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ダッソー・システムズが提唱する「バーチャル・コンパニオン」と、NVIDIAとの深化する提携
3DEXPERIENCE World 2026基調講演レポート
2026年2月6日 06:00
仏ダッソー・システムズの「3DEXPERIENCE World 2026」は、2月1日~2月4日(現地時間)に米国テキサス州ヒューストン市にあるジョージ・R・ブラウン・コンベンションセンターで開催された。
会期2日目(2月2日)のGeneral Session(基調講演に相当)では、同社がIndustry World Modelと呼んでいるAIモデル、ないしはAIエージェントに相当する「バーチャル・コンパニオン」に関する構想を発表し、その中の1つで3Dモデルを生成する「LEO」のデモを行った。
会期3日目のGeneral Sessionには、NVIDIA CEO ジェンスン・フアン氏が登壇し、ダッソー・システムズの3DEXPERIENCEなどのデジタルツインを実現するツール群と、NVIDIAのGPUおよびAIツール群を統合して顧客に提供するなどの協業関係を結んだことが明らかにされた。
3D CAD向けのAIは業界特化型で、デザイナーの能率を上げデザインに集中できる
実質的な初日となる2月2日午前に行われたGeneral Session(基調講演に相当する)では、ダッソー・システムズ CEO パスカル・ダロズ氏、ダッソー・システムズ R&D担当副社長 兼 SOLIDWORKS CEOのマニッシュ・クマー氏などが登壇し、同社の戦略などに関しての説明が行われた。
今回ダッソー・システムズが発表したのは、そうした3DEXPERIENCEに、生成AIを活用した機能を実装していくという考え方だ。それ自体は去年の3DEXPERIENCE Worldで発表されていたが、今回はもう少し具体的に「AURA」(総合的なAIモデル/エージェント)、「LEO」(3DモデルAI生成モデル/エージェント)、「MARIE」(科学演算AIモデル/エージェント)という3つのAIモデルないしはAIエージェントが、SOLIDWORKSなどの3DEXPERIENCEアプリケーションに対して提供されるというものだ。
ダッソー・システムズのクマー氏は、日本の報道関係者との質疑応答の中で「われわれのIndustry World Modelと一般的なAIモデルの大きな違いは、特定の産業や用途に特化しているかどうかだ。われわれの場合は物理学(フィジックス)に特化したAIモデルやAIエージェントになっている。そこがChatGPTのような一般向けのチャットボットなどとの違いである」と述べ、物理的な動きなどを再現するのに特化したAIモデル/AIエージェントになっていることが大きな特徴だと説明した。
また、クマー氏は「当社自身やその顧客は、物理学に関して深い知識とノウハウを持っている。つまり、当社のWorld Modelは自身の物理学の知識とノウハウをデータに学習する、そうした処理に特化したAIになっている」と述べ、物理学に特化したAIモデル/AIエージェントになっていることで、同社の顧客が不要な作業のプロセスを減らして、作業にかかる時間を削減できることがメリットだと強調した。
どんなビジネスでも、コンピュータを使った作業には、頭を使う本当にクリエイティブな作業と単なる反復作業という、2種類の作業がある。例えば、画像を編集する際に、写真に写っている不要な物体を指定する作業は、AI登場以前には時間がやたらとかかる作業だった。
人間であれば、髪の毛の指定などに膨大な時間がかかり、きれいに切り抜こうとすると、複数のポイントを何度も何度も反復作業で指定する必要があり、数時間から下手をすると1日仕事になってしまっていた。しかし、AIが登場したことで、今はその物体をラフに指定するだけで、きれいに切り抜くための細かな指定はAIが代替してくれる。つまりAIが登場したことで、無駄に時間だけがかかる反復作業をしなくてよくなったのだ。
3D CADでもそれは同じで、「無駄な反復作業をAIが代替する」(クマー氏)という。同社がLEOを使って行ったデモはまさにそれで、2DデータをLEOに渡すと、3Dの物体に変換し、同時に数字などもAIが演算して入れてくれる。これまでであれば、人間が計算機片手に行っていたような反復作業を、人間に代わってAIがコンパニオンとしてやってくれるのだ。だからこそ、ダッソー・システムズはこうしたIndustry World Modelのことを「バーチャル・コンパニオン」と呼んでいる。
ただ、今のLEOでできるようなことは、クマー氏によれば「数年前に画像生成AIが登場したばかりのころに、人間の指の数を正しく再現できなかったような段階であり、まだ現在の画像生成AIのように、バックグラウンドも含めて完全な画像を生成できるようなレベルではない」という。このため、これからどんどん発展させ、エンジニアやデザイナーが必要とするようなレベルにしていきたいという目標を説明した。
なお、現時点では、バーチャル・コンパニオンがどんな価格になるかに関して明らかにされていない。「まだビジネスモデルを検討している段階で、今のところは何も決まっていない。ユーザーがどんなノウハウを必要とするのか、あるいはどれだけの演算リソースを必要とするのか、そうしたことを検討して決めていく予定だ。ただ、現在のようなサブスクリプションの価格モデルではないと思う」と述べ、ユーザーが実際に使った分に応じて料金を支払うような、コンサンプションモデルと呼ばれる価格モデルになる可能性が高いことを示唆した。
NVIDIA CEO ジェンスン・フアン氏が登壇し、ダッソー・システムズとの提携を発表
3日目(2月3日)午前のGeneral Sessionには、NVIDIA CEO ジェンスン・フアン氏がゲストスピーカーとして登壇し、ダッソー・システムズ CEO パスカル・ダロズ氏と対談した。基調講演の約半分がフアン氏との対談に費やされ、ダッソー・システムズがNVIDIAとの関係を重視していることを象徴していた。
今回ダッソー・システムズは、同社の各種ソフトウェアとNVIDIAのAIソフトウェアの親和性を高め、統合度を上げていくことを明らかにした。例えば、同社のBIOVIA(科学者向けの生成AI)と、NVIDIAのバイオ医薬品向けのAIツール「BioNeMo」が統合され、分子や次世代物質の発見に貢献するという。
また、同社のシミュレーションツール「SIMULIA」の物理演算に、NVIDIAのCUDA-XライブラリとAIフィジックスライブラリが活用され、デザイナーやエンジニアがより正確なシミュレーションを実行できるようになるとした。
そのほかにも、ダッソー・システムズのデジタルツインツール「DELMIA」に、「NVIDIA Omniverse」のフィジカルAIライブラリが統合され、自動化されたソフトウェア定義のシステムを実現可能にするとのこと。
さらに、今回デモされた、Industry World ModelをベースにしたAIエージェントは、NVIDIAが提供するAI推論エンジン「Nemotron」がベースになっていることも明らかにされた。ダッソー・システムズのソフトウェア機能の強化にNVIDIAのAIソフトウェアが活用され、さらにIndustry World Modelを利用したAIエージェントが、NVIDIAのGPUとAIソフトウェアの下で動いているというのが今回の提携の骨子となる。
そうした提携の成果の1つとして、日本の顧客事例としてオムロン株式会社の事例が紹介された。オムロン株式会社 執行役員常務 インダストリアル オートメーション ビジネスカンパニー 社長 山西基裕氏のコメントが紹介され、その中で山西氏は「NVIDIAのフィジカルAIフレームワーク、ダッソー・システムズのバーチャルツインファクトリーとオムロンのオートメーション技術を1つにすることで、製造業のお客さまが高い自信を持ってデザインから導入までを素早く行えるようになる」(原文は英語、筆者訳)と述べ、両社の技術を1つにすることで、オムロンが提供するファクトリーオートメーションの導入が短期間で可能になると説明している。
将来バージョンのSOLIDWORKSに搭載が検討されている新機能が紹介される
3日目のGeneral Sessionの終わりには、3DEXPERIENCE Worldの講演では恒例となっている、次期バージョン以降への搭載が検討されている機能のお披露目が行われた。
といっても、「SOLIDWORKS 2026」は昨年の11月にすでに発表されており、その新機能は順次展開されている。このため、今回公表された機能は、今年の11月と想定される「SOLIDWORKS 2027」、ないしはそのさらに先のバージョンで展開される可能性がある機能となる。
もちろん検討中の機能ということで、検討された結果搭載されない可能性もある。実際、過去にもそうした機能が紹介された例があるとのことで、SOLIDWORKSユーザーである来場者の反応も判断の材料にしているということだろう。
今回はそうした開発中の機能の中から代表的な2つを紹介していきたい。
アセンブリー性能の最適化では、ステータスバーの新しいアイコンセットがアセンブリーの動作を監視し、性能を向上させるチャンスがあるとフラグを立てる。循環参照が発生して問題を引き起こすときなどに、性能向上のためのヒントなどを提示してくれるという。
また、図面のバックグラウンド更新では、図面を自動的にバックグラウンドプロセスとして更新可能になる。これまでは、図面を更新する間はただ待っているだけだったが、バックグラウンドで自動更新が行われるようになると、ほかの作業をしながら更新を待つということが可能になり、ユーザーの能率が向上することになる。
なお、4日目の午後にはクロージングのGeneral Sessionが行われ、来年の3DEXPERIENCE Worldが2027年2月14日~2月17日の日程で、「Music City」のニックネームでも知られる、米国テネシー州のナッシュビルで行われる予定であることが発表され、イベントはフィナーレを迎えた。











