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セールスフォース、営業部門を強化するAIエージェント「Agentforce for Sales」の価値を訴求
第2弾の「セールスコーチング」は年内にも提供へ
2025年6月6日 12:15
株式会社セールスフォース・ジャパン(Salesforce)は、自律型AIエージェントで営業チームを強化する「Agentforce for Sales」に関する記者説明会を6月5日に開催した。
Agentforce for Salesのうち、4月に日本語での提供が発表された「Agentforceセールスディベロップメント(SDR)」と「Agentforceセールスコーチング」について解説がなされた。
また導入事例として、株式会社M&AセンターによるSalesforceの活用と、Agentforce for SalesのPoCについて、代表取締役社長の竹内直樹氏が語った。
営業プロセスの課題ごとにエージェントで解決
Agentforce for Salesが必要とされる背景については、株式会社セールスフォースフォース・ジャパンの三戸篤氏(専務執行役員 製品統括本部 統括本部長)が説明した。
Agentforceは、2024年9月に開催されたSalesforceのイベント「Dreamforce 2024」で発表された。何種類かのエージェントが用意されるうち、Agentforce for Salesは「創業時の一丁目一番地であるSales Cloudに対するAgentforce」だと三戸氏は紹介した。
背景としては、国内における労働力不足が深刻化する一方で、顧客の要求は、24時間対応やマルチランゲージ、専門的な回答やパーソナライズされた回答など、高度化していることがあると、三戸氏は指摘。そしてそこに、デジタル労働力であるAgentforceの与えるインパクトが大きいと語った。
そしてAgentforceの特徴としては、データ、アプリケーション、エージェンティックAIのレイヤーが1つのプラットフォームに統合されて提供されることを、三戸氏は挙げた。
また、株式会社セールスフォースフォース・ジャパン 伊藤深雪氏(製品統括本部 プロダクトマネジメント&マーケティング本部 プロダクトマーケティングマネージャー)は、見込み客の発掘や、商談前進、見積もり、制約、請求、ライフタイムバリューに至る営業プロセスにおいて、それぞれに難しい課題があると指摘する。例えば、見込み客が増えない、新人の立ち上がりに時間を要する、といったことだ。このそれぞれの課題をエージェントで解決すると説明した。
今回はそうしたAgentforceのエージェントの中で、「Agentforceセールスディベロップメント」と「Agentforceセールスコーチング」を紹介した。伊藤氏によると、「今後も(エージェントが)どんどん増えていく」という。
なおセールスディベロップメントは、4月の日本での発表時点で、日本語での提供が開始された。今回はさらに、セールスコーチングの日本語での提供予定時期について、年内であると明らかにされた。
Salesforceでは、自身の営業活動でもAgentforce for Salesを導入しているとのことで、その効果についても伊藤氏は紹介した。80万件以上でエージェントが対応し、44万件以上の活動記録が自動で記録されているという。
見込み客にメールを送ってアポイントを取るところまでAgentforceセールスディベロップメントが担当
今回の2つのエージェントのうち、まずはAgentforceセールスディベロップメントが説明された。伊藤氏によると「インサイドセールスの業務を行ってくれるエージェント」だという。
やってくれることは、エージェントが見込み客にメールを送り、最終的にはアポイントを設定して営業担当者に渡すところまでだ。問題はその間で、質問に回答したり、反対意見に切り返ししたりといったことにも対応するという。
Agentforceセールスディベロップメントのメリットを、伊藤氏は3点挙げた。まずは、複数の見込み客に同時並行で対応でき、商談件数が増やせること。そして、SNSやチャット、メールなどさまざまなチャネルに対応して見込み客を増やすこと。そして、24時間365日対応や、外国語対応もできることだ。
実際の様子のデモも行われた。
これまでの営業担当者による見込み客とのメールなどの行動履歴をもとに、エージェントがメールを送る。この文面は、見込み客の属性にあわせてパーソナライズされている。
このメールに対して顧客から「金融業界におけるマーケティング領域の事例はありますか?」のように問い合わせがあると、エージェントは与えられた知識をもとに回答。同様に、見込み客からの価格などについての質問についても対応する。
そして、見込み客が「ミーティングを予約」をクリックして、営業担当の空いている時間からミーティング時間を選ぶと、ミーティングが設定される。
こうした案件が複数同時に動いている様子も表示され、それぞれの状況が確認できることもデモした。
回答のために追加の知識を与えるには、ファイルをアップロードするか、Salesforce上のナレッジを指定するか、外部のWebを指定するかで実行できる。そのほか、やりとりの頻度などのエンゲージメントルールも設定可能だ。
設定した知識や条件で、エージェントから見込み客にどのような文面が送られるかをテストするプレビューの機能も用意されており、結果の文面と合わせ、そうなった理由が表示されるところを伊藤氏は見せた。
AIを相手に営業トークを練習するAgentforceセールスコーチング
続いて「Agentforceセールスコーチング」が説明された。Agentforceセールスコーチングは、営業担当者がAIを相手に営業トークを練習し、コーチングを受けるものだ。
営業部門が考える目標として、伊藤氏は「全員をトップ営業にしたい」ことを挙げる。そこで、トップ20%の営業担当の行動を、残りの80%が自然とマネできるようにするのがAgentforceセールスコーチングだと、伊藤氏は語った。
セールスコーチングでできることとして、商談初期のエレベータートーク(短時間のプレゼン)の練習と、商談後期のエージェントとの会話のロールプレイの2つを伊藤氏は挙げた。
セールスコーチングについてもデモが行われた。
まだ初期段階にある見込み客の属性を想定し、エレベータートークでは5分間1人でAIに向かって話す。またロールプレイでは、AIと会話とした内容が文字起こしでも表示される。会話が終わると、全体的な印象や、よかった部分、改善できる部分など、AIによるフィードバックが表示される。
Salesforceに蓄積したデータをAgentforceで活用する日本M&AセンターのPoCの取り組み
導入企業の事例としては、株式会社日本M&Aセンターの竹内直樹氏(代表取締役社長)が登場した。
日本M&Aセンターは、中堅中小企業のM&A仲介をしている企業だ。同社は1991年創業だが、近年は同業者が急増しているという。その結果、見込み客から見るとさまざまな業者からの連絡が相次いでおり、それによって新規アポイント取得率が低下しているという課題を竹内氏は語った。
竹内氏は、M&A仲介のビジネスは譲渡企業と譲り受け企業のマッチングであり、そのためにデータ活用が大事だと語った。
同社は2014年にSalesforceを導入し、データの蓄積に努めてきたと竹内氏は強調する。営業担当による入力を、強制するぐらいの形で習慣化させ、レポート作成も社員にやってもらうという。その結果、年間約18万件×1年間の活動記録という情報量と、経営者との面談により、気持ちなども含めた高品質な顧客情報が蓄積されているのが強みだと同氏は語った。
そして、3つ以上の接触チャネルを持つことが成約につながるという法則を竹内氏は立て、そのためにAgentforceを活用すると語った。
具体的には、2025年5月からSalesforceとともに、顧客とのファーストコンタクト領域でAgentforceのPoCをスタートした。PoCの結果は、6月末時点の結果をふまえ、今後について検討していくという。「この11年間データの蓄積に集中してきて、これから活用していくというフェーズになる。ChatGPTの登場から、一気に世代が動いている。いよいよ、データを蓄積している会社が勝てるという勝算を持っている」(竹内氏)
Agentforceで目指すメールのイメージも竹内氏は紹介した。まず、AIエージェントからのメールであることは文面で明示する。
そして、この例では、以前の商談で「60歳になったらM&Aを検討したい」という話が出ていたことをふまえ、60歳の誕生日に誕生祝いも兼ねてメールを送信。さらに、同じ二代目社長で60歳の社長の事例を送るというように、顧客属性に合わせた情報提供をするというものだ。
最後に竹内氏はあらためて、これまで蓄積したデータと、業界30年のノウハウに、Agentforceをかけあわせて、見込み客ごとに適切な情報を届けていきたい、と語った。