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富士通のIR Dayから新中期経営計画を深堀りする――、成長ドライバー「Fujitsu Uvance」を解説

 富士通が発表した新中期経営計画は、同社・時田隆仁社長 CEOが、「持続的な成長と収益力向上に向けたモデルを構築する3カ年になる」と位置づけるように、最終年度となる2025年度に向けて、売上収益では年平均成長率4.2%となる4兆2000億円、調整後営業利益は2022年度比1792億円増の5000億円、調整後営業利益率は2022年度の8.6%から、12.0%へと大きな拡大を目指す成長戦略となる。

 そして、成長戦略の中核となるのが「Fujitsu Uvance」であり、2025年度には3.5倍となる7000億円に拡大させる。5月29日、30日の2日間に渡って行われた「IR Day」における経営幹部の発言をもとに、新中期経営計画を深堀りした。

2025年度の目標:財務

 IR Dayは、機関投資家やアナリストを対象に実施したもので、創業88年を迎える富士通にとって、今回が初めての開催となる。しかも、2日間に渡って開催したところに、時田社長 CEOの強い意志が感じられる。

 5月24日に開催された新中期経営計画の会見では、「Fujitsu MICJET コンビニ交付」システムによる証明書の誤発行や、それに伴う個人情報の漏えいについて、時田社長 CEOが陳謝。記者からの質問の半分以上が、この内容に集中し、中期経営計画の説明時間が少なくなったという背景もあり、IR Dayは、それを補足する場になったともいえる。

富士通 代表取締役社長 CEOの時田隆仁氏

新中期経営計画の成長ドライバー、Fujitsu Uvance

 そうしたなか、機関投資家やアナリストの注目を集めたのが、やはり、「Fujitsu Uvance」である。

Fujitsu Uvance

 新中期経営計画の成長ドライバーと位置づけているFujitsu Uvanceは、2022年度に2000億円だった売り上げを、2025年度には3.5倍となる7000億円に拡大させる計画を打ち出し、そのうち、Vertical Areasは、2022年度実績の約100億円から、2025年度には4000億円にまで増加。Horizontal Areasは2022年度実績の約1900億円の規模から、2025年度には1000億円の上乗せを目指す。Uvance全体において3年間で5000億円を増加させ、売り上げで7000億円を達成するというもくろみだ。

Fujitsu Uvance 数値目標

 Fujitsu Uvanceの成長の牽引役となるVertical Areasは、「Sustainable Manufacturing」、「Consumer Experience」、「Healthy Living」、「Trusted Society」の4分野で構成しており、2025年度には全世界で8兆円の市場規模が想定されるサステナビリティグローバルIT市場において、5%のシェア獲得を目指すことになる。また、Vertical領域の粗利率は、2022年度の35%から、2025年度には40%以上に高める考えも示した。
 Vertical領域では、すでに24種類のオファリングを用意しているが、今後は、他社に先駆けてSX(Sustainability Transformation)関連オファリングのラインアップを強化する考えを示し、さらに、業種に縛られないクロスインダストリーでの展開を推進するという。

 中でも成長の柱になると見られるSustainable Manufacturingでは、デジタルサプライチェーンの活用事例を紹介。欧州ビールメーカーでは原材料から生産者までのトレーサビリティ、欧州ファッションブランドによるサプライチェーンの透明化、欧州飲料品メーカーでは再生農業やトレーサビリティの実現、国内重工業メーカーではCO2排出量可視化プラットフォームを実現するといったように、ひとつのグローバル共通サービスを複数の国内外企業に展開。「国内中心や業種中心の展開、あるいはSIビジネスから舵を切り、自社IPをオンクラウドで展開し、スケーラビリティを確保した事業を推進していくことになる」(富士通 執行役員 SEVPの高橋美波氏)とする。これがUvanceを展開する上でのひな型になることを強調した。

Sustainability Transformation
富士通 執行役員 SEVPの高橋美波氏

 また、Consumer Experienceでは、富士通が買収したGK Softwareのリテール向けクラウドオファリングを活用。グローバルの大手量販店上位50社のうち約半分に導入実績を持つ強みを生かして、2025年度には1000億円の売り上げを目指す。

 富士通の古田英範副社長兼COOは、「GK Softwareを日本およびアジアで展開するのにあわせて、日本などで個別に展開していたリテール向けアプリケーションを終息していくことになる」と発言。「富士通全体では、約2000種類の独自の業種パッケージがあり、2022年度末までにこれを半減して、約1000種類にした。グローバル共通サービスを展開するUvance型にシフトし、競争力のないパッケージは終息させ、競争力があるものだけを残す」との方針を示した。

グローバル共通サービスによる1 vs Nの展開
富士通 代表取締役副社長 COOの古田英範氏

 一方、Horizontal Areasでは、「Digital Shifts」、「Business Applications」、「Hybrid IT」の3分野に取り組むことになる。

 SAPやServiceNow、セールスフォースといったBusiness Applications市場を対象に国内外における旺盛な需要を獲得。同時に、デリバリーリソースの強化を図るという。

 また、Business Applicationsの専門人材を強化し、2022年度には3000人規模だった専門人材を、2025年度には8000人に拡大する計画を明らかにした。

 高橋SEVPは、「ここではSAP、ServiceNow、セールスフォースのシステムイングレーションを提供するのではなく、プロセスマイニングやデータ統合などを組みあせた面展開を進めることで、付加価値を提供する」と語る。

 さらに、Fujitsu Uvanceでは、戦略的アライアンスによるオファリングの強化も進める。

 例えば、2023年5月には、マイクロソフトとの提携強化を発表。SXを推進する革新的なクラウドソリューションの開発および提供に向けて、5年間の戦略的グローバルパートナーシップを締結した。具体的には、製造、流通、ヘルスケア、公共分野におけるFujitsu Uvanceのソリューションを共同で開発するほか、マイクロソフトと協力して、日本、欧州、アジア、米国などの2万8000人の富士通の従業員に対し、各分野のソリューションやMicrosoft Cloud for Industriesのクラウドセールストレーニングなどの教育を実施。資格認定の取得も進める。

 また、AWS、ServiceNow、SAPなどとの連携強化を進めているのに加えて、グローバルサステナビリティ企業である英Anthesisとの連携も発表し、脱炭素化実現に向けたワンストップサービスを共同で提供する。測定機メーカーであるスウェーデンのHexagonとの協業では、デジタルツイン技術領域での提案を進めることになる。

 このように、Fujitsu Uvanceのオファリングの強化においては、グローバルパートナーとの戦略的アライアンスが重要な意味を持つことになりそうだ。

戦略的アライアンス

 さらに、コンサルティング機能も強化。社内のテクノロジーコンサルタントを拡充し、Process MiningやData Analytics & AIといった領域での専門家を、2023年度には100人弱に増員。フロントのビジネスプロデューサーやアカウントエグゼクティブと連携して、商談獲得を加速する。さらにグローバルコンサルティングファームとの連携で、上流コンサルティングを強化し、案件の大型化も進めるという。

 Fujitsu Uvanceでは、「お客様のSXを実現するオファリングを他社に先駆けて投入」、「カスタマーベースを活かしてクロスインダストリーに展開」、「コンサルティングの強化とパートナー連携」、「デリバリーリソースの強化」の4点に取り組む方針を示し、高橋SEVPは、「これまでの5年間は、DXによって、企業がより多くのことを達成するための支援をしてきたが、今後5~10年間はSXが中心になり、Fujitsu Uvanceも、そこにフォーカスしていくことになる。富士通は、SXにおいて積極的に市場を作り、リードしていく」と強い意志をみせた。

5つのKey Technologies

 なお富士通では、5つのKey Technologiesとして、「Computing」、「Network」、「AI」、「Data & Security」、「Converging Technologies」を挙げている。

 これはFujitsu Uvanceを支えるテクノロジーとも位置づけている。

 富士通 執行役員 SEVP CTO CPOのヴィヴィック・マハジャン氏は、「SXの実現においては、DXが必要である。データを一元的に処理するComputing、データをつなぐNetwork、データから知恵を出すAI、安心して利用してもらうためのData & Security、人文社会とテクノロジーの融合を実現するConverging Technologiesが重要であり、これらの技術領域に投資することになる。グローバルで戦えることができる分野であり、それらの組み合わせが富士通の強みになる」と位置づける。

富士通 執行役員 SEVP CTO CPOのヴィヴィック・マハジャン氏

 例えば、2023年4月に発表したAIプラットフォームの「Fujitsu Kozuchi」(コードネーム)は、「Uvanceがターゲットとする7つの領域において、AIの知恵を活用することができる。AIイノベーションコンポーネントを自動生成する技術によって顧客価値の進化を加速する」と語る。

Fujitsu Kozuchi (code name) - Fujitsu AI Platform

 また、Computingでは、スーパーコンピュータ「富岳」による日本語生成AIの研究開発をスタート。その成果をUvanceのソリューションに組み込むほか、CaaS(Computing as a Service)を通じて、HPCやデジタルアニーラ技術を、クラウドを通じて提供。2023年には39量子ビットシミュレーターや64ビット超伝導量子コンピュータをリリースするのに加えて、2027年にはARMをベースにし、2nmプロセスを採用したFUJITSU-MONAKAを投入し、「世界中のお客さまへ最高峰の技術を提供し、イノベーションを起こしていく」と述べた。

世界最高峰のComputingへの取り組み
スーパーコンピュータ「富岳」による生成AIに向けた取り組み

 さらに、Networkでは、オール光ネットワークや5G、6G技術を活用し、分散されたAI ノード間のデータをリアルタイムでつなぎ、デジタルツイン社会を実現。Converging Technologiesでは、世界初のソーシャルデジタルツインプラットフォームを確立。川崎市や山形県、英国ワイト島などで、インダストリーとセクターをまたがる社会課題を解決する施策を、デジタルツイン上で検証していることを示した。

5つの重点技術領域

デリバリーの標準化

 Fujitsu Uvanceの成長戦略において、重要な役割を担うのが、デリバリーの標準化である。

 富士通 執行役員 SEVPの島津めぐみ氏は、「プロジェクトごとに個別の手法や基盤、属人化されたノウハウによってデリバリーしていた従来のモデルではなく、体系化したシェアードサービスにより、標準化、自動化を実現していく」と前置きし、「内製化や標準化によって、利益率の改善に取り組むことが重要な鍵になる。品質および生産性の向上、稼働率の向上、Fujitsu Uvanceを支えるケイパビリティの拡大が不可欠である」とコメントした。

 また、「これらの実現に向け、DXのデマンドが強まっている日本市場向けのオフショア率の向上、OneCRMを活用したデータドリブンによる需要予測の向上により、商談初期からのオフショア化。パートナー依存からのシフトによる内製化拡大、JGGを通じたFujitsu Developers Platformやシェアードサービス、AI活用による標準化/自動化の推進、成長領域へのスキルシフトによるUvance要員の拡充、拠点最適から脱却し、7拠点のグローバル横断でのリソースマネジメントを進める」と発言。さらに、「高い従業員エンゲージメントが富士通の品質価値に直結する」と述べた。

富士通 執行役員 SEVPの島津めぐみ氏

 海外7拠点に展開するオフショアセンターであるGDC(Global Delivery Center)と、標準化や自動化、オフショア化を推進するJGG(Japan Global Gateway)は、2022年度末で3万人。内訳はGDCで2万3000人、JGGは7000人。これを2025年度にはGDCで3万人、JGGで1万人の合計4万人に増やす。なお、GDCにおいては成長領域の要員比率を10%から45%に拡大する。「GDCやJGGが持つパッケージ化のノウハウが、Uvanceに貢献していくことになる」という。

 また、デリバリーモデルの進化により、プロジェクトの内製化率は2022年度の59%から、2025年度は64%に、オフショア率は11%から18%に、JGG活用による標準化や自動化の適用については30%から45%にそれぞれ拡大する計画だ。

GDC/JGG人員規模
デリバリーモデル

 5月25日に行われた新中期経営計画の発表の席上、富士通の時田社長 CEOは、デリバリーモデルに関連して、富士通の新たな姿勢を次のように表現した。

 「お客さまにしっかりと寄り添って、きめ細かく対応することの大切さは、誰よりもよくわかっている。これによって、過去の富士通は大きく成長した。その姿勢は、富士通の社員一人ひとりに備わっている。そう簡単にはがれ落ちたりはしない。だが、世の中は変わり、富士通自身も変わっている。かつては寄り添いすぎた部分があり、富士通があまりにも手を貸すため、お客さまの変革のムードを阻害している側面もあった。これは悩ましい課題である」と発言。

 「富士通は個社ごとにきめ細かく対応するのと同時に、広域サービスを担うことを目指しているが、その両立に苦労している。正直なところ、経営として難しいと感じている。最大限にお客さまに寄り添うことを忘れてはならないと思う一方で、できる限り、標準サービスを使ってもらい、富士通がしっかりとエンドトゥエンドでサポートし、責任を持てるビジネスを、お客さまと一緒に作っていく方向で合意したいと考えている。富士通の経営資源にも限界がある。サービスの密度が薄いことで、キャンセルされたり、選ばれたりしないという場合もあるだろう。冷たい経営をする会社だと残念がられるかもしれないが、富士通の成長を支える経営の方針としては、この方向に行くことになる」と述べた。

 一方、富士通のグローバル戦略の観点から見ても、各リージョンが個別にアプローチし、個別のオファリングにより、個別にデリバリーをしていた点は、大きな課題であった。

 2023年4月に新設したCRO(Chief Revenue Officer)に就いた大西俊介執行役員 SEVPは、「CROの役割は、富士通の事業収益の拡大に責任と権限を持ち、特定の領域、機能にとらわれることなく、収益を最大化するための戦略をグローバル横断、俯瞰的な視点で立案、実行のほか、フロントビジネスや全リージョンに対して、Uvanceへのシフトを進めるとともに、戦略パートナーとのGo to Marketをグローバルレベルで推進し、ビジネスを成長させることである」とする。

富士通 執行役員 SEVP CROの大西俊介氏

 グローバルで事業を展開する顧客に対して、強力なガバナンスを持ち、競合と伍(ご)して戦えるGlobal Account Director(GAD)を育成。国や地域を超えた社会課題の解決に一体となって取り組むという。

 大西SEVP CROは、「従来のオペレーションモデルでは、同一のお客さまに対してもリージョン間の連携が限定的であり、リージョンごとのマネジメントモデルで対応していた。それを解決するために、お客さま向け専任体制を敷き、各リージョンにAccount General Manager(AGM)を設置。GADが責任を持って、AGMを推進していくことになる。これにより、グローバルで一貫性を担保したサービスの提供と、Uvanceによるグローバルオファリングの拡大が可能になる」と述べた。

オペレーションモデルの変革

 日本(リージョンズJapan)の取り組みについては、富士通 執行役員 SEVPの堤浩幸氏が説明した。

 日本における2025年の売上収益は1兆4500億円、営業利益率は19.3%を目標に掲げており、Fujitsu Uvanceでは2100億円、モダナイゼーションで2500億円を掲げている。「日本全体では、2025年度のFujitsu Uvanceの売上目標は4200億円であるが、そのうち、フロントビジネスで2100億円を目指す。2025年度までのパイプラインは、Horizontalで3000億円、Verticalで2000億円に達している。2025年度の計画は、実現可能な数字である」と自信をみせた。

富士通 執行役員 SEVPの堤浩幸氏

 また、フロント改革としては、Ridgelinezと一体となった「コンサルティングアプローチ」、Uvanceを中心にしたオファリングによるアプローチや、BDR(Business Development Representative)、SDR(Sales Development Representative)によるデジタルセールスによる新たなアプローチを推進する「オファリングセールス・デジタルセールス」、パートナー窓口を一本化し、プロダクト中心からUvanceを核としたデジタルサービスの拡大に取り組む「国内パートナーとのエンゲージメント」の3点を挙げたほか、開発効率化として、GDCおよびJGGの徹底活用の推進など、品質マネジメント強化では、2023年6月に設置したCQO(Chief Quality Officer)によるガバナンス強化、Fujitsu Developers Platformの活用、OneDeliveryの展開を進めるという。

リージョンズ(Japan)の現状
2025年目標と実現に向けた施策
モダナイゼーション
オファリングセールス・デジタルセールス
パートナーとのエンゲージメント

 海外事業(リージョンズ海外)では、富士通の古田副社長 COOが説明。「Americasでは、不採算事業から撤退し、2022年度からはBAS(ビジネスアプリサービス)に事業を集中し、1年で黒字化を達成した。今後スケールを拡大することになる。Europeでは、プロダクトビジネスを切り離し、工場の閉鎖などの構造改革を行い、サービスビジネスの拡大に向けた整備が完了。2022年度からは、BASとMIS(マネージドインフラサービス)の2つの事業に取り組んでいる。富士通では、海外事業の半分以上が欧州であり、この市場において、低粗利率のMISを、BASにシフトさせ、Uvanceを増やす構造転換が重要になる。2025年度には半々の比率にしたい」とした。

 また、「オセアニアとASEANを含むアジアパシフィックは、業種アプリケーションに特化したアプローチを推進。テクノロジーコンサルティングが得意な4社のM&Aを完了。そのうちの1社であるEnableは、ServiceNowを中心に事業を進めており、UvanceのBusiness Applicationsのひとつのコアファンクションに位置づけ、DX領域の強化、拡大を行っていく」と述べた。

 海外事業における今後の重点施策としては、MISビジネスから、BASへのシフトを加速する「事業モデル・ポートフォリオ戦略」、コンサルティングアプローチを強化する「カスタマサクセス戦略/地域戦略」、CaaSなどの最新テクノロジー活用フレームワークを整備する「テクノロジー戦略」、成長領域に向けたリスキリングなどを行う「リソース戦略」の4つを推進する。「海外事業の成長は、インフラサービスビジネスから、アプリケーションビジネスに構造を転換することに尽きる」と述べた。

富士通が打ち出した“攻めのモダナイゼーション”

 一方、富士通では、「攻めのモダナイゼーション」を打ち出す。

 富士通では、メインフレームの販売を2030年度に終息し、2035年度には保守も終了。また、UNIXサーバーは2029年度に販売を終息し、2034年度に保守を終了することを発表している。島津SEVPは、「今後のメインフレームやUNIXサーバーの規模縮小を上回るモダナイゼーションおよびオンクラウドビジネスを拡大するのが富士通の戦略である。富士通の強みを最大化させた『攻めのモダナイゼーション』を進める。モダナイズしたあとの運用サポートもしっかりと行う点が富士通の特徴であり、同時に他社システムを利用しているお客さまにもモダナイズで攻めていく」と語る。事業規模は、2026年度には、オンプレミスとオンクラウドが半々となるが、その後、オンクラウドの比率が高まっていく見通しだという。

攻めのモダナイゼーション

 2022年度時点で、富士通のメインフレームの国内稼働台数は350顧客、700台となり、UNIXサーバーは730顧客、9400台となっている。

 堤SEVPは、「これらのユーザーを確実にモダナイゼーションに導くことが、富士通のミッションである。すでにモダナイゼーションが始まっており、省庁や金融機関、キャリア、電機メーカー、食品メーカー、製薬会社で大型受注を得ている。モダナイゼーションに対する関心は高まっており、『2025年の崖』やBCP対応、セキュリティ対策などを含めて、モダナイゼーションの動きはさらに加速するだろう」と述べた。

 2022年9月に設置したCoE機能を持つモダナイゼーションナレッジセンターを中核に展開。ビジネスプロデューサーへの商談支援やSEへの技術支援、デリバリーナレッジの収集や整理を行い、実践に基づくフィードバックにより、モダナイゼーションサービスの強化を進めることになる。また、モダナイゼーション手法やツールの整備も行う。

 「富士通が海外で実績を持つメインフレームモダナイゼーションツールであるPROGRESSIONの日本市場への展開を2024年度から計画している。長年培ってきたお客さま業務システムの経験と、DXおよびGXの知見、CoE機能によるナレッジ集約を武器に、市場成長率を上回るモダナイゼーションを目指す」(島津SEVP)とした。

モダナイゼーション市場

 「ITの会社」から「DXの会社」になるというのが、時田社長 CEOが、2019年に社長就任時に発した言葉だ。新たな中期経営計画では、富士通は「DXの会社」から「SXの会社」への進化を目指すことになる。

 Fujitsu Uvanceによる成長ととともに、メインフレームやUNIXサーバーからのモダナイゼーションが本格化する時期に入り、特に、2021年10月にコンセプトを発表して以降、着々と準備を進めてきたFujitsu Uvanceは、まさに本格始動のタイミングとなる。
新中期経営計画の経営指標の目標は高いが、従来の中期経営計画よりもフォーカスが明確化している点は大きな進化である。富士通の成長戦略は、名実ともに新たなフェーズに入った。