ニュース

NECの2021年度第3四半期連結業績は増収減益、売上収益はエンタープライズとグローバルが牽引

グローバル5Gなど成長事業の進捗も説明

 日本電気株式会社(以下、NEC)は1月31日、2021年度第3四半期累計(2021年4月~12月)の連結業績を発表した。

 それによると、売上収益は前年同期比2.5%増の2兆963億円、営業利益は同42.6%減の472億円、調整後営業利益は同21.7%減の759億円、税引前利益は同42.8%減の490億円、当期純利益は同43.3%減の249億円となった。

第3四半期累計 実績サマリー

 NECの森田隆之社長兼CEOは、「売上収益では、エンタープライズとグローバルが牽引した。調整後営業利益は減益となったが、前年同期の一過性の要因と、今年度の戦略的費用を除いたオペレーションとしては、市況回復を取り込むことで改善している」と総括した。

NECの森田隆之社長兼CEO

セグメント別の業績

第3四半期累計 実績サマリー(セグメント別)

 セグメント別業績では、社会公共事業の売上収益が前年同期比5.3%減の2595億円、調整後営業利益は前年同期から38億円減の76億円。消防・防災向けや、地域産業向けが減少したという。

 社会基盤事業は、売上収益が前年同期比3.3%減の4452億円、調整後営業利益は前年同期から4億円減の349億円。前年度のGIGAスクール構想によるPC特需の反動があり減収となった。子会社である日本航空電子工業は増収増益になった。

 エンタープライズ事業は、売上収益が前年同期比16.7%増の4138億円、調整後営業利益は前年同期から82億円増の344億円。金融、製造、流通・サービスのすべての領域で増収になっているという。

 ネットワークサービス事業は、売上収益が前年同期比4.3%減の3501億円、調整後営業利益は前年同期から41億円減の158億円。部材不足の影響があったものの、5G事業が国内で拡大。だが、グローバル5G展開に向けた戦略的費用が110億円増加したことにより減益になった。子会社のNECネッツエスアイは、前年同期の大型案件の反動減もあり減収となった。

 グローバル事業は、売上収益が前年同期比9.0%増の3545億円、調整後営業利益は前年同期から100億円増の181億円。デジタルガバメント/デジタルファイナンス(DG/DF)領域を中心に増収となった。サービスプロバイダーソリューションも増加しているという。

 その他事業は、売上収益が前年同期比3.4%増の2732億円、調整後営業利益は前年同期から82億円減の14億円となった。

 2021年度第3四半期累計の受注動向については、大型案件による四半期変化が大きい海洋システムと、非連結事業となったディスプレイを除くと、NEC全体では前年同期比4%増になっており、そのうちITサービスは、前年同期のGIGAスクール需要の影響を除くと、企業向けの堅調な需要によって2%増。また、5Gビジネスは、基地局の拡大により高水準で推移したという。

 セグメント別受注状況は、社会公共は公共、医療向けは好調だが、消防・防災が減少し、前年同期比3%減。社会基盤(JAE除く)は防衛向けが堅調であり、前年同期のGIGAスクール需要の影響を除くと1%増。エンタープライズは、金融、製造、流通・サービスのすべてが堅調に推移して7%増。ネットワークサービスは5G基地局が拡大したものの、固定系大型案件の反動があり1%減。グローバルは、Avaloqの受注が好調であるのに加えて、Netcrackerが需要を拡大。海洋システムとディスプレイを除くと32%増なっている。

受注動向:3Q累計(9カ月累計)前年度比

 また9カ月間累計で、戦略的費用として200億円を投入した。内訳はグローバル5Gで110億円、コアDXが25億円、社内DXが35億円、人材投資などで30億円となっている。そのほか、不採算案件が利益面で60億円のマイナス影響があり、そのうちの8割が子会社によるものだという。

 「戦略費用は第4四半期までに計画していた320億円は使い切ることになるだろう。特に、グローバル5Gは当初計画の120億円に対してかなり進捗している。グローバル5Gは、上期に多くの受注案件を獲得でき、成長に向けて加速するために投資を増やしている」(NEC 執行役員常務兼CFOの藤川修氏)とした。

NEC 執行役員常務兼CFOの藤川修氏

 また、「社会基盤およびネットワークサービスの連携子会社における不採算案件があった。社会基盤では、中央官庁のデジタル化に関連して調達方法が変更され、その対応に苦労した。ここは対策を打ち終わっている。第4四半期にはこれ以上のものは予定していない」(NECの森田社長兼CEO)とのこと。

通期業績見通しを修正

 一方、2021年度(2021年4月~2022年3月)通期業績見通しを修正。売上収益は前年比0.2%増の3兆円と据え置いたが、営業利益は50億円増の前年比18.7%減の1250億円、調整後営業利益は前年から50億円増の同10.2%減の1600億円、当期純利益は前年から30億円増の同53.2%減の700億円とした。

 「第3四半期までの部材不足と年度末までの影響、改善施策とその効果をしっかりと検証するとともに、第3四半期までの業績の進捗、今後の見通しを精査し、上方修正した。年初の業績予想に織り込んでいなかった部材不足の影響が発生しているが、実業の改善があり、修正を決定した」(NECの森田社長兼CEO)と述べた。

業績予想サマリー

 なお、半導体を中心とした部材不足による影響は、営業損益では年間でマイナス80億円を見込んでいる。内訳は、直接的な影響がマイナス270億円。これに対して、クラウドを含む代替品への切り替えや代替部材への設計変更、販売価格の適正化などで140億円、不要不急な費用の抑制、効率化の実施などで約50億円の、合計190億円の対策効果により業績への影響を最小化するという。

 「80億円のマイナス影響のうち、50億円はネットワーク領域での出荷延伸によるものであり、2022年度には解消できると考えている。また、当初足りなかった先端部品に関しては、納入のスケジュール調整をしたこともあり、方向が見えてきた。足元で足りないのはアナログICなどの汎用部品である。一部工場の断続的な停止や、物流の混乱も影響しており、部材の流通が正常化するのは、2022年中まではかかるだろう。予断を許さない部分はあるが、希望的観測では今年秋前には少し落ち着いてくると期待を持っている」とした。

部材供給リスクへの対応

 新型コロナウイルスの影響については、「オミクロン株の感染が増加しているが、ビジネス環境はノーマルに戻りつつある。これも業績の上方修正につながっている。いまの欧米の市場環境が続くようであれば、マネージができる範囲でビジネスが進められる」(NECの森田社長兼CEO)としたほか、「第3四半期累計の業績を見ても戦略的費用を除くと、完全に戻っているととらえることができる。コロナ影響はマネージできている」(NECの藤川CFO)と述べた。

3つの成長事業の進捗を説明

 一方、デジタルガバメント/デジタルファイナンス(DG/DF)、グローバル5G、コアDXの3つの成長事業の進捗についても説明した。

 グローバル5Gでは、海外顧客からの需要は旺盛であり、戦略的費用の投入を加速。2022年度から製品の出荷を開始するという。「売り上げの拡大に伴い、限界利益が増益に寄与することになる。商用受注案件が5件となっており、トライアル実施は22件、プロスペクトでは30件以上ある」と、案件を着実に積み重ねていることを示した。また、部材不足の影響があり、国内では売上遅延が発生しているが、中長期の見通しへの影響はないとした。

 1月28日には、基地局の無線機および制御ソフトウェアを手掛けるスタートアップ企業の米Blue Danube Systemsの買収に合意したことを発表。「製品ラインアップの拡充と北米における顧客サポートの強化、海外向け開発体制を強化できる」としたほか、「目的はリソースの獲得である。海外では周波数対応が広く、それに対応したり、ローカルエンジニアリングをするための技術リソースの獲得ができたといえる。こうしたリソース獲得の観点からのアライアンスや買収は適宜行っていく」と述べた。2022年3月に買収を完了する予定だという。

グローバル5G

 DG/DFでは、年間目標に対しては計画通りに進捗しており、シナジー強化やオフショア集約などの収益性改善を推進。Avaloqが欧州およびアジアでの受注が好調だったという。「2021年度の通期計画に対しては80%の進捗率となっており、上振れしている。通期計画に対して、10%上回ることになると見込んでいる」とした。

 コアDXでは、コンサルティングおよび共通プラットフォーム領域が順調に拡大し、年間目標に対しては計画通りに進捗。2022年4月には、デジタル関連の横断組織であるデジタルビジネスプラットフォームユニットに、戦略コンサルティングのほか、ネットワーク領域を含むデジタル関連の製品・サービス・技術、エンジニアリング、フィールドマーケティングの機能を一元化し、顧客に対するDXオファリングの訴求力の強化や提供拡大に取り組むとした。

 「NEC全体として持っているリソースを集中させ、共通化しなくてはならない。そのためにデジタルビジネスプラットフォームユニットにリソースを集中させる」。

DG/DF、コアDX

4月1日付けで大規模な組織改革を実施へ

 なお、2022年4月1日付けで大規模な組織改革を行う考えも示した。

 「2025中期経営計画の実現に向けた組織改革」と位置づけ、約150の事業部レベルの組織数を3分の1の約50に再編するほか、CEOから担当者までに8階層あったレイヤーを6階層とし、フラット化を実現。組織デザインの柔軟性、権限委譲と責任の明確化および強化を図る。

 「DXが進展するなか、市場の要求は業務効率化や業務革新から、新たな価値やビジネスの創出に移りつつある。競争環境もグローバル化、複雑化している。こうした環境下において、NECが有するあらゆるリソースを、柔軟に、スピード感を持って配分することが、いままで以上に重要になる。『2025中期経営計画』の事業戦略の実行を、より加速することを目的に組織の抜本的な改革を行う」とコメント。

 また、「目指すべき組織の姿を実現するため、『組織の大括り化』、『レイヤー(階層)のフラット化』、『組織デザインの柔軟性』、『権限委譲と責任の明確化・強化』という4つの改革を実行する。競合に負けないリソースを、ダイナミックにリアロケーションできる事業体制を持ち、マネジメント階層をよりフラットにし、アジャイルな組織デザインに変容することで、スピーディーな事業運営を可能にすることを目指す。また、共通機能と現場の役割を明確にすることで、現場に近いところでの意思決定がより進むようにしたい」と述べた。

2025中期経営計画の実現に向けた組織改革

 NECは1960年代の事業部制導入以降、基本的な組織構造を大きく変えず事業運営を行ってきたが、個々に最適化を追求した結果として組織が細分化し、組織単体での権限や投資体力が十分とは言えない状況となっていた。

 森田社長兼CEOは、「かつては通信、コンピュータのほかに、家電、半導体などの事業があり、その時の事業部体制を継続していた。時間が経過したことで、ひとつずつの事業部が小粒化してしまった。その結果、事業部単位で、競合に打ち勝つだけのリソースを投資することができなかったり、意思決定の際にも部門をまたがなくてはならなかったりということが起きていた」と、これまでを振り返る。

 その上で、「組織を大括りにすることで、共通的な事業についてはひとつにまとめ、現場に近いところで、スピーディーにリソースを投資し、リアロケーションができ、施策を実行できるようになる。また、ピラミッド型ではない、プロジェクト型の組織を導入することで、意思決定も速くできる。だが、組織や器を作っただけでは実現できない。新たな組織を生かして実行していくことが鍵になる」と述べた。

 さらに、「子会社についても、グループのなかでの役割を強化していくことになる。NECグループ全体の利益に貢献する形での方向性を探っていく」としている。