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コンカー、ポストコロナを踏まえた「ニューノーマルトラベル構想」を発表 日本の出張業務の高度化を支援

同構想の実現に向けた出張管理ソリューションも提案

 株式会社コンカーは13日、新たに「ニューノーマルトラベル構想」を打ち出すとともに、同構想の実現に向けた出張管理ソリューションを提案した。

 行動制限緩和によって、国内外の出張の動きが徐々に回復しつつあるものの、約8割の社員が海外出張にリスクを感じていたり、出張案件をオンライン会議に置き換えたいというニーズが高まったりしており、出張に対する意識に変化が生じているという。

 一方、カラ請求などの出張に伴う不正の発生が見られ、「出張が本当に必要なのかを判断する新しい基準と、出張先のリスク把握を精緻化する必要性が増加している」(コンカーの三村真宗社長)という状況にある。

コンカー 代表取締役社長の三村真宗氏

 コンカーでは、出張管理ソリューションであるConcur Travelをはじめ、Concur Expense、Concur Requestなどの同社ソリューションを活用することで、「ニューノーマルトラベル構想」を具現化。従来からの出張管理のテーマである「業務の効率化」、「ガバナンス」、「コスト最適化」に加えて、コロナ禍を経て生まれた新たな出張管理のテーマである「テレワークの促進」、「社員の安全管理」、「環境配慮」にも対応し、ポストコロナ時代の新しい出張の在り方を再定義するものになると位置づけている。

 また、今回の製品強化によって、海外出張だけでなく、国内出張におけるすべての業務に対応するソリューションの提供が可能になったことも示した。

 「ニューノーマルトラベル構想」を打ち出した背景について、コンカーの三村真宗社長は、次のように語る。

 「2017年3月にConcur Travelを発表した際に、日本の出張業務における効率化やコスト最適化、不正防止は、欧米に比べて約20年遅れていると指摘した。それをデジタル化によって取り戻すことを目指した。だが、コロナ後では出張の在り方が大きく変化した。オンライン会議の浸透により、すべてを対面で行うという常識が覆り、出張にかかる時間やコスト、リスクを大幅に削減する動きが広がった。また、コロナやウクライナ情勢などの影響により、従業員の健康と安全を守るための組織的な対策が求められている。さらに、ESG経営への意識の高まりにより、出張における環境配慮も課題になってきた。新たな環境において、日本の出張業務を、DXを通じて高度化することで、ニューノーマルトラベル構想を実現していく」とする。

2年間の歳月で変わったこと

 こうした出張を取り巻く環境の変化は、同社が実施した「コロナ禍で変化した出張観に関する調査」による結果からも明らかだ。

 同調査は、海外出張が多い日本企業に勤務する正社員を対象に実施したもので、2022年12月26日~2023年1月8日に、インターネットを利用して調査。600人からの有効回答を得ている。

 これによると、「出張はできる限り、オンライン会議に置き換えるべき」とする回答が78%に達し、社内会議などの社内案件では83%、商談や技術指導、納品といった社外対応でも75%をオンライン会議に置き換えるべきとの回答があった。また、展示会や視察、学会などのイベントにおいてもオンラインに置き換えるべきとの回答も75%を占めている。

 また、海外出張のリスクの高まりを感じるとした人は80%となり、そのうち管理者では85%、出張者では74%となり、いずれも海外出張に対するリスク感度は上昇している。

 だが、出張に際して、タクシーや飛行機よりも、電車や新幹線を利用するなど、環境負荷の低い移動手段を選択し、環境配慮を意識すべきと回答した人は、管理者では72%を占めたが、出張者では42%となり、意識には差があることがわかった。

テレワーク浸透による出張への影響
海外出張時のリスクについて
環境配慮への取り組みについて

 さらに同調査では、出張管理における課題についても明らかにしている。

 出張における意図的な不正が発生したことがあるとの回答は51%、カラ出張(旅費の横領など)が社内で生じている可能性があるとの回答は62%に達したほか、出張についてコスト削減の余地があるとの回答は75%を占めた。また、出張の手配や生産が面倒する回答は、管理職で76%、出張者で63%に達しており、調査結果から、出張における不正リスクが懸念されていること、出張コストが十分に最適化されていないこと、出張には業務効率化の余地が多いことが浮き彫りになっている。

出張管理における現状と課題

 コンカーでは、ニューノーマルトラベル構想を実現する具体的なソリューションについても説明した。

 Concur Travelでは、一般的なインターネットサービスと同様に出張プランを検索でき、ログインユーザーを認識していることから、従業員の職種などにあわせて、守るべき出張規程に準拠したプランを表示。出張者は安心してプランを選択できる。従業員が規定違反したプランを選択できないため、企業側にとっても購買統制ができるメリットがある。

Concur Travel

 またConcur Requestでは、Concur Travelと連動させて利用することで、計画した旅程を自動入力し出張申請が行えるほか、スマホアプリのTripItと連動させることで、Concur Travelで予約した旅程や、それ以外で予約した旅程もスマホに表示できる。到着地から目的地までの移動手段の検索、登録した空港の地図の表示、近隣のレストランやバー、コンビニなどの施設を表示。さらには、滞在先の安全情報をスコア化して提示することができる。

 「紙の旅程表が不要になり、常に最新の旅程に更新される。さまざまな情報と連動させることで、利便性を高めることができる」(コンカー デジタルエコシステム本部ソリューションマーケティング部ソリューションコンサルタントの丸山英児氏)。

 さらに、Concur Travelなどに蓄積された旅程データを、リスクマネジメントパートナーと自動連携することで、伝達漏れなどのヒューマンエラーの心配がなく、出張中のさまざまな支援が受けられる。

Concur Request
旅程の自動連携

 そのほか、Concur Expenseにより、出張中に立て替えた経費だけでなく、旅行会社で手配した費用分などもデータ連携ができ、すべての旅費を可視化。分析機能を利用して、ダッシュボードに表示し、さまざまな角度から利用状況を確認することができる。また、誰が、どの程度違反しているのかといったことを把握したり、データをもとに、毎回、高額なプランを利用する従業員に警告し、利用理由を確認することで、適切な旅費の利用に改善するといった使い方もできるという。

 また、出張の必要性を再考し、出張を精査するための機能も提供する。

 「かつては、出張するという選択しかなかった場合でも、いまはオンライン会議によって代替するという手段がある。また、出張の方針があいまいなままだと、現場での選択が主観的になり、自分の出張は大事だが、部下の出張は不要という判断になることが想定されるため、出張の方針を明確にする必要がある。Concur Requestを利用して、出張稟議(りんぎ)プロセスに出張ルールを組み込むことで、出張の目的に応じて、オンライン会議を促すメッセージを自動表示することが可能になる」という。

ルール設計から実態把握までを仕組み化するイメージ

 さらにConcur Requestは、社員の安全管理にも活用可能。蓄積されている世界各国の危険情報を活用して、出張計画中にリスクを自動チェックすることができる。

 「これまでのリスク管理は、出発後に事故や事件が起きたときに、従業員を守る点が重視されていたが、新たな機能によって、計画段階から注意を喚起し、リスクを未然に防ぐことができる。人手ではカバーできないあらゆる地域の細かい危険情報を反映することができる」とした。

リスクの自動チェック

 出張による移動によって発生するCO2排出状況を自動測定し、分析し、ダッシュボードに表示。それを確認することで、従業員が自分ごととして、CO2削減に向けたアクションを取ったり、環境配慮について出張者の意識醸成を促したりする機能も搭載した。

CO2 排出状況を分析するダッシュボード

 コンカーでは、国内出張における業務のうち、手配および予定確認といった業務においてソリューションが提供できていなかったが、今回、この領域もカバーすることで、海外出張だけでなく国内出張においても、出張業務全体のデジタル化できるようになったという。

 これにあわせて、JTBビジネストラベルソリューションズ(JTB-CWT)では、コンカーのソリューションを活用して国内出張管理の高度化を実現した。JTB-CWTが提供する出張手配ポータル「B+PLUS」と、コンカーの「Concur TripLink」を連携することで、国内出張データをSAP Concurのプラットフォーム上で活用。TripItやConcur Business Intelligenceとの自動でのデータ連携を実現し、国内出張においても、出張申請から手配、予定確認、出張精算、分析までの業務が一気通貫に行え、Perfect Trip Managementが実現できるようになったという。

 B+PLUSは、約1800社、約270万人が利用。航空券、鉄道、宿泊、パッケージの各種予約システムと連動しており、ほとんどの国内出張をワンストップで予約できる。

 JTBビジネストラベルソリューションズ 取締役兼執行役員の伊藤貴幸氏は、「B+PLUSとConcur TripLinkの連携により、旅程の詳細を確認しながら出張精算が可能になり、業務の効率化を実現するほか、国内出張に関するデータを、コンカーのBIで分析し、管理者がその結果を確認したり、これを有事の際にも活用し、危機管理業務をサポートしたりできる。また、スマホアプリで旅程管理ができ、通知などのアプリ機能を利用することで出張者の利便性も向上できる」と述べた。

「JTB CWT TripLink」連携で実現できること

 また、コンカーの丸山氏は、「国内出張管理においては、不正を防ぐことが重要になっている。新幹線切符を駅で購入し、その後、払い戻しした現金を横領。虚偽の出張精算で領収書を提出するといったカラ出張や、不正精算、不適切な旅費利用なども起きている。会社払い精算のフローを採用したり、プロセスをデジタル化することで精算を可視化したりといった仕組みづくりが大切である」と指摘。JTBビジネストラベルソリューションの伊藤氏も、「国内出張は全体の約9割を占めるものの、国内出張に関する規則内容があいまいで、明確な基準がない企業が61%を占めている。海外出張だけでなく、国内出張においても管理の必要性が顕在化している。国内出張管理を高度化する意義は大きい」と語る。

 こうした国内出張における不正防止の課題にも、出張管理ソリューションが活用できるとした。

 なお、コンカーでは、2022年時点で108社のConcur Travel & Expenseの国内契約数を、2025年までに約倍増となる累計200社を目指す計画も示した。また、JTB-CWTのTripLinkの契約数は、現在の6社から、2026年までに84社に拡大する目標に掲げた。

Travel事業の成長戦略

 一方、今回の会見では、BTM(Business Travel Management)HUB Japanについても説明が行われた。

 BTM HUB Japanは、出張管理リテラシーの向上を目指すコミュニティとして、2021年に発足。現在、13社24人が参加しているという。

 コンカーの丸山氏は、「日本が欧米に比べて出張管理が遅れている理由はいくつかある。ひとつは、欧米には、出張管理を専門とするトラベルマネージャーという職種があり、企業が専門職として採用していること、また、出張管理に関する資格が存在したり、トラベルマネージャー向けのコミュニティやイベントが開催されたりしており、出張管理に関するメソッドが体系化されている。日本にはこうした活動がない。BTM HUB Japanは、これらの課題解決の糸口になることを目指して設立した。非競争領域であるため、企業の垣根を越えて協力しあうことができる」と述べた。

 また、BTM HUB Japanに参加している野村ホールディングス コーポレート・デザイン・パートナーズ ヴァイスプレジデントの持留知佳氏は、「BTMは、出張規程が守られているかを管理するだけでなく、出張計画から精算までの業務効率化や、不正が発生していないかを管理するガバナンス、従業員の安全管理、旅費コストの最適化のための調達交渉など、幅広い要素を含んでいる。これらの領域をデジタル化し、データに基づいたマネジメントを行うことが大切である。BTM HUB Japanは、トラベルマネージャーに必要なナレッジのハブとなり、共有することを目指している。また、航空会社やホテル、旅行会社のほか、旅行関連システムを支えるシステムベンダーなど、旅行市場を支える企業にも参加してもらっている。企業が抱える出張に関する課題について議論しているほか、今後は、企業側から旅行業界に向けた提言も行いたい。多くの企業に参加してもらい、出張管理の高度化につなげたい」と抱負を述べた。

野村ホールディングス コーポレート・デザイン・パートナーズ ヴァイスプレジデントの持留知佳氏