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ホワイトハウスがIntelの筆頭株主になった日 産業「無償援助」を終える米国
2025年8月25日 11:38
経営難にあるIntelの株式の1割を米国政府が取得した。半導体産業支援の補助金を株式に転換して保有する仕組みだ。「政府が民間企業の筆頭株主になる」という政策は、以前なら「社会主義的」と批判されたものだが、今回、共和党政権が実行した。米国の産業政策の根本的な転換かもしれない。
米政府の政策が転換:「無償補助金」から「投資回収」へ
政府はIntel株の9.9%(4億3330万株)を89億ドルで買収することで合意した。1株当たり20.47ドルで金曜日の終値24.80ドルから1株当たり約4ドルの値引きとなる。89億ドルの内訳は、未払いの「CHIPS法」補助金57億ドルと、安全なチップを製造するプログラムに基づく別の補助金32億ドルで賄う。持ち分9.9%は、Vanguard Group(保有比率約9.1%)を抜き、政府が筆頭株主となる。
CHIPS法(半導体製造技術促進および科学法)は米国の半導体製造能力復活を目指し、半導体分野に527億ドルを予算化している。Intelは22億ドルを既に受け取っており、今回分を合わせると政府の総出資額は約111億ドルとなる。
株式取得の意図は何か――。金融業界出身のHoward Lutnick商務長官は8月19日のCNBCの番組に出演し、政府はIntel株を取得する必要があると発言した。「われわれは投資に対してリターンを得る」とも述べた。
また、「Biden政権は文字通りIntelやTSMCに無償で資金を提供していた」「Trump大統領はそれを、『資金に対してエクイティを求める』に変えた」と意義を強調した。一方で、「政府はIntelの議決権を持たない」とも述べ、ガバナンスへの介入は否定している。
この政策は、意外な支持も得ている。リベラルで代表的なBernie Sanders上院議員(無所属、民主党会派)は「補助金によって企業が利益を上げるなら、米国の納税者はその投資に対して合理的なリターンを受ける権利がある」とReutersに述べ、珍しくTrump政策を支持した。
Lutnick長官は、8月23日早朝、Xに投稿し、「IntelのLip-Bu Tan CEOのおかげで、Intelにとってもアメリカ国民にとっても公平な」取引が成立したと述べた。