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2021年度も継続して成長分野へチャレンジする――、テラスカイの佐藤秀哉社長が表明

オンライン説明会レポート

 株式会社テラスカイは21日、2020年度(2019年3月~2020年2月、2020年2月期)の通期決算、および2021年の事業方針に関する説明会をオンラインで開催した。

 連結売上高は前年比41.8%増の93億円、営業利益は同477.7%増の7億2500万円、経常利益は同294.8%増の7億6100万円となり、期初および期中の業績予想を上回る結果となった。

 市場成長の追い風もあり、テラスカイの5年間の年間平均成長率(CAGR)は41%と非常に好調だ。

市場成長の追い風により、2020年も業績は好調

 セグメント別の売上高は、ソリューション事業が前年比41.1%増の76億1400万円、製品事業が同45.3%増の16億8900万円。営業利益はソリューション事業が同56.9%増の11億8600万円、製品事業が同342.4%増の2億6900万円。これらの要因について、ソリューション事業は大型案件や新規受注案件の増加、製品事業はSalesforce市場拡大による同社製品の需要増加やカスタマイズ開発の増加などが挙げられている。

セグメント別売上高と営業利益

 2021年度の業績予想として、売上高は前年比15.4%増の107億2800万円、営業利益は同28.3%減の5億2000万円、経常利益は同33.4%減の5億700万円という数字がすでに発表されている。代表取締役社長 佐藤秀哉氏は、「2021年度の業績予想については、新型コロナウイルスの影響もあって比較的コンサバに(保守的に)計画している。これは投資家、関係者、株主の皆さまにしっかりお約束できる数字。まずは107億をしっかり達成してから、より上振れさせていく」と述べた。

テラスカイ 代表取締役社長 佐藤秀哉氏(提供:テラスカイ)
2021年度の業績予想

 さらに佐藤氏は2021年度の基本方針として「安定的な高成長」「品質の向上」「成長分野へのチャレンジ」の3つを挙げた。最初の2つについては、安定的に高成長するのはもちろん、売り上げだけに気を取られて製品やサービス、さらにはテラスカイ内部の品質がおろそかになることがあってはならないという意味であるという。

 そして、この説明会において、メインに紹介されたのが最後の成長分野へのチャレンジである。

クラウドビジネスには今後も継続的にチャレンジしていく

 テラスカイはSalesforce向け事業で創業し、2010年にはそれまでに培ったノウハウを活用して自社製品を市場に投入した。2013年にはサーバーワークスと提携してAWS事業に参入。さらに2016年には、BeeXを設立してクラウドSAP事業に参入した。

 佐藤氏は「Salesforceだけでなく、成長が見込まれる分野に積極的に新規参入して育ててきたからこそ、今のテラスカイの成長がある。クラウドビジネスは、まだまだ成長が見込める分野であり、今後も継続的にチャレンジしていく」と述べた。

これまでも成長が見込まれる分野に積極的に新規参入してきた

 現在テラスカイでは、Microsoft AzureやGoogle Cloud Platformなど、AWS以外のクラウドプラットフォームの案件も手掛けるようになっている。佐藤氏は「テラスカイはさまざまなクラウドプラットフォームのノウハウを十分に持っている。これらを活用した製品、サービス、サービス提供のためのモジュールといったアセットを今後も拡充していく」と説明した。

 「ビジネスの大本は、お客さまの『こうしたい』という要望。どうやってITで実現するかを、お客さまと一緒に悩みながら考えることが、テラスカイのクラウドインテグレーションビジネス。そこからアイデアや気づきを製品やサービスとして展開することが、成長のエンジンになっている。あるお客さまがやりたいことは、ほかの数社でもやりたいことであるケースがある。同じものを作るのであれば、製品やソリューションにすることで、多くのお客さまが低価格で利用できるようになる」と佐藤氏は説明する。

 このように複数の企業が抱える共通の要望は、プラットフォームの特性を活用してアセット化する。その際にはマイクロサービスとして細分化し、それぞれをAPIで連携するという。そして、こうして作成されたアセットが、「ソリューションサービスアセット」および「プロダクトアセット」になっていく。

 これらの例として佐藤氏は、Salesforceの画面をカスタマイズしたいという要望から生まれた「SkyVisualEditor」、データ連携処理をノンコーディングで作成する「DataSpider Cloud」、コールセンターでLINEを使えるようにする「OMLINE」、Salesforce上で動くグループウェアである「mitoco」などを紹介した。

複数企業が抱える共通の要望は、「ソリューションサービスアセット」および「プロダクトアセット」となる。
それぞれのアセットは、マイクロサービスとして細分化されAPIで接続する

 さらに、今後の成長領域に投資をすることで拡充していくアセットとして、「インベストメントアセット」があり、コーポレートベンチャーキャピタルの「TerraSky Ventures」、量子コンピュータ関連ビジネスの子会社「Quemix」、タイの現地法人TerraSky Thailandをそれぞれ設立したことが紹介された。

 2019年3月に設立されたコーポレートベンチャーキャピタル TerraSky Venturesは、同年6月にNTTコミュニケーションズと日本アジア投資と共に、ファンドとしてTSV1号投資事業有限責任組合を組成している。すでに2社に投資しており、今後も継続的に投資を続けていく予定であるという。

コーポレートベンチャーキャピタル「TerraSky Ventures」。2019年6月にはTSV1号投資事業有限責任組合を組成

 2019年6月は量子コンピュータ関連ビジネスを展開する子会社のQuemixを設立している。佐藤氏は、「量子コンピュータのハードウェアを開発する分野に進出するのではなく、量子コンピュータをどうやって活用していくかということに焦点を絞っている。量子アルゴリズムを開発しながら、お客さまのビジネスに貢献していく。さまざまなR&Dへの参加や大学との共同研究のほか、アニーリング(高精度な組み合わせ最適化処理を高速に実行する計算技術)の分野では、組み合わせ最適解に向けたアルゴリズムの開発を行っていく」と説明した。

量子コンピュータ関連ビジネスの子会社「Quemix」

 2019年12月には、米国法人に続いてテラスカイの2番目の海外法人となる TerraSky Thailandをタイのバンコクに設立している。佐藤氏は「アジアは成長市場であり、現地でSalesforceのエンジニアを採用して育成していく」と述べた。しかし、新型コロナウイルスの影響により、両国間で行き来することのできない状況が続いており、当初の計画に遅れが生じているという。「もともとは大きな赤字を出す見込みであったが、計画が遅れたために赤字が減少するという皮肉な状況になっている」と佐藤氏は述べている。

2番目の海外法人となる「TerraSky Thailand」

 また、SAPのユーザー企業にとって深刻な問題となっている2025年問題の解決に向け、SAP関連ビジネスを展開する連結子会社のBeeXのDX Readyへの取り組みを紹介した。「まずはSoEとSoRを2つに分けて考え、クラウドにリフト&シフトする。また、サービスはモジュール単位で構成するマイクロサービス化することが重要」と説明した佐藤氏は、BeeXの支援によって多くの企業がSAPによる基幹システムをクラウドに移行しているとして、京阪ホールディングスのAWSへの移行事例を紹介した。また、Azureでの移行事例や、日本初となるGCPへの移行事例についても近日発表できる見込みであるという。

BeeXのクラウドSAPクラウドシフト事例「京阪ホールディングス」

 2021年度の業績予想が、2020年度よりも減収する要因として佐藤氏は、積極的な人材採用を予定していること、量子コンピュータ関連ビジネスや海外法人への投資にあると説明する。特に量子コンピュータ分野に関しては、今後3年間は大きな赤字を出しながら市場を改革してくフェーズであり、黒字になることはないと予想している。しかしながら、人材採用を含めた積極的な投資は、将来の事業拡大を見込んで重要であることを強調している。

 なお、新型コロナウイルスの感染拡大の影響は業績見通しには織り込んでいないとしているが、「新たなプロジェクトが停止したり、開始が遅れたりといった影響は出ているものの、投資マインドが冷めているとは感じない。特に、新たなビジネスを立ち上げて、新たな収益源を作るといったSoEの領域における投資には前向きな企業が多い。業界によっては厳しいところもあるが、大手企業には内部留保もあり、新型コロナウイルスが終息した際に、スタートダッシュするために投資をしたいという傾向がみられている」などと述べた。