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NECの2022年度第1四半期連結業績は増収減益、当期純損益は138億円の赤字に

社会公共とネットワークサービスの悪化が影響

 日本電気株式会社(以下、NEC)は28日、2022年度第1四半期(2022年4~6月)の連結業績を発表した。

 売上収益は前年同期比1.2%増の6596億円、営業損益は前年同期の11億円の黒字から、マイナス153億円の赤字、調整後営業損益は前年同期の105億円の黒字から、マイナス70億円の赤字に転落。税引前損益は前年同期の前年同期の29億円の黒字からマイナス66億円の赤字、当期純損益は前年同期の2億円の黒字から、マイナス138億円の赤字となった。

2022年度第1四半期の実績サマリー

 NECの森田隆之社長兼CEOは、「売上収益は前年並みとなったが、調整後営業損益は社会公共とネットワークサービスが悪化して減益になった」としたほか、「調整後営業利益に対しては、部材不足でマイナス10億円、為替影響でマイナス5億円の影響があった。第1四半期は当初予測の範囲内で影響をマネージできたと考えているが、部材不足の状況は継続しており、年間で一定のリスクを想定し、対策を実施することで業績への影響を最小化する。また円安進行により、部材購入の面でマイナス影響を受けているが、2022年7月から売価への転嫁を実施しており、今後の業績への影響については縮小する。さらに為替では、海外での利益貢献への影響を見込んでいる」と説明した。

NEC 代表取締役 執行役員社長兼CEOの森田隆之氏

セグメント別業績と受注状況

 セグメント別業績では、社会公共事業の売上収益が前年同期比14.6%減の765億円、調整後営業損益は前年同期から41億円減のマイナス41億円の赤字。社会基盤事業は、売上収益が前年同期比2.4%増の1270億円、調整後営業利益は前年同期から6億円減の54億円。

 エンタープライズ事業は、売上収益が前年同期比2.6%増の1403億円、調整後営業利益は前年同期から28億円増の88億円。ネットワークサービス事業は、売上収益が前年同期比4.0%減の1001億円、調整後営業損益は前年同期から84億円減でマイナス85億円の赤字。

 グローバルは、売上収益が前年同期比9.8%増の1249億円、調整後営業利益は前年同期から15億円減の34億円。その他事業は、売上収益が前年同期比9.0%増の908億円、調整後営業損益は前年同期から38億円減のマイナス68億円の赤字となった。

 一方、セグメント別受注状況は、社会公共では、公共や医療を中心にすべての領域で増加し、前年同期比15%増。社会基盤(JAE除く)は航空宇宙、防衛での複数案件の計上により増加して同16%増。エンタープライズは、流通・サービス業向けの大型案件の計上に加えて、旺盛なIT需要を背景に、金融、製造向けも増加して同17%増。ネットワークサービスは、固定通信系の大型案件の反動減や、5Gの微減により同11%減。グローバル(海洋事業を除く)は、NetcrackerおよびDG(デジタルガバメント)/DF(デジタルファイナンス)の大型案件の計上により、同61%増と大幅な増加になった。

 「変動が大きい海洋事業を除くと、全社受注は前年同期比18%増となっている。ITサービス領域では、エンタープライズを中心とした旺盛な企業向け需要があり、前年同期比10%増になっている」としている。

受注動向:前年同期比

 NECの森田社長兼CEOは、ITサービスの市場環境についても触れ、「私が接している大企業の経営トップは、DXに対する関心と意欲が依然として極めて強い。短期的な景気動向で左右されるものではない」とコメント。

 NECの藤川修CFOは、「ITサービス全体では受注は前年同期比10%増となっている。大型案件の寄与を除いても、引き続き堅調を維持している。公共、医療のほか、金融も堅調を維持している。流通・サービスも大型案件を含めて好調だ。製造も好調であり、中堅中小企業も受注は好調である。さらにアビームコンサルティングも非常に好調である」と述べた。

NEC 代表取締役 執行役員常務兼CFOの藤川修氏

通期業績見通しは据え置き、ただしセグメント別は見直す

 一方、2022年度(2022年4月~2023年3月)通期業績見通しは据え置き、売上収益は前年比3.8%増の3兆1300億円、調整後営業利益は同8.2%増の1850億円、調整後当期純利益は同31.2%減の1150億円とした。

 だが、セグメント別の業績予想を見直しており、社会公共では売上高で400億円減、調整後営業利益で100億円減の下方修正。ネットワークサービスでは売上高で450億円減、調整後営業利益で150億円減の下方修正を発表した。「ボトム値へと下方修正した」(NECの森田社長兼CEO)という。

 その一方で、好調な社会基盤、エンタープライズ、グローバルでの上振れを見込むほか、資産売却などによるコーポレートアクションでの利益計上を見込み、これらを調整後営業利益において、調整額として250億円を計上した。

2022年度 年間業績予想

 NECの森田社長兼CEOは、「期初計画の達成にリスクがあるのが社会公共とネットワークサービスである」とし、「社会公共では、公共、医療分野の売上高が大型案件の反動減で減収になったものの、受注は前年実績を上回っている。年間では好調な受注により、底堅く推移すると予測しており、期初予想からは変更がない」とした。

 だが、「中堅中小企業向けおよび都市インフラ向けの需要回復が想定より遅れ、本格的な市場回復は2023年度以降と評価し、期初予想から変更し、前年並の水準にした」という。だが、「中堅中小企業の需要は、底を打ちつつある」との見解も示した。

 また、もうひとつのリスクとするネットワークサービスでは、「第1四半期は、グローバル5Gで、国内客先設備の低調な推移と、今年度は上期偏重とした戦略投資の増加、IT領域での国内大型案件の反動の影響があった。さらに、期初には前年度比で大幅な増加を見込んでいた国内グローバル5Gは一部需要が2023年度にシフトするリスクがある。海外市場でも上期中に見込んでいた受注の一部が下期にずれ込んだことにより、年間見通しについても慎重に見直しを行った。IT領域については、期初には2021年度以上の需要を見込んでいたが、前年並みにとどまるという保守的な見通しに変更した」という。ただし、2025 中期経営計画でのグローバル5Gの計画には変更はないとしている。

年間見通し:社会公共
年間見通し:ネットワークサービス

 一方で、上振れを想定している社会基盤およびエンタープライズでは、好調な受注推移により、期初予想を上回ると見込み、グローバルでは、DG/DFやNetcrackerの受注が好調であることに加えて、円安影響による売り上げや営業利益の改善効果を見込んでいる。

 またコーポレートアクションでは、第1四半期に実施した資産売却益として約50億円を計上したのに加えて、第2四半期にはNECエンベデッドプロダクツの株式譲渡益を計上する。

 「調整後営業利益では、社会基盤、エンタープライズ、グローバルによるアップサイドで140億円増、コーポレートアクションで110億円増を見込んでいる。また、売上規模では、社会基盤で100~150億円増、エンタープライズで150~200億円増、グローバルで300~400億円増を見込んでいる。グローバルでは、Netcrackerは大手通信事業者向けの課金運用管理ソフトウェアで3桁規模の案件が2件受注できている」などとした。

年間見通し:需要が旺盛な領域、コーポレートアクション

 このほか森田社長兼CEOは、「第1四半期実績は、調整後営業利益ベースでみると、計画からは100億円程度ビハインドしている状況にある。これは、第1四半期における社会公共とネットワークサービスの立ち上がりの遅れが原因である。原因がはっきりしており、年間でしっかりとリカバリーすれば、相応の回復ができる。社会基盤およびエンタープライズ、グローバルでの上振れ、コーポレートアクションの取り組みを加えて、100億円のビハインドは十分に打ち返せる」と述べた。

 このほか、2022年度における最近の取り組みについても説明した。

 5Gのグローバル展開に向けたリソース増強では、2022年7月1日に発表したアイルランドのAspire Technologyの買収について説明。「Aspire Technologyは、ネットワークSIを手掛けている企業であり、業務経験のある優秀なシステムエンジニアを獲得できた。大手通信事業者に対して、5G Open RANシステムの設計、構築力を強化できる。先に買収した米Blue Danube Systemsとの連携も強化しており、Radio Unit(5G基地局)の開発力強化と、製品ポートフォリオの拡充を推進する」という。

 また、2022年7月には、国内最大規模となる1100億円のサステナビリティ・リンク・ボンド(SLB)を発行。気候変動対応に関連する指標をKPIとして設定。「資金調達の側面からもサステナビリティ経営を推進する」と述べた。

5Gのグローバル展開に向けたリソース増強