大河原克行のキーマンウォッチ

“日本社会の再活性化”を新方針に掲げた日本マイクロソフト・吉田仁志社長に聞く、日本企業のDX支援への意気込み

 日本マイクロソフト株式会社は、新たな方針として「Revitalize Japan(日本社会の再活性化)」を掲げた。コロナ禍でデジタル化の大きな遅れが表面化した日本の社会を、デジタル技術やクラウドを活用し、DXを促進。日本全体を元気にすることを目指す。

 これまで、「Transform Japan、Transform Ourselves」という言葉を使って、日本マイクロソフト自らの変革が日本社会の変革につながることを示していたが、新たに「Transform Together」という言葉を付け加え、パートナーや顧客とともに一緒に変化することが今後の重要なテーマだとする。

 Revitalize Japanのエンジンと位置づけるMicrosoft Cloudの強化や、話題を集めているWindows 11の発売、さらには、政府・自治体への取り組み、大手企業や中堅中小企業への取り組みなど、注目を集める日本マイクロソフトの動きについて、同社の吉田仁志社長を直撃した。

吉田社長が新たな方針として掲げた「Revitalize Japan」

日本マイクロソフト自らがDXに挑み、その成果を見せてきた

――この1年は、日本マイクロソフトにとって、どんな1年でしたか。

 日本マイクロソフトが、トランスフォーメーションへの大きな一歩を踏み出すことができた1年だったといえます。私たちのこの1年間の活動を、「Transform Japan、Transform Ourselves」という言葉に込め、お客さまに寄り添うマイクロソフトを目指してきました。その点から見れば、とてもいい1年だったと考えています。

 トランスフォーメーションの指標のひとつに挙げたクラウド利用率の拡大は、前年比60%増と大幅な成長を遂げたこと、また大型プロジェクトを推進でき、お客さまのDXを支えることができたことも、大きな成果であったと考えています。また、産業界だけでなく政府や自治体でも、Microsoft Azureをはじめとしたクラウド活用が進んでおり、顧客満足度調査でも高い評価を得ています。

日本マイクロソフトの吉田仁志社長

――「Transform Japan、Transform Ourselves」は、当初は社内用語として外部には出していない言葉でしたが、この1年で積極的に外部に露出してきましたね。

 日本マイクロソフトは、まずは自問自答し、自分たちをトランスフォームしなければいけないという気持ちがとても強い。自分たちが変わらなければ、お客さまを変革し、ひいては日本を変革することはできないと考えているからです。

 デジタル化をすることがDXであると勘違いしている日本の企業が多く、それが違うことを示すためにも、日本マイクロソフト自らがDXに挑み、その成果をお見せすることが大切であることを多くの社員が理解しています。

 ですから、Transform Ourselvesに取り組むことが最初のステップとして大切なことなのです。実は、2021年7月以降、これにもうひとつ、「Transform Together」という言葉を付け足したんです。

 数年前までの日本マイクロソフトの提案は、Windowsの置き換えという切り口からの話が中心だったり、自分たちが持っている製品の範囲でしか提案をしなかったりという状況にありました。

 しかし、いまは、お客さまのビジネスの課題はなにかというところから会話が始まっていますし、日本マイクロソフトが一緒にできることはなにかといった話し合いが増加し、商談もDXという切り口に発展することが増えています。

 なかには戦略的パートナーシップを組む場合もあります。その際には、どこまでビジネスを拡大させるのかといった骨格をもとに、5~10年先までの時間軸で、どんなものを作っていくのか、そのためには両社がどう連携するのかといったことを共通の目標として設定することになります。

 こうした動きになると、商談の規模が一桁違ってきます。グローバルの社内会議でも日本の事例を取り上げることが増え、そこに米国本社がどんな支援ができるのか、達成するためにはこんなアイデアを活用してみてはどうか、といった話がどんどん出てきています。

 Transform Japan、Transform Ourselves、そしてTransform Togetherは、すべてDXの話です。ですから、これらのメッセージも、1年だけで終わらせるのではなく、中期的な視点でとらえ、継続的に取り組んでいくことになります。

――吉田社長は就任以来、「マイクロソフトといえばDX、DXといえばマイクロソフト」と想起してもらうことを目指すといってきましたが、それは定着してきましたか。

 社員の間では、DXの話が頻繁に出ています。Transform Japan、Transform Ourselves、そしてTransform Togetherといった取り組みが実行に移されている点では、「マイクロソフトといえばDX、DXといえばマイクロソフト」の定着に向けて、1.5歩あるいは2歩といったように、少し先に歩みを進めることができたのではないかと思っています。

 DXの商談になると、まとまるまでの時間がどうしても長くなります。そのため、すぐに成果にはつなげにくい、すぐに売り上げには計上できないという点があります。しかし、慌てずに、着実に、少しずつ歩みを進めるといった取り組みが大切だと考えています。

“Revitalize Japan”を掲げて日本の社会を支援

――2021年7月から始まった日本マイクロソフトの2022年度は、基本方針に、「Revitalize Japan(日本社会の再活性化)」を掲げました。この言葉に込めた意味を教えてください。

 これはDXの延長でもあります。情報通信白書2021年度版では、DXに取り組んでいる日本の企業はわずか13%にすぎないことが明らかになっています。日本では、DXがまったく進んでいないのです。

 DXを成功させるには、「ビジョンと戦略」、「組織文化」、「独自性」、「人材」の4つの要素が重要ですが、これらを推進するために、Revitalize Japanという基本方針を掲げ、それぞれの取り組みを加速し、「大企業」、「中堅・中小企業」、「公共・文教・医療」、「個人」といった切り口から日本の社会を支援し、再活性化につなげられるような仕組みを構築しました。

日本のデジタルトランスフォーメーションへ向けて
2022年度のプライオリティ

 例えば、大企業向けには、インダストリークラウドを中心にした取り組みに力を注ぎます。大手企業が持つ課題解決に近づくためには、業界に特化したクラウドの役割が重要になってきています。同時に、社内体制も、よりインダストリー寄りのものに再編しています。エンタープライズ部門は、エンタープライズサービス事業本部と、エンタープライズ製造事業本部に分け、お客さまのより近くに行き、産業特有の課題についても話ができるような体制を敷きました。カバレージを広げながらも、主要なお客さまごとにしっかりとソリューションを提案していくことを重視していきます。

 さらに、マイクロソフトでは、新たな取り組みとして、Microsoft Cloud for Sustainabilityをスタートしていますが、これもインダストリーごとに進めていくことになります。

 一方、中堅・中小企業を活性化することは、日本を元気にするためには不可欠な取り組みですから、ここにも力を入れていきます。ここで重要なのはパートナーとの緊密な連携になります。ソリューションづくりをパートナーとともに行うほか、Microsoft TeamsをはじめとしたMicrosoft 365の利用促進、とがったテクノロジーやソリューションを持っているISVやスタートアップ企業との連携強化も進めていきます。

 日本マイクロソフトでは、中堅・中小企業におけるクラウド活用を、5年間で10倍に拡大していく計画を打ち出しています。これも、パートナーとの連携が中心になる取り組みです。この1年で、パートナーとの協業案件数は、実に400倍にも増加しています。この勢いをさらに加速させたいですね。

――Revitalize Japanでは、具体的には、なにを「再活性化」していくことになりますか。

 コロナ禍で、日本のデジタル化の遅れが浮き彫りになったように、日本は、失われた30年から再生していかなくてはなりません。もっととがったことをやらなくてはいけないし、社会を活性化しなくてはならない。そのためには、デジタルの力や、クラウドの力を活用する必要があります。正直なところ、コロナ禍で危機感を持った人たちは多いものの、まだまだその危機感が足りず、変革の進みが遅いのが現状です。

 また、多くの経営者が危機感を持っていても、これを企業全体や社会全体に浸透させることができていないというジレンマもあります。企業のトップと話をすると、もっと機敏に動きたいと考えても、足並みがそろわず、全体がついてきていない企業が多いことを感じます。私は、残された時間はあまりないという危機感を持っています。そうしたことをもっと共有していく必要があります。

Microsoft Cloudが日本社会の再活性化のエンジンに

 そして、日本のDXの遅れや働き方改革の遅れの元凶になっているのが、クラウド化の遅れです。日本のクラウドの利用率は世界平均の半分程度ですし、ビッグデータの活用も63カ国中63位。こうしたことを改善していくことが、日本の再活性化のベースになります。

 今後10年間で、これまでの40年よりも多くのデジタル化が進むと考えられています。そのなかでは、日本は後れを取ることなく、デジタル化やクラウド化に積極的に取り組む必要があります。

 そうした将来を見据えた時に、日本社会の再活性化を目指す「Revitalize Japan」のエンジンになるのが、Microsoft Cloudだと思っています。

Revitalize JapanのエンジンになるMicrosoft Cloud

――Microsoft Cloudの強みはどこにありますか。

 Microsoft Cloudは、最も信頼される包括的なクラウドです。それを実現するために4つの特徴があります。

 ひとつめは、「デジタルインフラ」としての強みです。2030年までにインターネットに接続するデバイスは約500億台に達し、2025年までに発生するデータ量が175ゼタバイト(ZB)以上になります。地球上の砂浜の砂つぶの数は1.8ZBですから、地球100個分の砂つぶと同じ量の膨大なデータが生まれていることになります。これだけ多くのデータを処理するために、Microsoftは、世界60リージョン以上にデータセンターを設置し、35カ国にデータ所在地を持ち、世界各国の100以上のコンプライアンス認証を得ています。データセンターの数は、競合各社のデータセンターの数を足しても、それを上回る規模であり、Microsoftは、これだけ多くの投資をデジタルインフラに行っているのです。

 クラウドが世界のコンピュータになり、そこで、ビジネスを行っているMicrosoftは、社会に対する大きな責任を持っています。今後、デジタルインフラはますます重要になります。エッジデバイスから出たデータをAzure上に収集し、AIで得たインサイトをもとに、生産性、効率性、効果をあげ、社会を変革していく基盤になるからです。ここにMicrosoftの強みが発揮されることになります。

 2つめは、「ハイブリッドワーク」です。働き方は日々変化しています。調査によると、従業員の73%が今後もリモートワークを選べることを希望する一方で、67%の従業員がオンサイトでの対面によるコラボレーションを望んでいます。つまり、どちらもやりたいというのが働く人たちの声なのです。私もオンラインの良さを感じながらも、フェイストゥフェイスで対話をしたり、時には現場で雑談することのメリットが大きいことも感じます。隣の声が聞こえてくるというのは、実は大きなビジネスメリットがあるのです。

 日本マイクロソフトでは、コロナ前から積極的にハイブリッドワークを推進してきましたが、これからは、コロナ前とは違うハイブリッドワークが生まれてくると思います。世界のさまざまな場所を結んで会議をすることが普通になっていますし、場所を問わずに会議をすることが増えています。また、名古屋にいる社員が、デジタルセールスで東京のお客さまをカバーするということも起きています。

 現在、Microsoft Teamsは、全世界で月間2億5000万人が利用しており、企業での利用だけでなく、学校の遠隔授業や、医療分野におけるリモート診断などにも利用されています。こうした新たな社会インフラとして、Microsoft Teamsが幅広く活用されることにも期待しています。

――2021年11月に開催された開発者向けイベント「Microsoft Ignite 2021 Fall」では、メタバースへの取り組みが発表され、話題を集めました。Mesh for Microsoft Teamsとして、アバターを活用したイマーシブ空間のデモンストレーションが行われました。

 ハイブリッドワークの進化系として、メタバースの世界が存在します。マイクロソフトが提案しているのは、エンタープライズ領域やコマーシャル領域におけるメタバースの実現です。特別な機器がなくても、パーソナライズされたアバターなどを利用して、会議に参加している人たちが、物理的に存在せずに議論したり、ハイブリッドな環境を実現する手段のひとつになったり、といったことが期待できます。

 今後、時代の変化をとらえたり、技術進化をとらえたりしながら、メタバースの世界も進化していくことになるでしょう。アバターではなく、実際の人の映像が同じ空間に存在して会話をするといった未来の映画のような世界が実現する時代がやってくるかもしれませんね。

――Microsoft Cloudの残りの2つの強みはなんですか。

 3つめは、「セキュリティ」です。Microsoftは毎年、セキュリティに10億ドル以上を投資し、今後5年間で200億ドルの追加投資を行うことを発表しています。さらに、1日24兆ものシグナルから脅威を分析し、毎月50億回もデバイスからの脅威を検知しています。

 こんなことは、一般の企業にはできません。ですから、セキュリティは、ぜひMicrosoftに任せてほしい。企業がセキュリティに人を割いたり、労力を割いたり、資金や心も割く必要はありません。企業には、イノベーションによってビジネスをよくする方に、これらのリソースを使ってほしい。防御ではなく、攻めに使ってほしいのです。

 世界で一番セキュリティが強い会社はMicrosoftです。Microsoft Cloudは、データ、デバイス、アイデンティティ、プラットフォームを包括的に保護することができます。セキュリティはMicrosoft Cloudの大きな強みであると胸を張って言えます。

 そして、4つめは、「ローコード・ノーコード」です。日本では、2030年に、約79万人のデジタル人材が不足すると言われています。MicrosoftではPower Platformにより、ローコード・ノーコードの世界をリードしています。デジタル人材の不足を補うには、ローコードは必須になってくると考えています。また、パートナー企業とともに、ローコード・ノーコード開発が行える人材を、国内で5万人を育成することに取り組んでいるところです。ここでは、デジタルに関するスキルを習得するだけでなく、デジタルを使いこなせる人材を育成することが大切だと考えています。

重点分野である公共・文教・医療への取り組み

――日本においては、政府、自治体のデジタル化が急速な勢いで進展しようとしています。Revitalize Japanのなかでも、「公共・文教・医療」が重点分野のひとつになっています。日本マイクロソフトは、この分野にどう取り組んでいきますか。

 実は日本マイクロソフトでは、いままでにない規模で、社員数を増加させています。特に強化しているのは、政府・自治体の領域で、2021年7月にデジタル庁専任チームを発足し、デジタル庁をサポートする体制を強化しました。また、公共分野を担当するパブリックセクター事業本部のほかに、防衛省を担当するディフェンス&インテリジェンス部門を設置し、それぞれの要望にあわせた対応を行えるようにしています。

 さらに日本マイクロソフトでは、ISMAP(政府情報システムのためのセキュリティ評価制度)の登録完了時期が2021年6月となり、他社に比べて遅れたものの、Microsoft 365で25サービス、Microsoft Azureで206サービスの登録が完了し、他社の追随を許さない最大規模の登録数となっています。東日本リージョンの5つのデータセンター、西日本リージョンの5つのデータセンター、日本からの契約によって利用が可能な全世界41リージョンでも登録が完了しています。登録するのもかなりのコストがかかるのですが、そこにもしっかりと投資をしています。

 加えて文教では、未来を担う子どもたちや学生のために、ICT環境の整備に加えて、一人ひとりに寄り添った質の高い教育を提供できるように支援していきます。海外での事例を見ても、端末を配置しただけではうまくいかないことがわかっています。日本はGIGAスクール構想によって、世界でも有数のデバイス整備環境が整いましたが、今後は、そこでどんな教育をしていくのか、教員のスキルをどう養っていくのかということが大切になります。

 また今年は、高校でのデバイス整備が始まっていますが、なかには、スマホで1人1台環境を整えようとしている例もあり、そこには懸念をしています。検索作業ならばスマホでもいいのですが、生徒にクリエーティブなことをやらせたいといった場合には、必ずパソコンが必要になります。これから必要になるローコード・ノーコードを学ばせたいという場合にもパソコンが必要です。

 なぜWindowsが教育分野に最適なのか、そこで日本マイクロソフトはどんな貢献ができるのかということを、もっと訴求していきたいと考えています。

 このほか医療分野では、必要としているすべての人に適切な医療が提供できるように、最新テクノロジーを用いて、医療機関や製薬会社を支援していきます。

――政府のデジタル案件では、2020年10月の「第2期政府共通プラットフォーム」、2021年10月の「ガバメントクラウド」の採択で、いずれも日本マイクロソフトの名前はありませんでした。政府の大型案件に2連敗という印象があります。日本マイクロソフトは、この領域で存在感を発揮できていないと感じますが。

 この分野でAWSが先行していたのは確かです。日本マイクロソフトが公共領域に本腰を入れたのは3年前からであり、その後着々と準備を進め、体制を整えてきています。ISMAPの登録においても、ここまで広く深く登録しているのは日本マイクロソフトしかありません。IaaSも、PaaSも、SaaSも提供している唯一のクラウドプロバイダーであり、実際、Microsoft 365は多くの省庁で利用されています。

 確かに2連敗という言い方もありますが、私は、そうは思っていません。これから何戦もありますし、日本マイクロソフトは、大きな流れでは勝ちたいと思っています。

 デジタル庁専任チームは、製品に対する専門性を持っている社員だけでなく、クラウドアーキテクトやセキュリティスペシャリスト、エンジニアやアフターセールス担当者などで構成され、米国本社との直接窓口を作ることで、機能に対する改善要求に対しても、デジタル庁の声をストレートに反映し、いち早く対応できるような体制を敷くことになります。

 デジタル庁との定期的な会合を通じて、Microsoft米本社が持つ海外政府のDX事例の紹介や、AIやゼロトラストなどの最新テクノロジー動向に関するワークショップの開催、安全保障に関する情報交換なども実施していきます。また、製品ロードマップの共有やトラブルシューティングへの対応なども行うことになります。

 さらに日本マイクロソフトでは、デジタル庁のニーズに対応できるよう、専任チームには直接契約ができる体制を整えます。デジタル庁に関する入札において、クラウドサービス事業者による直販が前提となる場合が想定されますが、それにも対応できるようにします。

 デジタル庁とは、これまで以上に緊密な体制を敷きたいと考えています。

デジタル庁向け専任チームを発足

Windows 11の手応えは?

――2021年10月5日から、Windows 11の出荷が始まりました。手応えはどうですか。

 日本マイクロソフトの社員全員が、すでにWindows 11を使用していますよ。使ってみて私が感じたのは、新たな生活様式にあわせた使い方ができるようになっていることですね。例えば仮想デスクトップでは、複数のデスクトップを利用して仕事を分けたり、個人用のデスクトップを作ったりできますし、Teamsがビルトインされており、チャットの使い勝手も向上しています。さらに、セキュリティが強化されている点も特徴です。利用している方々からの評判はとてもいいですね。機能面や使い勝手の面で、大きな進化を遂げたことが評価されています。

――10月5日に、日本マイクロソフトは記者会見や発売イベントは行いませんでした。PC業界を盛り上げるという点ではマイナスだったのではないでしょうか。

 コロナ禍において、環境が大きく変わっています。Windows 10までとは異なり、人を集めて盛り上げるということではなく、オンラインなどを効果的に活用し、しっかりと情報を届けるところに力を注ぎました。

 また10月5日以降、Windows 11のテレビCMを行っていますが、これは日本だけに個別予算が与えられ、日本独自に行っているものなのです。Windows 11では、世界同一のマーケティング活動を行っており、そのなかで日本は唯一、異なる展開が許されたという点でも、Windows 11の普及において、日本市場が重視されていることがわかると思います。

 このテレビCMでは学生を対象にし、最新のWindowsを使って、明るく、楽しく、自分らしい世界を作ってほしいというメッセージを込めています。学生が最新のWindowsデバイスを手に入れて、より多くのことを達成することに期待しています。

Windows 11の学生向け施策

 さらに量販店店頭では、Windowsエリアを、主要量販店を中心に全国67店舗で展開し、PCメーカー各社が投入したWindows 11搭載パソコンを一堂に展示しています。ここでは、最新デバイスを比較しながら、自分に最適なパソコンを検討できますし、トレーニングに合格したWindows 11認定販売員が常駐し、丁寧に説明をしてくれます。Windows 11認定販売員は、すでに全国で3500人以上が認定されていますから、安心して相談してもらえる環境が整っています。

 Windows 11によるPC業界全体の活性化はこれからです。国内では、すでに100モデル以上のWindows 11搭載パソコンが発売されていますが、今後、この数はもっと増えていきますし、日本マイクロソフトもSurfaceシリーズによって、Windows 11の世界を活性化していきます。

 いまは、年末商戦に向けてコンシューマ領域での訴求が中心になっていますが、年明け以降は、企業に向けた提案活動や、PoCを含めた導入支援を強化したりといったことも考えています。

Windows 11搭載PC

一歩ずつ着実に変革を進めていく

――2022年6月期となる2022年度は、どんな成果をあげたいと考えていますか。

 「Transform Japan、Transform Ourselves」に、「Transform Together」の実行を加速したいと考えています。これまでは、新しい日本マイクロソフトに変革し、「やるぞ」といって旗振り段階だったものから歩みを進め、組織で動き、パートナーとともに動くことにシフトチェンジしていきます。Transform Togetherという新たな考え方が、社員に浸透し、それによって組織を改革させていきたいですね。

 これまで社外には公表したことはなかったのですが、日本マイクロソフト社内には2024年に向けた社内計画があり、そこで、日本マイクロソフトの目指すべき姿を描いています。具体的な内容は明らかにはできないのですが、これまで以上にDXの案件を増やすこと、戦略的パートナーをさらに増やすこと、トランスフォーメーションをより広く、より深く行い、お客さまのビジネスに、どれだけ貢献できたのかといたことを重視していくことになります。

 また、このなかには、かねてから掲げていた「クラウドナンバーワン」という目標も入っています。いまでも、クラウド市場全体ではトップシェアですが、IaaSの領域でも、より多くの企業、政府、自治体に利用していただきたいと考えています。

 変革の道のりは長いものです。すぐには変わりませんから、一歩ずつ着実に進めていくことになります。2024年の姿に向けては、いまの状況は「so far, so good」というところでしょうか(笑)。