ニュース

セールスフォース、可視性やMCP連携などを実現したAIエージェント「Agentforce 3」を国内で提供開始

 株式会社セールスフォース・ジャパンは28日、AIエージェントの最新版「Agentforce 3」を、日本で提供を開始すると発表した。

 セールスフォース・ジャパン 専務執行役員 製品統括本部 統括本部長の三戸篤氏は、「セールスフォースでは、信頼性の高いSalesforceプラットフォーム上に、企業が持つあらゆるデータを集約・統合する基盤としてData Cloudを配置。その上で、顧客との接点を持つCustomer 360のさまざまなアプリケーションが稼働する。そして、これらのアプリケーション上で、自律型AIエージェントであるAgentforceが稼働することで、人とエージェントが手を取り合って、顧客のサポートを一緒に行っていくことになる」と基本的な仕組みについて説明。

 「Agentforce 3は、これまでAgentforceを使ってきたユーザーの声をより多く聞き、進化させたものである。エージェントの稼働率を可視化したいといった要望や、エージェントが行っている業務はどの程度の品質を維持しているのか、エージェントが提供しているサービスは効果を生んでいるのかといったことを可視化したいといった声に対応した」と位置づけた。

セールスフォース・ジャパン 専務執行役員 製品統括本部 統括本部長の三戸篤氏

 Agentforceは、2024年9月に提供を開始して以降、2024年12月には推論エンジンを強化したAgentforce 2.0に進化。2025年3月にはワークフローにAIエージェントを展開するための開発者向けツールを強化したAgentforce 2dxを発表してきた経緯がある。2025年6月時点の同社の発表では、6カ月間で8000社以上の企業が、Agentforceを導入するための契約を完了したことを明らかにしている。今回、日本で市場投入するAgentforce 3は、すでに2025年6月にグローバルで製品発表を行っていた。

Agentforceのロードマップ

 同社では、Agentforceを「デジタル労働力」と定義しており、従業員向けサービスや顧客向けサービスに、Agentforceを採用する事例が相次いでいることを強調。日本では富士通やアビームコンサルティング、飯田市立病院などの活用事例を挙げた。

Agentforceはあらゆる業務向けにデジタル労働力を提供

 「社内に蓄積しているナレッジやスキル、暗黙知をエージェント化することで、多くの従業員とナレッジなどを共有して生産性を高めたり、患者情報の登録業務をAIエージェントが行ったりといった事例がある。また、顧客からの問い合わせ業務や予約業務を自動化したり、求人におけるマッチングを行ったりといった活用も行われている」とした。

Agentforce 3の3つの特徴

Agentforce 3の3つの特徴

 Agentforce 3には、3つの特徴があるという。

 ひとつめの特徴として、同社では「完全なる可視性」を挙げる。人とエージェントがハイブリッドで働く環境を管理および改善し、最適化するために可視化する機能である。

完全なる可視性

 Agentforce スタジオに組み込まれたコマンドセンターによって、エンタープライズ規模でAIエージェントそのものを監視、測定、最適化する機能を初めて搭載。具体的には、あらゆるAIエージェントとのやりとりを分析し、ダッシュボードで可視化するほか、特定の会話を掘り下げ、使用傾向を理解することで、タグ付けされた会話タイプに対して、Agentforceが改善提案を提供することになる。

 例えば、予約サイトで、日程を変更しようとした際に、AIエージェントがキャンセルを促すような誤ったやりとりを指摘し、改善を図ることができる。コマンドセンターは、2025年10月に提供する予定だ。

Agentforce スタジオに組み込まれているコマンドセンターの画面

 セールスフォース・ジャパン 製品統括本部 プロダクトマネジメント&マーケティング本部 シニアプロダクトマーケティングマネージャーの王 小芬氏は、「AIエージェントのさまざまなKPIをダッシュボードに表示する。パフォーマンスの遅延やエラーなどのアラートも、リアルタイムで表示でき、改善を図ることができる」とした。

セールスフォース・ジャパン 製品統括本部 プロダクトマネジメント&マーケティング本部 シニアプロダクトマーケティングマネージャーの王 小芬氏

 また、Agentforceのログデータを蓄積しているData Cloudについては、今年8月にログデータを管理するためのオープン規格であるOpenTelemetryのデータモデルに対応予定であり、「DatadogやSplunkなどの統合ログ管理プラットフォームにおいて、AIエージェントを含めた監視がより容易に実行できる」とした。

 さらに、Agentforceスタジオでは、AIエージェントを本番環境に展開する前に、一括でテストケースを自動生成し、実行・評価するためのテストセンターを提供していることも示した。

短期間での価値実現

 2つめが、「短期間での価値実現」である。200以上の業界特化型のAgentforceアクションを提供し、AIエージェントによる効果を短期間で創出することにつなげる。

 王氏は、「AIエージェントを活用する際、早期にROIを証明し、価値を実現したいという顧客のフィードバックに基づいた取り組みになる」とする。

 Salesforceが提供している、15業界に特化したIndustry Cloudの取り組みをベースにした各業界向けベストプラクティスを、業務機能としてプリセット。業界向けAIエージェントのユースケースを、アプリケーションに統合した状態で提供する。

 具体的な事例として、金融業界向けのBanking Relationship Assistanceと、自動車業界向けのVehicle Serviceを紹介。業界に特化した形で、定型業務の自動化や議事録作成支援、見積書や作業指示書の自動作成などにより、業務の効率化を支援できるという。

Banking Relationship Assistance
Vehicle Service

 また、AIエージェントのモデルプロバイダーとして新たにAnthropicが加わり、コンプライアンスの高い規制業種にも対応が可能になったほか、従業員向けにスモールスタートが可能な非消費型の新しいライセンス体系も発表した。Agentforceでは、これまでの会話単位で240円を課金する料金体系を用意していたが、新たに追加した従業員向け月額クレジット非消費に加えて、アクション単位で12円を課金する仕組みも用意した。

短期間での価値実現

オープンな相互運用性

 3つめの特徴は「オープンな相互運用性」である。Agentforceが、MCP(Model Context Protocol)プロトコルに、ネイティブに対応。MCPを活用して、外部リソースを柔軟に、セキュアにつなぐことができるようになる。

オープンな相互運用性の実現

 セールスフォース・ジャパン 製品統括本部 プロダクトマネジメント&マーケティング本部 プロダクトマーケティングディレクターの前野秀彰氏は、「カスタムコードなしで、MCP準拠のあらゆるサーバーに、AgentforceのAIエージェントが接続できるようになる。外部システムを含めて、AIエージェントがアクションできる範囲を広げたいというニーズに対応できる」と説明。「MCPに対応することで、さまざまなAIエージェントが簡単に連携できる。USB Type-Cのように、さまざまなデバイスが接続できるのと同じである」と比喩した。

セールスフォース・ジャパン 製品統括本部 プロダクトマネジメント&マーケティング本部 プロダクトマーケティングディレクターの前野秀彰氏

 また、AgentExchangeを通じて、パートナー企業が構築・開発した信頼性の高いツールを簡単に発見し、追加できる仕組みを用意。2025年10月からパイロット版を提供する予定だ。今後、30社以上のパートナーが提供するMCPサーバーを利用できるようになるという。

AgentExchangeの様子