードバック研修」を実施していたが、コロナ禍でオンライン開催にシフトしたことをきっかけに、オンラインならではのメリットを活用。参加者を社外にも拡大し、さらに社会人だけでなく、学生も対象に研修を公開している。
また、YouTubeでの配信を開始したほか、社外向けのセミナーなども開催。2023年3月には、三村社長が執筆した「みんなのフィードバック大全」(光文社)が刊行され、書籍を通じた伝導にも取り組んでいる。「今回の書籍が、フィードバックの標準的な考え方を示す最初のバイブルになればいいと考えている。個人的には、これをきっかけにフィードバックに関する書籍が、雨後のたけのこのように続々と登場することを期待している」と笑う。
「高め合う文化」の根幹を担うフィードバック
三村社長が推進しているフィードバック文化は、コンカーがグローバルで展開していたり、コンカーの親会社であるSAPが導入していたりするものではない。コンカーの日本法人が独自に推進しているものであり、むしろ、「三村流」と言ってもいいものだ。
三村社長は、1993年にSAPジャパンの創業メンバーのひとりとして、社会人のキャリアをスタート。13年間に渡って事業成長をリードし、バイスプレジデントなど歴任した後に、2006年にマッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。2009年にはベタープレイス・ジャパンのシニアバイスプレジデントを経て、2011年からコンカー日本法人の社長に就いている。
三村社長が、フィードバックが自らの成長につながると最初に実感したのは、マッキンゼー・アンド・カンパニー時代のことだ。新卒2年目の10歳以上年下の同僚から、仕事のやり方についてフィードバックを得たという。
「それまでのビジネス経験を生かすだけにとどまらずに、コンサルタントとして必要とされるファクトとロジックを組み合わせて話をすることで、『もっと強くなれる』と指摘された。そのフィードバックによって、自らの課題に気がつき、仕事のやり方を変え、クライアントに向き合えるようになった」とする。
その成果は、自らの成長を実感できるものだったという。
コンカーの社長に就任した三村社長は、社内に向けて「高め合う文化」を標榜してきた。コンカー日本法人独自の文化として、これを打ち出したのは、マッキンゼー時代のフィードバックの経験が大きく影響している。
三村社長は、「高め合う文化の根幹を担うのが、フィードバックし合う文化の浸透である」と位置づける。
7割のビジネスマンが成長につながると回答
フィードバックが、社員の成長や組織の成長につながることは、三村社長自身の体験によって、すでに実証されているが、それは、多くの人に共通したものであることが調査結果からわかった。
コンカーでは、2月22日~27日に、日本の企業に勤務する600人のビジネスマンを対象にインターネット調査を実施。それによると、フィードバックが自らの成長に役立つと思っている社員は69%に達していることがわかった。
また、フィードバックが行われていない企業では、成長を感じている社員が28%にとどまっているが、フィードバックが行われている企業では76%に達し、その差は2.7倍となった。さらに、フィードバックが行われていない企業では、職場に愛着を感じている社員は32%であるのに対して、フィードバックが行われている企業では83%に達している。そして、職場に対して心理的安全性があるとの回答は、フィードバックが行われていない企業では35%に対して、フィードバックが行われている企業では85%となった。
「調査結果からも、フィードバックがない職場では、社員の成長が鈍いため、組織全体の成長が望めない可能性が推測される。また、フィードバックは個々の成長だけでなく、社員の職場に対する愛着や、心理的安全性と深く関わっている。フィードバックの浸透は、社員定着率にも影響することになる」と分析する。
また調査では、「働きがいのある職場」と回答した人のうち、フィードバックを行っている企業は67%に達し、やりがいがなく、働きにくい「しょんぼり職場」では、フィードバックを行っている企業は5%にとどまった。
「フィードバックがある職場とない職場では、働きがいなどにも差があることは体感的にもわかっていたが、ここまで大きな差が開くとは思っていなかった。結果を見て、フィードバックを広げなくてはならないという使命感を、これまで以上に感じた」とする。
正しいフィードバックのための5つの基本概念
三村社長は、「フィードバックは新しい言葉ではないが、日本の企業では、フィードバックが正しく行われていないと感じている」と語る。
三村社長は、フィードバックについて、5つの基本概念を示す。言い換えれば、この5つが、正しいフィードバックの姿だといっていい。
ひとつめは、後ろ向きや責める気持ちではなく、建設的に、成長を願う「マインド」を持つということだ。「フィードバックのすべての源泉は、相手の成長を心から願う気持ちである。失敗に対しても、叱責ではなく、敬意を持ってフィードバックを行うことが大切である」とする。
2つめは、上司から部下だけでなく、部下から上司、同僚同士といったように、あらゆる「方向」でフィードバックが行われる環境をつくることだ。先に触れた三村社長のマッキンゼー時代の経験も、10歳以上年下の同僚からのフィードバックによるものだった。「フィードバックは、マネジメントスキルのひとつととらえられがちだが、すべての社員が持つスキルである。経営層でも管理職でも完全な人はいない。誰かから課題を指摘されたり、長所を褒められて成長を感じたりすることは、働いているすべての人に必要なものである」と語る。
3つめは、ギャップフィードばかりではなく、ポジティブフィードバックも加え、フィードバックの「種類」を持つことだ。「フィードバックと聞くと、問題点の指摘を想起する人が多いが、褒めることも大切なフィードバックである」とする。
だが、日本では、ギャップフィードバックを日常的に伝えている人は36%であり、ポジティブフィードバックでも50%にとどまっている。「日本人は、褒めることにも慣れていない。苦手意識もあり、褒めることが少ないことが、フィードバックそのものが日常化していないことを示している」と指摘する。
4つめは、フィードバックにおいては、伝える側のスキルの醸成だけでなく、受ける側のスキルと心構えも大切だという点だ。「フィードバックは、伝えるスキルのように感じられるが、受け止めるスキルも大切である。フィードバックは、伝え手と受け手の共同作業である」とする。
三村社長は、この関係を空中ブランコに例える。「相手にフィードバックをするのには怖さがある。ギャップフィードバックであればなおさらだ。相手がしっかりと受け止めてくれないと、関係がこじれる可能性もある。空中ブランコも相手がしっかりと受け止めてくれないと落下してしまう。フィードバックも同じ関係にある」。
そして5つめが、フィードバックに関するスキルを、管理職スキルや個人スキルにとどめるのではなく、経営戦略や組織文化に取り込み、「経営戦略としてのフィードバック」を定着させることである。「経営戦略に取り込むことで、フィードバックを組織文化として定着し、フィードバックし合える文化ができるあがる」というわけだ。
三村社長は、フィードバック文化の定着に向けて、4つのレベルを示す。
「誰もフィードバックをしない」という状況をレベル1、「自分がフィードバックを実践している」というのがレベル2。そして、「自分が属す組織全体でフィードバックを実践している」状況をレベル3とし、「会社全体でフィードバックを実践している」という組織文化として浸透した状態をレベル4としている。
「ひとつずつレベルを引き上げることで、社員の成長を加速させ、会社への愛着を高めることができる。フィードバックは『みんな』でやることが大切だ」とする。
ポジティブフィードバックの「5W1H」
さらに、ポジティブフィードバックのための「5W1H」のフレームワークを提唱する。
18項目から構成されるこのフレームワークは、いわば、ポジティブフィードバックを浸透させるコツとなるものだ。
Whyでは、マインドの持ち方を示しており、「相手の成長を願い、相手に関心を持つことで、相手のいいところに気がつけるようになる。最初はフィードバックすることが気恥ずかしいかもしれないが、それを捨てることが大切。慣れることで、習慣化できる」とする。
また、気がついたら気軽にこまめにポジティブフィードバックを行うWhen、他人と比較するのではなく、その人の過去と比較するWho、他者の前でも評価するWhere、なぜ良かったのかを評価し、結果だけでなくプロセスも評価するWhat、次のゴールを与えたりすることでさらなる挑戦や、改善を促すHowを提案している。
コンカーでは、「5W1H」のフレームワークをもとに、それらの18項目を実現できているのか、それとも実現できていないのかをセルフチェックできる「ポジティブフィードバッカー診断」を用意。チェックできなかった部分を弱みとして認識し、ポジティブフィードバックの活動を改善できる。ここでは、「Right」の項目で、チェック項目が14個以上であれば上級者、10個以上で中上級者、6個以上で中初級者、5個以下で初級者としている。
ギャップフィードバックの正しい手法とは
一方で、ギャップフィードバックでは、「軽め」といえる気づきのギャップフィードバックと、「重め」となる改善要求のギャップフィードバックに分類。この2つの間には、内容によって、無限ともいえる階層があると定義している。
軽めのギャップフィードバックでは、ちょっと気がついたことを、本人に代わって気づかせるというものであり、気になる口癖や、ボールペンの扱い方のほか、テレワークではいつも画面の半分しか顔が映っていないことへの指摘などがある。これらの軽めのギャップフィードバックでは、日常的に、カジュアルにフィードバックすることが大切であり、日ごろから、それを言い合える関係を築くことが大切だとする。
ただ、重めのフィードバックの場合には、見過ごすことができない改善点を本人に伝えることになるため、それなりに準備が必要である。お客さまに対するいい加減な対応、同僚に対する無礼な言動、ルールを順守しない行動などの場合、毅然(きぜん)とした態度で、しっかりとした準備が必要であると提案する。
また、ギャップフィードバックには、正しい手法を取ることも提言する。
「重めのギャップフィードバックであればあるほど、それを実行するのに望ましいRight Environmentがある。口頭で行うか、メールで行うか、あるいは1対1で行うか、他者がいる前で行うのか、といったように、選択できる方法はいくつかあるが、重めのギャップフィードバックを行う際の鉄則は、口頭で、1対1で行うのがいい」とする。
上司のなかには、他者がいる前でギャップフィードバックを行うことで、ほかの社員に対しても同時に注意を促すことができると考えるケースもあるが、むしろ、対象となった社員のプライドを傷つけることによるマイナス影響の方が大きいといえる。これは、チャットツールで多くの人が参加している場でも同様だ。
また、メールは言葉が強くなる傾向があり、気持ちが正しく伝わりにくいというマイナス面がある。さらに、相手の事情を知らずにギャップフィードバックを行っている場合もある。事情を聞くという点でも、一方通行になりがちなメールや、事業説明がしにくい大勢の前での指摘を避け、1対1や対面という手法を用いることを薦めている。
6つの「Right」と「ソラ・アメ・カサ」
三村社長は、1対1や対面を用いることを、Right Environmentと表現するが、これを含めた6つのRightが、フィードバックを行う際の準備には欠かせないとする。
6つのRightとは、適切な機会(Right Occasion)、適切な環境(Right Environment)、適切なトーン(Right Tone)、適切な雰囲気(Right Atmosphere)、適切な関係性(Right Relationship)、適切な動機(Right Motivation)である。
「特にギャップフィードバックは、準備が、成否に大きく影響する」と前置きし、「時間をおいてフィードバックするよりは、直後などにフィードバックをした方が効果的である。また、日常的にフィードバックを行う濃度を高めておき、9割程度の比率でポジティブフィードバックを行っていたり、日ごろから信頼関係を築いたり、尊敬しあえる関係を構築しておかなくてはいけない。こうした日常の取り組みが、重いギャップフィードバックを行う際に下準備になる」とする。
また、ギャップフィードバックにおいては、「ソラ・アメ・カサ」の考え方を用いることも提案する。
「ソラ・アメ・カサ」は、マッキンゼーでもよく使われている言葉で、空を見て、雨が降りそうだという状況を共有。雨が降るという課題に対しては、傘を持っていくという打ち手が必要であり、それによって、雨にぬれずに済むということを意味している。翻って、表層的な課題をとらえ、そこから起こる事象を予測して、深層課題を明確にし、そのための対策を打つという一連の動きを指す。
「ソラ、アメ、カサは、ギャップフィードバックにも適したフレームワークだといえる。資料にミスが多い場合に、『ミスが多いから注意してくれ』といっただけでは解決には至らない。ミスが多いという表層的な課題をとらえたら、その根本原因である深層課題を探ることが大切である。提出前のチェックが行われていない、資料づくりの際に上司が適切なレビューをしていない、そもそも資料づくりの適切なトレーニングを受けていないという場合もある。深層課題がわかれば、それに向けた解決策を実行することで、表層課題を解消できる」。
ここでは、表層課題について、認識が正しいことをお互いが合意した上で、根本原因を特定する。だが、ギャップフィードバックを行う際には、相手が防御的になり、言い訳や事情説明が多くなるが、それを聞き飛ばさずに、説明を正しく理解する傾聴のスキルも必要だという。そして、打ち手となる改善案は自ら考えてもらうようにすることも重要だとし、相手が求めてから助言をすることが大切だという。
また、三村社長は、フィードバックを実践するには、コーチャビリティが大切だとする。
コーチャビリティは、「他社からの助言を聞き入れる能力」だとし、「時には苦言すら自己の成長に転化できる能力」とする。コンカーの採用においても、これまでの実績を重視するのではなく、コーチャビリティを重視した人選を行っているという。
なお、ギャップフィードバックに対する自己評価をもとに、フィードバックの受け手として、どんなタイプであるのかを自己診断できる質問表も用意している。
自らの成長意欲に関して、6つの項目のどこに当てはまるか、他者からの改善点の指摘を受けたときにどう感じるかという点についても6項目のなかから選び、それによって、自らが、どんなタイプであるのかを知ることができる。
組織経営から見たフィードバックの重要性
三村社長は、コンカーでの経験をもとに、経営戦略の観点から、フィードバック文化の浸透に向けた取り組みについても示してみせる。
ここでは、「決意と宣言」、「プロトコルあわせ」、「PDCA」、「行動促進」、「入口戦略」、「心理的安全性」の6つのステップを示す。
「コンカーでは、全社員に向けて、フィードバック文化を浸透させていくという決意と宣言からスタートした。また、フィードバックは課題を指摘することだけではないということを全社で足並みをそろえる必要があり、フィードバック研修を実施し、意識をそろえた。またPDCAでは、フィードバックの状況を定期的に可視化し、消極的な組織には改善を促し、行動促進に向けて目に見える形でフィードバックの上級者を称えるとことを行っている。さらに、コーチャビリティの高い人を重視した採用戦略としており、フィードバックをすることに恐れを抱くことがない心理的安全性が担保された風土をつくることにも力を注いできた」という。
コンカーでは、「直属の上司からフィードバックを受けているか」という設問への回答を取りまとめ、ポジティブフィードバックおよびギャップフィードバックの平均値を算出し、すべての管理職や社員を、グッドフィードバッカー、プアフィードバッカー、ポジティブフィードバッカー、ギャップフィードバッカーの4象限に分布。グッドフィードバッカーのなかでも、特に点数が高い人たちをグレートフィードバッカーと呼んでいる。
またコンカーでは、フィードバックに関する表彰制度として、「MVF(Most Valuable Feedbacker)」を用意。部下や同僚や上司に有意義なフィードバックをしている管理職と社員を、他薦により選出し、表彰している。
これらは、PDCAおよび行動促進に実現に向けた可視化の取り組みのひとつであり、「フィードバックし合う文化」をより活発化させる取り組みのひとつに位置づけている。
また、心理的安全性を実現するためには、組織全体でフィードバックを実施することや、管理職自らが、フィードバックを受け入れる姿勢を示すこと、全社員がフィードバックの正しい知識を備えていることに加えて、例えば、上司に対してギャップフィードバックを行ったため、関係性が悪化したり、逆恨みされたりといった場合にも、会社が状況を検知し、把握できるパルスチェック制度を用意することも大切だとした。これもコンカーで実施していると語った。
フィードバックはコンカーが元祖に?
クラウド経費精算システムなどを提供するコンカーは、国内における事業を急成長させており、約6年前から社員数が急増。その結果、三村社長自身、会社のなかの風通しが悪くなったと感じた時期があったという。そこから、フィードバックを重視しはじめている。
「最初は、全社員を対象に、会社、上司、他部門に対して、ポジティブフィードバックとギャップフィードバックをあげてほしいというアンケート調査から開始し、そこで集まってきた課題を解決するという取り組みを行った。飲み屋で会社や上司の悪口を言って、ネガティブな空気が広がる会社にはしたくなかった。会社に課題があれば、陰口で終わるのではなく、建設的な意見として、会社がとらえ、成長に生かせる文化にしたいと考えた。入社した社員からは、ランチや飲み会の席で、会社の悪口を聞くことがないと驚かれている」と笑う。
コンカーでは、部下や同僚へポジティブフィードバックする社員が75%以上、ギャップフィードバックでも50%前後という高い数値となっており、中でも上司へのギャップフィードバックを行っている社員は24%にも達しているという。
社内では、会議が終わった時点などで、「なにかフィードバックすることはありますか」といった質問が必ず出るという。社内で、日常的にフィードバックという言葉が聞かれているのがいまのコンカー社内の様子だ。これらは、コンカーにフィードバック文化が浸透していることを示すエピソードだともいえる。
また、コンカーでは、特に営業部門で活発なフィードバックが行われているというが、そうした組織においては、自分では気がつかなかった課題を先輩や同僚から指摘されることが多く、改善への取り組みが促され、社員には成長できるという実感が生まれ、その結果、働きがいがある職場という意識が広がっているという。
史上初となる6年連続で「働きがいのある会社」の1位を獲得した要因はここにありそうだ。
三村社長は、「企業や個人が成長するために持っていなくてはならないスキルや文化がフィードバックである。また、フィードバックスキルは、他社や異業種に移籍するときにも生かすことができるポータブルスキルだといえる。このスキルを身につけることで人材価値があがるのは確かだ。また、企業経営者にとっても会社の風通しがよくなり、部門を超えた連携が緊密になり、成長を加速することができる。経営者にも、ビジネスマンにも、フィードバックは大切なことである」とする。
コンカーは、フィードバック文化を定着させ、それによって成長を遂げた企業である。その成果が、日本の企業に広く伝播するのかといった点は注目したい。フィードバックが、日本の企業に広がったときには、「コンカーがフィードバックの元祖である」と言われる時代がやってくるのかもしれない。