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freee会計、全プランで改正電子帳簿保存法に完全対応へ

優良電子帳簿機能を追加料金なしでfreeeの全プランに提供

 freee株式会社は1日、電子帳簿保存法に対する事業戦略を記者会見で発表した。freee会計で提供してきた経費精算・ワークフロー機能を単体で販売し、2022年1月からスタートする電子帳簿保存法に対応するほか、freeeの全プランにおいて、優良電子帳簿の要件を満たす機能を2022年に提供開始する。

 freeeのCEOである佐々木大輔氏は、「今回の電帳法改正は、企業のデジタル化を進める大きな転換点。完全ペーパーレス時代が来る」と今回の法改正を歓迎する姿勢をアピールした。

freeeの佐々木大輔CEO

freee会計の全プランが電子帳簿保存法に完全対応へ

 2021年に改正される電子帳簿保存法の改正では2022年1月から、「優良電子帳簿」として一定の要件を満たせば、申告漏れがあった場合に課される過少申告加算税が5%減免されるようになる。freeeでは、システムに求められる要件が厳しく、導入ハードルが高かった優良電子帳簿を小規模事業所でも気軽に利用でき、万一の場合に過少申告加算税軽減も受けられるように、2022年中に、優良電子帳簿機能を追加料金なしでfreeeの全プランに提供する。

2022年1月から、freee会計の全プランが電子帳簿保存法に完全対応する

 「freee会計の全プランが電子帳簿保存法に完全対応する。製品の組み合わせ、使い分けの必要がなく、電子帳簿保存、スキャナ保存、電子取引データ保存のすべてをfreee会計のみで行える。従来は一部のプランで一部に対応していたが、2022年1月からすべてのプランですべてに対応する」(freee プロダクト開発基盤プロダクトマネジャー小泉美果氏)。

freee プロダクト開発基盤プロダクトマネジャー 小泉美果氏

 あらゆる業務のペーパーレス化を実現するというビジョンのもと、2022年1月にはPDFでもらった請求書や電子領収書などのデータを保存するファイルボックスの無償提供を開始。また2021年12月からは、新サービスの「freee経費精算」をリリースする。freee経費精算は、従来、freee会計で提供してきた経費精算とワークフロー機能を単体で販売するものだ。1IDが500円(税別)から利用可能で、21ID以上から利用できる。

 「経費精算にかかわる社内手続きすべてを、業界で最安水準の低価格でペーパーレス化する。従来、必要となっていた対応コストを大幅に削減できる」(小泉氏)。

 2021年9月にリリースした電子契約システム「NINJA SIGN by freee」についても、2021年12月からfreeeスマート受発注との連携を開始する。見積書・請求書の作成・送付できるスマート受発注に、電子契約管理機能が追加されることになる。

freeeスマート受発注とNINJA SIGN by freeeの連携

 データのバックアップについても、「クラウド会計のメリットを生かし、データを保存すると自動的にバックアップされることになる。パソコンでのデータ保存よりも安全にデータを保存できる」(小泉氏)と、メリットを訴えた。

 freeeの佐々木CEOは、「企業では紙で配布してきた資料を配るのを止めるなど、デジタル化を進める努力を進めてきた。ところが、会計まわりに関しては法律で紙をとっておかないといけない構造となっていた。今回の電子帳簿保存法改正でその点が改善される。大きな転換点となる」と話し、企業が紙からデジタルへの移行を進める大きなきっかけになると指摘する。

 紙を保管するためのコストが年間3000億円、これまで中小企業が経費精算を行う際に必要な時間が年間164時間程度あり、これが電子化によって35時間程度と大きく改善するとの試算を紹介した。

 企業にとってメリットがあるはずの請求書などをデジタル化だが、これまでは一部の大企業を除き進んでこなかった。「フランスでは紙のレシートを禁止するといった動きまで出ているにもかかわらず、スキャナ保存は2020年時点で0.03%しか普及していない」(佐々木CEO)。

 それが今回の改正によって、これまで必要だった税務署による事前承認が不要となり、電子保存のフローが劇的に改善されることで、「対応コストの大幅削減が実現できる」と歓迎した。

事前承認不要に加え、劇的に改善された電子保存のフロー

 さらに、当初は紙とデジタルデータの併存が多いものの、「徐々に完全ペーパーレス化に移行していくことで、紙による保存の手間がなくなり、保管スペース削減、紙を出し入れして確認するという手間がなくなり、日本全体では年間1兆2000億円程度の削減となるのではないか」と完全ペーパーレスへの移行を訴えた。

日本全体では年間1兆2000億円程度の削減が見込まれるとした

 なお11月になって、改正に対して国税庁が罰則規定を緩和すると発表したが、佐々木CEOは「現状では移行措置だと考えていて、あまり大きくはとらえていない。紙で来ても電子で来ても、電子で保存ができる世界を実現することが何よりも重要で、私たちはその世界を創ることに全力で取り組んでいく」という方針を示した。

経産省が考えた法改正の狙いを紹介

 発表会では経済産業省の大臣官房会計課政策企画委員である廣田大輔氏が、電子帳簿保存法改正の狙いについて説明を行った。

 廣田氏は「ちょうど1年前、税制改正要綱の担当をしていた。電子帳簿保存法というちょっとマイナーな法律ではあるが、日々業務を行う方にとってはかかわりの深い制度を、いかに使い勝手をよくするかという思いを持って、税制改正を行った」と、自身のかかわりについて説明した。

経済産業省 大臣官房会計課 政策企画委員の廣田大輔氏

 令和三年度税制改正における電子帳簿保存法見直しは、コロナ禍で経済社会のデジタル化が待ったなしという状況のもと、オフィスへの出勤業務を合理化すること、経理の電子化による事務作業軽減を実現するため、電子帳簿保存制度の抜本的な見直しが行われた。システム要件/事前手続き/内部統制要件を三位一体で制度見直しをすることで、大幅な改正と手続きの緩和を進展させることを目的としている。

 改正のポイントをいくつか挙げると、まず、レシートなど紙の書類を企業が電子保存しやすい改正となった。従来は性悪説であったものをリスクアプローチに転換。特にスキャナ保存導入を行う際に大きなネックとなっていた「厳しい内部統制要件」を抜本的に見直し、ペーパーレス化をより一層促進するものとした。具体的にはタイムスタンプ付与までの期限を3日以内から約2カ月以内に延長した。さらに、タイムスタンプだけでなく、クラウド保存などを可能とした。定期検査要件も廃止し、タイムスタンプ付与後に紙原本の廃棄が可能となった。

電子帳簿保存精度の抜本的見直し

 訂正削除履歴の残る優良な電子帳簿には、過少申告加算税の5%軽減措置を新設する。優良な電子帳簿以外のソフトウェアを使っている場合でも、電子帳簿として利用することは可能で、税務署への届け出も承認も不要となり、法令上の地位を与えられ、紙印刷は不要となる。

紙よりも優れたログが残る、優良な電子帳簿にメリット付与

 「電帳法自体は10年くらい前から少しずつ改正を進めてきたが、これまではスキャナ保存をするための税務署への事前承認件数は約4000件、帳簿書類の電子保存の税務署への承認件数は27万件にとどまるなど、全然普及しているとはいえない。これをブレークスルーさせる全面的な改正を行うことが必要ということで改正を進めた」と廣田氏は大きな改正を行った意図を説明した。

 改正がバックオフィス現場にどのような影響を与えるのかについては、辻・本郷税理士法人のDX事業推進室 菊池典明氏が説明を行った。

 「改正前は紙ベース、電子ベースどちらの請求書なども紙に出力して保存する場合が多く、保管スペースや入力作業などが手間となっていた。改正後は紙の請求書は紙のままで保存できるが、電子ベースのものは電子データでの保存が義務となるため、紙、電子データを併存される企業が多く、ともすれば煩雑さが余計に増すことも考えられる。スキャナ保存が容易になっていることから紙ベースのものをスキャナで取り込み、保存し、さらに紙での取引を電子に切り替える働きかけを取引先にも行っていくことで、全体のペーパーレス化を進めていくことこそ、バックオフィス業務の作業軽減につながる」と、菊池氏は紙を使っての取引を電子化する必要性を訴えた。

辻・本郷税理士法人 DX事業推進室/税理士 菊池典明氏
電子帳簿保存法改正によるメリット