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エクイニクスのハイパースケーラー向けxScaleデータセンター、アジアパシフィックで最初の拠点TY12xが完成
2021年3月19日 12:57
エクイニクスのハイパースケーラー向けデータセンター戦略
エクイニクスは3月10日、ハイパースケーラー向けデータセンター「TY12x」を3月1日に開設したと発表した。ハイパースケーラーとは、AWS、Azure、Google Cloudなどの大手クラウドサービスプロバイダーを含む、グローバルな大規模事業者を指している。ちなみに、エクイニクスのデータセンターは都市名と開発順の数字の組み合わせで呼ぶが、xScaleデータセンターの場合は数字の次に「x」をつけるネーミングルールになっている。
エクイニクスでは、これまでBtoB企業向けデータセンターであるIBXを提供してきたが、2019年7月にシンガポール政府投資公社(GIC)との合弁事業により、ハイパースケーラー向けのxScaleデータセンターを構築すると発表していた。アジアパシフィックの地域においても、2020年4月にGICとの合弁事業を発表していたが、TY12xはアジアパシフィック地域初のxScaleデータセンターとなる。アジアパシフィック地域のxScaleとしては、2021年第4四半期中に大阪のOS2xが完成の予定であるほか、東京にもう1拠点が開発予定となっている。
ハイパースケーラー向けデータセンターの構築に至った背景として、エクイニクス日本法人の小川久仁子社長は、「多くのハイパースケーラーのクラウドオンランプ(クラウドへの接続拠点)のうち、40%以上が弊社のデータセンターにある。つまり、エクイニクス=クラウド接続拠点、ハイパースケーラーと弊社は一心同体。そのハイパースケーラーの要望に応え、ビジネスを支援するために、ハイパースケーラーがサーバーファームを置ける場所としてxScaleデータセンターをグローバルに構築している」と言う。
xScaleとIBXのポジショニング比較
xScaleデータセンターとIBXデータセンターの、ポジショニングを比較したのが以下の図である。
まず、リテール向けIBXは都市型で拠点数が多い。一方xScaleはAPAC、欧州、ラテンアメリカというリージョンベースで、現時点では東京、ロンドン、パリでオープン済み。開発中も含めると、APACは日本に3拠点、欧州はロンドン、パリ、フランクフルトに6拠点、ラテンアメリカはサンパウロに1拠点が計画されている。また、xScaleはハイパースケーラーの要望がある程度まとまった時に、要望のある地域で構築される。
ハイパースケーラー特有のワークロードに応えるため、xSclaeのラック当たり供給電力はIBXの約2倍。ラックやケージ単位ではなく、データホール(マシン室を一部屋)の単位で提供する。
ビジネスをつなぐことをコンセプトにしているIBXでは、スペース、電力、インターコネクションを提供するのが基本で、スマートハンズサービスなども標準化されている。一方、xScaleはスペースと電力だけを提供し、中は好きなようにカスタマイズして使ってもらう提供形態になっている。
TY12xのファシリティ概要
TY12xは、千葉県印西市泉野に立地する。印西市はデータセンターの集積地として知られており、以下のような点が特徴だ。
- 電力系、通信系のインフラが整っている
- 安定した地盤、海から遠いなど、自然災害リスクが低い
- 都心から便利であり、かつ土地が豊富
今回完成した1期棟は鉄骨造5階建て、約2560㎡、960ラック相当のデータホールを提供する。敷地内には2期棟用のスペースがあり、すべて完成すると6500ラック相当、約1万7300㎡の規模となる。
電力仕様
1期棟では、ひとつのフロアに2つのデータホールが配置されている。データホール当たりのIT電力は2メガワット(MW)で、初期フェーズの提供電力は8MW。すべて完成した最終フェーズでは、TY12x全体で54MWを供給する計画になっている。UPSの構成は、最近メジャーになった共通予備のキャッチャシステム(単一障害点をなくしたN+1)。ひとつのデータホールに対して、1台のUPSが提供される。郊外に立地していることもあり、非常用発電機は大型ディーゼルエンジンを屋外に設置。N+1の冗長構成で、燃料備蓄は48時間分。
空調設備
データホール内にフリーアクセスはなく、床は塗装コンクリートのスラブのまま。高負荷の大規模ワークロードに対応するため、空調は壁面全体に冷水コイルとファンユニットが設置されたファンウォールになっている。ラックからの廃熱は天井に排出し、隣接したファンウォール室に戻る仕組み。天井パネルは可動式で、利用者が自由にラックを立てた後に、ホットアイル部分を外す。冷水は、屋上の空冷式チラーで作る。冗長構成は、ファンウォールがN+20%、チラーはN+1。
免震構造
ビル全体が免震装置に載った免震建物で、震度6に耐える構造になっている。よくある積層ゴムやすべり支承ではなく、すり鉢状免震皿を使った転がり支承を採用しているのが特徴。建物がベアリングに載っていて、玉がすり鉢の底へ戻る力で地震の揺れを吸収する。その他、煙探知機、熱探知機、窒素ガス消火設備といった、複数の防災設備を備えている。
セキュリティ
エントランスロビーのレセプションエリアで入館手続きをした後、データセンター部分に入館するにはサークルゲートを通る。一人ずつしか入れないサイズで、フラッパーゲートと違って上を飛び越えることもできない。これは、エクイニクスのグローバルデザインに準拠したものだが、日本で採用されたのはTY12xが最初だという。サークルゲートに入る時と出る時の両側で、ICカードとバイオメトリクスによる認証を行う。データホールの入室など、各エリアでカードリーダー、PINリーダー、バイオメトリクス認証など、複数のセキュリティ認証を用途に合わせて使い分ける。その他、建物内外はCCTVカメラ、ITVカメラが監視し、建物周囲には赤外線センサーを備えている。