ニュース

ティントリ、仮想化専用ストレージ「VMstore」にレプリケーション機能を追加へ

パートナーも4社体制に拡充

 ティントリジャパン合同会社(以下、ティントリ)は、仮想化環境専用ストレージ「Tintri VMstore」において、仮想マシン単位で実行可能なレプリケーション機能を、2013年第2四半期に提供開始すると発表した。同製品のOSであるTintri OSに、オプションとして搭載される予定。またパートナーを拡充し、4社体制で販売やサポートを進めることも明らかにした。

仮想化に特化したVM-awareストレージ

仮想化環境に特化したストレージである「Tintri VMstore」
Tintri VMstoreの実物

 ティントリの基幹製品であるVMstoreは、仮想化環境(現在はVMwareのみ)に特化したストレージアプライアンスで、NFS経由でNASとして利用する。

 その最大の特徴は、「仮想マシンを認識できる(VM-aware)ストレージだ」と同社が再三説明するように、LUNやボリュームといった概念は存在せず、仮想マシンと仮想ディスクの視点から管理を行う点である。

 例えば、各仮想マシン/仮想ディスクにおいて、ゲストOSからVMstoreのディスクに至るまでの各レイヤでパフォーマンスを把握できるので、「仮想マシンのパフォーマンスが悪い」と管理者が感じた場合、そのボトルネックがどこかをすぐに調べることができる。

 また、SSDとHDDによって自動階層化を構成するハイブリッド型の手法により、高いアクセス性能を提供できる点が、ハードウェア面での特徴になる。いくら管理が効率的に行えても、性能が劣っているのでは仕方がない。

 しかしVMstoreでは、読み書き双方でSSDをキャッシュとして用いることで、高速なアクセス性能を提供しており、多数の仮想デスクトップ環境を、チューニングをまったく行わずに1台のストレージへ収納できるという。実際に、米国のVMwareと共同で行ったスケーラビリティの検証では、1000の仮想マシンを3Uサイズのストレージ1台に収納し、まったく問題ないことが検証できたとのこと。

 米Tintri テクノロジー&ストラテジックアライアンス担当副社長のレックス・ウォルターズ氏は、「たくさんの仮想環境をサポートできるとうたっていても、他社ではIOPSなどの指標だけで計算しており、実際にユーザーをシミュレートしていないことが多い。それに対してVMstoreでは、チューニングを1つもせずに、VMwareのエンジニアが驚くくらい、何の問題もなく展開できた」と話し、その効果を強調する。

 実はここにも、“仮想化環境専用”という性質が生きている。フラッシュメモリを用いたハイブリッド型の手法は、今では珍しいものではなくなっているが、VMstoreでは仮想化環境特有のI/Oに応じたキャッシングの仕方を実装することで、99%もの高いキャッシュ(フラッシュメモリへの)ヒット率を提供し、高いアクセス性能を生み出している。

 もちろん、最近増えてきたオールフラッシュメモリの製品であれば、また事情は異なるのだろうが、ティントリ日本法人の河野通明社長は、「製品が出てきたタイミングでは、ハイブリッドのアプローチがもっとも性能とコストのバランスが良かったし、今でもそれは変わっていない。オールフラッシュメモリの汎用製品では当社のような価格のメリットは提供できないだろう」と述べ、ベストを模索した結果が今のVMstoreだと説明した。

VMwareとの共同検証の結果
米Tintri テクノロジー&ストラテジックアライアンス担当副社長のレックス・ウォルターズ氏

待ち望まれていたレプリケーション機能

 さて、そのVMstoreにとって、ユーザーから強く求められていたことがあったという。それが、今回発表されたレプリケーション機能の実装だ。

 仮想化環境がさまざまな用途で利用されるようになった現在では、企業に取って重要度の高いシステムの仮想化も進んでいる。そうしたシステムでは、バックアップはもちろんのこと、データ保護や災害対策をより簡単に行いたいというニーズは強い。しかしVMstoreだけではそれが実現できていなかったため、ユーザーの負担になっていた面があったという。

 今回、それが可能になったことで、ティントリではVMstoreの活用がさらに進むと期待している。なお具体的な機能としては、Snapshotベースの複数世代バックアップ、ネットワーク転送時の重複排除、転送帯域制御などが提供され、遠隔地レプリケーションを支援するとのことだ。

パートナーを拡大、4社体制に

ティントリの河野通明社長

 一方では、VMstoreを取り扱うパートナーの拡大も発表された。日本法人設立前から製品を取り扱っていたノックスに加えて、丸紅情報システムズ(MSYS)が販売代理店(一次店)となるほか、保守サポート分野で実績のある東芝ITサービス、ユニアデックスの2社と、サポートに注力するパートナー(CSP)として契約した。

 ティントリのVMstoreは仮想化環境に特化したストレージのため、単独で利用されることはなく、例えば10Gigabit Ethernetのネットワーク機器や、VMware、他の汎用ストレージなどとの組み合わせで導入されることになる。そうした際に、パートナーがそれぞれの得意分野を生かして、違ったソリューションを提供できれば、VMstoreの活用の幅が広がるので、ティントリにとってパートナーの拡充は大きな意味があることだという。

 では、4社のパートナーのうち2社が、なぜサポート分野のパートナーなのか。それは、品質やサポートに対する要求の厳しい日本で、「考え得る最前のポストセールス体制を用意する」(河野社長)ためだ。サポートについては、ノックスやMSYSなどの販売代理店のサポート部門が行う場合もあるものの、さまざまなレベルのサポートを提供できる選択肢を用意することで、より多くのニーズに応えられるようになり、販売を進めやすくなる。

 ティントリでは、2011年に米本社が製品提供をスタートさせ、その翌年には日本法人が設立されるという、IT系ベンチャーとしては非常に早い展開を行っているのだが、その目的を「保守体制の強化や市場ニーズのくみ上げなど、日本のユーザーを支援すること」としており、サポートについては当初から非常に力を入れていた部分。今回のCSP契約は、そうした意図が如実に表れているといえるのだろう。

 なおティントリは、今後もパートナーの拡充を進めるが、「当社のような規模のベンチャーが10社も20社も支援することは難しいため、むやみに数を増やすことは考えていない。極論を言えば、同じことができるパートナーを2社も3社も用意する必要はない」(河野社長)と述べ、ソリューションの多様化を図ることを第一に、アライアンスを強化する意向を示した。

(石井 一志)