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Box=コンテンツクラウドと言われるようにしたい――、新たなブランドメッセージでサービスを提供

認証セキュリティの強化など、新たな機能の追加についても説明

 株式会社Box Japanは28日、「コンテンツクラウド」という新たなブランドメッセージを打ち出し、同社独自の「クラウドコンテンツ管理(CCM)プラットフォーム」を通じた製品提供や機能強化を行う考えを示した。

コンテンツクラウド

単一のセキュアな基盤で、あらゆる企業のコンテンツジャーニーを管理する

 米Boxは2021年2月、クラウドベースの電子サインソリューション企業であるオランダのSignRequestを買収し、同社の技術をベースとした電子サイン機能「Box Sign」を提供する計画を明らかにしている。

 その際、Boxのアーロン・レヴィCEOは、「Boxは、この数年間、最先端の『コンテンツクラウド』の構築に注力し、価値ある情報をセキュアに管理し、情報を介したコラボレーションを推進することを可能にしてきた。Box Signによる電子サイン機能の追加により、『コンテンツクラウド』におけるBoxのビジョンを拡張し、企業のDXを加速させる」とコメントしていた。

 Box Japan 執行役員 マーケティング部の三原茂部長は、「日本においても『コンテンツクラウド』のメッセージを本格展開する。コロナ禍において、コンテンツの重要度は高まってきたが、そこで事業活動を行うBoxの役割を、より理解してもらいやすいブランドメッセージに位置づけていく」と前置き。

 「Boxでは、ドキュメントやCADデータ、映像データをはじめ、業務に必要なすべての非構造化データを蓄積・管理・活用できる。これがコンテンツクラウドとなる。単一のセキュアなプラットフォームで、あらゆる企業のコンテンツジャーニーを管理することができる」とする。

 Boxでは、作成・取得したコンテンツを、活用、共有、編集、保持、再利用、破棄、保存といったプロセスまで、ひとつのコンテンツ基盤で賄える、業界唯一のサービスを提供していると強調する。

 「Boxはどんなサービスなのか、と聞かれたときに、まだわかりにくさがある。セールスフォース・ドットコムのセールスクラウド、アドビのマーケティングクラウド、Snowflakeのデータクラウドというように、Boxではコンテンツクラウドを打ち出し、『Boxといえば、コンテンツクラウドの会社』と言われるようにしたい。コンテンツを、クラウドにあげて、活用、管理し、コンテンツのすべてのライフサイクルを支えるコンテンツ基盤を、これからも強化していく」と述べた。

コンテンツの全ライフサイクルをサポート
Box=クラウド・コンテンツ管理(CCM)プラットフォーム

 一方で、「Boxのコンテンツクラウドのなかで最大の特徴は、一元管理とベスト・オブ・ブリードである。コンテンツはさまざまなビジネスプロセスをまたぎ、アプリケーション越しにアクセスすることもある。業務アプリケーションや生産性向上ツール、コミュニケーションツールなど、あらゆるアプリケーションと手をつないでいないと、コンテンツの一元管理が成り立たない。そこでベスト・オブ・ブリード戦略をとっている。そのプラットフォームの実現において、セキュリティとコンプライアンスを強化している」とした。

 現在、Boxは全世界で10万社が利用。フォーチュン500社の67%が利用しており、医療分野や金融機関、行政などでの利用が増加しているという。2021年度の売上高は7億7000万ドルに達しており、コロナ禍でも成長を遂げている。

 日本では、9000社以上の企業が利用。「2020年9月時点では約7300社だったものが、その後8カ月間で1300社の国内ユーザーが増加している」(Box Japanの三原執行役員)という。日経225の59%の企業で採用しているほか、経済産業省による「攻めのIT銘柄」のうち、65%の企業が利用しているという。最近では、自動車関連企業での採用が進んでいるのが目立つという。

認証セキュリティやスマートアクセスなど、さまざまな機能を強化

 Boxの新たな機能の追加についても説明した。

 セキュリティ機能では、認証セキュリティにおける強化と利便性を高める狙いから、二段階認証ではSMSに加えて、TOTP(時間ベースのワンタイムパスワード)にも対応。SSOログインでは選択肢を広げ、Okta、OneLogin、Azure、ADFSに加えて、Google Cloudを追加した。

 「認証アプリを利用して簡単に二段階認証を強化できるほか、二段階の認証を経て、その先に利用するシステムには追加ログインなしでアクセスできる。オンプレミス、クラウドを問わずに、全社の認証基盤に統合したBoxの利用が可能になる」(Box Japan マーケティング部プロダクトマーケティングの竹内裕治シニアマネージャー)とした。

認証セキュリティ

 Box Shieldで提供するスマートアクセスにおいては、ラベルベースのセキュリティを自動設定する機能を提供した。ユーザーは、個別のファイル単位、コンテンツ単位で、機密区分に応じたラベルをつければ、ラベルに対応するセキュリティ設定が自動的に適用されるため、ユーザーは細かいことを意識せずにセキュリティを強化可能。人為的なミスも排除できる。

 また、Microsoft Information Protection(MIP)ラベルとも同期。Box Shieldのラベルと同じ定義のもとで、自動的に運用ができるようにした。

 「MIPを自動的に読み取り、対応するBoxの分類ラベルを、Box上のファイルに適用させることができる。Wordで文書を作成した際に、MIPでラベルを定義すると、Boxにアップロードする際に自動適用。ファイルを共有する場合に、同じ分類として認識することができる。柔軟な設定が可能になり、セキュリティを強化できる」という。

ラベルベースのセキュリティ
Box ShieldラベルとMIPラベルを同期
MIP連携の画面

 また、コンテンツのなかの情報を検出することで、分類以降のセキュリティアクションを適用していく自動分類機能も提供。「個人を識別する情報(PII)などが含まれている場合や、『マイナンバー』といった独自に設定した用語がある場合には、それをトリガーにして、最適なセキュリティ分類を行うことができる」という。

 ガバナンスの強化では、クラウドコンテンツ管理に対する法令、コンプライアンス、規制要件に適合するためのBox Governanceを追加。ビジネスコンテンツを適切に保持、削除、アーカイブすることを保証する「リテンション管理」、法的手続きを簡素化し、訴訟費用を削減するとともに、防御性の高い状態でコンテンツを発見する「防御的な検知」、コンテンツを完全に削除でき、ユーザーを詳細に管理する「破棄と管理」を提供する。

 「リテンション管理では、コンテンツの保持期間について設定ができる。従業員に関する記録保存を例に取ると、源泉徴収票が発行された時点から4年間保存するといった定義に従って適用したり、雇用書類は社員の退職から1年後に廃棄するといった設定などが可能である。リテンションポリシーとビジネスプロセスを連結して、期限がきたら、継続的な保存やアーカイブ、破棄といった処理が可能になる。人為的なミスを減らすことで、コンプライアンス違反リスクを軽減し、規制環境やガバナンスの変化に対応できる」という。

イベントベースのリテンション
退職した社員の情報も適正に削除する

 また、Cisco Webexとの連携により、業務連携とコンテンツの一元管理を加速。Box上コンテンツからWebexにアクセスし、Webex Meetingのスケジュールや会議への参加、Spaceの新規作成を行うことができ、Boxのコンテンツの共有が可能になる機能も提供した。

Boxから直接Webexにアクセスできる

 Box Japanの竹内シニアマネージャーは、「Boxは、セキュリティやガバナンスに関する機能を、今後も継続的に強化していく。その際に利便性を損なわずに強化することを基本姿勢にしている。また、コンテンツに関わる機能を、より便利に、よりリッチにしていくことで、コンテンツを利用してビジネスを加速するコンテンツジャーニーを実現していく。これにより、『コンテンツクラウド』の世界を拡充していくことになる」と述べた。

デジタルコンテンツや情報共有を取り巻く企業の意識変化

 会見では、デジタルコンテンツや情報共有を取り巻く企業の意識変化にもついても説明した。

 Box Japanの三原執行役員は、「コロナ禍を受けて、これまでは水や空気のようにいつでも利用できていたファイルやコンテンツが、リモートワークの実施によって自由に利用できなくなり、コンテンツ管理の重要性が高まった」と指摘。

 「リモートワーク環境での情報共有を、いかに効率的に、安全に行うかといったことに関心が集まっている。紙は物理的に働く場所を限定してしまい、メールでの情報共有はセキュリティ上の問題になることから、脱PPAPの動きが広がっている。また、ファイルサーバーには社内外の人がアクセスできず、使いにくいことが認識された。その結果、コミュニケーションの最適化ができないという状況を生んでおり、これらの課題を解決する新たな情報共有に関心が集まっている」とした。

 また、「なんでもかんでも共有できればいいというわけではなく、ガバナンスとセキュリティが徹底されていなくてはいけない。ランサムウェア対策や、社員のデータ持ち出し対策などの情報漏えい対策も必要である。ファイルサーバーでの管理には限界があり、個人のPCにデータが入った状態も危険である。そうしたことから、コンテンツ基盤を整えたいというニーズがある」とする。

 そして、「テレワークを実施することで、働き方が変わり、あらゆるビジネスプロセスが変わることになる。同時に、これまでは、構造化データで作っていたデータハブだけでは限界があり、新たにコンテンツハブを作ろうという動きが出始めている。さらに、データドリブン経営の強化を考えた際に、データレイクを作っても、そこにコンテンツが入っていないという状況陥る例がある。データレイクに加えて、コンテンツレイクを作って、データドリブン経営を推進したいという声が出ている」などと述べた。

 さらに、グローバルにおいては、いつでも、どこでも、誰とでも業務遂行ができたり、フィジカルとデジタルを組み合わせたハブリッドワークスペースなどによる「Anywhere」、物理的なやりとりよりも、オンラインやデジタルでのやりとりを優先する「デジタルファースト」、情報とコンテンツそのもののセキュリティとガバナンス、コンプライアンスが一層重要になる「安全性」の3点が重視されていることを示し、「こうした点でも、Boxの優位性が発揮できる」と述べた。