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Salesforce、年次カンファレンスで統合エージェンティックAI基盤「Agentforce 360」を発表

OpenAIやAnthropicとも協業強化

 Salesforceは10月14日(米国時間)、米国サンフランシスコで開催中の年次プライベートカンファレンス「Dreamforce 2025」において、同社のエージェンティックAIポートフォリオを独自に統合したプラットフォーム「Agentforce 360」を発表した。

 あわせて同社が提供するコミュニケーションツール「Slack」を、Salesforce製品共通の会話型インターフェイスとして進化させた「エージェンティックOS(Agentic OS)」とすることも発表、Salesforceが新たに標榜するコンセプト「エージェンティック エンタープライズ(Agentic Enterprise)」のもと、Agentforceへのフォーカスをさらに強めていく戦略を明らかにしている。

Salesforceが提唱する「エージェンティック エンタープライズ(Agentic Enterprise)」は、人間とAIエージェントが1つのプラットフォームの上で協働する未来を目指すコンセプト。すべての従業員にはそれぞれのAIパートナーが存在し、仕事の効率や生産性を大幅に高める存在となる。Salesforce自身がエージェンティック エンタープライズ企業としてこれを実践している

 Agentforce 360は、Salesforceが2024年9月の「Dreamforce 2024」で発表したエージェンティックAIプラットフォーム「Agentforce」のアップグレードで、以下の4つのコンポーネントで構成される。

Agentic 360 Platform

AIエージェントを開発するツール群を備えた基盤。会話型インターフェイスでカスタムエージェントを構築する「Agentforce Builder」、エージェントの動作を制御するJSONベースのスクリプト言語「Agent Script」、エージェントの音声による自然な会話を実現する「Agentforce Voice」、ドキュメントなどの非構造化データからビジネス固有のコンテキストを理解し、エージェントの精度を上げる「Intelligent Context」が含まれる

Data 360

「Data Cloud」からリブランドした統合データレイヤで、Agentforce 360 Platform上で開発されるAIエージェントにコンテキスト(Intelligent Context)を提供する。また、データをインサイトに変換できるセマンティクスレイヤ「Tableau Semantics」も搭載、SnowflakeやDatabricksなどのパートナー企業のプラットフォーム上にあるデータも一元化して扱い、標準化されたセマンティクスを提供する

Customer 360アプリ

営業、マーケティング、サービス、コマースなどビジネスにおける主要チームがもつ顧客情報を共有するソリューション

Slack

人間とAIエージェントをつなぐ会話型インターフェイスで、今回の発表でSalesforce製品の「エージェンティックOS」という位置付けに

Agentforceローンチから1年後、エージェンティックAIプラットフォームの集大成として登場した「Agentforce 360」は、AIエージェント構築基盤の「Agentforce 360 Platform」を中心に、データ基盤の「Data 360」や新たに"エージェンティックOS"に位置付けられたSlack、Customer 360アプリが深く統合されている
これまで「Data Cloud」と呼ばれていた統合データレイヤ「Data 360」はエージェントにコンテキストを提供し、ドキュメントなど非構造化データやサードパーティプラットフォームとのゼロコピー連携などをサポートする

 また、14日にはエージェンティックAIに関連した新たなパートナーシップとしてOpenAIおよびAnthropicとの協業も発表されている。

OpenAI

ChatGPTをインターフェイスとしてAgentforce 360 Platformへのアクセスが可能になり、ChatGPTにクエリを入力するだけで販売記録や顧客との会話を確認できるほか、GPT-5などを利用したAIエージェントの構築も実現

Anthropic

金融やヘルスケアなど規制が強い業界向けにエンタープライズグレードのAIを提供するために、Agentforce 360内でAnthropicの「Claude」を安全に利用できるソリューションを両社で構築

 Salesforce CEO 兼 会長のマーク・ベニオフ(Marc Benioff)氏は、14日のオープニングキーノート後に行われた報道関係者向けのセッションで「この1年でAgentforceは単なる製品からプラットフォームへと進化した。AgentforceはSalesforceがこれまで出してきた製品の中でももっとも急速に成長しているものだ」と語っている。

 1年前、最初にAgentforceが公開されて以来、メジャーアップデートだけでも「Agentforce 2.0」(2024年12月)→「Agentforce 2dx」(2025年3月)→「Agentforce 3.0」(2025年6月)と非常に速いスピードでバージョンアップしてきたが、今回発表されたAgentforce 360は、既存製品のリブランドや統合を多く実施しており、この1年の集大成とも呼ぶべきリリースとなっている。

 Agentforceの進化についてベニオフ氏は「Agentforceがこれほど急速に成長したからこそ、我々はそれよりも早く成長する必要があった」と語っており、エージェンティックAIへのニーズは現在も拡大中であることをあらためて強調する。

 現時点でのグローバルでのAgentforce導入実績は約1万2000社とされているが、Agentforce 360のリリースをもってその勢いをさらに加速させるべく、新たなコンセプトであるエージェンティック エンタープライズのもと、事業の大部分をエージェンティックAIにフォーカスさせていく戦略を今後展開していくとみられる。

報道関係者の前で話をするマーク・ベニオフCEO