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Box Japan、電子署名サービス「Box Sign」を国内提供 Boxユーザーなら追加費用なしで利用可能

セキュリティ機能「Box Shield」の強化なども説明

 株式会社Box Japanは16日、クラウドコンテンツ基盤「Box」の追加機能として、電子署名サービス「Box Sign」を日本で提供開始すると発表した。10月から北米で先行サービスを開始。11月からはセキュリティ機能や管理機能を強化するとともに、日本をはじめとする世界各国で利用できるようになった。

 Box Japan 執行役員 マーケティング部部長の三原茂氏は、「コンテンツはビジネスそのものに直結する。ビジネスフローのひとつが電子署名であり、そこには課金はせず、作業や保存もサイロ化しない。コンテンツを中心に考えた電子署名ソリューションがBox Signの特徴であり、これまでの電子署名とは基本姿勢が異なる」と自信を見せる。

Box Japan 執行役員 マーケティング部部長の三原茂氏

 本稿ではまた、BoxとMicrosoft Teamsとの連携強化、セキュリティ強化や、日本での最新状況などについても取り上げる。

コンテンツありきの電子署名ソリューション「Box Sign」

 Box Japanが新たに提供するBox Signは、Boxのユーザーであれば追加費用なしで利用できる電子署名ソリューションだ。

 米Boxは2021年2月に、電子署名ソリューションを展開していたオランダのSignRequestを買収。この買収には、ハンコ文化が浸透している日本市場からの要求が強く反映されたと言われている。この技術をベースに、2021年7月には、Boxにネイティブに組み込んだ電子署名サービスとしてリリース。10月から北米市場で先行サービスを開始し、11月からは20カ国語以上の多言語化を図って、日本をはじめとする全世界でサービス提供を開始した。

 Box Japan マーケティング部 シニアプロダクトマーケティングマネジャーの竹内裕治氏は、「他社の電子署名とは異なるベクトルを持った、コンテンツありきの電子署名ソリューションだ。電子署名をネイティブに統合し、コンテンツ管理基盤の標準機能として利用できるほか、前処理、署名、後処理まで一気通貫で行え、アプリを行き来する必要がなく、サイロ化することもない。さらに、署名という作業に対して新たな費用が発生しない。Boxユーザーであれば、現在、利用しているプランのなかで、数量無制限での電子署名が可能になり、コストダウンが可能になる。署名するだけであれば、署名する人にはBoxのライセンスは不要だ。そして、セキュリティおよびコンプライアンス機能をあらかじめ搭載している」とする。

Box Signの特徴
Box Signの主な機能

 Box上のコンテンツへの署名である「ネイティブサイン」であれば、Business、Business Plus、Enterprise、Enterprise Plusのいずれのプランでも、標準機能として数量無制限で利用ができる。なお、API経由でBox以外のアプリと連携した「アプリサイン」の場合には、Businessでは年間100ドキュメントまでといった利用制限がある。

各プランの標準機能として提供される

 Box Signは主要なファイルタイプに対応しているほか、署名、日付、チェックボックス、任意のテキストという4つの標準フィールドを用意し、再利用可能なテンプレートも提供。順列や並列、組み合わせのワークフローに加えて、リマインダー機能や期限通知機能も用意されているほか、モバイルデバイスからの利用も可能にしている。

 さらに、リアルタイムの追跡とステータス確認、管理レポートの提供、許可/拒否リストによるきめ細かいアクセス管理、電子署名法や電子帳簿保存法をはじめとする日本の法令への対応も行っているとのこと。

 「API連携によって、容易な拡張性を実現している。サードパーティアプリやカスタムアプリにも対応しているほか、Salesforceコネクタにより、Salesforceと連携した形で、Box Signが利用できる」という。

Box Signで署名をしたところ

 また、「Box Japanからは、日本の企業の要望をもとに、Box Signに搭載してほしい機能を本社開発部門にリクエストしている。現時点では、開発期間や開発リソースの関係でまだ反映されているものは少ないが、今後の機能強化のなかで反映されることになる。Box Signの機能強化は頻繁に行われてることになるだろう」とした。

Box for Microsoft Teamsの機能強化

 また今回は、Box for Microsoft Teamsの機能強化についても説明した。

 Box for Microsoft Teamsは、それぞれのアプリ間を行き来せず、Microsoft Teams内から直接、Boxに保存されているコンテンツを共有したり、アクセスしたりできるのが特徴だ。

Teamの画面からBoxのコンテンツにアクセス

 「従来はバックグラウンドで処理をする必要があり、使いにくさがあったが、BoxとTeamsのユーザー権限の自動マッピング、チームやチャネル作成時に対応するBoxフォルダの自動作成などの新機能により、使い勝手を大幅に向上。Teamsインターフェイスから、Box Filesタブをクリックするだけで、Boxを活用し、ファイルのプレビューやダウンロード、検索が可能になる」(Box Japan マーケティング部 シニアプロダクトマーケティングマネジャーの竹内裕治氏)という。

 これにより、コミュニケーションを最適化するとともに、生産性が向上。TeamsユーザーはBoxの存在を意識せずにBoxを活用でき、コンテンツの一元管理が可能になるとアピールした。

Box for Microsoft Teams

 Boxは、オンラインイベント「BoxWorks 2021」を、2021年10月に開催したが、このなかでは、将来に向けたMicrosoftとの連携強化について言及されており、今後、BoxとTeamsとの連携がさらに推進されることになりそうだ。「アプリとしてのTeamsと、コンテンツとしてのBoxという関係が、より強く打ち出されることになる」(Box Japanの三原執行役員)。

セキュリティ機能「Box Shield」の強化

Box Shieldのダッシュボード画面

 さらに、セキュリティ機能であるBox Shieldの強化では、新たにマルウェアディープスキャンを採用。従来のハッシュ関数ベースのスキャンに加えて、機械学習ベースのスキャンにより、脅威検知を強化。「より巧妙な脅威への対応を含め、脅威に対する検知率を高め、管理者のアクションが取りやすくなった」(Box Japanの竹内氏)という。

新たにマルウェアディープスキャンを採用

 特徴的なのは、悪意があるウイルスが含まれているコンテンツを検知しても、プレビューだけは可能にしているという点だ。「情報の中身の共有が行えるため、生産性を維持することができ、ビジネスを止めずに済む。もし、脅威による影響が少ないと管理者が判断すれば、制限を柔軟に変更することもできる」とした。

 ここでは、脅威の検知と生産性の維持にフォーカス。根本的なセキュリティ対策に関しては、Boxの基本方針であるベスト・オブ・ブリードの考え方にのっとって、セキュリティベンダーとの連携によって解決していくことになる。

悪意のあるコンテンツでもプレビューは可能になっている

 同社では、Box Signの新たな提供や、Box for Teamsの機能強化、Box Shield のアップデートによって、「作成、共有、公開、保存、破棄といったコンテンツのラインサイクル全体を通じて、一元化したコンテンツ基盤がビジネスプロセスを、より効率化することができる」(Box Japanの竹内氏)としている。

国内のユーザー数が1万1000社に到達

 このほか、三原執行役員は日本でのビジネス状況についても説明した。

 2021年11月1日時点で、国内のユーザー数は1万1000社に到達したという。

 2021年5月には9000社、7月には1万社であったものが、さらに短期間で1000社増加した格好だ。

 三原執行役員は、「半年で2000社増加した。Box Japanの営業体制の強化に加えて、約300社のチャネルパートナーとの連携を強化。公共や金融といったクラウドシフトに慎重だった分野でも採用が進んでいる。文部科学省や国立環境研究所、人口が多い地方自治体のほか、りそな銀行や京都銀行、城南信用金庫などの金融分野でも導入された。さらに、コンテンツを共有することが多い自動車メーカーなどの製造業、製薬や大手病院などの医療分野、JR九州や京浜急行などの電鉄系にも、Boxの導入が進んでいる」と、その状況を説明。「Box Signを活用したPoCも始まっており、今回の日本でのサービス提供開始にあわせて、導入の勢いにはさらに加速がつくと考えている」と、今後の展開にも自信を見せる。

国内のユーザー数は1万1000社に到達

 なお、グローバルでのBoxの導入実績は約10万社。コンテンツの厳しい管理が求められる医療、金融、公共分野などを中心に導入が進んでおり、2021年上期には新たに米空軍にも導入されたという。現在、フォーチュン500社の67%で採用されている。業績としては、2021年1月期の売上高が7億7100万ドル。2022年1月期は前年比12%増となる8億5600万ドル~8億6000万ドルを見込む。

 三原執行役員が指摘するのが、「文書管理」という言葉を、日本のユーザー企業から多く聞くようになったという点だ。

 「これまでにも、コミュニケーションやコラボレーションという言葉がよく聞かれ、コロナ禍では、それがさらに重視されている。これは、企業にとって永遠の課題ではあるが、そこから文書管理というところまではなかなかたどり着かなかったのが実情だった」と振り返りながらも、「この半年で、文書管理という言葉をよく聞くようになった」とする。

 商談などにおける企業との対話のなかで、「文書管理」という言葉が使われることが増えているほか、同社のオウンドメディアであるBox Squareでの検索や流入キーワードでも「文書管理」が急増しているという。

 「情報ガバナンスへの関心が高まっている。その背景には、2022年1月からスタートする電子帳簿保存法改正への対応が迫られていること、マルウェアやランサムウェア対策として、コンテンツやファイルをどう管理するかということへの意識が高まっていることがあげられる。これらへの対応には、文書管理をどうすべきかという課題が大切であるということに多くの企業が気づき、その課題解決を模索している。コミュニケーションやコラボレーションを活性化させながら、しっかりと文書管理をすることに関心が高まり、そこに、Boxのクラウドコンテンツマネジメントが注目を集めている理由がある」と述べた。