大河原克行のキーマンウォッチ

日本マイクロソフト・吉田仁志社長に聞く、「MSがこれから変わること、変わらないこと――」

「日本は世界とは違う」という時代はもう終わった

――そういえば、吉田社長は「人見知り」の性格だと聞きましたが(笑)

 はい、その通りです(笑)。ただ社長の仕事をしていますから、無理をして社交的になろうと努力をしていますよ(笑)

――平野卓也前社長の年齢が49歳でしたが、吉田社長の年齢は58歳。日本マイクロソフトの社長就任年齢としては、過去最高齢となります。日本の企業には60歳という節目もありますが、そのあたりはどう考えていますか。

 年齢は意識していませんし、60歳でバトンを渡すということも考えていません。一方で、いつまでもやろうということも考えていません。日本マイクロソフトで、すべきことをしたい。それが終わったらバトンを渡すということになると思います。

――すべきこととはなんでしょうか。

 日本の経済力やIT力、企業力が弱くなっています。日本の企業の競争力やポジションも、私たちが社会人になったときに比べて、厳しい状況にあります。いまの状況を変えていかなくてはなりません。そこに貢献できる企業のひとつが日本マイクロソフトです。目の前のお客さまにしっかりと向き合って、DXを支援し、お客さまの成長をお手伝いしたいと考えています。

 「日本は世界とは違う」という時代はもう終わりました。私は強くそう信じています。日本はグローバルとは違うからとか、あるいは日本だからこうしなくてはいけない、というのではなく、グローバルの中で日本はどう立っていくのかということを考えることが大切です。

 かつての日本は、成長が著しく、日本だけでビジネスをしていてもよかったが、その時代はすでに終わっています。これまでとは違う状況の中で、土俵を変えても戦える強さを日本の企業はつけなくてはなりません。そのためには、個々の力を強くしていく必要があります。私は、そのお手伝いをしたいと考えています。

――ちなみに日本マイクロソフトでは、2019年中に、全社員がAzure認定技術者の資格を取得することに取り組んでいましたが、吉田社長も取得しましたか。

 それは、一発合格で取得しました(笑)。

 私が入社した時点でスタートしていた取り組みで、当然、私も取得することになったのですが、いくら新任社長とはいえ、社長が一発で合格しないと示しがつかないですからね。

 ただ、技術的なバックグラウンドを持たないアドミニストレータなどの社員も一発で合格していたりしましたから、日本マイクロソフト社員のスキルの高さには驚いています。

――日本マイクロソフトでは、2020年に、日本で「No.1のクラウドベンダー」になることを目標に掲げています。この目標は吉田社長体制でも掲げることになりますか。

 「No.1のクラウドベンダー」という目標には、継続的に取り組んでいきます。ただ、2020年にどの領域でNo.1を達成するのかということは、少し考える必要があります。

 日本マイクロソフトは、IaaSやPaaSに加えてSaaSでもビジネスをしており、これを加えると、シェアという観点でNo.1を手中に収めることができるでしょう。しかし、IaaSやPaaSでは第2位の立場です。

 第2位の立場であれば、次に目指すのは1位しかありません。ここでも、当然、No.1を目指したい。私は、日本マイクロソフトのクラウドビジネスの成長をもっと加速していきたいと考えていますし、お客さまの中で、クラウドベンダーとして最も記憶に残る企業であることにもこだわっていきたいですね。

 市場での「シェア」や、お客さまやパートナーの「記憶」といった、複合した要素をとらえながら、No.1を目指したいですね。

2020年に、日本で「No.1のクラウドベンダー」になることを目標に掲げている

――日本マイクロソフトがこれから変わること、そして、これからも変わらないことはなんでしょうか。

 テクノロジーに対するパッションはこれからも変わらないことですし、お客さまに対して正しいことをして、貢献する姿勢は変わらないことだといえます。私は、マイクロソフトの魅力はここにあると思っています。日本のお客さまが、独自性を生かし、世界で活躍し、日本社会を活性化することを支援し、一種に変革に取り組みたいと思っています。

 一方で、変わるところは、さらにチャレンジ精神を持った企業になるということです。クラウドで第1位の立場を目指すというチャレンジのためには、私たちがもっとお客さまのことを知らなくてはなりませんし、お客さまを知るということは、もっと謙虚にならなくてはいけません。それによって、お客さまと一緒に成長していくことになります。

――2020年(2020年1月~12月)の日本マイクロソフトはどんなところに力を注ぎますか。

 もっとシェアを伸ばしたいと考えていますし、大きなプロジェクトにも積極的に取り組んでいきたいですね。

 お客さまを理解するという点では業種別体制の強化や人材強化が大切ですし、ビジネスを拡大する上では、パートナー各社との連携の強化が不可欠です。特に、日本では、パートナービジネスが重要であり、DXを加速することができるパートナーとの連携を強めたいですね。また、パートナーやお客さまと作ったソリューションを、マーケットプレイスに乗せて展開することも考えています。これは、日本のパートナーにとって、グローバルに展開できる垣根がないビジネスになります。

 日本マイクロソフトは7月から新たな年度が始まりますので、それに向けて、いま、いろいろなことを考えはじめたところです。そのタイミングになれば、今後の方向性についても新たなお話ができると思っています。