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日本オラクル、OCIの機能を企業のDC内で利用できる「OCI Dedicated Region」をより小規模環境向けに提供

 日本オラクル株式会社は23日、Oracle Cloud Infrastructure(OCI)の機能を顧客のデータセンターで活用できる「OCI Dedicated Region」において、より小規模で、低価格で利用できる新サービスの提供を開始した。さらに、ラック規模のソリューションとして提供する「OCI Compute Cloud@Customer」をプレビュー版として提供することも発表した。これにより、OCIの分散クラウドサービスを拡張。100以上のOCIパブリッククラウドサービスを顧客のデータセンターに提供できるようになる。

 米Oracle OCI プロダクトマネジメント担当バイスプレジデントのLeo Leung(レオ・リョン)氏は、「世界中には、接続されているシステムと接続されていないシステムが存在するが、多くの顧客はリモートで管理し、信頼性、制御できる環境を求めている。また、クラウドの機能を自社のデータセンターやオンプレスで利用したいというニーズがあり、分散クラウドに対する関心が高まっている」と指摘。

 その上で、「しかしながら、他社の分散クラウドサービスには何かしらの足りない要素がある。フルマネージドではない、欲しいサービスがない、ハードウェアとソフトウェアを別々に管理しなくてはいけないなどだ。従量課金になっていないため、統合した形で購入しなくてはならないなどの課題もある。Oracleの分散クラウドに対するアプローチでは、パブリッククラウドからオンプレミス環境でのフルクラウド提供まで、さまざまな導入モデルを、完全なポートフォリオによって、あらゆる顧客の要件に対応できる点が強みである」と述べた。

米Oracle OCI プロダクトマネジメント担当バイスプレジデントのLeo Leung氏

 Oracleでは、分散クラウドのポートフォリオとして、全世界38リージョンで提供するOCI Public Cloudを筆頭に、すべてのサービスをオンプレミス環境で、フルマネージドで提供するOCI Dedicated Region、ラックスケールでサービスを提供し、数十単位のワークロードに対応しながら、Compute as a ServiceやStorage as a Serviceなどを提供することができるExadata Cloud@Customerや、新たに提供するCompute Cloud@Customerを用意している。またサーバー1台で提供し、限定的なワークロードに対して非接続環境で利用できるRoving Edgeまでのラインアップがそろうことになる。

 「OCI Dedicated Region」の新たなサービスでは、データセンタースペースや電力量を平均で60~75%小規模化し、エントリー価格は、一般的な顧客の場合で年間約100万ドルを想定。従来に比べて大幅に低く設定しているのが特徴だ。

 具体的には、従来は50ラック、600万ドルが最小規模であったが、これを12ラック、100万ドルを最小規模とした。

OCI Dedicated Region

 リョン氏は、「OCI Dedicated Regionは2020年から提供しているものであり、OCIのパブリッククラウドのすべてのメリットを備えた完全なクラウドリージョンを、顧客のデータセンターに提供し、より多くの顧客が、パブリッククラウドのアジリティや経済性、拡張性といったメリットを、自社のデータセンターにおいても享受できるようにしている。ソフトウェアおよびハードウェアのマネジメントはOracleが行い、顧客は使用した分だけ支払う仕組みで、大規模なITシステムのモダナイズをはじめ、さまざまな規模のワークロードに対応でき、フルマネージドで提供できるのはOCI Dedicated Regionだけである。より多くの組織に利用してもらうことができる」と述べた。

 ここでは、AWS Local ZonesやAWS Outpostを引き合いに出し、「パブリッククラウドのサブセットにすぎないことや、パブリッククラウドにアクセスすることで通信が発生したり、不足している機能があるため、顧客の要件に十分に応えられていないという課題がある。限られたニーズにしか対応できない」と指摘した。

 今回、新たに野村総合研究所(NRI)やVodafoneがOCI Dedicated Regionを活用し、データとサービスの管理性を維持しながらクリティカルワークロードを実行。顧客が選んだ場所で、OCIのパブリッククラウドのフル機能を利用することも発表した。

 OCI Dedicated Regionを導入している企業や公共分野の顧客は、厳しいデータレジデンシーや管理性、セキュリティが求められるアプリケーションおよびデータホスティング、低遅延接続の実現、データ集約処理を行うことを主な目的に導入している例が多いという。

 一方、「OCI Compute Cloud@Customer」は、OCI Dedicated Regionよりも小規模な環境向けのラック規模ソリューションとして提供するものになる。現時点では、プレビュー版としている。

 Compute Cloud@Customerにより、顧客は自社データセンター内のOCI互換のコンピュート、ストレージ、ネットワーキング上で、アプリケーションを実行できるようになる。

 OCIのリージョンから管理され、コスト効率に優れたOCIの消費モデルを利用することで、オペレーションの合理化およびコスト削減が実現できるという。

 「1ラックの規模から導入が可能であり、料金も消費ベースで設定されている」としたほか、「OCI Dedicated Regionはオンプレミスでのマネジメントになるが、Compute Cloud@Customerはクラウドでのマネジメントになることが違いである。通信事業者などでは、コアサイトやエッジに近いサイトなど、複数のディストリビューションポイントを持っているのが特徴であり、それぞれのロケーションの規模に応じて求められるパフォーマンスや仕様が異なる。Compute Cloud@Customerでは、それらに対応した提案ができる」と発言。

 開発者とIT管理者は、同じAPIと管理ツールを使用して、サービスの実行場所に関係なく、一貫したユーザーエクスペリエンスを実現できる。組織は、さまざまな分散型クラウド環境において単一のソフトウェアセットをよって、容易に開発やデプロイ、保護、管理できるのも大きな特徴になるとした。

Compute Cloud@Customer

 「OCI Dedicated Region」や「Exadata Cloud@Customer」、「Compute Cloud@Customer」は、いずれも企業や組織が、OCIで管理しているものと同じハードウェアやソフトウェアを、自社データセンターおよびOCIのリージョンで利用できるのが特徴だ。

 野村総合研究所では、金銭信託サービス「BESTWAY」や、資産運用会社向けソリューション「T-STAR」のサービスにおいて、低遅延、ハイパフォーマンス、アプリケーションのデータレジデンシーを実現するために、OCI Dedicated Regionを国内2カ所に設置sしている。

 またオマーンの政府系組織であるOICTグループでは、データレジデンシーやセキュリティ強化のためにOCI Dedicated Regionを採用。オンプレミスのアプリケーションのモダナイズをしながら、セキュリティの強化やコンプライアンスへの対応を実現している。

 テレコム分野では、スペインのテレフォニカが導入。複数の場所でのデータ処理ができるとともに、低遅延とパフォーマンスの確保のためにCompute Cloud@Customerを導入するという。

 現在、OCIのリージョンは、商用および政府向けのパブリッククラウドとして、全世界38のリージョンで展開。今後、6つのリージョンの開設が予定されている。さらに、11リージョンがAzureとのインターコネクトに対応。「マルチクラウドアーキテクチャーにより、ほかのクラウドとの相互接続が可能であり、ハイブリッドクラウドサービスのコントロールプレーンとしても機能することができる」とする。

 OCI Dedicated RegionやExadata Cloud@Customerでの活用を加えると、全世界60カ国以上を、OCIがカバーしているという。

 また、OCIのリージョンは、専用のシングルテナントクラウドとして、顧客のデータセンターにデプロイすることが可能となっている。OCIのデプロイオプションは、場所の選択肢や必要なパフォーマンス、セキュリティ、コンプライアンス、オペレーションモデルに応じて、100以上のOCIサービスの機能やサブセットを提供。OCIの分散クラウドは、これらのデプロイオプションの組み合わせから構成することになるとした。

OCIのグローバルロケーション