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両備システムズ、2030年の売上高500億円の達成に向けた取り組みを説明

2023年までを統合・変革期に位置付け、ビジネスモデルの変革を図る

 株式会社両備システムズは1日、ICT事業の取り組みについて説明した。2030年の売上高500億円の達成に向けて、2023年までをビジネスモデルの変革を図るフェーズと位置づけており、「プラットフォーム拡張とサービスの連携」、「インフラビジネス拡大」、「新規ビジネスへのチャレンジ」、「民需系事業の拡大」、「積極的M&A投資」の5点に取り組んでいることを示した。

2030年に向けたステップ
2030年 売上500億円に向けた取り組み

 さらに、データセンター事業に関しては、Ryobi-IDC第3棟の建設に向けた企画を開始したこと、2024年末を目標にISMAPの取得を目指していることも明らかにした。2023年10月からは、自治体を中心としたプライベートクラウドへのダイレクト接続ニーズの拡大に対応し、AWSやAzure、GCP、Oracle Cloudを対象としたプロバイダーサービスを新たに開始する。

 両備システムズ 代表取締役COOの小野田吉孝氏は、「2023年までの統合・変革期における取り組みは、100点満点中85点の評価。コロナ禍で新たにビジネスを創出できたり、データセンターやBPO、ソリューションとしてばらばらに動いていたものを、サービスを組み合わせた連携提案につなげたりといった成果が生まれている。新規事業についても、AIを活用した実証実験が進み、事業化への道筋ができている。新たな民需系サービスの評価も高く、大手メーカーを通じた提案も加速させたい。今後、データを活用したビジネスを増やしていきたい」と述べた。

 なお、2023年度(2023年1月~12月)の売上高は370億円に達する見通しであり、当初計画を上回る。

両備システムズ 代表取締役COOの小野田吉孝氏

プラットフォーム拡張とサービスの連携

 同社では、行政や医療機関などの公共領域において、自治体システム標準化後を見据えたビジネス創出の取り組みを強化する一方、民間領域では、製造、物流、交通などを対象に展開。新たにアパレル業界向けの一気通貫システムを提供したほか、流通系インフラ構築に向け投資を開始し、ビジネスモデル転換を図る。現在、公共領域が6割、民間領域が4割の構成比だが、今後は、民需領域の事業拡大を目指している。

 ひとつめの「プラットフォーム拡張とサービスの連携」では、自治体システムの標準化に向けた取り組みを加速。基幹系20業務のなかで、厚生労働省所管の健康管理システムに対応した「健康かるて」と、総務省所管の税務システムに対応した債権一元管理型滞納整理システム「THINK CreMaS Cloud」に注力する。

 「健康かるて」は、全国8件、11団体で、ガバメントクラウドへの移行に関する課題の検証を実施。2023年1月からは、千葉県佐倉市で、ガバメントクラウド上での健康管理システムの運用を開始している。今後、標準準拠システムとして「健康かるてV8」を開発し、全国の自治体に展開する。2026年には900団体への導入を目指し、シェア50%の獲得を目指す考えだ。

 また、「THINK CreMaS Cloud」では、2026年に600団体への導入を目指し、シェア35%を目指している。

自治体システムの標準化への取り組み(対象20業務の2つ)
地方公共団体の基幹業務システムの統一・標準化

 さらに、子どもに関する連携プラットフォーム「こどもの杜」の提供を開始。2023年6月から、埼玉県美里町および川島町において、子ども家庭庁のこどもデータ連携実証事業として採用されている。この成果をもとに、2024年からは、全国の自治体に展開する計画だ。2025年度には30団体への導入を目標に掲げ、5億円の事業規模を目指す。

 また、デジタル田園都市国家構想交付金事業では、10団体に対して9件のソリューションを受注予定であるほか、スマートシティ関連事業も積極的に展開。さらに、住民生活総合支援アプリ「iBlend」とデジタルID「xID アプリ」との連携により、マイナンバーカードを用いた本人確認によるデジタル商品券サービスの提供を通じた自治体DXの支援も行う。

こどもに関する連携プラットフォーム「こどもの杜」を全国の自治体へサービス提供開始
GtoBtoC デジタル商品券事業のサービス提供

インフラビジネスの拡大

 2つめの「インフラビジネス拡大」では、データセンター事業の強化を進める。

 2026年までの完成を目標に、第3棟の建設を検討していることも公表した。第2棟の隣接地に建設する予定で、今後の事業拡大を目指す民需系での利用を想定。第1棟および第2棟と同様に、400~500ラックの規模を想定している。

 「データセンターの建設には30~40億円の投資が必要だが、建設費の高騰によって、これが1.3~1.5倍に増えている点が、いまの課題だといえる。だが、Ryobi-IDC第2棟は、すでに3分の2が埋まり、今後の旺盛なデータセンター需要に対応する必要がある」としたほか、「2023年8月からは、再エネ電力の提供も開始している。2024年末までにISMAPの取得に向けた準備が整った」などとした。

 新たな取り組みとして、インターネットおよびクラウド接続サービスを提供する「プロバイダーサービス」を、2023年10月から開始することも発表した。

 デジタル庁が進める自治体システム標準化に向けて、全国の自治体では、2025年からガバメントクラウドに業務を移行することになり、プライベートクラウドへのダイレクト接続のニーズが高まっている。プロバイダーサービスでは、AWSやAzure、GCP、Oracle Cloudを対象にしたプライベートクラウド接続サービスにより、こうしたニーズに対応していくことになる。

 「これまでのマルチクラウド対応では、VPNにより、ひとつずつ線を引いていたが、閉域網のなかでサービスを提供できる。公共系にとどまらず、民需系に対してもサービスを提供していく」と述べた。

 さらに、インターネット接続サービスも提供する。帯域保証した専用線接続サービスと、共用サービスを用意。IPv4およびIPv6のIPアドレスの払い出しも行う。

データセンターの拡張と、価値向上への取り組み

 また、2023年1月から、新たな認証セキュリティ製品として、「ARCACLAVIS(アルカクラヴィス) NEXT」を販売。これを活用したRyobi MediSecサービスとして、多要素認証の実現や、セキュリティ脅威の可視化、運用監視などを提供しており、「医療機関のサイバー攻撃が増加するなかで、コンサルティングを含めたセキュリティ対策の提案を行っていく」と述べた。

ARCACLAVIS NEXTを提供

新規ビジネスへのチャレンジや民需系事業の拡大にも取り組む

 「新規ビジネスへのチャレンジ」では、AIやロボット、IoTなどの技術を活用した新製品や新サービスの創出に力を注いでいる。早期胃癌深達度を、病変部の画像からAIで診断するサービスを2024年から事業化するほか、為替動向を予測するFintechへの実証実験の取り組みや、熟練者の経験知をもとに、切削工具の欠けや摩耗、寿命をAIが推定する切削工具管理を事業化している例などを挙げた。

 また、ラオスで展開している海外事業では、日本の総務省と連携しながら、ラオス政府が推進するデジタルID調査事業を受託したことにも触れた。

AIによる新たな付加価値の創出

 4つめの「民需系事業の拡大」においては、アパレル業界向けに、受発注から生産、販売、在庫管理、小売りまでを一気通貫で提供する「Sunny-Side」を展開していることをあげた。2021年11月に子会社化したドリームゲートが開発した製品をベースにしており、2023年10月には第1号ユーザーでの本稼働がスタートする。また、生産版では2社から受注を得ているほか、リテール版では新規に3社の導入が決定していることも示した。

アパレル業界の受発注から生産・販売・在庫管理・小売までオールインワンで提供

 5つめの「積極的M&A投資」では、2022年10月に、医療機関向け総合情報システムを提供するマックスシステムの全株式を取得したこと、2023年2月に、投資運用子会社であるRyobi AlgoTech Capitalを設立し、20億円のCVCファンド第1号を組成したこと、6月からはスタートアップ企業向けのアクセラレータープログラムを開始し、53社の申し込みがあったことを紹介。2023年8月にはxIDに1億円を出資したという。

 「今後も、M&Aを継続し、スタートアップ企業などへの投資も行っていく。CVCでは、カーボンニュートラルや再生可能エネルギー、セキュリティ、海外などの数社と協業を検討していく予定である。また、2025年度の売上高500億円の達成のためには、今後は、30億円規模のM&Aが必要だと考えている。セキュリティ、ネットワーク、インフラの強化、製造業向けをはじめとした民需系の強化を図りたい」とした。

積極的M&A投資

デジタル人材の育成に注力

 一方、デジタル人材の育成についても触れ、セキュリティエンジニアは、2025年までに100人を育成する目標に対してこれまでに約30人を育成。クラウドエンジニアは200人の目標に対して、約160人に増加していることを示した。また、1600人の全社員に対して、eラーニングにより、DXリテラシーの向上やDXマインド醸成のための教育も実施しているという。同時に、地域のデジタル人材育成のためのクラウドエンジニア体験スクールも無料で提供していることも紹介した。

デジタル人材育成状況・目標

 「両備システムズは、岡山県の人気企業ランキングでは6年連続で1位となり、全国のネット関連企業における大学生就職人気ランキングでは9位。女性エンジニアが働きやすいIT業界ランキングでも上位に入っている。働きやすいオフィスへの取り組みも推進しており、2024年3月には、東京本社を移転し、豊成本店も2025年を目標に10階建ての新棟を完成させる。働きやすい新たな環境を作り、事業を盛り上げていく」と述べた。

 なお、両備システムズでは、9月5日・6日の2日間、東京・丸の内のJPタワーホール&カンファレンスおよびオンラインで、年次イベント「両備共創DX2023」を開催する。3回目となる今回のイベントでは、元サッカー日本代表監督であり、今治.夢スポーツの岡田武史会長が、「チームマネジメント~今治からの挑戦~」と題した基調講演を行うほか、各種トークセッションを用意。さらに、デジタル田園都市構想、ウェルネス、AI・業務自動化、業務ソリューション、クラウド・セキュリティといった5つのテーマでの展示が行われる。

両備共創DX2023