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すべての中心となるコンテンツクラウドへ――、Box・レヴィCEOが注力点などを説明
かんぽ生命保険での導入事例も紹介
2022年4月22日 08:30
株式会社Box Japanは2022年度(2021年2月~2022年1月)の振り返りと2023年度(2022年2月~2023年1月)戦略に関する記者説明会を、4月21日にオンラインで開催した。
記者説明会では、米BoxのCEO/共同創業者兼会長のアーロン・レヴィ氏が最近のトレンドとBoxのフォーカスについて、Box Japanの代表取締役社長の古市克典氏が日本での事業について、それぞれ説明した。また、株式会社かんぽ生命保険での導入事例について、同社の酒井則行氏が語っている。
企業の中心になるエンタープライズコンテンツへのBoxのコンセプト
米Box Inc.のCEO/共同創業者兼会長のアーロン・レヴィ氏は、2021年に発表した「コンテンツクラウド」のコンセプトを中心に、Boxの最新の事業フォーカスや方向性について説明した。
レヴィ氏はまず、Boxのグローバルでの現状として、11万社を超える顧客がつき、フォーチュン500の67%に利用されていると語った。日本の顧客としても、小松製作所や日本郵政などさまざまな業界の多くの組織が採用されていることを紹介した。
Boxの成長の背景としてレヴィ氏は、これからの企業での仕事について3つのメガトレンドを挙げた。場所と時間を問わずに働く「Anywhere」、企業においてワークフローやビジネスプロセスなどすべてがデジタルになるという「Digital-first」、ランサムウェアなどのさまざまな脅威からサイバーセキュリティを担保する「Secure」だ。
コンテンツクラウドでコンテンツのライフサイクル全般に対応
「その中心にあるのがエンタープライズのコンテンツだ」とレヴィ氏。ここでいうコンテンツとは、財務データや契約書、製品の技術情報などさまざまな情報を含む。
しかし、こうしたコンテンツは、アプリケーションごとに分断されていること、セキュアでないこと、コストがかかることが問題だとレヴィ氏は指摘した。
この問題に対するBoxの回答が「コンテンツクラウド」。「1つのセキュアなプラットフォームで、コンテンツのジャーニー(旅路)をすべて管理する」とレヴィ氏は説明する。取り込み、保護、コラボレーション、ワークフロー自動化、電子署名、パブリッシュ、データ分析などのライフサイクル全般にわたって一元的に管理するという意味だ。
そして、1つのプラットフォームに、従業員が使うZoom、Slack、Teams、IBMなどのさまざまなアプリケーションをAPIで統合する。
仮想ホワイトボードBox Canvasや、電子署名Box Sign、マーケットプレイスBox App Centerなど、コンテンツ活用のためのBoxの機能
こうしたコンテンツの活用を進化させるための要素として、「Protect your content(コンテンツを守る)」「Empower your people(権限委譲)」「Connect your business(使っているアプリケーションを統合)」の3つをレヴィ氏は挙げた。
1つめの「Protect your content」としては、ランサムウェアを早い段階で検知することや、社内からの情報漏えいの防止、Box内のデータのコンプライアンス順守の機能がBoxにある。
2つめの「Empower your people」としては、どこからでもアクセスできる機能や、さまざまなコラボレーション、ビジネスプロセスの自動化の機能がある。
その1つとして、1月に発表された仮想ホワイトボードの「Box Canvas」をレヴィ氏は紹介した。Box Canvasではクラウド上の仮想ホワイトボードでコラボレートできる。2022年秋に一般提供を開始する予定。
また、2021年に提供開始された、Boxに統合された電子署名サービス「Box Sign」も紹介した。
3つめの「Connect your business」としては、ZoomやSalesforce、Microsoft 365など、さまざまなアプリケーションを組み込める。
4月14日にはアプリケーションのマーケットプレイス「Box App Center」を発表した。Boxに統合できる1500以上のアプリケーションのカタログだ。
日本市場での振り返りと2023年度の計画
株式会社Box Japanの代表取締役社長の古市克典氏は、日本での2022年度(2021年2月~2022年1月)の振り返りと2023年度(2022年2月~2023年1月)の計画について語った。
2022年度:売上上昇率が増加、グローバル売上中の比率も上昇
まず2022年度の振り返りだ。
ARR(Annual Recurring Revenue:新規年間受注高+アップセル年間受注高)は創業以来8年連続成長。さらに、2022年度は58%増と大幅に増えた。
要因としては、売上のうちアップセル(追加契約)件数が5割以上になっており、「収益の基盤としてありがたい」と古市氏はコメントした。また新規も好調だと氏は強調し、日本郵政や文部文部科学省での採用事例を紹介した。
日本の顧客数について古市氏は11,000社以上という数字を挙げた。「去年の5月には9000社と説明したが、そこから22%増加した」(古市氏)。新しい顧客としては、キヤノン、日本郵政、アイシン精機などが挙げられた。
また、日本での連携ソリューションも、128社による202件があると古市氏は紹介した。
そのほかの成果としては、コンサルティングが対前年2.5倍と大幅に成長したことや、高い継続率などが語られた。
古市氏は、Boxのグローバルでの売上のうち、日本の売上の比率が年々上昇していて2022年度には18%になったことも報告し、「今後も増えそうな見込みだ」と語った。
2022年度:官公庁や金融業界への販売にも力を入れる
続いて2023年度の計画だ。
まずは、「DX実現の『はじめの一歩』となるように」として、「すべてのコンテンツをデジタルに」「コンテンツ活用を極める」「セキュリティと使い勝手の二兎獲得を実現」の3つを古市氏は挙げた。
「すべてのコンテンツをデジタルに」として古市氏は、企業内のデータの8割は非構造化データであり、管理されずに個人ごとにさまざまなアプリや場所に分散していると語った。
それに対するBoxの答えが、レヴィ氏の話にも出たように、コンテンツクラウドに集約することだ。
これにより、ファイルサーバー代替、文書管理、プロジェクトワークスペース、社外とのコラボレーション、共有リンク、ペーパレス、API連携といった機能が使える。そして、Boxをデータやコンテンツのハブとして、システムや業務をつなぐと古市氏は語った。
「コンテンツ活用を極める」としては、単一のプラットフォーム上で、電子署名や、コラボレーション、パブリッシング、ファイル共有などを進化させていることが語られた。
中でも比較的新しい機能として、追加料金なしで法的に有効な電子署名が使える「Box Sign」や、仮想ホワイトボードの「Box Canvas」を古市氏は紹介した。「これまでのオンライン会議でもPower Pointなどが使えるが説明調になりがち。ホワイトボードで議論ができることで、リアルに近い会議ができる」(古市氏)
そのほか、最近の動向として、パスワード付きZIP(PPAP)廃止の流れに対してBoxが代替として使われることを説明。ランサムウェア対策としても、脅威を検知してダウンロードさせないようにする機能や、暗号化されてしまう前のバージョンに戻せること、分類ラベルの付与によりダウンロードできないようにする機能を紹介した。
さらに、政府情報システムのためのセキュリティ評価制度「ISMAP」に登録されたことや、改正電子帳簿保存法のすべての保存要件に対応していることを語った。
こうした要件への対応をもとに、これから官公庁、自治体、病院、銀行などへの販売にも力を入れて売上を増やしていきたいと古市氏は語った。
かんぽ生命の導入事例:共有フォルダーや添付ファイルの圧迫をBoxで解決
かんぽ生命の事例について、株式会社かんぽ生命保険 常務執行役員/かんぽシステムソリューションズ株式会社 取締役副社長 最高技術責任者の酒井則行氏が語った。
かんぽ生命ではこれまでファイル共有において、共有フォルダーの圧迫や、添付メールのサイズなどに問題を抱えていた。この容量を拡張しようとしても、オンプレミスにあるため、拡張に時間や費用が必要になる。
そのほか、セキュリティのためにネットワークが分かれている間でのファイルの受け渡しにUSBメモリなどが使われていた。
こうしたことから、かんぽ生命ではこれからのファイル共有に求められる要件として、「デジタル化/テレワーク対応」「セキュリティ対応」「SaaS等との連携対応」「監査対応」の4つを定めたと酒井氏は語った。
実際のファイル共有サービスの選定では、「容量無制限、社内外での共有、リモートワーク対応」「セキュリティ・ガバナンスへの対応」「各種ツールやSaaSとの連携」の3つが求められた。これを元にクラウド型ファイル共有サービスを比較した結果、Boxの採用を決定した。
そして、2021年の8月から社内共有向けのBox利用を開始し、2022年の3月からは社外とも共有できるBox利用を開始したと酒井氏は説明した。