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キヤノンITS、「VISION2025」に向けた取り組みと今後の戦略について説明

ローコード開発プラットフォームの新製品「WebPerformer-NX」も発表

 キヤノンITソリューションズ株式会社(以下、キヤノンITS)は25日、長期ビジョン「VISION2025」に向けた2022年の取り組みと今後の事業戦略、および同日発表したローコード開発プラットフォームの新製品「WebPerformer-NX」について説明会を開催した。

 キヤノンITSは2020年に、2025年のありたい姿を「VISION2025」として掲げ、「先進ICTと元気な社員で未来を拓く“共想共創カンパニー”」の実現に向けて、「サービス提供モデル」「ビジネス共創モデル」「システムインテグレーションモデル」の3つの事業モデルを展開している。

 このうち、システムインテグレーションモデルでは、経営戦略と連動したITシステムの価値を継続的に高め、顧客の強みを生かしたビジネスゴールに伴走する。サービス提供モデルでは、業界や業務に共通した付加価値の高いICTサービスを提供することで、顧客が自社のビジネスに集中できる環境を整備する。またビジネス共創モデルは、顧客の事業戦略や業界動向を深く理解し、同社のこれまでのビジネス経験や技術を最大限に活用することで、DXを進めるための戦略策定やITグランドデザインを顧客とともに創り上げる事業モデルとなる。

「VISION2025」に向けた3つの事業モデルの成長

 キヤノンITS 代表取締役社長の金澤明氏は、「これら3つの事業モデルは、相互に関係しあって顧客への提供価値を拡大していく。将来への投資が3つの事業モデルでビジネスに適用され、顧客への提供価値に姿を変え投資に戻る、2025年にはこうしたサイクルをうまく回していく。また、この3つの事業モデルを実現するための戦略を効果的に展開し、2025年には2021年比で売上1.5倍を目指す。その中で最も成長を目指している事業モデルがサービス提供モデルで、付加価値を高めることで顧客での活用を進め、売上規模を2倍に伸ばしていきたい」との考えを述べた。

キヤノンITS 代表取締役社長の金澤明氏

 各事業モデルにおける2022年の主なトピックとしては、システムインテグレーションモデルでは、(1)製造業や流通業向けに基幹システムおよび需給管理システムを構築し、課題解決型のシステムインテグレーションを実現、(2)車載システム開発ビジネスの領域にチャレンジ、(3)金融機関向け基幹システム開発や制度対応の拡充に加え、スマホアプリやフロントエンド開発を強化、(4)教育領域のDX実現に向けた教育支援情報プラットフォームの構築を拡大、(5)大手電子機器メーカー向けにデータマネジメントサービスを新規導入、の5点を挙げた。

 サービス提供モデルについては、「社会の困りごとや顧客の共通課題を解決するため、当社の強みを生かして幅広い顧客に高付加価値で使いやすいICTサービスを提供する、今後最も注力していく事業モデル」(金澤氏)としたうえで、(1)クラウドサービス「SOLTAGE」を軸とした付加価値サービスの提供を強化、(2)セキュリティ運用を支援するSOCサービスを拡充、(3)クラウドネイティブな次世代EDIサービスを提供開始、(4)ローコード開発プラットフォームの新たなクラウドサービスを発表、(5)付加価値の高いサービス創出加速に向けてビジネスインキュベーションセンターを新設、の5点を挙げた。

サービス提供モデルの概要

 ビジネス共創モデルについては、「この事業モデルを実現するために、ビジネスデザインおよびシステムデザインを実現する組織と、数理最適化技術を用いてデータドリブン経営を支援するビジネスサイエンスのチームを同じ部門の配下に配置しなおした。そして、『顧客のDX戦略策定』をメインテーマに、ビジネスサイエンスを組み合わせたプロジェクトを組成。物流業に対するDXグランドデザインの描画や、自動車メーカーに対する独自開発のDXアセスメントを活用したDX戦略・方針の策定など具体的な事例もだいぶ積み上がってきた」(金澤氏)としている。

ビジネス共創モデル実現に向けたプロジェクト

 なお、「VISION2025」の実現に向けた今後の事業戦略としては、「顧客の課題をともに解決し、顧客のビジネスゴールを目指す」ことを基本戦略に掲げ、(1)顧客のビジネスゴールにつなげるシステムインテグレーション、顧客のITライフサイクルをフルサポートする、(2)社会の困りごとや顧客の共通課題を解決するソリューションとサービス、幅広い顧客への提供を目指す、(3)顧客のビジョンに共感し戦略をカタチにする共想共創活動、実績の積み上げを通じて活動価値をスパイラルアップさせる、の3つのテーマで展開していく方針を明らかにした。

クラウド型ローコード開発プラットフォーム「WebPerformer-NX」を発表

 続いて、同日に発表したクラウド型ローコード開発プラットフォーム「WebPerformer-NX」の概要について説明した。

 「WebPerformer-NX」は、デザイン性に優れた豊富なUI部品群を組み合わせることで、利便性の高いアプリケーションを容易に開発できるソリューション。業務プロセスのデジタル化に向けたワークフロー機能も標準装備しており、企業のDX実現を推進するという。

 また、複雑なビジネスロジックの開発では、多くのエンジニアが慣れ親しんだ汎用言語の文法を採用しており、製品習得にかかる期間を短縮するとともに、他のローコード開発ツールを使用している場合でも切り替えが容易に行えるとのこと。さらに、開発・実行環境をクラウド上で提供するため、ブラウザ上ですぐに使い始めることができ、Web APIを使ったシステム連携も可能となっている。

「WebPerformer-NX」の製品概要

 キヤノンITS 執行役員 デジタルイノベーション事業部門 デジタルビジネス統括本部長の松本一弥氏は、新製品をリリースする背景について、「これまでのローコードは、基幹システムのモダナイズとスピードが中心だった。当社の『WebPerformer』も基幹システムの再構築を中心としたモダナイゼーションやマイグレーションの開発生産性向上を目的に活用されており、この分野で多くのシステム開発や課題解決に貢献してきた。ローコードの市場はさらに拡大するとみられているが、使われる領域はレガシーシステムのバックオフィス系よりフロントデジタルビジネスの領域に向かっている。そこで、今後成長が見込まれる攻めのITに応えるべく、DX実現に向けたローコード開発プラットフォーム『WebPerformer-NX』を投入する」と説明した。

キヤノンITS 執行役員 デジタルイノベーション事業部門 デジタルビジネス統括本部長の松本一弥氏

 具体的には、開発環境とオンライン実行環境、システムとして重要なバッチ処理の環境を用意しており、開発環境で作ったアプリをすぐに実行環境で動かすことが可能。開発は、Webブラウザだけで実施できる。

 また簡単なアプリケーションであれば、画面デザインから自動的にデータベースが作成されるため、ほとんどコードなしで作成可能。豊富なUI部品を作成した、アプリケーションのイメージがすぐにわかる、開発のしやすい統合環境なども用意されている。

 実行環境は企業との契約ごとに提供するシングルテナント型で、セキュリティ面、実行負荷の面でも安心して使えるようにしている。地図やカメラを活用するモバイルアプリや外部サービスとの連携も容易に実現でき、業務ロジックで重要なワークフローも提供する。開発者にとってはスクラッチ開発に近い自由度を保ちつつ、効率的かつロジック開発に集中できるよう、シンプルでわかりやすい構成にしている。

 サービス体系は、申し込み後すぐに無料体験できるFreeエディションを用意するほか、利用規模に応じて、Basic、Standard、Professionalの各エディションを提供する予定。価格は、Basicエディションが月額14万円から(年間契約)。発売は、2023年1月下旬を予定している。

「WebPerformer-NX」のサービス体系

 キヤノンITSでは、2025年までに「WebPerformer」シリーズで累計2000社の導入を目指す。また、今後も、ローコード開発ツールの提供を通して培ってきた知見と経験を生かし、時代の変化とニーズを踏まえたサービスの充実を図ることで、内製でのシステム開発を推進する顧客を支援していく。