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ティントリ、仮想環境向けストレージでVMごとのQoS設定を可能に

スナップショット活用を支援する「SyncVM」も

 ティントリジャパン合同会社(ティントリ)は4日、仮想環境向けストレージ「Tintri VMstore」のOS「Tintri OS」において、最新バージョン「同 3.2」を提供すると発表した。ユーザーの設定に従って、仮想マシン(VM)単位でストレージパフォーマンスを制御する「VMパフォーマンス保証機能」などが追加されている。

 Tintri VMstoreは、仮想環境に特化したストレージ。ストレージが仮想マシンを認識する、“VM Aware”が特徴で、仮想環境で何が起こっているかを可視化し、個別に制御できるため、ワークロード単位での最適化を行うことができる。

 従来、こうした最適化制御は、ストレージ側が各VMの動作を見ながら100%自動的に行っていたが、今回はユーザー側で、利用できるストレージリソース(IOPS性能)の上限値、下限値を設定できるようにした。上限値が設定されたVMでは、IOPSが上限値を超えないように該当するVMの性能が制限され、一方、下限値が設定されたVMでは、ほかのVMの性能を制限することで、設定されたIOPSの値が必ず確保されるようになる。

 米Tintriの技術担当VP、レックス・ウォルターズ氏は、「当社のストレージは一番簡単な仮想環境向けのストレージであり、導入後は通常、すべてお任せいただければいいが、初めて調整できるようにしたのがこの機能だ。もし、仮想マシンが要求する性能の合計がストレージの性能の上限値を超えてしまうような環境では、この機能は有効に働く。お客さまから要望されるケースも多かったので、この機能が追加されたことで、より安心して利用していただけるようになるだろう」と話す。

 VMパフォーマンス保証機能の設定は簡単で、動作状況を見ながら、GUIから上限値あるいは下限値をスライダーで設定するだけ。性能の値を直接入力することも可能だが、GUIで設定した方がやりやすいだろう。なお、この機能は標準機能として利用できる。

米Tintriの技術担当VP、レックス・ウォルターズ氏
VMパフォーマンス保証機能によって、性能の上限値あるいは下限値を設定できる

 また今回は、Tintri OS 3.2のオプションとして、任意の時間のVM状態へ、ほぼ瞬時に復旧する「SyncVM」も販売開始する。これを利用すると、以前取得したスナップショットのバージョン間を、タイムトラベルのように前後に移動できる。「これまでも、スナップショットを利用してVMを複製することができたが、新しいVMを作るとIPアドレスなどの環境は変わってしまうため、設定を一部変更する作業が発生してしまった。しかしSyncVMでは、同じVMで環境利用できる点がメリットになる」(ウォルターズ氏)。

 このほか、取得しておいたVMのスナップショットから、任意のVMに対し、仮想ディスク(vDisk)単位でデータを即座に複製することも可能。ウォルターズ氏によれば、こうしたvDisk単位での複製は、最新の本番データを使って開発や検証を行いたい、といった場合に有効に働くという。また「複製するといっても、(重複排除機能を備えたTintri VMstoreでは)メタデータを変更するだけで実データのコピーは行っていないため、数TBのデータであってもほとんど時間がかからない」とアピールした。

 SyncVMの参考価格は、「Tintri VMstore T820」の場合で138万円(税別)から。

SyncVMでは、一連のスナップショットのどの地点にもロールバックできる
また、スナップショットからvDisk単位でデータを複製できるので、本番環境のデータを検証環境へ瞬時にコピーする、といったことも可能になる

 なお、こうしたTintri OS 3.2での一連の機能強化について、ティントリ 職務執行者社長の河野通明氏は「Tintri創業時のスタッフが思い描いていた、仮想化時代のストレージはこうなるだろうという理想をほぼ実現しており、“第一章の最終形”といった位置付けになる。今では、3年前には予想もつかなかったアプリケーションが仮想化されるようになるなど、仮想化を取り巻く状況は変化しており、当社はそれに対してどんどんアジャストしないといけないが、少なくとも、創業時に『こうあるべきだ』と思っていた完成形になった」と述べている。

ティントリ 職務執行者社長の河野通明氏

石井 一志