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Sansanとリコーが業務提携、インボイス管理サービス「Bill One for RICOH」をリコージャパンが販売

 株式会社リコーとSansan株式会社は6日、業務提携し、Sansanのインボイス管理サービス「Bill One」をベースとした「Bill One for RICOH」を4月中旬から販売すると発表した。

 Sansanはこれまで直販でBill Oneを販売してきたが、今回、リコージャパンからの販売によって、これまでリーチで来ていなかった中小企業を顧客として獲得することを狙う。

 リコーでは、「トレード帳票DXシリーズ」として取引書類の作成・発行、取引書類の受領・処理のための製品群を提供しているが、今回、Bill Oneをそこに加える。インボイス制度施行など帳票の発行や管理などのニーズが高まっていることを受け、2025年度には、経理業務DXに関連する売上全体で150億円規模を目指す。

経理業務DXに関連する売上全体で150億円規模を目指す

これまでリーチできていなかった中小企業への訴求を図る

 両社の提携によって、リコーはオリジナルプランの「Bill One for RICOH」を、リコーのクラウドサービス群「トレード帳票DXシリーズ」の商品としてラインアップする。Sansanはこれまで直販でBill Oneを顧客に提供していたが、日本全国に多くの中小企業ユーザーにソリューション販売を行っているリコージャパン経由で商品を販売することにより、これまでリーチできていなかった、アナログで業務を行っている中小企業への訴求を狙う。

 価格は顧客ごとに個別設定となるが、通常のBill Oneが大企業をターゲットとした価格設定となっていることから、それよりも安価になる見通し。

 今回の提携は、「2022年夏ごろ、リコーとSansanのトップ同士が同席する機会があり、コミュニケーションをとるうちに今回の提携に進んだ。両社の狙いがうまく合致したことで、今回の発表を行うこととなった」(リコージャパン株式会社 執行役員/デジタルサービス企画本部 副本部長 服部伸吾氏)といった経緯があったという。

リコージャパン株式会社 執行役員/デジタルサービス企画本部 副本部長 服部伸吾氏

 SansanのBill Oneは、請求書の受領から内容の確認、上長の承認、経理担当者による請求書の回収、その後の保管まで一貫して行う。請求書のやり取りがメール、FAX、郵送のいずれかで行われた場合でも、企業側は、あらゆる請求書をオンラインで受け取ることができる。受け取った請求書は、AI-OCRや人力により99.9%の精度で正確にデータ化することができる。クラウド上で請求書に関わる全体を一元管理可能で、担当者への催促などの作業も迅速に行えるとのこと。

Bill Oneの特長

 請求書に関する業務は、電子帳簿保存法の改正、インボイス制度施行に関わることから、複数の企業が対応ソリューションを提供している。「一般的に、プロダクトローンチから1年でARR(Annual Recurring Revenue)が1億円いけば成功とされるSaaS業界の中で、Bill Oneは1年目のARRが3億円、そして2年半経った現在ではARRが21億円を突破した。その結果、クラウド請求書・受領サービス市場でシェアトップを実現した」(Sansan株式会社 執行役員/Bill One Unit ゼネラルマネジャー 大西勝也氏)と説明する。

Bill Oneの成長
Sansan株式会社 執行役員/Bill One Unit ゼネラルマネジャー 大西勝也氏

 今後についても、「Bill Oneで請求書のやり取りを行う企業ネットワークを、インボイスネットワークと定義している。このインボイスネットワークが拡大することで、請求書の受領発行のやり取りが簡略化されることになり、企業は月次決算を迅速に行えるようになる。将来的には、このインボイスネットワークを通じ、請求書のやり取りを行うことが当たり前になり、『請求書はBill Oneでいいですか』といったコミュニケーションが日常的に行われるような状態にしていきたい」(大西氏)と、さらなる顧客拡大を目指すとしている。

Bill Oneのインボイスネットワーク

 一方リコーでは、従来のコピー機を販売するオフィスプリンティング事業から、オフィスサービス事業へ売上の主軸移管を進めている。その結果、リコージャパンの2016年度売上の56%を占めていたオフィスプリンティング事業は、2021年度には44%まで縮小。逆に2016年度には38%だったオフィスサービス事業の売上は、2021年度には48%まで拡大している。

 オフィスサービス事業の売上拡大を進めている中で、2023年2月・3月に、リコージャパンの顧客2000人にDXに関するアンケート調査を実施。その結果から、「63.1%のお客さまがDXに取り組む必要があると回答しているが、既にDXに取り組んでいると回答した顧客は19.1%にとどまった。必要性は感じているものの、実際にはDXを進められないお客さまが多い。DXが進んでいない理由として挙がったのは、費用対効果が見えないという点が最大で、41.8%となった。また、DXを進めるにあたり、『社外に相談相手が必要』『ある程度必要』という回答が61.7%あり、専門的な知識を持った第三者の協力が求められていることが明らかになった。中堅・中小企業のお客さまにはオンラインによるコミュニケーションだけではなく、直接会って気軽に相談ができる、アナログな相談相手としてサポートしていく必要がある」(リコージャパンの服部氏)と指摘する。

中堅・中小企業におけるDXへの取り組み状況

 さらに、中堅・中小企業がDXに取り組むきっかけとして、法令対応が機会となることが多いことから、今回の提携によってインボイス制度実施による経理業務の負担軽減を訴え、法令対応とデジタル化を同時実現する「トレード帳票DXシリーズ」を訴求していく。

 「ただでさえ人手を多く投入できない経理業務において、手作業でインボイス制度に対応することは非常に難しく、ITツール導入によるデジタル化は不可欠。法令対応とデジタル化を同時実現する、商取引のさまざまな業務プロセスをデジタル化するためのデジタルサービス群『トレード帳票DXシリーズ』にBill Oneが加わることで、提供価値の幅を拡大することができる。短期間にシェアナンバー1を達成したBill Oneの技術は、一朝一夕に実現できるものではなく、当社のラインアップにさらなる付加価値が生まれる」(服部氏)と強調する。

トレード帳票DXシリーズにBill Oneを追加

 なお中堅・中小企業の場合、自社で請求書発行後の仕訳、振込業務を自社で完結するケースと、会計事務所・税理士事務所へ業務委託を行っている場合や、複数の拠点に請求書が届き内容を確認して本社の経理部門に転送するケースなど、さまざまな形態がある。

 これについては、「どういったタイプのお客さまにも最適なサービスを提供していく。さらに、ほかのITツールやサービス同士をつなぐことで、お客さまと取引先を含めた業務プロセス全体を最適化し、業務効率化を実現するお手伝いをしていきたい」(服部氏)としており、インボイス制度をきっかけに、業務全体の効率化提案を行っていくことを目指す。

 リコーでは、こうした経理業務DXを行う提案とツール導入を進めていくことで、2025年度に売上高150億円の実現を目標としている。

Sansan 執行役員/Bill One Unit ゼネラルマネジャー 大西勝也氏(左)と、リコージャパン 執行役員/デジタルサービス企画本部 副本部長 服部伸吾氏(右)