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米Blue Yonderのアンゴーヴ新CEOが来日会見、「エッジ対応のインダストリークラウドで企業の意思決定加速を支援する」

 パナソニックコネクト株式会社の100%子会社、米Blue YonderのCEOに就任したダンカン・アンゴーヴ(Duncan Angove)氏が来日し、8月30日に会見を行った。

 アンゴーヴCEOは、「これまでの経験で、いつも中心に据えてきたのがイノベーションである。Blue Yonderの変革をリードしていく」と抱負を述べたほか、「Blue Yonderでは、エッジ対応のインダストリークラウドの実現に力を注ぐ。センサーやカメラ、現場プロセスなどで実績を持つパナソニックコネクトの特徴が生かせる領域であり、世界初となるエッジ対応のAI自動学習が可能なインダストリークラウドを構築できるだろう。データの75%は企業システムの外で発生している。エッジ対応のインダストリークラウドによって、リアルタイム性が高まるとともに、SCM(サブライチェーンマネジメント)の可視性が進む。ここにBlue Yonderとパナソニックコネクトの強みが発揮できる」と述べた。

Blue Yonderのダンカン・アンゴーヴCEO

 アンゴーヴCEOは英国出身。ロンドン大学ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)で経済学学士号を取得。クラウドアプリケーションのInforの社長や、Oracle、Retekなどでもリーダーシップを経験し、25年以上にわたり、企業向けソフトウェアおよびサプライチェーンビジネスで実績を持つ。Inforでは同社をクラウド企業へと転換させ、6000万以上のサブスクリプションユーザーを獲得することに手腕を発揮した。現在、Honeywellの社外取締役を務めている。また、テクノロジーに焦点を当てたプライベートエクイティファンドであるArcspringの共同創始者でもある。

 「当時のInforはオンプレミスからクラウドへの転換点にあったが、いまのBlue Yonderはまったく状況が異なる。すでにクラウド企業となっており、2桁成長を遂げている。サプライチェーンソフトウェアは最もホットな市場である。サプライチェーンそのものを変革し、さらに成長を加速させ、強い製品をより強くしていく」と述べた。

 また、「Blue Yonderは、世界で最も大きなSCM企業であり、10億ドル以上の売上高を誇る。全世界に3000社の顧客を持ち、製造業ではトップ100社のうち61社が導入し、6000人以上の社員が在籍している。製造から消費者まで結ぶエンドトゥエンドのSaaSソリューションを提供している唯一の企業である。Blue Yonderを活用している企業の製品を使わずには、1日は過ごせない」とコメント。

 その上で、「世界的なパンデミックやウクライナ情勢、気候変動、物流の混乱といった社会の地殻変動が起こる一方で、IoTなどのエッジデバイス、AI、クラウド、ロボティクスといったさまざまな破壊的テクノロジーが登場している。サプライチェーンは、これまでは在庫削減やジャストインタイムを実現することが課題であったが、社会環境の変化などによって、グローバルサプライチェーンの回復力の向上、カーボンフットプリントの最小化などが新たな課題となっている。つまり、30年~40年間にわたって使われてきた伝統的なサプライチェーンの仕組みでは対応できなくなり、サプライチェーンの世代交代が進み、それを支えるソフトウェアに注目が集まっている。工場から消費者までつながり、エコシステム全体で何が起こっているのかを理解できなくてはいけない。また、イベントが発生するとリアルタイムで計画を変更するような柔軟性、透過性を持ち、サイロを超えて稼働するものでなくてはいけない」と語る。

 「Blue Yonderは、イベントや変化をリアルタイムに検出し、コントロールタワーで起きている事象を把握。影響を予測して解決のためのさまざまなシナリオを描くことができる。AIが顧客への優先順位をもとにした判断や、最もCO2排出量が少ない方法などを提示して、実行までをサポートすることになる」などとした。

前例のない課題が発生する中、サプライチェーンや投資も世代交代が必要に
サプライチェーンに必要な変革
テクノロジーの進化でサプライチェーンを次世代へ

 さらに、「エンドトゥエンドを実現するには、Blue Yonderが持つ数十年にわたるサプライチェーンの専門知識や経験だけでなく、パナソニックグループの力が効いてくる。また、3000社以上の顧客からベストプラティクスを学べる環境にある。これらをまとめて、世界に先駆けたサプライチェーンにおけるインダストリークラウドを実現したい。Blue Yonderは、世界の人たちの生活を変え、レベルを上げることができる。Blue Yonderとパナソニックグループが手を組むことで、社会において最も重要な企業になれる」などと述べた。

 また、パナソニックコネクトの樋口泰行社長・CEOは、「Blue Yonderは、ネイティブクラウドベンダーとして、さらにソフトウェアを仕上げていく仕事がある。今後2年から2年半は、ここへのR&D投資が大切になる。ラストワンマイルやeコマース分野、サプライチェーンネットワークなどの領域にミッシングパーツがある。現時点では決まったものはないが、これらへの投資を進めていくことになる」と述べた。

パナソニックコネクトの樋口泰行社長・CEO

 一方、パナソニックホールディングスの楠見雄規グループCEOは、「パナソニックグループは事業会社制に移行し、攻めるべき領域には集中し、そこでの競争力を徹底的に、スピーディに強化する専鋭化を推進している。パナソニックコネクトは、ソリューション提供やサプライチェーン分野を中心とした成長事業、強いハードウェアに立脚したコア事業により、専鋭化にいち早く取り組んでいる事業会社である」と前置き。

 「パナソニックホールディングスでも、サプライチェーンソフトウェア領域を成長投資の対象領域のひとつとして選定しており、Blue Yonderのソリューションと、パナソニックグループが持つ現場データの収集、蓄積、分析、活用による業務プロセスの最適化を組み合わせたビジネスが、顧客の現場のあらゆる無駄と滞留をなくすことに貢献でき、高い競争力を持つことが期待できる」とする。

 また、「環境コンセプトであるPanasonic GREEN IMPACTの推進の観点からも、顧客のCO2削減や廃棄ロスの削減など、環境負荷の軽減にも貢献できる。パナソニックグループとしては大事な事業であり、期待している事業である」とした。

パナソニックホールディングスの楠見雄規グループCEO

 そして、Blue Yonderの新CEOとなったアンゴーヴ氏について、「サプライチェーンの業界で25年にわたる経験を持ち、この分野に精通した人物である。グローバルビジネスにも幅広い知見を持っており、率いてきた企業ではビジネスモデル変革をリードし、SaaSの売上高をゼロから、10億ドルにまで拡大した実績がある。サプライチェーン分野において、パナソニックが唯一無二の会社になるためにも、Blue Yonderの発展は欠かせない。アンゴーヴ氏に大きな期待をしている」と述べた。

 なお、記者の質問に答える形で、京セラの稲盛和夫名誉会長が逝去したことについてもコメントし、「フィロソフィーを持って経営をしており、それを、著書などを通じて学ばせていただいた。尊敬する経営者の一人であった。心に穴が開いたような気持ちである」と語った。

左から、パナソニックホールディングスの楠見雄規グループCEO、Blue Yonderのダンカン・アンゴーヴCEO