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U-ZERO、従業員の“働きがい”を向上させるAIソリューションを5月より提供
2025年3月5日 06:30
株式会社U-ZEROは、AIを活用して、従業員の声を収集し、分析するとともに、経営に反映するSaaS型AIソリューション「U-ZEROエンゲージメントスイート」を、2025年5月から提供を開始すると発表した。同時に、パートナーとの連携により、従業員エンゲージメントに関連するコンサルティングサービスの提供も開始する。
U-ZEROの三村真宗社長は、「経営、文化、従業員の3つの軸から、AIソリューションやコンサルティングサービスを提供し、従業員のモチベーションやエンゲージメントを高め、日本企業の働きがいを向上させる。VoE(従業員の声)経営、フィードバックカルチャー、エンプロイーエクスペリエンスにより、組織エンゲージメント改革を実現する」とした。
まずは大手企業を対象に提案を開始。金融分野やIT分野などをターゲットとする。2026年までに、時価総額トップ100企業のうち約10%への浸透を図るほか、2029年までには50%の浸透を目指す。また、2023年以降にはこれを80%にまで高める。
U-ZEROを創業した三村氏は、1993年にSAPジャパンの創業メンバーの一人として同社に入社。社長室長や戦略製品事業バイスプレジデントなどを歴任し、2006年にマッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。2009年にベタープレイス・ジャパンに入り、シニアバイスプレジデントなどを経て、コンカーの日本進出にあわせて、2011年10月からコンカー代表取締役社長に就任。12年間に渡り、「経費精算のない世界」の実現に取り組んできた。その後は2024年5月1日まで、同社の代表取締役エグゼクティブアドバイザーを務めていた。
コンカーでは、Great Place To Work Institute Japanによる「働きがいのある会社」ランキングで、日本最長記録となる7年連続1位を達成。経営トップとし、企業の成長には、「働きがい」が重要であることを打ち出し、それに向けた企業文化を醸成に対する手腕が高く評価されている。また、企業内にフィードバック文化を定着させる重要性を説いた同氏の著書「みんなのフィードバック大全」は、そのノウハウをまとめた指南書として、経営者などから注目を集めている。
「コンカーの社長に着任後、業績悪化による更迭の恐怖から、数字のみの経営を進め、結果として、社内の混乱と業績低迷を招いた反省がある。そこで全社員で合宿をして、5年後の夢をわかちあい、米国本社以外の地域で業績ナンバーワンになること、日本で最も働きがいのある会社になることを目指した。5年でどちらも達成したが、そこで実感したのは働きがいを高めることが、業績を伸ばすことに直結するということである。それが社員の幸福感にもつながった」とする。
また「コンカーで12年間社長を務め、やり切った感はあったが、従業員エンゲージメントで悩んでいる企業があまりにも多いことがわかった。私が学んできたSAPやコンカーでの経験、マッキンゼーでのコンサルティングの経験、12年間のコンカーでの働きがい経営のノウハウを生かして、こうした状況の解決に役に立てるのであれば、U-ZEROのサービスとして世の中に広げて、すべての働く人が幸せで、働きがいのある未来づくりに貢献できるのではないかと考えた」と述べた。
日本の従業員エンゲージメントは、世界129カ国のなかで最低レベルであり、生産性においてもOECD主要国中では最低レベルである。一方で、エンゲージメントが高いと、離職率が下がり、顧客満足度の向上、売り上げや利益率が向上するといったことが調査結果から明らかになっている。
「従業員エンゲージメントに絶対に効く特効薬はないが、コンカーの実務で培った経営手法は『型』として、多くの企業に有効であると考えた」とする。
U-ZEROでの取り組みは、これまでの三村社長の経験の集大成ともいえるものともいえ、「人と組織にまつわるネガティブな要素をゼロにし、より良い組織と企業文化の実現を支えたい。今回発表したU-ZEROエンゲージメントスイートは、アフターAI時代のツールであり、B2Bソフトウェアとして海外に打って出ることができる国産ソリューションである。エンゲージメント領域でのスタンダードを目指す」と意気込みを語る。
U-ZEROは2024年6月に創業。資本金は3億円。社員数は業務委託を中心に約30人の体制とし、開発部門も持つ。「Unhappyな働く人をゼロにする」や、「Unhappyな人材をゼロにする」、「Unhappyな未来をゼロにする」ことを社名の由来としており、働く人すべてが幸せでやりがいを感じられる企業文化への変革を支援することを目指すとしている。
具体的には、AIを活用して、組織エンゲージメント改革を実現するトータルソリューションを提供。VoEをはじめとしたAIを活用クラウドサービスの「デジタルソリューション」、導入コンサルティングによるチェンジマネジメント支援を行う「コンサルティングソリューション」、フィードバック研修や採用支援などの人的サービスを提供する「エンパワーメントソリューション」を提供する。
それぞれの領域においてパートナー企業とも連携。デジタルパートナーとしてはSAPジャパン、富士通、インテグリティ・ヘルスケア、Solo Wellbeingと連携するほか、コンサルティングパートナーではデロイト トーマツ コンサルティング、富士通、マーサージャパン、そして、エンパワーメントパートナーでは富士通ラーニングメディア、Boost Health、CoachHubが名を連ねている。
クラウドサービスによって提供するデジタルソリューションでは、「U-ZEROエンゲージメントスイート」としてさまざまな機能を提供。これらをAIネイティブで開発していることも強調した。
機能のひとつである「コンストラクティブフィードバック」では、AIインタビュアー「YUKO」が、従業員へのインタビューを通じて現場の声を収集。一般的なアンケートフォームへの記入とは異なり、AIが相手のペースにあわせて対話し、音声データとして多くの意見を集められ、これをもとに組織の課題や強みを可視化することができる。AIインタビュアーは、マッキンゼー出身コンサルタントのインタビューフレームワークを学習。日本語および英語での対応のほか、今後は多言語対応も予定しており、日本人以外の従業員へのインタビューも可能だ。
「AIインタビュアーを活用することで、ビジネスコンサルタントが、全従業員に話を聞くのと同じ環境が実現できる。集約した意見は、AIがサマリーし、サンバーストグラフで表示。その内容をドリルダウンすることで、詳細な内容を確認できるほか、AIが緊急度や希少度などを分析したり、社員から出ている提案も確認できたりする。サーベイだけで終わるのではなく、アクションプランにまでつなげることができる点が特徴である」という。この仕組みは特許を出願している。
また、「チームシナジーモニタリング」では、従業員の声をもとに、組織間の課題を明確化。組織間連携をスコア化し、目詰まりしている状況を可視化し、重点的に改善を進めることができる。ここでは、社員の声やAIの意見をもとに、具体的な解決策を提示し、組織のトップ同士がそれをもとに対策を実行することで、組織の壁の解消につなげることができるという。この機能についても特許を出願している。
「フィードバックモニタリング」は、企業内におけるフィードバックがどれぐらい行われているのかを可視化するサービスで、社員一人ひとりのフィードバックスキルを分析したり、スキルを高めたりするためのアドバイスも行う。「社内にフィードバック文化を浸透させるための有効なツールとなる」と位置づけた。
加えて、「バルスサーベイ」は、従業員のストレス状況やモチベーション状況をAIが分析し、従業員のメンタルヘルスの課題を早期に発見することができる。
さらに、エンプロイーエクスペリエンス領域のサービスを、2026年にリリースする予定だ。ここでは、採用やコミュニケーション、評価、キャリア、退職など、従業員のライフサイクルにのっとったさまざまな人事業務をAIがサポートする。
「当面は、コンカーでの経営手法をもとにプロダクト化していくが、今後、日本の企業の声を積極的に取り入れて、製品を強化していく」と述べた。
2025年5月22日には、「U-ZERO DAY 2025」を開催し、これらの製品の概要についても説明する。
なお、U-ZEROエンゲージメントスイートでは、現在、SAP Success Factorsとのデータ連携を行っているが、今後、対応するソリューションを広げていく。また、SAP Storeへの登録とともに、SAPジャパンの営業およびマーケティング部門がU-ZEROエンゲージメントスイートを取り扱うほか、クラウドサービスでカバーできない部分は、コンサルテーションを通じて改善を図る仕組みを用いる。
一方、説明会にゲストとして登壇した富士通 取締役執行役員 SEVP CHROの平松浩樹氏は、「富士通は、実践的な人的資本経営に取り組んでいるが、それを実現するには、経営戦略や人材戦略を理解してもらい、エンゲージメントの高い組織を作ることが大切である。エンゲージメント向上に関する知見やノウハウを、AIの活用により効果的に実践につなげることができるU-ZEROに期待している。富士通の8万人の社員に対して、段階的に導入し、活用の実践値を蓄積し、効果の最大化を進める」と発言。「将来的には、U-ZEROとバートナーシップを組み、他社にも提案をしていきたい」と語った。
デロイト トーマツ コンサルティング 代表執行役の神山友佑氏は、「経営視点で、従業員エンゲージメントを高めることが企業戦略の中核である。U-ZEROの仕組みを聞いた人の多くが、これを導入してみたいと思うだろう。当社は、国内2万1000人のプロフェッショナルのうち、400人がHCエキスパートであり、この分野では国内最大のリソースとなる。これを生かして、U-ZEROの取り組みを加速させたい。若手の声を、AIを活用して引き出すことができたり、管理職の負荷も減らすことができたりする。30年間に渡り、人の力を高めることができていない日本企業の価値向上に貢献したい。コンサルティング業界を変える突破口にもなる」などと語った。
ビデオメッセージを送ったSAPジャパン バイスプレジデントの森太郎氏は、「SAP Success Factorsのタレントマネジメント機能に、U-ZEROの従業員エンゲージメント機能が連携することで、トータル人事ソリューションとして利用できる。これにより、HR分野におけるパートナーエコシステムを拡大させ、SAP Success Factorsの既存ユーザーおよび新規ユーザーに対して、革新的で、拡張性が高いHRソリューションの選択肢を提供できるようになる。より多くの企業に提供し、HR分野のイノベーションを高めたい」と語った。
一方、日本CHRO協会 専務理事の谷口宏氏は、「日本の企業の9割が、エンゲージメント向上が事業の成長につながると回答している。だが、わかってはいるが実行ができていない。これが人事の課題となっているが、本来は経営の課題として認識しなくてはならないものである。しかも、これは従業員満足度の向上とは異なる。従業員自らの成長もとらえたものではなくてはならない。U-ZEROは、これを実現できるツールを開発した点を評価したい。普及に協力したい」と語った。