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日本マイクロソフト、Azure OpenAI Service の一般提供開始などMicrosoft Cloudの最新動向を紹介
リニューアルしたDX支援活動拠点「マイクロソフトテクノロジーセンター」も公開
2023年1月24日 06:45
日本マイクロソフト株式会社は、報道向け説明会「Microsoft Cloud プレスブリーフィング」を1月23日に開催した。
Microsoft Cloudは、Microsoft Azureやその他の一連のクラウドサービスを包括的に扱うブランドだ。今回の説明会では、顧客企業のDXにおけるMicrosoft Cloudについて、日本でクラウド&ソリューション事業本部のフォーカスしている点、対応ソリューションや取り組み内容などが語られた。
また、Microsoft CloudをはじめとするDX支援活動拠点となる「マイクロソフトテクノロジーセンター(MTC)」の施設が大きくされリニューアルされ、この1月から本格稼働を開始した。それに合わせ、MTCの活動が解説されるとともに見学会も催されたので、その模様もレポートする。
企業DXの「Do more with less」を実現する5つの分野
まず、日本マイクロソフト株式会社 執行役員 常務 クラウド&ソリューション事業本部長の岡嵜禎氏が、クラウド&ソリューション事業本部が説明。フォーカスしている部分などについて語った。
岡嵜氏は、クラウド&ソリューション事業本部の役割について、顧客のDXテーマに対して最適なソリューションを提案するものだと説明。Microsoft Cloudの各領域のエキスパートをそろえて、専門性を持った技術の支援をしていると語った。
その上で注力分野として、「専門性を活かしたクラウドビジネスの推進」「ユーザー、パートナーとともに成長する仕組み」「体験を共有することによりお客さまのDXを加速」の3つを挙げた。
一方で、エンドユーザー企業がDXを進めるにあたって、人材や時間が不足しているという声もある。それに対して岡嵜氏は「Do more with less(より少ないリソースでより多くのことを実現)」の言葉のもと、これを実現する5つの分野を取り上げた。
データプラットフォーム:「データ活用が道半ばの企業も多い」
1つめの分野は「データドリブンと業務最適化」だ。企業のデータ活用について岡嵜氏は「データの器を作ってもデータが分散していたりと、まだまだ道半ばの企業も多い」とコメント。それに対してMicrosoftが提供するものとしてデータを集積して分析する「Microsoft Intelligent Data Platform」のサービス群を挙げた。
この分野の事例として岡嵜氏は、横河電機株式会社の例を取り上げた。ITのデータとOTのデータを融合させるために、Azure DatabricksとAzure Synapse Analyticsを中心にしたデータの仕組みを構築。さらに、データがどこで発生してどう使われているのかについて、Microsoft Purviewのデータリネージュ機能を採用したという。
AI:Azure OpenAI ServiceがGAに
2つめの分野は「自動化+AIでより効率化」だ。この分野でMicrosoftが提供するものとして、Azure AIとしてカテゴライズされているサービスを岡嵜氏は紹介した。自分たちが開発できる企業に向けた機械学習サービスや、すでに用意されているものを使うためのカスタム可能な学習済みAIモデル、業務シナリオに特化したサービスなど、企業のニーズに合わせてさまざまな提供形態があるのが特徴だという。
この中で新しいサービスとして、Azure上でOpenAI社のAIモデルが利用できる「Azure OpenAI Service」がGA(一般提供開始)になったことも岡嵜氏は説明した。米国では1月16日に、日本では1月23日にプレスリリースが発表されている。岡嵜氏はOpenAIがAzure上のサービスとなっている利点として、数分で利用可能でスケールもできることや、責任あるAI、エンタープライズレベルのセキュリティを挙げた。
さらに岡嵜氏は、産業向けメタバースもキーワードとして取り上げ、「ちゃんとやるにはデータが貯まっている必要がある」と語った。
開発者向けプラットフォーム:「インフラだけでなく開発の生産性向上も」
3つめの分野は「開発者向けプラットフォームでイノベーション創出」だ。クラウドサービスはインフラが中心だが、その上でアプリケーション開発者の生産性を上げることもDXには求められる、と岡嵜氏は説明。Microsoftでは、GitHub、Visual Studio、Power Appsなど、開発プラットフォームを包括的にそろえていることが強みだと語った。
その中でも特に、統合型ローコード・ノーコード開発ツール「Microsoft Power Platform」を岡嵜氏は取り上げ、それほど技術力のないLOB(Line of Business、ビジネス部門)の人が内製化に参加する必要性を語った。さらに、市民開発(ビジネス部門による開発)と、プロ開発とを融合した「フュージョン開発」の有効性を説いた。
フュージョン開発の事例としては、東京地下鉄株式会社の例を紹介。線路設備の異常検知にAIを活用したソリューションを内製化するにあたり、AIの部分はAIのプロ開発者が、パラメータを入力する部分などのユーザーサイドはビジネス部門が開発したと説明した。
こうした内製化への支援として提供しているプログラムもある。アプリケーション開発・移行・モダナイゼーション支援として「AMMP(Azure Migration & Modernization Program)」を、Microsoftが伴走するアプリケーション開発やデータ支援として「Azure Light-Up」「Cloud Native Dojo」「Open Hack」「Data Hack」などを紹介した。
さらにコミュニティ活動にも力を入れていると岡嵜氏。相互に経験やノウハウを共有する「MICUG(Microsoft Cloud Users Group for Enterprise)」や、市民開発に特化した「マイクロソフトDXユーザー会」も紹介した。
ハイブリッドワーク:日本マイクロソフト自身の取り組みを紹介
4つめの分野は「仕事のやり方を変革し従業員を再活性化する」だ。コロナ禍を機に、リモートワークでもオフィスでも選べるハイブリッドワークが求められるようになった。
これについて、日本マイクロソフト自身もハイブリッドワークを実践していることを岡嵜氏は説明。その方法として、ハイブリッドワークを実現するために、すべての会議室でTeams Roomsを活用したハイブリッドミーティングができるようになっていることや、コラボレーションにおいてTeamsで情報共有することで蓄積していることを語った。
さらに、リモートで本当にうまくいっているかを従業員体験プラットフォーム「Microsoft Viva」で可視化することも紹介した。
セキュリティ:毎日43兆の脅威シグナルを分析している実績
5つめの分野は「あらゆるもの、人、場所を保護する」、つまりセキュリティだ。攻撃が頻繁かつ巧妙になり、マルチクラウド対応の圧力があり、規制もますます厳しくなる、と岡嵜氏は言う。
この分野についてのMicrosoftの強みとして、セキュリティのノウハウをためていることを岡嵜氏は挙げた。毎日43兆の脅威シグナルを分析し、世界で8,500人のエキスパートが対応し、120か国の78万5000組織を保護しているという。
また、Microsoftのセキュリティポートフォリオとして、50以上の製品カテゴリを6つの製品ファミリに統合したことも紹介。さらに、ノウハウやベストプラクティスをまとめた「Microsoft Cybersecurity Reference Architecture(MCRA)」も提供していることも取り上げた。
リニューアルしたマイクロソフトテクノロジーセンター(MTC)を紹介
マイクロソフトテクノロジーセンター(MTC)は、2012年から品川の本社オフィスに設けられている。
コロナ禍を機に品川オフィスが作り変えられたのにともない、MTCの施設であるMTCルームも大きくリニューアルされた。新MTCルームは、2022年10月から徐々に稼働し始め、2023年1月から本格稼働している。
このMTCの活動とMTC Roomについて、日本マイクロソフト株式会社 マイクロソフトテクノロジーセンター センター長の吉田雄哉氏が紹介した。
導入前の顧客の課題をヒアリングしてディスカッション
MTCは、企業のIT導入をサポートするための施設として作られ、現在ではDXのサポートなども行われている。世界的な取り組みであり、28か国にまたがるネットワークを持ち、地域ごとにテクニカルアーキテクトが配置されている。
MTCの活動は、顧客企業の導入の前段階であり、「お客さまの目標と課題を深く伺うことで、提供できる価値を最大化している」と吉田氏は説明した。
そうした活動の1つ「ストラテジーブリーフィングセッション」は、顧客にヒアリングしてディスカッションするもの。「以前はセミナーを主催して一方的にMicrosoftのソリューションの価値を伝えるアプローチが多かったが、それだけではうまくいかない。お客さまごとに答えは異なるので、入念にヒアリングすることが重要」と吉田氏は語った。
それに続く活動「エンビジョニングワークショップ」は、DXのために内製でシステム開発するために、企画段階から伴走してワークショップによって支援するものだという。
MTC Roomにオープンスペースやハイブリッド会議設備を新設
こうしたMTCの活動のために、意思決定層への情報提供やヒアリング、ディスカッションの場として設けられているのがMTC Roomだ。
これまでは会議室が並んでいるものだったが、今回リニューアルを実施。会議室のほか、オープンに使えるスペースも設けられた。
それぞれの会議室には、ハイブリッド会議の設備が用意されている。これは、Microsoftソリューションを使ったハイブリッド会議によって、リモートでもオンサイトのように参加できる生産性の高さのデモも兼ねたものだ。
会議室では、天井にマイクスピーカーが埋め込まれて、テーブルのノイズをマイクが拾いにくいようになっている。
また、Teams専用ルームでは、半円形のテーブルに座っている参加者が、リモート参加者からは横に並んでいるように見えるカメラなども用意されているという。
フロアにはそのほか、特定業種でのテクノロジー活用を展示するブースもちらほらと設けられている。
工事作業をARで指示するインダストリアルメタバースのデモ
見学会では、MTC Roomの会議室を利用して、MicrosoftのMixed RealityゴーグルHoloLensを使った「インダストリアルメタバース」のデモも実施された。
これは、エアーコンプレッサーの配管作業を、ARによって指示を受けたり、動画説明を参照したりしながら行うもの。AR上では、文字の説明とともに指し示す場所までの線や矢印が示されるなど、作業指示が視覚的に示される。さらに、トラブル発生時にAR内でTeamsを呼び出し、リモートのサポートスタッフとAR画面を共有したり、対処する場所を画面内に線などで示してもらったりもできるところがデモされた。
なお、このようなシステムは、海外工場の立ち上げに使われた事例もあるとの説明だった。