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NEC、2021年度第1四半期連結業績は増収増益 「第1四半期から黒字を出せる体質になってきている」
2021年7月30日 21:43
日本電気株式会社(以下、NEC)は30日、2021年度(2021年4月~6月)の連結業績を発表した。
それによると、売上収益が前年同期比10.9%増の6519億円、営業利益は前年同期の102億円の赤字から11億円の黒字に転換。調整後営業利益は前年同期の58億円の赤字から104億円の黒字に、税引前利益は前年同期の96億円の赤字から29億円の黒字に、当期純利益は前年同期の50億円の赤字から2億円の黒字となった。
NECの森田隆之社長兼CEOは、「すべてのセグメントで増収増益となった。国内市場は市況の回復もあり、IT事業および5G事業が好調。また、グローバル市場では、スイスAvaloqの新規連結もあり、デジタルガバメント/デジタルファイナンスを中心に拡大した結果、国内、海外ともに増収。調整後営業利益は、市況の回復を着実に取り込み、大幅に改善した。第1四半期から黒字を出せる体質になってきている」と総括した。
計画値に対して、売上収益では330億円、調整後営業利益では130億円の上振れとなっており、調整後営業利益では、不動産売却などの一過性損益で80億円の効果、オペレーション改善で253億円の効果があったという。
セグメント別の業績
セグメント別業績では、社会公共事業の売上収益が前年同期比5.0%増の785億円、調整後営業利益は前年同期から15億円改善したが18億円の赤字。「医療向けや公共向けが増加し増収となったが、中小・地方企業向けは、いまだに回復途上にある」とした。
社会基盤事業は、売上収益が前年同期比10.1%増の1352億円、調整後営業利益は前年同期から59億円増の77億円。「NEC本体は大学向けHPCが寄与し堅調。連結子会社の日本航空電子工業も増収になった」という。
エンタープライズ事業は、売上収益が前年同期比19.0%増の1369億円、調整後営業利益は前年同期から33億円増の59億円。「業界ごとにまだら模様ではあるが、流通業向けや金融業向けを中心に増加。製造業向けは回復の基調は見られるが、前年度並みにとどまった」という。
ネットワークサービス事業は、売上収益が前年同期比5.3%増の1043億円、調整後営業利益は20億円増加したものの1億円の赤字。「国内5G基地局の拡大により大幅な増収。グローバル5G展開に向けた戦略的費用を30億円増加させたが、売上増に伴い改善している。2019年度かの2年間で5G関連の戦略投資を60億円増加させているが、全体の損益は2019年度並みになっている」と述べた。
グローバル事業は、売上収益が前年同期比17.3%増の1138億円、調整後営業利益は80億円増の49億円。「Avaloqの連結もあり、デジタルガバメント/デジタルファイナンス領域を中心に、サービスプロバイダーソリューション、海洋システム、ワイヤレスのすべての事業で増収となった。調整後営業利益の80億円増のうち、半分をポートフォリオ改革で貢献。残りの半分は売上増や費用効率化が貢献している」とした。
その他事業は、売上収益が前年同期比5.2%増の832億円、調整後営業利益は73億円減の30億円の赤字となった。
第1四半期の受注動向
2021年度第1四半期の受注動向についても説明。全体では、前年同期比2%減となっているが、海洋システムとディスプレイを除くと9%増。「年間計画の達成に問題はない」(森田社長兼CEO)とした。
セグメント別では、社会公共は、医療向け、交通システム向けが増加して前年同期比4%増。社会基盤(JAE除く)は4%減であるが、「官公庁の更新需要を中心に市場は堅調に推移している」とコメント。エンタープライズは、企業システム投資が回復傾向にあり17%増。ネットワークサービスは5G基地局が拡大して19%増。また、グローバルは47%減となったが、海洋システムとディスプレイを除くと3%増となっており、「堅調だと判断している」と述べた。また、ハードウェアの受注は13%増となっている。
NEC 執行役員常務兼CFOの藤川修氏は、「エンタープライズはNECファシリティーズが連結対象になったプラス影響があるが、これを除いても9%増である。業種別では、金融が堅調であるほか、流通もコンビニを中心に回復基調にある。製造業では回復基調にあり、前年並みだが、完全に戻ったとは言い難い」とした。
2025中期経営計画の進捗を説明
NECは、2025年度を最終年度とする「2025中期経営計画」を発表。フォーカスする事業領域として、デジタルガバメント/デジタルファイナンス、グローバル5G、コアDXを挙げている。今回の会見では、それらの領域におけるトピックスについても説明した。
デジタルガバメント/デジタルファイナンスでは、Avaloqにおいて、「PMI 100日プラン」が完了し、NECグループのオフショア活用や、共同調達によるグループシナジーでの収益改善のほか、買収後初となるアジアでのSaaS案件の獲得という実績が出たという。
また、英国Northgate Public Services(社名をNEC Software Solutions UKに変更)では、従来からのボルトオン買収に続き、新たに6件目の買収として、病院向けDXソフトウェア会社のVantage Healthを買収し、ヘルスケア事業を強化。KMDでは、デンマーク税務省向け大型システム案件を獲得。NECオーストラリアでは、同国の連邦政府税務省向けITサービス案件を獲得するといった実績が上がっている。
グローバル5Gでは、英国政府が主導するNeutrORANプロジェクトへの参画に続き、ボーダフォンが英国に構築する世界最大級の商用Open RANプロジェクトにおいて、5G Massive MIMO RU提供パートナーに選定されたこと、ドイツテレコムのOpen RANプロジェクトで5G基地局装置の提供が決定したことを挙げ、「このほかにも、米国、欧州、アジア、中東で複数の案件を追いかけている。今年と来年の2年間で、海外でのOpen RANベンダーとしてのリーディングポジションの獲得に向けて、取り組みを強化する」とした。
5G基地局については、低消費電力、小型化、信頼性で差別化を図れるほか、オープンな世界において重視されるインテグレーションを、多数のベンダーとともにやり切る点がNECの特徴であると強調した。
コアDXでは、「重要な取り組みのひとつがグローバルのハイパースケーラーとの協業である」と位置づけ、2020年11月にAmazon Web Services(AWS)と、日本で初となるコーポレートレベルの戦略的協業契約を締結。2021年7月には、Microsoftとのグローバルでの戦略的パートナーシップを強化することを発表している。「Microsoftとの提携は、Microsoft AzureやMicrosoft 365と、NECの5G技術を含むIT、ネットワークの知見、双方のAIやIoTソリューションを活用することで、企業や公共機関へのクラウド導入やDXの加速、事業成長を支援することになる」と説明した。
さらに社内DXでは、森田社長兼CEOの直下にCX(Corporate Transformation)およびDXを加速させる組織として、Transformation Officeの立ち上げたことを報告。NEC自らのDXを推進するとともに、スマートワークの推進を継続することで、働きがいと生産性の向上を実現すべく活動を強化していると述べた。
社内では、デジタルファーストをもとに、約150の変革プロジェクトを実行中であるほか、SAP S/4 HANAにより、基幹システムのクラウド化を完了し、基幹領域のTCOを 30%削減。2025年度までに全社内システムのモダナイゼーション完了することで、TCOを13%削減する見込みだ。また、SmartWork2.0を通じて、テレワーク率85%の達成や、スマートな働き方の実践度を22%から64%に向上した実績も示した。
また、これらの活動を自社内だけにとどめずに、顧客に届けるためのリファレンス化につなげたり、コアDXにも組み込むことで、事業成長にもつなげたいとしており、すでに、社内実践をもとにしたDXオファリングは22件の整備が完了したという。
なお2025中期経営計画では、ベース事業における低収益性事業の改善にも取り組んでいるが、藤川CFOは、「2021年6月から、対象となる事業部門とのヒアリングを開始しており、3つのカテゴリーに分類している。半分弱にあたる事業は、今年度中にマイルストーンを置き、2022年度からステップアップできるかどうかを見極めていく。それ以外の事業は適切なタイミングでウォッチしていく。対象となる事業は、幅広いビジネスユニットに分散しており、国内も、海外もある。市況の状況で厳しいものもある。過去の歴史のなかで低収益であるものは、構造改革や事業整理、人員シフトをして、利益率を高めていくことになる」とした。
2021年度通期の業績見通しは据え置き
一方、2021年度(2021年4月~2022年3月)通期業績見通しは据え置き、売上収益は前年比0.2%増の3兆円、営業利益は同22.0%減の1200億円、調整後営業利益は同13.0%減の1550億円、当期純利益は同55.2%減の670億円とした。
NECの森田社長兼CEOは、「第1四半期実績は堅調であり、計画に対する進捗も良好である。しかし、マクロ経済の不透明感の継続、半導体を中心とした供給不足問題もある。これらをしっかりとマネージし、年間の数字を達成したい」と述べた。
半導体不足や材料価格の高騰については、「専用品や高度な部品だけでなく、一般部品や電子部品でも逼迫(ひっぱく)状態が見え、影響が広がっている。基地局に限らず、NEC製品全般における懸念材料になっている。上期は調達が見えているが、下期については調達手当の努力をしているところである」とした。
また、コロナ影響については、「さまざまな検討がストップしているというような状態はなくなっている。だが、景気に対する影響が大きい。運輸、消費関連、中小企業や地方での受注が弱い。金融、流通大手、中央官庁、通信は堅調な状況である。コンサルティングビジネスも堅調である」と話している。