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セゾンテクノロジー、国内SaaSベンダー3社と協業しSAP ERPのモダン化を支援
2025年8月25日 06:00
株式会社セゾンテクノロジーは、国内SaaSベンダー3社と協業し、SAPユーザーを対象にERPのモダン化を共同で推進すると8月22日に発表した。
「SAP ERP 6.0(ECC 6.0)」が2027年に標準サポートを終了し、ユーザー企業が後継の「SAP S/4HANA」への移行期にあることを背景とする。この移行に際して、企業で必要とする機能カスタマイズを、ERP本体のアドオンではなく、各SaaSにオフロードし、iPaaS(Integration Platform as a Service:クラウド型データ連携プラットフォーム)であるセゾンテクノロジーの「HULFT Square」により、疎結合でデータ連携して構築するというものだ。
発表においては、ウイングアーク1st株式会社(電子帳票ソリューションなど)、株式会社エイトレッド(ワークフローシステム)、サイボウズ株式会社(ノーコード業務アプリ作成ツールのkintone)の3社が参加を表明した。今後もHULFT Squareに対応したSaaSの中から参加を増やしていく考え。
なお、SAP専用のデータ連携コネクターは、クレスコ・イー・ソリューション株式会社と共同で開発し、「HULFT Square」新機能として2025年秋から提供を開始する。
アドオンを極小化してオフロード化することで、ERPを生かす
同日に開催された記者説明会で、セゾンテクノロジーの石田誠司氏(取締役 常務執行役員 営業本部長)は、背景となる課題を説明した。
「ERPの成功事例は、北米を含めてまだまだ少ないと言われている」として、アドオンなどによる企業に合わせたカスタマイズが課題となっていると指摘。「アドオンを極小化して、なるべくオフロード化し、システム間の疎結合によってERPのいいところを生かしたい」と語った。
特に日本では、商習慣などによる日本特有の機能追加の必要があるという。使い慣れた入力画面や、捺印文化、外字変換、専用伝票への出力などだ。こうした課題を国内SaaSベンダーとの連携により解決しようとするのが、今回のアライアンスだという。
コアのERP周辺のアドオンカスタマイズを極小化し、機能をオフロード化して疎結合にすることで、導入やバージョンアップにおいて工期やコストを圧縮すると、石田氏は説明した。
セゾンテクノロジーは前述のとおり、SAPとHULFT Squareとを接続するODataコネクターを2025年秋にリリース。各ベンダーとの間は接続テンプレートを使って、アドオンではない疎結合にてSAPと連携する。
「これをSIerにも採用していただき、SIerのコアである本当のERPのマイグレーションに力を入れていただけるのではないかと思う」と石田氏は付け加えた。
続いて登場したクレスコ・イー・ソリューション株式会社の後藤聡氏(代表取締役社長)も、現状のSAPユーザーの課題として、SAP ECCのままのユーザーがまだたくさんおり、移行を迫られていることを挙げた。そしてこれまで、巨大なERPシステムでなんでもやろうとしてアドオンを過剰に作りすぎ、保守運用のコストがかかっていると指摘した。
一方で現在のERPの流れはコンポーザブル型になっており、製品の組み合わせが当たり前になっていると語った。そこで今回のアライアンスでは、共通連携基盤としてHULFT Squareを用い、各システムを取りまとめる形をとる。
3社の帳票やワークフロー、現場ツールのSaaSとERPを連携
説明会には、今回協業に参加した3社も登場した。
ウイングアーク1st株式会社の久我温紀氏(執行役員 CMO)は、BD(Business Document)事業である帳票の「SVF」「invoiceAgent」と、DE(Data Empowerment)事業であるデータ分析基盤の「Dr.Sum」「MotionBoard」を紹介した。
そして今回のHULFT Squareの取り組みによって、同社の帳票やデータ分析をSAPとよりつなげやすくなり、またほかのSaaSともつながりやすくなったと久我氏は説明し、「ユーザーのさまざまな要件に対し、最適なソリューションでSAPの力をもっと引き出していけるようになる」と語った。
株式会社エイトレッドの岡本康広氏(代表取締役社長)は、同社のワークフロープロダクトとして、中小企業向けの「X-point」と中堅・大手企業向けの「Agile Works」を紹介した。
岡本氏は、申請・承認が仕事の起点となることから、ワークフローは業務のハブだと説明し、ERPとワークフローとの連携のユースケースを2つ取り上げた。1つ目は品目マスターや得意先マスターなどのマスターの登録や修正において、ワークフローで申請と承認を行うというものだ。2つ目は、受発注などにおける承認や取り消しといった例外処理で、ワークフローによって承認を行いデータを書き戻すというものである。
サイボウズ株式会社の清田和敏氏(執行役員 営業本部長)は、kintoneを、ITのプロでない現場の担当者がドラッグ&ドロップのノーコードで、データの入力などのアプリを作れるものだと紹介した。
ERPとkintoneの連携については、企業ではERPでなかなか業務をカバーできない領域が紙として残っており、kintoneはそこをカバーしていくものだと説明。そして両者をつなぐことで、データ資産を現場の武器として渡すデータ連携や、マスターを最新のものにして二重管理を防ぐマスター連携が実現すると語った。
ユースケースとしては、営業業務において受注確定前の情報をkintoneを利用し現場で管理する使い方や、購買業務において社外の人とのやりとりでメール添付などの属人化を解消する使い方、マスターデータのメンテナンスなどが紹介された。