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パナソニック コネクト、倉庫内の現場オペレーションを高度化するSaaS「Zetes Medea」を2月より国内提供

荷待ちや荷役などのドライバー負荷を軽減する「Zetes Zeus」も

 パナソニック コネクト株式会社は15日、倉庫実行管理システム「Zetes Medea」と、データコラボレーションプラットフォーム「Zetes Zeus」を、2月から国内で販売開始すると発表した。

 パナソニック コネクト 現場ソリューションカンパニー 現場サプライチェーン本部SCM事業センター ダイレクターの小笠原隆志氏は、「輸配送の領域に加えて、倉庫領域の課題にも対応できるソリューションがそろうことになる。倉庫内の現場オペレーションの高度化と、荷待ちや荷役作業などのドライバー負荷の軽減につながり、物流業界における課題を解決できる」とした。

パナソニック コネクト 現場ソリューションカンパニー 現場サプライチェーン本部SCM事業センター ダイレクターの小笠原隆志氏

 物流業界では、2024年問題に代表される慢性的なドライバー不足や、原材料やエネルギーの価格高騰、人件費の上昇などによる物流費の向上、ECの拡大による小口の多頻度化といった課題があり、これが年を追うごとに深刻化。物流企業の効率化がさらに求められている状況にある。

 政府では2023年6月に、物流の持続的成長に向けたガイドラインを策定したのに続き、2024年5月には流通業務総合効率化法および貨物自動車運送事業法を改正し、荷主や物流事業者に対する規制的措置を公布。荷待ち時間や荷役時間の短縮や、積載率の向上などが求められている。

 パナソニック コネクトでは、こうした物流現場における課題をとらえて、「庫内の人員計画とタスク管理の最適化」、「庫内の現場オペレーションの高度化」、「配送効率の最適化、環境負荷の軽減」、「配送ミス、再配達などのリカバリー業務の削減」、「荷待ち、荷役など、ドライバー負荷の軽減」の5点を挙げ、これらの解決にフォーカスする物流ソリューションの提供に力を注いでいるという。

 既存のZetes Chronosなどの製品に、今回、販売を開始する2つの製品を加えることで、5つの課題に対応するソリューションがそろうことになる。

パナソニック コネクトが考える、物流現場の5つの主要課題
今回提供開始する新サービス

 Zetes(ゼテス)は、ベルギーで創業した物流ソリューションに特化した企業で、2017年7月にパナソニックが完全子会社化した。現在、40カ国以上でビジネスを展開。サプライチェーン実行系ソリューションのリーディングカンパニーと位置づけられている。サプライチェーン現場のオペレーションをデジタル化するソリューションにより、製造、倉庫、配送、店舗までをカバーし、サプライチェーン全体に渡って、リアルタイムでの可視化を実現する。

 新たに国内で販売を開始するZetes Medeaは、倉庫内の現場オペレーションの高度化を実現するSaaS型倉庫実行管理システム(WES)で、既存の基幹システムを維持したまま、最小限のカスタムインターフェイスによって連携。入庫から出庫までの一連の倉庫業務を手軽にアップデートできるのが特徴だ。

 「倉庫内では多くのアナログ作業が存在し、運用の工夫と作業員の努力で、安定した出荷を維持しているのが現状である。多くの現場で、紙や目視によるピッキングや検品を行ったり、紙で管理した情報をPCに入力したりといったことが行われている。こうした属人的なオペレーションでは対応にも限界が生じており、自動化や省人化が必要となっている。だが、デジタル化したくても、既存システムが足かせとなり、新システムの導入には大規模な改修とコストが必要になるといった課題がある。Zetes MedeaではSaaSの特長を生かして、必要な作業ブロックごとの導入や、運用ニーズにあわせた段階的な導入ができる」としている。

 ハンディターミナルによる個別検品から、カメラによる一括検品、AMRや自律型ロボットとの連携といったニーズにあわせた導入が可能であるほか、Zetes Medeaでは、ピッキング作業において進捗に応じた作業の優先度変更を指示したり、作業内容を作業者にリアルタイムで通知したりといった柔軟な運用も可能だ。

 Zetes Medeaを先行導入している海外の事例では、ピッキングの精度を高め、生産性を25%向上し、10%のコスト削減を実現しているという。

Zetes Medea
Zetes Medeaの管理画面
ピッキング作業では優先度変更なども指示できる

 もうひとつのZetes Zeusは、荷待ちや荷役などのドライバー負荷を軽減するデータコラボレーションプラットフォームだ。2018年から提供している配送進捗管理システムのZetes Chronosと連携することで、可視化した実績データをエビデンスとして活用。荷主や物流事業者が一体となり、ドライバーの労働環境の改善を支援できる。日本で先行して投入したソリューションであり、国内の顧客の声をもとに、課題解決に必要な分析項目を装備。データ表示項目を用意しており、すぐに分析に着手できる。

 「輸配送現場では、運用方法の工夫と、ドライバーの努力で、安定した作業を維持している。だが、長年の経験と勘に頼った配送業務が進められており、荷待ちや付帯作業の実態が把握できていないという課題もある。問題点を正確に把握し、効果的な改善策を講じることができていない。Zetes Zeusは、Zetes Chronosから収集した配送データを活用することで、これまで困難だった荷待ち時間や付帯業務の実態把握が可能になる。荷物、ドライバー、配送先ごとに分析し、ダッシュボードに表示し、問題点を明確化できる。日本の顧客向けに開発したものであり、最適な表示項目をあらかじめ設定。分析が容易に行える。BIツールも不要になる」という。

 Zetes Zeusは、将来的には、Zetes Medeaなどとの連携も図っていくという。

Zetes Zeus
Zetes Zeusの画面

 パナソニック コネクトの国内物流ソリューション事業は、1980年に物流ドライバー向けデバイスを製品化して市場に参入。受託ソフトウェア開発や保守サービスを加えて、事業を推進する一方、2014年に配送計画や運行管理を強みとする光栄システムを子会社化した。

 また2017年にはZetes、2021年にはBlueYonderを子会社化し、サプライチェーン領域のSaaSビジネスを強化してきた。Zetes Chronosでは、冷凍・冷蔵食品の配送を行う福岡運輸が導入し、従業員の工数削減とサービス品質の向上を実現。アルコール飲料の配送を行う大阪運輸倉庫では配送データを荷主と共有することで、物流全体を最適化した実績が出ているという。

 2024年4月には、SCM事業センターを設置し、SCMの実行系ソリューションの国内展開、プロダクトの企画および開発、国内マーケティング活動を行っている。「SCM事業センターは、約45年間に渡るSCM事業の実績や知見を生かし、国内の実行系ソリューションを展開する組織になる」とした。

物流ソリューション事業の歴史
2024年4月SCM事業センター 発足

 なお同社は今後も、SCMソリューションのラインアップをさらに強化する方針を明らかにしている。

 2025年には物流現場におけるカメラを活用した一括検品、シフト計画の最適化、倉庫内の状況の可視化および分析ツールを提供する。また、Blue Yonderとの連携を強化し、サプライチェーン全体に関わる経営課題を包括的に解決していくという。

今後の国内SCM事業の方向性について