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テラスカイが3カ年の中期経営計画を発表、2023年2月期の大規模投資で次年度以降の大きな利益創出を図る
2022年4月18日 06:00
株式会社テラスカイは15日、同社初となる中期経営計画を発表した。それによると、2025年2月期に売上高284億8300万円、営業利益が24億1300万円、経常利益は24億2600万円、当期純利益は14億3400万円を目指す。売上高の年平均成長率は31.3%と高い伸びを見込む。
また2030年には、連結売上高700億円超を目指す計画も新たに公表し、「拡大した経営基盤により、クラウドインテグレータのリーディング企業であり続けたい」(テラスカイ 代表取締役CEOの佐藤秀哉氏)と抱負を述べた。なお、「クラウドインテグレータ」の呼称は、佐藤CEOが最初に使った言葉だという。
さらに、米Salesforce.comがSlackを買収した動きに連動した「Slackコラボレーション」を始動させたことを発表。2022年5月に、テラスカイのノーコード画面開発を行うSky Visual Editorと連携した製品を発表することを明らかにした。
「Slackをいち早く取り込み、Sky Visual Editor、mitocoを含めた3製品で、新たな機能を提供していくことになる。Salesforce.comでは、すでにSlackの開発ツールを用意すると発表しており、それを開示してもらって開発をしている。Sky Visual Editorを利用して、Salesforceの画面上にSlackをプロットできるコンポーネントを用意した。SlackにCRMの要素を加えられるもので、Salesforceの画面を開くと、それに関連したSlackのチャットが現れる。どんなやりとりをしているのかを、CRMとひも付いて見ることが可能。プラットフォームを分断せず、融合した形で情報をやりとりできる」という。
3年間に渡って積極的な投資を行っていく
今回発表した中期経営計画は、3年間に渡って積極的な投資を行っていくことを示す内容となっている。
テラスカイの佐藤CEOは、「売上高は、既存事業のオーガニックな成長に加え、新規事業の効果で成長率を伸長させていくことになる。2023年2月期において大きな投資を行い、これをもとに2024年以降での大きな利益の創出を目指し、2030年には売上規模700億円超の企業に成長する」と、中長期に向けた基本姿勢を示した。
さらに、「テラスカイグループはテクノロジーカンパニーであり、最新技術をしっかり習得し、咀嚼した上で、お客さまに価値ある形で提供する。それによってお客さまの成功のお手伝いをする。これがテラスカイグループの存在意義である」と前置き。
「クラウド領域は拡大市場であり、新たなサービス、製品、技術が次々と生まれている。これらを習得するだけでなく、それを取り入れた製品開発への投資や、新たな市場に投資をし、将来の収益につなげたい。株主からはお叱りに似た形で、いつまで投資をするのか、収益をあげるのはいつになるのかと聞かれるが、いまは市場が拡大している時期であり、投資の時期だと判断している。それによって将来のマーケットを取りに行く。中期経営計画はそのための取り組みであり、今年度も引き続き積極投資を行い、経営基盤を拡大する」との考えを示した。
2025年2月期の営業利益率は8.5%であるが、最終的には10%を目指したいと述べており、経常利益は過去最高を目指すという。
テラスカイが、いまを成長機会にとらえている背景には、市場拡大期であるにもかかわらずエンジニア採用が追いついていない点、グループウェア市場が拡大するなかで、mitocoには、まだまだ成長余力があると判断している点、Salesforceにおけるコア事業ではポジションを確立したものの、コア事業周辺に収益が見込める市場が創出されており、ここに本格的に進出する必要がある点、そして、コロナ禍の終息の兆しが見えはじめことで、これまで停滞していたタイ子会社での事業が本格化できるタイミングに入ってきた点――などが挙げられる。
2022年時点のテラスカイグループの社員数は777人であり、これを2024年には1589人へと倍増させる計画だ。
「もっと多くのエンジニアが集まれば、もっと仕事を受けられる。それだけの仕事があり、やりたくても断っている状況が続いている。エンジニアの採用を強化していきたい。また、Salesforceが買収を加速しており、周辺ビジネスが広がっている。そこに投資をしなくてはならない。加えて、海外での事業展開を進めていける時期を迎えている」とした。
赤字を出しても大規模な投資を行う
大規模投資を予定している2023年2月期(2022年3月~2023年2月)の連結業績見通しは、売上高が前年比26.1%増の158億5800万円、営業利益は同99.4%減の400万円、経常利益が同99.1%減の500万円、当期純損益は2億2300万円の赤字としている。
「2023年2月期は、積極投資による赤字と、法人税などの合算で当期純損失を予定している。営業利益も経常利益もトントンの水準」とする一方、「今年度は、一回しゃがんで、投資をしっかりして、そのあとのジャンプに備える。投資をしなければ利益は出るが、いま投資をすることが欠かせないと判断して、投資をすることにした。最終利益は赤字になるぐらいに思い切ってかじを切り、投資をする決断をした」と語る。
中期経営計画における投資分野として挙げたのが、「広告宣伝費の投下による認知向上」、「設立した子会社事業の本格展開」、「製品開発投資の継続」の3点だ。
「広告宣伝費の投下による認知向上」では、「“クラウド界隈”ではテラスカイの認知度が高まっているが、IT業界全体では知名度が高いとはいえない。優秀な人材を獲得するためにも、広告展開を通じて認知度を高めることが重要である。知る人ぞ知る会社で終わってしまってはいけない」と語る。
今年度は、テレビCMやウェブCMに合計数億円の予算を投下し、採用市場への積極的な認知度向上によるエンジニア採用の増加とともに、製品選定時に重要とされる知名度を早期に向上させ、特にmitocoの販売拡大を目指すという。
2つめの「設立した子会社事業の本格展開」では、過去3年間で7社を設立したことに触れ、これらの子会社を、収益を得られる事業体として成長を図るとした。
「可能性を見いだした分野において、やる気があるメンバーが揃ったときに会社を設立してきた。1兆8000億円の規模があるとされる技術人材派遣市場には、2021年2月にテラスカイ・テクノロジーズを設立し、737億円の市場規模が見込まれるデジタルマーケティング市場向けでは、DiceWorksを2022年1月に設立した。周辺ビジネスにも手を打ち、グループ全体で成長することを目指す」という。
ここでは特に、TerraSky (Thailand)に力を注ぐという。「2019年12月に設立した途端にコロナ禍になり、開店休業の状態だった。その間、日本にいるタイのエンジニアを採用し、育成し、日本でのビジネスを行っていた。コロナ禍が落ち着き始めたことで、タイに戻ってもらい、2022年6月を目標にビジネスをスタートする。タイは親日国であり、日本の企業も数多く進出している。1人当たりのGDPも高まってきた。生産拠点としてとらえるのではなく、市場としてとらえることができる。市場が成長するなかではCRMが必要になり、Salesforceもタイに拠点を設置している。テラスカイは、これにあわせたビジネスができるほか、タイでは国民の90%のLINEユーザーであり、SalesforceとLINEをつなぐ製品のOMLINE(オムリン)にもビジネスチャンスが生まれる」などとした。
今年度中に新社長が現地に赴任し、現地でのエンジニア採用および教育も開始することになる。
また、テラスカイ・テクノロジーズは2024年度から黒字化を目指し、TerraSky (Thailand)および、量子コンピュータソリューション事業を行うQuemixは、いずれも2025年度から黒字することを目指す。
「過去投資してきた会社としては、上場したBeeXをはじめ、しっかりと育ててきた実績がある。リソースの活用が可能であり、グループとして成長させることができるエンジンを持っている」と、子会社などの成長に自信をみせた。
3つめの「製品開発投資の継続」においては、グループウェアのmitocoへの投資を拡大する。2021年11月にはmitoco WORK経費をリリースするなど、グループウェア機能を拡充していく。「グループウェア市場はまだ拡大する市場であり、パイの奪い合いという状況ではない。グループウェアとしてのmitocoに、経費精算や勤怠管理の機能を追加したmitocoWorkによって、さらなる導入者数の増加を目指す」とした。
2022年2月期は増収減益
一方、テラスカイの2022年2月期(2021年3月~2022年2月)の連結業績は、売上高が前年比12.9%増の125億7800万円、営業利益は同15.5%減の6億5800万円、経常利益が同15.2%減の6億6100万円、当期純利益が同87.5%減の3億600万円となった。
テラスカイの佐藤CEOは、「売上高は計画には未達となったものの、過去最高だった前年度実績を上回った。悲喜こもごもの結果だが、計画に近い形で着地できた。経常利益は、Quemix、TerraSky(Thailand)、リベルスカイ、テラスカイ・テクノロジーズの子会社4社への先行投資による2億6000万円の損失を取り込みながらも、計画に対しては126%の達成率となっている」と総括した。
クラウド別では、Salesforceのビジネスが64%を占め、Amazon Web Services(AWS)、Google Cloud Platform(GCP)、Microsoft AzureによるIaaSビジネスが36%を占めている。
セグメント別では、製品事業の売上高が前年比0.7%増の15億8000万円、営業利益は前年から2億6100万円減の1億300万円の赤字。Salesforce市場拡大によるサブスクリプションの売り上げ増加があったものの、初期導入開発による一過性の利益の減少、OMLINEの本格展開および製品事業部への移管によるコスト先行などが影響したという。「だが、これらは将来の利益を確保するための投資である」と説明した。
製品事業のサブスクリプション売上構成比では、データ連携ツールの「DataSpiderCloud」が43%を占める一方、グループウェアの「mitoco」が前年の16%から20%に構成比を拡大。「mitocoは企業規模を問わずに導入が加速しており、前年比37%増の成長を遂げている」という。
また、ソリューション事業は前年比16.5%増の111億5900万円、営業利益は同11.4%増の17億200万円。DX市場拡大を追い風とした大型案件の増加や案件数そのものの増加が貢献。設立初期の子会社の赤字を吸収しながら増益になった。