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NEC、2021年度の連結売上収益は0.7%増 オペレーションは前年から315億円改善
戦略的費用として730億円を投資し、さまざまな取り組みを実施
2022年4月28日 20:08
日本電気株式会社(以下、NEC)は28日、2021年度(2021年4月~2022年3月)の連結業績を発表した。
売上収益は前年比0.7%増の3兆141億円、営業利益は同13.8%減の1325億円、調整後営業利益は同4.1%減の1710億円、税引前利益は同8.5%減の1444億円、当期純利益は同5.6%減の1413億円となった。
NECの森田隆之社長兼CEOは、「前年度のGIGAスクール特需の反動減や、部材不足のマイナス影響があったものの、5G基地局の出荷拡大や、コアDXではアビームコンサルティングとの連携などにより成長が拡大して、増収となった。また調整後営業利益では、戦略的費用の増加や部材不足の影響があったが、オペレーションは前年比で315億円改善。1月予想比からは110億円の上振れとなった。調整後当期利益は3期連続で増益を達成した」と総括した。
調整後営業利益においては、部材不足でマイナス80億円の影響があったほか、社会基盤での不採算案件でマイナス17億円、戦略的費用でマイナス260億円の影響があったという。また、ポートフォリオ変革で130億円のプラス効果、オペレーション改善で315億円のプラス影響があった。
「部材不足のマイナス80億円の影響は、290億円の直接影響に対して、210億円の対策効果によるものである。代替部材への設計変更、代替品への切り替え、販売価格の適正化を行ったことに加えて、不要不急な費用の抑制や効率化を図った」という。
戦略的費用として730億円を投資。グローバル5Gでの海外拡販体制の強化や製品ラインアップの拡充、コアDXでのDXオファリングの強化や拡大、新規領域の立ち上げのほか、社内ITインフラの強化、DX人材強化、次世代リーダー育成に取り組んだという。「これらは将来の成長に向けた投資であり、5Gについては当初計画よりも増やしている。2022年度以降もこの水準を維持し、増加させる場合には該当領域の利益改善の範囲内で費用投入とする」と述べた。
セグメント別業績では、社会公共事業の売上収益が前年比5.9%減の4002億円、調整後営業利益は前年から96億円減の297億円。社会基盤事業は、売上収益が前年比6.1%減の6509億円、調整後営業利益は前年から60億円増の654億円。エンタープライズ事業は、売上収益が前年比14.2%増の5747億円、調整後営業利益は前年から93億円増の575億円。ネットワークサービス事業は、売上収益が前年比5.1%減の5115億円、調整後営業利益は前年から57億円減の355億円。グローバルは、売上収益が前年比7.9%増の4856億円、調整後営業利益は前年から188億円増の263億円。その他事業は、売上収益が前年比1.8%増の3912億円、調整後営業利益は前年から56億円増の133億円となった。
2021年度の受注実績は、海洋事業およびディスプレイ事業を除くと前年比4%増。そのうち、ITサービスは企業向けの堅調に需要により、GIGAスクール需要を除くと、3%増。5Gビジネスは、5G事業の拡大により高水準で推移しているという。
セグメント別受注状況は、社会公共は、消防・防災向け減少も、公共向け好調で、前年同期比1%増。社会基盤(JAE除く)は宇宙・防衛向けが増加したが、中央省庁向けが減少。だが、前年同期のGIGAスクール需要の影響を除くと前年並み。エンタープライズは、金融、製造、流通・サービスのすべての業種が堅調に推移して7%増。ネットワークサービスは5G事業が拡大したもの、固定系大型案件の反動があり1%減。グローバルは、Avaloqの連結効果とともに、DG(デジタルガバメント)/DF(デジタルファイナンス)が好調であり、海洋システムとディスプレイを除くと25%増となっている。
2022年度は前年比3.8%増の3兆1300億円の売上を見込む
一方、2022年度(2022年4月~2023年3月)通期業績見通しは、売上収益は前年比3.8%増の3兆1300億円、調整後営業利益は同8.2%増の1850億円、調整後当期純利益は同31.2%減の1150億円とした。
「売上収益は、グローバル5GおよびコアDXにより増収。調整後営業利益は売上拡大に伴い、増益を計画している。足もとのIT投資は比較的堅調だが、2022年度の事業環境には見通し難い要素があり、やや保守的な数字になっている。2022年度の利益計画を確実に達成し、その上で追加的な事業機会を獲得し、リスクマネジメントも適切に実行することで、上乗せを図りたい」とした。
部品不足については、各種施策を継続的に実施。地政学リスクに対しては、各国のレギュレーションを順守しながら、適切に対応。「2022年度は、不透明な状況の継続が想定されるも、引き続き対策を実行することで、業績への影響を最小化していく」と述べた。
ウクライナ情勢の影響については、原材料の高騰やインフレ化などの影響を間接的に受けるとしたものの、「個別の企業の立場からすればマネージできる範囲。ウクライナにはソフトウェアの開発人員もいるがすでに対策を行っている」とした。
セグメント別業績見通しは、社会公共事業の売上収益が前年比10.0%増の4400億円、調整後営業利益は前年から103億円増の400億円。社会基盤事業は、売上収益が前年比6.8%増の6950億円、調整後営業利益は前年から66億円増の720億円。エンタープライズ事業は、売上収益が前年比0.1%増の5750億円、調整後営業利益は前年から55億円増の630億円。ネットワークサービス事業は、売上収益が前年比12.4%増の5750億円、調整後営業利益は前年から105億円増の460億円。グローバルは、売上収益が前年比3.2%増の4700億円、調整後営業利益は前年から67億円増の330億円。その他事業は、売上収益が前年比4.2%増の3750億円、調整後営業利益は前年から83億円減の50億円とした。
成長事業および課題事業の進捗は?
成長事業および課題事業にわけて、2025中期経営計画の進捗についても説明した。
成長事業のDG/DFでは、2021年度の売上収益が2527億円、調整後営業利益が159億円と増益を達成。AvaloqとNECのアジア現地法人のシナジーによる新規案件の獲得や、インドのオフショア拠点活用による開発効率化、AvaloqのPMI完遂とSWSのボルトオン M&Aなどの成果があったという。
2022年度は売上収益が2400億円、調整後営業利益が170億円と減収増益を計画。「減収はKMDおよびAvaloqの低収益事業の売却を決定したことによるものであり、約150億円の事業が対象になる。買収時から売却すると想定していたものが中心であり、それにポートフォリオの改善を加えた。コア領域では堅調な推移を見込んでいる」とした。2025年度は売上収益が3000億円、調整後営業利益が360億円を見込んでいる。
同じく成長事業であるグローバル5Gでは、2021年度の売上収益が670億円、調整後営業利益が206億円の赤字。「部材不足の影響を受けたものの、国内向け基地局が順調に拡大し増収となった。だが、戦略的費用を135億円増加させたことで赤字幅が拡大した。2022年度は引き続き売上増を見込むほか、すでに受注済みの海外商用案件が着実に実行されることで、売上収益は1100億円を計画している。戦略的費用は2021年度と同等水準を投入するが、売上増により大幅な損益改善を見込んでいる」とした。2025年度の売上収益は1900億円、調整後営業利益は170億円を計画している。
もうひとつの成長事業であるコアDXは、2021年度の売上収益が1737億円、調整後営業利益が39億円の実績となった。コンサルティング起点の案件増加や、クラウドビジネスをはじめとする共通基盤領域が増加して黒字転換した。「2021年度はハイパースケーラーとのグローバル協業の加速、DXオファリングの強化のほか、アビームコンサルティングと連携した大型案件の獲得もあり、今後も連携強化による提供価値の拡大に取り組む」としたほか、「2022年度も成長のための費用増を織り込んでいるが、この分野での成長を見込み、売上収益が2200億円、調整後営業収益が70億円の増収増益を計画している」という。2025年度の売上収益は5700億円、調整後営業収益が750億円と高い成長を見込んでいる。
課題事業については、2021年度には調整後営業利益率で2.6%改善したという。「2021年度はCFO主導でモニタリングを行い、利益率の改善効果が出ている。2022年度はこの活動を加速させ、一部事業の縮小判断や、リソースシフトを含む事業構造の最適化を図ることで、さらに1%強の利益率の改善を図る」とした。ここでは、2021年度にNEC Energy Solutionsを非連結化し、2022年度に改善効果を見込んでいる。
NEC 執行役員常務兼CFOの藤川修氏は、「課題事業の対象は16事業があり、そのうち6つの事業は構造的な改革が必要であり、2021年度末時点で具体的にどんな改革をするのかを決め、2022年度に改革を進めていくことになる。社会公共、エンタープライズ、システムプラットフォームなど、課題事業は複数のセグメントに渡っている」とした。
また、2025中期経営計画において、M&Aの実行が成長戦略の軸であることを示し、今後、業績予想はNon GAAPベースによる開示にすると語った。
さらに、2025中期経営計画のKPIのひとつとしているエンゲージメントスコアは、2021年度に35%となり、前年度から10ポイント改善。「NECの規模の企業で10ポイントの改善はまれなケースである。経営層と従業員との対話の機会は国内外で36回を開催。この活動は今後も継続する」とした。加えて、顧客との未来の共感創りとして取り組んでいるThought Leadershipの取り組みを強化していることにも触れた。
なお、2020年4月から実施している政策保有株式原則ゼロ方針に基づく縮減活動の進捗についても報告。累計売却額は1158億円となり、フリーキャッシュフローに大きく貢献。上場株式の保有銘柄数は、2020年3月末の108銘柄から52銘柄に半減したとしている。