仮想環境専用ストレージを提供するTintri、日本法人を設立


 「VMstoreシリーズ」を提供するストレージベンダーの米Tintriは18日(日本時間)、日本法人として「ティントリジャパン合同会社」(以下、ティントリ)を同日付で設立すると発表した。現地法人の設立は、英国に次いで2番目とのことで、職務執行者社長には河野通明氏が就任した。

 Tintriは、ストレージを手がけるベンチャー企業で、2008年に設立された後、しばらくは製品開発に注力し、2011年4月に最初の製品「VMstore T445」をリリース。同年11月にはコントローラを冗長化した第2世代の「VMstore T540」を発表した。導入社数はワールドワイドで現在100社ほどと、順調に顧客数を伸ばしている。

 そのティントリが提供するVMstoreシリーズは、仮想環境(現在はVMware)での利用に特化したプライマリストレージだ。わずか3U~4Uサイズの筐体に多数の仮想マシンを集約できるだけでなく、LUNを廃した独自ファイルシステムによって複雑さを廃しているため、素早い導入が可能になっているという。

 一方国内では、ノックスが2011年7月に取り扱いを開始。現在も同社のみが販売活動を行っているが、すでに20社へ30ユニットを納入しているなど、ビジネスの立ち上がりは早い。新しい製品であるため、まだ本番環境ではなくテスト環境での利用がほとんどというが、河野社長は、「仮想化は避けられない流れでもあるし、データセンターの仮想化は日本でも着実に進んでいる」という点を指摘。本社サイドでも日本市場は重要と判断し、アジアで初めての現地法人設立を決めた。

 日本法人設立の狙いについて河野社長は、「法人が日本にないと、お客さまのニーズを取り入れられない」と述べ、日本特有のニーズを製品に反映していく姿勢を示したほか、販売後のサポートの重要についても言及。販売店と連携しながらもベンダー自らが取り組むことで、国内ユーザーが求める高いサポートレベルに応え、年内に50セットの販売を目指す。


ティントリ 職務執行者社長の河野通明氏VMstore T540

 

SSDと仮想マシンを意識した設計でメリットを提供

 VMstoreシリーズは、前述のように仮想環境に特化したプライマリストレージだが、
SSD(フラッシュメモリ)とHDDを組み合わせるアプローチによって、高い性能を実現している。こうした手法は、今の多くのストレージと共通するところだが、SSDへのヒット率は実に99%にもおよぶ。

 この秘密は、ストレージシステムの設計そのものにある。「従来のストレージは、フラッシュメモリを利用するといっても、ファイルシステムはあくまでもHDDしかなかった時代のもので、フラッシュメモリはキャッシュとして既存システムにボルトオンされているだけ」(米Tintri カスタマーエンジニアリング担当副社長のレックス・ウォルターズ氏)なのだという。

 しかしVMstoreシリーズでは、フラッシュメモリを前提として開発され、アクセスはリードもライトもまずSSDに行われるようになっているほか、ファイルのメタデータもSSDに置かれるため、高速なI/Oを実現。さらに、インラインの重複排除と圧縮によって、実容量以上のフラッシュメモリがあるかのように利用できる。例えばVMstore T540の場合、300GB×8本のSSD(MLC/STA)を搭載しているが、重複排除と圧縮によって利用可能な容量は2~4倍まで引き上げられている。

 もちろん、それでもすべてのデータをSSDの中に保存できるわけではないため、8KB単位のブロックサイズでアクセス頻度を監視し、SSDとHDDの間で定期的にブロックの再配置を実施。より効率的にSSDを活用できるようにした。

 そしてもう1つ、ストレージが仮想マシンを認識している(VM aware storage)点も、この製品の大きな特徴という。従来のストレージでは、仮想マシンのパフォーマンスが落ちても何が原因なのかを把握することは難しく、それが管理者の大きな悩みになっていた。しかしVMstoreシリーズでは、仮想マシンごとにサーバー、ネットワーク、ストレージといった各レイヤでのレイテンシを把握可能なため、管理者はどこに原因があるのかを容易に特定できるのだ。

 「性能もさることながら、ユーザーにもっとも評価されているのが、この仮想環境の可視化について。どこが足を引っ張っているのかがわかるので、クラウドベンダーが利用すれば、仮想マシンの高い収容効率を実現しつつ、お客さまへSLAをきちんと提供できるようになる。“簡単”というのは、当社が非常に力を入れている部分だ」(ウォルターズ氏)。


米Tintri カスタマーエンジニアリング担当副社長のレックス・ウォルターズ氏VMstoreシリーズの特徴
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